道知事 泊原発三号機増設を容認

「自然の宝庫」北海道に

      原発はいらない


昨年九月三十日、忘れもしない東海村JCOの臨界事故、被曝者の発生、日本で初めての住民避難(三十一万人)など、当時の恐怖と驚きは私たちのみならず推進してきた政府、電力資本すべてに対しても大きく影響を与えた。まさに、スリーマイル(米)、チェルノブイリ(旧ソ連)につぐ原子力事故として世界からも注目され、原発の安全神話が完全に崩壊した日として記憶されていると思う。
この事故の波紋は、北海道泊原発3号機増設計画にも大きく影響をもたらした。すでに、環境影響評価(ヒアリング)を終え、知事の同意書が出されれば建設へのGOサインが出たも当然と理解している電力業界、通産省は、残すは五月に開催される電源開発調整審議会のお墨付きをもらうのみとなっていた。しかし、世論の原発への恐怖と脱原発の流れと同時に、北海道が泊3号機への意見募集に対して、北海道電力が総ぐるみによる「賛成工作」を行なっていたことなどによって頓挫し、それも先延ばしとなってしまっていた。
そのいわく付きの泊3号機増設に、北海道知事は七月十四日、「選択せざるを得ない」として、実質的な容認を明らかにした。いわゆる東海村原発臨界事故いこう、都道府県知事が建設を認めることが初めてというシロモノである。
しかし、「電力の安定的供給」と「確実性の選択」を、容認の根拠としている限り、その破綻は明らかになることが必至である。特に、電力需要の根拠を、十年間毎年、平均二%伸びることを前提とした増設についてだが、その数的根拠とした日本電力調査委員会(CI、電力会社と重電メーカー等で構成)は今年三月八日、平均一・七%に大幅下方修正したのであり、さらには国の電気事業審議会も二〇一〇年までの平均伸び率を一・二%に抑制する方針を打ち出しているのである。
また、確実性を主張するならば、道が検討作業に入っている「北海道エネルギー・新エネルギー促進条例」の早期制定をもって、自然エネルギーに具体的施策をもって対応することが必要である。国会では「自然エネルギー促進法」の法制化が期待されている状況、法案の成立は北海道だけでも五五万キロワットの風力発電が具体化されようとしているのである。まさに、これらこそ最も「確実性」のあるエネルギーの選択であるはずなのである。
知事は、昨年の選挙公約で「道民の意向に十分配慮」として当選した人である。道が主催し、全道五カ所で開催した「道民の意見を聞く会」では、圧倒的多数(七六%)の陳述人が慎重、反対の意見を述べて終えた。その上に立って考えれば、知事の増設容認は、泊3号機道民投票を求める署名実行委員会がわずか三カ月間で七八万人の署名を集約したことを、全く無視した裏切り行為でしかない。今となって、昨年知事選挙で獲得した一六〇万票の実績の上に立ち、「自らの判断が道民の意見」というのは、まさしく官僚出身の政治家を地でいっているとしか言いようがない。
今、世界(いわゆる先進諸国)的に脱原発に向かって突き進んでいる。同じくして、脱原発は自然エネルギー普及に大きな弾みをつけている。EUでは二〇一〇年までに自然エネルギーを倍増させようとして、一〇兆円を投資し一〇〇万人の雇用を生み出そうとしている。ドイツでは、二〇三〇年までに一九基の原発の全廃を決定し、スウェーデンでは、昨年一基閉鎖したことは承知のとおりである。
これらの動きを知る道民は、今回の知事容認発言に、「日本は世界のエネルギーの流れから取り残されてしまった」と嘆く声が多数である。連日マスコミの読者の声欄に、真の道民の声と意志が掲載されている。
北海道は、自然エネルギーの宝庫である。自然エネルギーの先進地として生まれ変わるための基盤は、十分にある。特に最近有力視されてきている燃料電池は天然ガスが想定され、サハリンからのパイプライン構想が明らかになっている。また、森林や畜産の廃棄物を利用するバイオマス・エネルギーも可能である。通産官僚、一部自治体、大手ゼネコン、それに群がる族議員だけの利益誘導につながる原発には、もはや未来はありえない。
一日でも一年でも建設を遅らせ、一日でも早く稼働する原発を停止させるために頑張って行きたいと思う。 (北海道M通信員)