地方参政権

     すべての定住外国人に

          同化政策との対決も問われる

九月二十二日に訪日した韓国金大統領が、首相・森に強く要請した定住外国人の地方参政権問題で、政府与党が大きく揺れ動いている。この金大統領の訪日を前後して提出された与党公明党・保守党の地方参政権付与法案に対して、与党最大党派の自民党はこの法案への賛否が真っ向から内部で対立し、今国会での成立が危ぶまれている。
今回の法案は、前回提出の公明・自由党共同提案にあった「国籍条項」がなくなり、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)籍の在日朝鮮人は当分の間排除するという在日への分断差別が解消された。しかしながら、定住外国人の扱いをめぐり、大幅な規制を課せようと「永住」の中身の論議やら行われている。定住者ではなく永住権者に限る、その内でも特別永住権者に範囲を限定するという論議になっている。また参政権の中身の規制も、地方への限定や被選挙権を否認するなど極めて限定的といわねばならない。
その根底にあるのは、日本は歴史的にも一度として、定住外国人に対する法的地位の保障をしたことがないからである。その意味では参政権の付与が、この一歩を切り開く可能性はある。しかし、朝鮮総連や韓統連などが危惧する民族意識を薄めてしまう可能性も否定できない。まさに法案そのものの狙いの一つが、同化政策であることも事実なのだ。国歌・国旗法などはその典型であり、日本における他民族との共生を否定しているのである。
 したがって、定住外国人に地方参政権が完全な形で与えられると同時に、民族学校差別や地方公務員からの原則排除など他民族との共生を否定している政策的諸差別が撤廃されていくことが必要である。
このこと抜きには、定住外国人への地方参政権の付与も、政治的取り引の結果にすぎなかった(創価学会員は在日韓国人にも比較的多いといわれる)と言うことにもなってしまうだろう。 (S)