企業の枠超えたユニオン運動の強化を

  職場少数でも地域では

                    ユニオン組合員・T


先日、わたしの参加する地域のユニオンの定期大会が開催された。わたしの参加する地域のユニオンは職場組織と地域の組織が混在している。
わたしは地域の組織に所属している。地域の組織に所属している組合員は、職場ではほとんどが圧倒的に少数派で、一人か多くて二〜三人ということである。ある意味では否定的な存在で、職場で多数の組合員を組織しえていないか、または組織しえなかった結果として、地域で集合し支え合っているという側面をもっている。
しかし地域組織の組合員は、極めて強い問題意識をもっている。多くが職場で不当な解雇攻撃を受けていたり、理不尽ないじめを受けるなど、職場での矛盾にさらされている。自分でこれらとたたかうためには積極的に地域のユニオンを探し出して参加してきている。 多くの人が、自分の事件がなんらかの決着をつけるとユニオンの活動から離れていくのも、地域組織の組合員の特徴ともなっている。
だが、最近はちがった傾向が、わたしの地域の組織にも現れている。わたし自身もそうだが、職場で圧倒的な少数派でありながらも公然とした組合活動を継続している組合員が増えてきている。職場では圧倒的少数派であるために、日常的にさまざまないじめやいやがらせを受けることになる。しかしそれだからこそ、自分の正当性を主張し、毅然として権利を要求する人達が出てきている。
ワンマン経営者の気分に合わず、不当な配転をされ、抗議したが、逆に一時金の支給を個人的に停止されるなどのいやがらせを受け、公然と一人で組合活動としてたたかい続けている人。会社のリストラ計画で解雇を宣告され、組合に参加して解雇撤回をかちとったのを機にして公然たる組合活動を続けてきている人などである。
わたし自身は社長のワンマン経営に対して労働組合を組織し、公然と組合活動を始めたが、組合の切り崩しを受けて職場での少数派に追い込まれた。少数でも地域のユニオンの支援を受けて、職場で公然とした組合活動を維持している。
現在、全体的には労働運動が低調である。職場で理不尽ないやがらせを受けたり、不当な権利侵害がおこなわれたとしても、また少数の先進的な人達がそれに抗議し、たたかうのを目前にしても、無関心を装い、なんの行動も起こさない人が残念ながら圧倒的多数である。
たたかう意志と能力のある人が行動に訴えたとしても、職場で多数派を形成することは容易ではない。だがそんななかでも、資本の不当な仕打ちに対してたたかう意志と能力をもった人達は、現在は少数かもしれないが、確実に存在している。これらの人達を結束し、現実的な力としていかに組織的に成長させていくのかが問われている。
一方で、とりわけ中小企業に働く労働者には企業の経営環境の悪化がすすみ、経営者からやられ放題にやられっぱなしの状況が深刻に拡がっている。
わたしの参加する地域のユニオンの大会では、運動方針で新しくユニオンの「統一行動日」が提起された。
争議中の職場に対し、地域のユニオンで仲間が結集し、定例的に会社に対して集団で行動を起こすというものだ。職場では圧倒的に少数であるために、要求がなかなか実現されず膠着状態に陥ってしまいやすい地域組織の組合員にとっては、事態を打開する大きな機会となる。日常的には職場で孤立して不安な精神状態におかれているところを、仲間の連帯を感じて精神的不安を解消する大きな効果をもつことにもなる。
職場で少数派でも、泣き寝入りせず、組合員が頑張ることによって、地域の仲間が結集し、労働者としての正当な権利や要求を地域の仲間との連帯の中で実現させていくことができれば素晴らしいことだ。
先日、大分市で開かれたコミュニティ・ユニオン全国交流集会でも、地域共闘の強化が一つの課題になっていた。いくつかの地域のユニオンで「一日行動」として、地域のユニオンの仲間が争議中の職場の組合員に対して支援と連帯の集団的行動を展開していることが報告されていた。「一日行動」によって争議が具体的に解決の方向にむかったことも報告された。ユニオンが地域的な支援と連帯の活動を重ね、地域の労働環境、労働条件の改善に力を発揮することができるようになれば大きな前進だ。
わたしのユニオンの大会の議論の中では、職場組織の組合員が、自分の所属する企業の労働条件の枠内に問題意識を狭めてしまう傾向が強いこと。地域の組織などで厳しい労働条件の下でたたかっている組合員と共にたたかう質を、ユニオン全ての組合員が共有し、地域での労働条件の改善に主体的に取り組む体質をもつことの重要性が強調された。企業の経営環境が悪化し、同一企業に既にさまざまな労働形態をもつ労働者が働いているわけで、こうした体質をもったユニオンへの転換が早期に果たされなければ、ユニオンとしての存在意義がなくなってしまうといった危機感も発言された。
労働運動の質の転換が要求されている。コミュニティ・ユニオン全国ネットワークに結集している多くの地域のユニオンの中から、地域に根ざして「みんなは一人のために、一人はみんなのために」を本当に実践する部隊がつくり出されようとしている。わたしも、わたしの参加する地域のユニオンでの活動を通して、全国の仲間との共同の事業をすすめることに力を尽くしていきたいと思っている。 (T)