今秋 反失業闘争の前進へ

 

六月十二日より七月二日まで闘い抜かれた釜ケ崎反失業連絡会の大阪府庁前野営闘争により、大阪府に緊急対策として、九月以降、特別就労枠を拡大し、初めて地区外での仕事を確約させた。(本紙三六九号既報)
規模については一ケ月後にという事であったが、八月七日、反失連が対府交渉を行う中で、高齢者特別就労枠の拡大は三十名となった。
九四年に初めて勝ちとられた高齢者特別就労事業は、現在まで一日一五〇名の仕事枠に増加した。今年度の登録は、二八一五名である。これでは労働者一人あたり一ケ月に仕事がまわってくるのは二回がやっと。登録者のアンケート調査の中で、「せめて週一回仕事があれば」の声をうけ、就労枠の拡大を求めて闘われたのである。規模は三十名に留まったが、府に地区外での仕事を初めて出させたのは、六月野営闘争の大きな成果だった。
府は、やっと大阪市並みに、八月十日「野宿生活者対策検討会議」を設置した。また、六月九日、「浮浪者や外国人が増える中で快適な街をつくっていかないと」なる差別発言を行った太田府知事への追及は、野営闘争でも行われ、釜ケ崎への視察を表明させてきた。 府知事は、八月二十五日朝、労働センター、職安を視察、釜ケ崎地区内を徒歩で三角公園にいき、この四月より始まっているシェルター(臨時夜間宿泊所)を視察した。府知事は記者会見の中で、「府も就労対策を進めるが、国にも特別立法の制定など働きかけていきたい」と述べた。差別発言に対し、釈明と釜ケ崎現地への視察として、府知事を動かした。今後は、発言に対してのケリと仕事を出さす事で実行を迫っていこう。
差別発言に助長されるように、野宿労働者への襲撃が増えている。七月二十二日には、天王寺駅前で、小林さんという六七歳の労働者が、四人組の少年達に殴り殺された。釜ケ崎の仲間は、八月二日現地で、追悼の集いを行った。野宿者ネットワークの夜回りの中での調査では、三月から七月までの五ケ月間に、釜ケ崎周辺(浪速区の日本橋でんでんタウン周辺)の狭い地域だけで、のべ四十二件もの襲撃が確認されたと報告している。花火やエアガンによる襲撃、段ボールなどへの放火など、野宿労働者の命にもかかわるものが増えている。野宿労働者への襲撃を許すな!
八月は、釜ケ崎の夏祭りである。八月十二日の前夜祭を始めに、第二十九回釜ケ崎夏祭りが、十三〜十五日、三角公園を中心に行われた。十三日のスイカ割り、十四日の綱引き、そして十五日の相撲大会が行われ、連日、数多くのバンド演奏が行われた。十五日には、慰霊祭が六時から行われ、七時からのメイン公演は、新谷のり子さん等の公演で大いに盛りあがった。
釜ケ崎反失連は、九月から府議会、市議会への行動に入っていく。十月には昨年と同じく、全国の反失業集会・行動が東京で行われる予定である。
その中で大阪市は、七月二十七日、大阪市東住吉区の長居公園でテント暮らしをしている野宿生活者に、「仮設一時避難所」を公園内に建設し収容する計画を発表した。「市野宿生活者対策に関する懇談会」に提出された計画によれば、市立長居植物園の樹木を伐り、プレハブ平屋建て(約百平方メートル)二十棟を建てる。建物内は各棟三十二名で二段ベッドで、全体で四四〇名を収容するという。二十四時間体制で、食事は乾パンを支給する。管理運営は、市の外郭の社会福祉法人に委託する。九月の補正予算で十億円を計上し、秋には開所を目指すというものである。
この計画は、「長居公園適正化対策」と名付けられた対策の一環としてあり、地域住民からの対策要求をバックにして作られ、来年の同公園で行われる「東アジア大会」や再来年の「ワールド・カップ」に名を借りた、テントの撤去をねらうものである。プレハブの周囲は、鉄板のフェンスで囲むという。
公園や河川敷のブルーシートのテント生活は、釜ケ崎での失業の固定化の中で、釜ケ崎での就労をあきらめ、市内全域に拡散し、テントを張ったり、アーケードやビルの隙間を借りて生活を始めた者を中心としている。廃品回収を仕事に、やっとの事でたどりついた生活である。反失連では、九三年結成以降の反失業闘争の中で、野宿への対応として、とりあえずシェルター(緊急避難所)を作れと、要求してきた。センターの夜間開放や、大テント設置などの要求に対し後手の対応の中で、この四月釜地区内にやっと一時避難所(六百名規模)が開設された。大阪城や長居公園などの市内の公園でのテント村は、府市の対策の遅れの中で、府下一万五千名に及ぶ野宿労働者の生活のひとつのスタイルとして定着化してきたものである。
今回の計画は、一方で、今秋より市内三ケ所で「自立支援センター」(二百八十名)を建設し、一〜六ケ月間の間に職業訓練を受ける案とあわせて提出されている。しかし、このような対策で、就労でき生活を安定できる仲間は限られている。
今回の計画は、野宿労働者の増加、固定の現実の要求に対し数年遅れた対応となっており、長居公園の避難所も、収容(入居)なければ撤去・退去を前提とするならば排除計画そのものになる。
反失連が、六月梅雨期要求で明確に示したように、
一、生活基盤のブルーシートテント小屋などの強制撤去を行うな
一、就労対策を示せ
一、自立支援センターについて仕事の確保の見通しと半年後の対策を明確にせよ
に答えさせる中で、野宿労働者が強いられたテント生活への対策を迫っていこう。
釜ケ崎の夏が終わり、九月からの反失業の闘いが始まっている。   (大阪S通信員)