「四係」   大菩薩事件元被告・松平直彦

 先日、近くの本屋で何気なく「公安警察スパイ養成所」(島袋修著 宝島社)をめくったら「第四係」の語が目にとまったので、買ってしまった。
 私が「四係」の存在を知ったのは、大菩薩や釜ヶ崎などの件で黒羽刑務所に服役し、スイッチ製作工場にいた時である。1982年頃ではないかと思う。千葉県あたりの暴力団何とか会の構成員だという年の頃私と同じ当時三十代半ば当たりの新入り(名前は忘れてしまった)と話していると、驚いたことに、自分は千葉から赤軍派のメンバーを尾行して大菩薩での集結をつきとめ警察庁長官章をもらったのだと言うのだ。そこで出てきたのが、「四係」だったのである。
 私は、それから一週間ほどだと思うが、休み時間になると彼に将棋の相手をさせながら、「面白い話」を聞かせてもらった。
 六九年当時、赤軍派の千葉のアジト(「青い鳥」)に、留守を見計らって何日も繰り返し進入し、床下の張りをくりぬいて盗聴機を仕掛けたこと。赤軍派が青砥で開催した集会には、録音装置を身につけマイクを袖口へ出すようにして入ったが、当時の録音装置は大きくて冷や汗をかいたこと。「四係」は警察庁直轄で、制服は着ないし、警察署にも行かないこと。
 かれは、その後三里塚にも関わったようで、第四インターの団結小屋の井戸に農薬を投げ込んだこと。それは、警察官が殺されたので頭に来たからだということ。警察を辞めたのは、三里塚の農民の生き様を見ていてやってられなくなったためだということ、等々。
 「四係」は、協力者(スパイ)づくり、盗聴、尾行、窃盗、封書開封など、反革命非合法活動を専門的に「任務」とする組織に他ならない。 島袋さんの本を読むと、この組織も、警察組織全体と同様、腐り切ってきているようであるが、警戒を怠らないようにしたいものである。
 なお、この八月十五日に施行された盗聴法は、警察の非合法活動を勢いづかせるものである。このようなとんでもない法律は、廃止しなければならない。