分断から統一への朝鮮半島新情勢と日米韓 


 六月の歴史的な南北首脳会談から三ヵ月近くが過ぎ、朝鮮半島を巡る情勢は目まぐるしく動いている。八月十五日に実現した離散家族の再会と、九月に入っての非転向長期囚の帰北実現にみられるように南北民衆が長年待ち望んできた統一への第一歩が始まった。分断から統一への時代の激変に対し、日米韓の対応を見ておくことが必要だろう。
 八月十五日、光復節の特別赦免が発表されたが良心囚の釈放は二十一名にすぎなかった。韓国・金大中政権の発表による国民大和合の大赦免も、運動圏の要求に応じたというよりも制度圏、既得権勢力への配慮に力点を置いたものであり、韓国民衆からは失望の声が出ている。
 またこの時期と重なるように強行された、ロッテホテル労組、社会保険庁労組のストに対する暴力的大弾圧(6・29、7・1)には、金大中政権の本質が見えてきている。篭城ストライキ闘争に対して何千人もの労働者を連行したことが、南北首脳会談後の金大中大統領のもう一つの顔であったと言えるのではないだろうか。八月二一日にストは終結をみたが、金大中政権への国際的非難が高まり、また民主労総のタン・ビョンホ委員長が決死のハンスト闘争を闘いぬいている。
 このように金大中政権は、南北統一にとっての障壁となっている国家保安法を、いまだに労働者民衆に振りかざし、統一の主導権を、韓国民衆のみならず既得権層に対しても握ろうとしている。
 在韓米軍はどうなるのか。劣化ウラン弾疑惑による住民被害が問題化されている梅香里(メヒャンリ)在韓米軍国際射爆場での演習が、一部中止された。南北会談後もかたくなに在韓米軍の存続を迫っていたアメリカ帝国主義も、演習中止によって米朝会談で主導権を握り、米軍存続の有利な状況を作るためにも、メヒャンリ問題の解決が必要であったのだ。一時は基地撤収という報道も届いたのも、このような背景があるためである。南北会談後、朝鮮半島での既得権維持を計ろうとしている米帝は、大統領選も控え必死のあがきを見せている。
 一方、第十回目の再会された日朝国交正常化交渉が八月二二日から日本で行なわれたが、日本政府側は相も変らず「拉致疑惑」なるものを持ち出し、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)側が要求している植民地支配に対する誠意ある過去清算には、真面目に対処しないことに終始していた。期日も迫って日本政府の本音が、最後に出てきた。補償問題をおおい隠すために、六五年の日韓条約で出された資金援助を持ち出したのである。過去清算を戦後五十年村山発言で終わりとし、カネで決着を付けようとしているのである。この点で日本政府が北朝鮮の主張を受け入れるなら、日韓条約そのものの見直しを韓国側から迫られることが予想されるからである。日朝交渉も結局は平行線をたどり、次回十月開催の日程が決められたに止まった。
 このように日本帝国主義は、南北首脳会談後大きく変化を見せる朝鮮半島・東アジア情 勢に対して、旧来からの政策を変更せず、いや変更できずに大きく遅れを取り、旧権益の死守に汲々としている。はたして、新ガイドラインと有事法制化策動の根拠である朝鮮半島の分断・緊張から現在への劇的な変化に対して、「拉致疑惑」(これは現在の統一気運以前に、韓国公安当局からもたらされた「疑惑」であるが)で対応しようというのであるのだろうか。
 九月二二日に金大中大統領の来日が決定したが、来日を問う民衆運動が日韓民衆連帯全国ネットワーク(日韓ネット)などによる実行委員会によって計画されている。
 来日当日、「金大中大統領の来日を問う!9・22日韓連帯集会」(東京・文京区民センター、午後六時半)が、韓国・全国連合からゲストを招いて開かれる。この集会は二つのテーマ、南北首脳会談後の統一の動きと韓国の米軍撤退運動について、また来日によって政府レベルでの合意のおそれがある日韓投資協定への反対について報告・討議し、日韓民衆の連帯を最新情勢に対応させようとするもの。
 韓国・朝鮮民衆と連帯し、自主的平和統一の実現を支援し、日朝国交正常化実現・日韓条約の見直しを勝ちとろう。 (S)