7・20カデナ基地包囲に27000余の最大参加

新基地阻止へ反転攻勢


 七月二一〜二三日の沖縄サミットがG8の美辞麗句を連ねて終了し、日米両帝国主義はいよいよ、名護での新軍事基地建設計画などを具体的に進展させんとしている。
 二一日に「平和の礎」を訪れた米大統領クリントンは、「沖縄は日米安保同盟のために死活的役割を果たして」いるとの再確認を強要しつつ、また同時に「この島での我々の足跡を減らしていく」と述べ、これに沖縄県知事稲嶺は「米軍基地の整理・縮小を心から望む」と口裏を合わせる答礼を行なった。こうして結局、結論は、「普天間基地の移設を始めとするSACO最終合意の着実な実施」(二二日の日米首脳会談)こそが、沖縄県民の「懸念」を解消し「負担」を軽くするものであるというペテンの宣伝であった。
 サミット対抗行動で新たな闘いを開始した沖縄民衆は、このようなウソ八百にだまされるものではない。沖縄民衆との連帯をさらに強め、朝鮮半島の統一運動を始めとするアジア・世界人民と連帯し、日米安保粉砕・米帝一掃へ前進しよう。

 
 カデナ基地包囲行動の前日の七月十九日、「基地・軍隊に反対する平和交流集会」の前段集会が那覇市・教育福祉会館でひらかれ、沖縄、「本土」、海外から約三〇〇人が参加。主催は、沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会(平和市民連絡会)。
 最初に、市民団体共同記者会見が設定され、平和市民連絡会に参加する諸団体の内十三団体が各々のアピールを英訳を添えて行なった。また来沖した海外の反基地運動の人々もアピールした。外国マスコミの記者が少なかったのは残念であったが、沖縄の反戦平和運動はこのように、自分たちの平和・人権のたたかいを世界に発信する努力を尽くした。
 つづいて交流会が、翌日のカデナ包囲へ向けての前夜祭として行なわれ、最後はカチャーシーで元気にしめくくられた。
 晴天が続くなか、いよいよ七月二十日、包囲行動の日となった。基地の全周十七・四qを完全に手でつなぐには二万五千人が必要という。このかんのサミット歓迎騒ぎは、人々の反基地への結集にどう影響するだろうか。
 午前中から、カデナ基地を一望できる「安保の見える丘」では、主催の基地はいらない人間の鎖県民大行動実行委員会によって、実施本部の設営が始まっていた。近くでは、「心に届け女たちの声ネットワーク」の女性たちが、基地の壁ぎわに無数の平和メッセージ・ハンカチを張りめぐらす作業を進めている。サミット期間中は欺瞞的に訓練を「自粛」しているカデナ基地は、へんに静かだった。お昼を回るとどんどん人波が増えてきた。
 「安保の見える丘」から嘉手納町役場までの数qが、平和市民連絡会などの担当区間である。一坪反戦地主会をはじめとする平和市民連絡会の諸団体、名護ヘリ基地反対協議会、辺野古の「命を守る会」をはじめとする東海岸住民などが陣取っていく。「本土」からの市民団体・各種運動体、ジュビリー2000を含む海外からの参加者もおおむねこの区間にやってくる。沖縄サミットそのものに反対する横断幕なども、ここでは少なくない。 午後二時、第一回目の「人間の鎖」だ。歓声があがる。この区間では多すぎるぐらい人が集まっているが、全周のどこかでは繋がらない所があったようだ。列は横へ伸びていく。二時半、二回目。三回目の三時の手つなぎで完全に「人間の鎖」は完成された。実施本部から二万七一〇〇人と発表された。
 今回は、過去二回のカデナ包囲(87・6・21二万五千、90・8・5二万六千)を上回る最大の参加となった。基地容認を迫るこのかんのサミット翼賛の攻勢にもかかわらず、沖縄民衆は基地撤去の意志を全身ではっきりと示威したのである。
 この日、ワシントンもカデナ包囲の成功を無視できず、国防総省のベーコン報道官が、「いつもより運動が盛り上がっているように見えるのは、沖縄サミットや南北首脳会談による一時的なものだ」と述べざるを得なかった。米政府は当初から沖縄開催を懸念していた。日本政府は沖縄開催で反基地を押しつぶすことを狙ったが、その狙いがうまくいっていないことは明らかだ。

 包囲行動終了後の午後四時からは、「基地と軍隊に反対する平和交流集会」が大衆集会としてひらかれ、嘉手納町役場に隣接するかでな文化センターに約一千名が参加した。
 平和市民連絡会共同代表の中村文子さんが、「アメの次に来るムチはもっと大きい。手をつなぐだけでは基地はなくならないが、あきらめることなく行動の継続を」と開会挨拶。つづいて新崎盛暉さんが主催側の沖縄報告として、中間総括的に次のように述べた。
 「言うまでもなく金持ち、覇権、軍事同盟の国家群による秩序を平和秩序と呼ぶのが、サミットの本質だ。こうしたサミットへの協力を平和貢献だとする社会的雰囲気を作るのが、沖縄サミットの特徴だ。しかしそれは、七月三日の米兵わいせつ事件への県民の抗議と、もう一つのサミット・朝鮮南北首脳会談とによって揺るがされた。基地・軍隊との共存は犯罪の容認であること、そして南北会談は基地をなくし平和をつくるモデルとなる可能性を示した。このかんの対抗サミットの運動によって、沖縄民衆の孤立感が克服された。ヤマトと沖縄の関係だけでなく世界的なひろがりの中で沖縄のたたかいが捉えられるようになり、反転攻勢が拓かれた。」
 海外からの報告の最初は、米海軍基地撤去をたたかうプエルトリコ・ビエケス島から、ルーシー・マルドナードさん(ビエケス救済・発展委員会)とカルロス・ゼノン・ブエイノさん。
 ビエケス漁民協同組合委員長のブエイノさんは、次のように報告。「アメリカは一九四〇年にプエルトリコを侵略し、島の三分の二、西側に弾薬庫、東側に射爆場を作った。わたしが四歳のとき、ブルトーザーで家は破壊された。七八年にNATO軍も参加するようになり、漁ができなくなり、海軍は、配給スタンプで生活せよと言ったが、我々はたたかいを開始した。昨年四月十九日、民間警備員デビット・ロドリゲスが爆撃で殺された。それ以来我々は射爆場に入り、演習を阻止している。今年五月四日にはFBIが占拠キャンプを急襲し、二四〇人を逮捕し、その後も逮捕が続いているが、非暴力抵抗は止むことなく続けられている。『良き隣人』なら、ウラン弾投下、レイプ、殺人はしない。わたしは約束したい、海軍がいなくなるまで射爆場に入り続けることを。」
 韓国からの報告は、駐韓米軍犯罪根絶運動本部のチョン・ユージンさん。彼女は、米軍射爆場撤去運動が現在もりあがっている梅香里(メヒャンニ)での満月まつり(七月十六日に沖縄・「本土」で同時開催)に対する韓国警察の弾圧への抗議などをよびかけた。
 続いて、フィリピン学生同盟のラケル・リベラさん。マニラの日米両大使館で本日、BAYANがカデナ包囲連帯と米軍再駐留協定破棄とを掲げて同時行動をたたかったことを報告して、大きな拍手。
 他に、台湾労働人権協会、ハワイ・ピース・ネットワーク、ドイツ平和会議の各代表も沖縄連帯を表明。七九年に英軍を完全撤退させた地中海マルタの平和運動からのメッセージも寄せられた。
 集会は日本側の諸団体の挨拶のあと、金城睦弁護士が「G8に先制パンチをくらわした。今日7・20は未来に重要な日として記憶されるだろう」と閉会挨拶。ウィー・シャル・

オーバーカムの大合唱のなか、平和交流集会は散会した。
 翌二一日は、沖縄サミットの一日目。午前中、米国大統領が四十年ぶりに来島した。
 正午、名護市・さくら公園に四〇〇名近くが結集し、沖縄サミット反対を掲げたデモが行なわれた。
 主催は、G8の身勝手を許すな!米軍基地の永久固定化をたくらむ沖縄サミットに反対する実行委員会。この実行委は、西尾市郎さん、知花昌一さんなどを呼びかけ人として5・15から行動を開始したもので、一坪反戦地主会北部ブロックなど沖縄四団体で構成。
 デモ参加者の多くは、「本土」からの諸団体・市民の合流であったが、サミット翼賛色がとくに強い名護市街をサミット反対!と元気に叫びながら、G8首脳会議会場がある部瀬名岬を臨む海岸まで行進した。このサミット反対実は、二二日の那覇市での首里城へのデモを含め三日間連続行動をたたかった。
 新基地を押しつけられようとしている名護市民・東海岸住民は、サミット期間中これにどのように対抗したのだろうか。
 ヘリ基地反対協の市民などは、ヤンバル・ピース・ウエーブ実行委員会を結成し、基地移設反対の声を広く発信する工夫をこのかん続けてきた。七月十九日には名護で独自のシンポジウムを開催、二一日にはファミリー・ピース・ウオークを市内各所で展開し、名護に集まっている内外取材陣の一定の注目を集めた。二二日には、二見以北十区の会などによる移設反対パレードも行なわれた。
 もっとも重要とおもわれる行動は、辺野古の住民団体・ヘリポート建設阻止協議会(命を守る会)が七月二一日午後に行なった、日米両政府に基地移設反対請願署名を提出せんとする行動であった。辺野古住民らは、約二万名分の署名を持って車で出発、部瀬名の万国津梁館に行き森首相へ、万座ビーチホテルに行きクリントン大統領へ、それぞれ署名を手渡そうとした。両政府の職員は対応に出てきたものの、本人あるいは責任ある代理人が出てこなかったため、渡さずに引き返した。
 その署名の内容は、辺野古への移設計画の即時中止を両政府に求めると共に、クリントン大統領に対しては「サミット来沖を機に、日米友好と沖縄県民への感謝の気持ちを込めて、在沖米海兵隊普天間基地を自国へ持ち帰ること」、森首相に対しては「日米安保が必要というなら、全国で米軍基地の負担を均等に負うこと。米軍普天間基地の県外移設を実行すること」を求めるものである。
 サミット中に渡せなかったこの署名を、八月中に「命を守る会」が来京し、東京で両政府に提出する行動が予定されている。注目し、支援していこう。
    (本社取材W)