10・21〜23  野宿労働者の反失業全国行動

対政府へ行動開始

 一〇月二十一〜二十三日の三日間、野宿労働者運動を各地で展開し支援する諸団体で構成された実行委員会の主催により、反失業全国行動が実施された。
 二十一日の午後一時、三百名の仲間が銀座・水谷橋公園に結集した。
  釜ヶ崎反失連、神戸の冬を支える会、笹島連絡会、神奈川全県夜回りパトロール交流会、全都実が共に闘う決意を力強く表明した。争議団連絡会議からの連帯の挨拶、国に対する要求提出団からの提起が続いた。長居公園の仲間の会も発言し、「大阪・長居公園をめぐる特別決議」が採択された。
 集会参加者はシュプレヒコールで集会を締めくくり、日比谷公園までのデモを展開した。国に対するたたかいが開始されたのだ。
 翌二十二日の午前九時半、全国交流会が二百名の参加により、野宿者・人権資料センターと神戸の冬を支える会の仲間の司会で開催された。
 まず釜ヶ崎反失連が報告する。
 高齢者特別清掃事業は、五五歳以上の労働者二八一五名が登録し、現在毎日二百名が順番で就労しており、今後も就労枠の拡大を勝ち取っていくこと。高齢者就労対策だけでなく一般就労対策を要求していること。自立支援センターの出口対策としての就労支援も要求していること。公的事業だけ出なく、多様な方面への事業拡大の為に研究費を要求していること。都市部と農村部の間の人口移動問題も絡めた視野での対策を考えていること。国への特別立法要求では、市・府議会での二月決議に向けて議会対策が進んでおり、民主・社民・共産から公明まで支持、自民が検討中であること、など。
 そして焦点の長居公園問題では、当事者無視は駄目、強制排除はしない、ということを確認しつつ、仮設一時避難所の条件として、当初の鉄板塀、二段ベットの雑居などを撤回させ、個室、二食、温水シャワー、作業場、ペットスペース、などを勝ち取り、就労対策など出口問題も話し合われているとの報告があった。
 釜ヶ崎の医療連からは、福祉行政を批判していくとの決意が披瀝され、生活保護を勝ち取るために裁判闘争をたたかう労働者の報告があった。
 釜ヶ崎パトロール・大阪キタ越冬実行委、神戸の冬を支える会と発言が続き、笹島連絡会からは、いま逆風が吹いているとの認識が示され、地域住民の獲得ということを組み込んだ取り組みが問われているとの提起があった。
 野宿者のための静岡パトロールからは、生活保護の獲得に勝利した経験などの報告が、 神奈川全県夜回りパトロール交流会からは、川崎・藤沢・鎌倉・茅ヶ崎・厚木などで活動していることが報告され。東京からは、新宿連絡会、渋谷・野宿者の生活と居住権をかちとる自由連合、山谷争議団が発言した。山谷争議団が「われわれの誇れるものは団結」と締めくくった。
 争議団連絡会議からのアピール、ネパール人からの連帯発言もあって、内容豊かな全国交流集会となった。
 二十三日には、参加諸団体の代表で構成された要求提出団体が、参院議員会館で厚生省・労働省などの役人との交渉をもち、三日間におよぶ反失業全国行動は、成功裏に終了した。
 今回霞ヶ関デモを実施し、野宿労働者の自立支援対策をめぐって国との交渉関係に踏み込んだことは、野宿労働者運動にとって画期を成すと評価してよいだろう。
 しかし、国との攻防を勝利的に推し進めることのできる政治的構えと政治力量の蓄積が獲得されているかというと、大阪では今回の長居公園の勝利的決着を含め着実に獲得してきているが、肝心の東京において立ち遅れていると言わねばならない。とりわけ、東京において野宿者の自立支援特別立法を目指そうという提案が時期尚早として潰されるなど、「反排除」第一主義にとどまる傾向の強いことが憂慮される。
 「反排除」は、運動の初期には第一の課題だった。野宿労働者は、暴力的な排除・切り捨てに抗して決然と立ちあがるだけで、「ホームレス問題」を社会問題化し、市民を政治的に広く引き寄せることができた。しかし政府・地方自治体は、現在この状況に「自立支援対策」を打ち出して対処し、問答無用で排除を求める住民部分から自立支援対策を介した「排除」の実現を求める住民部分に軸足をシフトさせ、政治基盤を建て直してきている。ここでわれわれが、自立支援の在り方をめぐる攻防に中心環を移行せず、依然「反排除」第一主義で対決するならば、完全に孤立し全てを失うことになる。そうした闘いは、最早かつてのような社会的アピール力を持たない、野宿労働者の間での支持も得られない、野宿労働者は強制排除される、という惨めな結果に終わるだろう。活動家の憤激にのみ依拠した・野宿労働者の権利からだけ闘争方針を立てるような態度は、この局面では厳に慎まなければならない。長居公園の攻防で試されたのはこの態度である。
 なお国との攻防を勝利的に推し進めるには、政治的構えの転換だけでは足りない。政治力量の蓄積が不可欠である。その核心は、野宿労働者の間にしっかり根を張ることである。野宿労働者の間にしっかり根を張るには、要求し闘うだけでは決定的に不十分である。失業者の運動においては、土台となる日々の生活を成り立たせる領域の比重が計り知れなく大きい。炊き出しやパトロールのレベルを超え・野宿労働者が社会に貢献しつつ生活していける事業を組織化し、本格的にこの領域の責任を引き受けていくようでなければならない。土台の領域で右翼に負けるようでは、運動に展望は無い。
 反失業全国行動は成功した。課題も明らかとなりつつある。野宿労働者運動の飛躍へ、奮闘しよう。(東京M通信員)