11・16連合大阪シンポ

  基本は就労保障にある

    NPO釜ヶ崎などが問題提起

十一月十六日午後、大阪市福島区のコミュニティープラザ大阪で、連合大阪主催による「野宿生活者の自立支援の特別立法を」と題するシンポジウムが行われた。
 連合大阪のシンポジウムへの呼びかけは、以下のような立場として述べられている。
「野宿生活を余儀なくされている人々は刻々と拡大し、公園や路上で様々な問題を惹起しています。その多くは、野宿生活者の襲撃事件に見られるように無理解や差別・排除の考えを背景としています。また聞き取り調査等によると野宿生活者のほとんどが就労や社会参加への意欲を持っているにもかかわらず、様々な要因でこれが困難にある状況です。連合大阪はかねてから市民(国民)に対し、野宿生活者ないし野宿生活の可能性のある人々は現在の都市において、失業や貧困を原因とする普遍的な存在であり、社会からの排除ではなく、隣人として受け入れなければならないとの理解を求めること、その予防策と社会再参入の施策が必要であると考え、微力ながら努力してきましたが、解決のためにはどうしても特別立法が必要と考えるにいたっています」
 シンポジウムは、まず連合大阪中小労働運動センター所長・要宏輝氏の司会の下、伊東連合大阪事務局長も併せて連合大阪の取り組み経過報告と「野宿生活者の自立支援等に関する特別立法(仮称)」についての考え方(骨子)が説明された。連合大阪が野宿―失業問題を組織拡大の議論の場で出したのは、外国でも例があること、ドイツの産業別組織はオープンショップ制でIGメタル(二百八十万人)では失業労働者は三十二万余に及び、実に八人に一人は失業者であることから失業者労働組合という考え方もあること、日本において野宿者(ホームレス)が一万五千名を超えたが大半の出自は元サラリーマン・労働者のOBであることを踏まえている。野宿者・外国人労働者を排除するのではなく、共存は不可避との認識から出発する。野宿者・失業・雇用対策は「自立支援センター」のような雇用対策計画と国家財政の二つがそろってはじめて成功する。そのためには雇用確保・住宅保障・生活保障・市民的権利保障をうたった「特別立法」が火急の要であると述べた。
 法案は第一に「野宿生活者に対する総合的な自立支援を図る」ことを目的に、人権保障を図り、予防を含め地域への支援を図る緊急的時限立法と定義し、検討案として提出された。
 シンポジウムは、連合大阪のこれらの提案のあと関連領域・団体よりの挨拶・問題提起になった。まずNPO釜ヶ崎支援機構の山田氏は、釜ヶ崎反失業連絡会として野宿生活者の経済的自立支援策の要望と「野宿生活支援法(案)」の成立を一貫して求めてきたこと、恒例野宿者層を対象に当面の緊急生活支援と就労保障を求めて活動してきたこと、夜間宿泊所や特別清掃事業をかちとり、実施主体としてNPOを立ち上げてきたこと、基本は就労保障にあることを訴えた。
 釜ヶ崎のまち再生フォーラムのありむら潜氏は、生活保障・居住の保障が中心となるべきこと、行政の力を頼りにするのではなく、NPOでグループホームや、生ごみリサイクル事業を起すなど収容主義でなく在宅型の支援網を作り出すことが必要等、主張した。
 野宿者・人権資料センターは、一定の対策は進んできているが、問題は野宿になって初めて受けられる「対策」ではなく、広範な層が野宿になることを防ぐ社会保障制度の在り方を含む労働・福祉政策でなければならない政治課題であり、「ホームレス問題に関する政策提言二〇〇〇」を発表したとのアピールを寄せた。
 民主党大阪府連の山本氏が、連合大阪の政策提案を踏まえ立法化への取り組みの姿勢を述べた。
 大阪府立大中山徹教授が、韓国における野宿問題の報告と従来の生活保護法を改正し、諸階層への対応と予防措置を考慮した「国民基礎生活保障法」(九八年成立、本年十月施行)の内容について学ぶべき点を報告した。
 その後パネラーに厚生省社会援護局、大阪府商工部雇用推進室、大阪市民生局保護課等の国・自治体の担当者と大阪市大教授福原氏と前述の連合大阪要氏を交えて、シンポジウムが行われた。
 その中で国は、当面の緊急対応として大規模シェルターの予算化を考えていることを明らかにした。
 一方議論の中心は、従来の一八〇万の適用者が現在九〇万に減じている生活保護法の現実的運用について行われた。住居・生活の保障の点で、施設保護か居宅保護かの選択も含め、生活保護の適正活用の論議である。一方失対法は廃止されたが、この間の緊急臨時措置による高齢者の就労保障の一つである特別清掃事業などは即効力のある施策であり、国での施策が望まれる等も議論の中心となった。立法問題では、短期的にはホームレス対策法となるが、基本的には諸階層を含めた「生活基本法」や「生活支援法」の施策が立法化の中で問われるとの議論がなされた。
 今回のシンポジウムは、二年前よりプロジェクトを始めた連合大阪の主催によるものである。連合大阪での特別立法は、今だ検討案段階というものであるが、国・自治体を含めてシンポジウムが行われた意義は少なくない。今や自民党さえも、強制排除は根本的な解決にはならないとの認識に転換しはじめ特別立法へ動き出している状況にある。野宿労働者の自立支援に関わる特別立法は、来年の大きな課題になろうとしているのである。こうした中で野宿労働者の運動は、自らの主張と隊列を整頓し、野宿労働者の生活の改善と運動の前進にプラスとなる中身を闘い取っていくことが求められている。(大阪S通信員)