二中総 情勢・任務 決議
                        

                                                                   2000年6月

           情勢


今日、情勢を語る場合、まずもって世界史的な視野に立ち、大きな時代の節目として今
日の何たるかを明らかにすることが求められる。だがその点については、既にわれわれは、
「共同声明」に一つの項を立て、まとめている。したがってここでは、「共同声明」の見地
を前提に、できるだけ今日の局面に絞って、情勢の特徴を浮き彫りにしていくことにする。

(国際情勢)
1、 米帝を主柱とする国際反革命同盟体制は、依然ソ連崩壊後の戦略的優勢を持続している。それは、昨年、NATOが「コソボ」を利用して域外派兵の道を開いたこと、日米安保体制が周辺事態法の成立で共同侵略体制へ再編されたことなどによって、ソ連崩壊後の世界支配体制の骨格を獲得した。現在国際反革命同盟体制の世界支配秩序の下への諸国家・諸民族の統合が、朝鮮、中東、コソボ、東チモールなどで企てられている。
2、 しかしながら、国際反革命同盟体制が機能不全化していく兆候も、顕在化し始めている。
 「コソボ」においても、アルバニア人とセルビア人の民族対立は、新たに激化し始めている。民族対立は、バルカン、中央アジアをはじめ世界的に激化する傾向にあり、これを全て抑え込むことは不可能であろう。共産主義運動の威信が低落する中で、民族主義やイスラム原理主義が帝国主義に反抗する旗印となる傾向にある。
 米帝は、チチェンの独立運動へのロシアの武力弾圧に対して、反対しながら何も出来ないでいる。また米帝は、台湾独立の動きに警戒心を高め武力統一の権利を押し出し始めた中国との間でも、軋轢を深めている。中露が、「チチェン」と「台湾」を媒介に、米帝一極支配に対する反対派としての連携を強めた。
 多国籍企業が発達し国際金融寡頭制が形成されて国際反革命同盟体制を維持するベクトルが強まると同時に、他方で世界市場を股にかけた資本の大競争が帝国主義国間の経済的対立を激化させてきている。昨年米国・シアトルで開催されたWTO会議は、米帝と欧・日帝との、また第三世界諸国政府との利害対立によって、決裂している。
 EUのオーストリアで、ネオ・ナチの自由党が国民党と連立政権を組んだ。これは、国際反革命同盟体制を足元から反動的に解体する危険を孕む動きであることから、欧米支配階級の間に激震が走った。しかし自由党の台頭は、金融独占資本の多国籍展開に奉仕する新自由主義政策を推進してきた社民・保守大連立政権の産物であり、新自由主義を支持しつつそれが生み出す労働者人民の不満を、「外国人」労働者排斥攻撃などへと導く路線の「成功」なのである。国際ブルジョアジーは、ジレンマに陥っていく。他方労働者人民の反撃が欧州に広がっている。
3、 昨年シアトルでのWTO会議に際して、新自由主義政策と多国籍企業にたいする民衆
の怒りが国際的に集中し、街頭闘争の爆発となって噴出した。それがたとえ、米帝・クリントン政権による日欧などへの牽制としてお膳立てされたものであったとしても、たたかいは、その意図を超えて爆発し、全世界に新たな時代の闘いの幕開けをアピールした。
 
(国内情勢)
1、 米帝は今日、中朝に対して圧迫と懐柔を使い分け、その世界支配秩序の内への取りこ
みをすすめており、東アジアの国際政治の主導権を握りつづけている。その中で日帝は、昨年、周辺事態法、国旗・国歌法、組対法などを成立させ、米帝の圧迫政策の側面に深く加担する形態で軍事的覇権拡張の道を歩みはじめた。
 今日政府は、沖縄・名護における新たな米軍基地の建設、国旗・国歌法をテコとした学校教育での「日の丸」「君が代」強制攻撃の強化、国会への憲法調査会設置による憲法改悪策動の本格始動など、新ガイドライン安保の下で「戦争のできる国家」を確立する政治を展開し、労働者人民に対する思想的・政治的統制力の強化を画策している。
2、 だが他方で、国家の道義的信用は、急落している。政界につづいて、行政改革が語られ出した頃から官僚機構の腐敗も暴露され、いまや警察までがその腐りきった現実を晒し始めている。国家の道義的信用の失墜は、労働者人民の国家に対する闘いを強める方向に作用するだけでなく、その自治を求める動きを促すに違いない。
 国家の財政面での統合力も、急速に衰退している。
 中央政府と地方自治体の借金総額は(2000年度末で)645兆円(国内総生産の百三十%)に達し、今後とも一層膨張する勢いにある。ケインズ主義的財政支出が自動車・家電資本の拡大再生産を支え、この資本の高蓄積が税収の膨張をもたらすというサイクルが機能した一時代ははるか昔のこととなった。中央政府は、年金、健康保険、失業保険の改悪、介護保険の導入を推進し、福祉の領域において国家責任の軽減、自己責任による格差拡大という方向へ舵を切り、労働者人民を自衛的な生活の模索へと駆り立てている。公共事業支出をテコとした利益誘導型統治システムも、財政赤字と環境破壊に対する住民の批判の高まりとに挟撃され、衰退しつつある。
 また、ブルジョア国家の学校教育システムも、「いじめ」「学級崩壊」等々の形で、機能停止への道を辿っている。政府は、個性の尊重、創造性重視、社会的活動との関連づけと地域の大人たちの参加、生涯教育など、改革の方向を語る。しかしそれらは、実際には資本に役立つエリートの育成方針に矮小化され、大多数にとっては、建前と実際の乖離をもたらしている。学校はますます、欺瞞に満ちた隔離と選別と命令服従訓練の場となり、子どもたちに対する包摂力を失っている。
 こうした国家の統合力の衰退は、支配階級の内部対立と政治的混迷を促さずにはいない。
3、資本は、失業者を増加させている。
 政府統計に現れた本年3月の完全失業者数は349万人(失業率4.9%)で、前年同月に比べ22万人増加した。野宿労働者も増加した。その深刻さは、単に景気変動に伴う一時的な現象というだけではない点にある。それは、日本資本の本格的な多国籍化、産業構造の変化など構造的変化に根ざしており、資本の賃労働支配の危機を示す時代的変化の一つなのである。
 資本は、資本の多国籍展開と国際金融寡頭制の形成、世界的規模での産業再編成と情報・通信革命の波に乗るべく、政府に規制緩和を促進させ、資本間の競争の自由と労働者に対する搾取の自由を拡大した。リストラの競演と非正規雇用の増大、賃金の引下げと差別化を加速した。資本の就労労働者部分に対する企業主義的統合力もますます弱まらずにはいない。
4、労働者人民の運動は、大きな変容過程の中にある。
 連合は、資本のリストラ攻撃に無力ぶりをさらけ出している。これと対象的に新しい労働組合運動が、ユニオン・合同労組運動の形態で、女性パート労働者など非正規雇用労働者の間に浸透しつつ、発展している。失業労働者自身の運動が組織され、発展している。
 市民運動が発展し、社会の在り方を問う動きが拡大している。自然環境保護・リサイクル問題、介護・医療問題、性別役割分業廃止問題、「外国人」労働者にたいする差別・排斥問題、原発問題、基地問題など、人が良好な自然・社会環境の中で安全に生活でき差別もなく自由に発展していく上で障害となる様々な諸問題がとりあげられてきている。
 労働組合運動と市民運動の結合が拡大している。そうした中で労働者は、労働条件の改善や労働権・生存権のための闘いだけでなく、高次の社会的諸関係を構築していく闘いの先頭にも立ち、地域社会作りに貢献していくことが求められている。
 徳島市で吉野川可動堰建設反対の住民投票が成功を収めるなど、直接民主主義が拡大する動きも強まっている。
5、自自公政権、その後の自公保政権は、米帝の世界支配戦略に貢献し、象徴天皇制を打ち固めつつ、多国籍企業のための新自由主義的改革と覇権拡張政治を展開している。しかし、どちらかというと新自由主義的な改革はゆっくり進め、利益誘導型支配システムを出来るだけ維持する志向が強い、新自由主義的改革路線の一定のゆり戻しで生まれた政権である。既得権益勢力がひたすら権力を握りつづけるために選択した公明党との連立は、不評を買っている。
 民主党は、新自由主義的改革志向の強い政党であるが、旧社会党出身者も勢力を成し、改憲問題で統一態度を出せないなど、寄り合い所帯的性格が強い。
 社民党は、戦後民主主義勢力(社会党・総評ブロック)の大部分が民主主義の旗の下に展開される現代的な覇権拡張政治に解体・統合された結果残った改良主義政党である。
 新社会党は、旧社会党の限界を総括せず、大衆性をも欠いた政党になっている。
 日共は、ブルジョア階級の混迷状況を、保守野党との連立政権形成の好機と受け止め、入閣に備えて体制擁護へと路線をシフトしている。連立政権に入れば、日米安保体制については現状凍結でよい、ルールある資本主義でいく、レーニンのブルジョア国家粉砕論そのものが誤り等々、現代修正主義路線をさらに質的に深化させつつある。この間大衆運動領域で旧来のセクト主義を抑制し、党派を超えた広範な市民と共同する態度をとりだしているのも、自公保政権と対決して民主党との連立政権の形成を押し出していく政治の一環に他ならない。
 われわれは、大衆運動の発展が必要とするならば、政党・グループ・個人に関わらず大きな共闘を追求する。とくに、労働者階級・人民の利益に誠実な社会民主主義者とは、広範に共闘する必要がある。
6、われわれは、昨年6月、労働者共産党を結成した。それは、ロシア十月革命の勝利とソ連の崩壊とに象徴される20世紀の共産主義運動の経験を糧とし、新たな時代の共産主義運動の創造へと立ち向かう力強い一歩であったと言えるだろう。とはいえ時代は、共産主義者のより一層の大団結と政治に規定力を持った革命政党の創建を求めている。時代の要請に真正面から応えていこう。

       任務

 われわれは、昨年6月の結成大会の成功とその後約1年間かけ積み上げてきた中央機関および地方組織の団結の成果を踏みしめ、労働者共産党としての力量を発揮していく段階に入ろうとしている。
 われわれの選択する次の一歩は、われわれ自身の団結をより強固に打ち固めると同時に、日本共産主義運動の混迷と分散を克服し世界史的新時代に相応しい質をもった共産主義運動を創造する一大事業を前進させるものでなければならない。着実にして創造的な方針が求められているということである。こうした見地からわれわれは、二中総方針の基調を次のように定式化したい。
 労働者共産党自身の思想的・政治的・組織的発展に力を注ぎ、共産主義運動のより大きな再編に向けた主体的打開力を培おう! とりわけ、地域的統一戦線を発展させ、地域の思想的・政治的な推進部分たりえる党組織をたたかいとることに力を入れよう! 共産主義運動の再編に向けた・地方での発掘を含む政治工作を着実に推し進め、新たな統合の展望を手繰り寄せよう!
 第二回中央委員会は、このように二中総方針の基調を立て、以下の6項目にわたる方針の実践を全党に訴える。
1、 われわれは、マルクス・レーニン主義の現代的発展を目指し、活発な理論提起と、討論状況を創出する。
 19世紀や20世紀を継承しつつ・それらの上に新たな様相をもって立ち現れてきている現代の資本主義・帝国主義の運動法則を解明しよう。ソ連の崩壊から教訓を引き出し、目指すべき共産主義社会の構想に生かしていこう。その他、唯物史観の領域における理論的確信の再構築など、マルクス主義理論の体系的発展に貢献しよう。理論誌の発行を実現しよう。
2、 われわれは、地域的統一戦線を発展させる。地域の思想的・政治的推進部分たりえる党組織をたたかいとる。
 労働運動の再建を軸として全国各地に地域的統一戦線を形成しよう。支配と隷属、差別と被差別の重層的連鎖構造と自然環境の破壊とによって成り立ってきたこの社会を、人が安心して生活でき・特定の分業や社会的地位に縛り付けられることもなく・好ましい自然環境の中で自由に発展することのできる社会へと変革していく民衆運動を、資本およびその国家の支配に抗して、地域から興していこう。女性差別、障害者差別、部落差別、民族差別などの差別とのたたかいを発展させ、住民自治を前進させよう。こうした活動を思想的政治的に推進できる党組織へ、わが党組織を高めよう。
3、われわれは、日帝打倒・米帝一掃をめざして、地域的統一戦線とその全国的連携の政治的な強化と発展に尽力する。
 沖縄・名護に新たな米軍基地をつくらせない運動を、全国各地で発展させよう。沖縄サミットに反対しよう。周辺事態法、国旗・国歌法、組対法などをテコとした反動攻勢を打ち砕こう。全ての地域で、有事立法・憲法改悪策動に反対する運動を広げよう。改憲阻止の全国的な共同戦線の形成を支持しよう。
4、われわれは、ユニオン運動と反失業闘争を重視し、労働組合運動の再建のために奮闘する。
 大量失業に抗し、反失業のをたたかいと失業労働者自身の組織と運動を発展させよう。中高齢者、若年者に対する就職差別とたたかおう。解雇、賃金・労働条件の悪化とたたかおう。ユニオン・合同労組の運動、女性パート労働者のたたかいの組織化を重視しよう。労働者が地域的統一戦線の発展と住民自治・地域社会づくりのために積極的に貢献する状況をつくろう。
5、われわれは、 党組織建設をしっかりと遂行していく。
 定期的に会議を開き、共同の認識と政治判断を蓄積・発展させ、団結を打ち固めていこう。全党員は党費を堅実に納入しよう。
 機関紙・誌、ホームページへの投稿を積極的におこない、全党的な共同で、内容の一層の充実を実現しよう。機関紙・誌の配布網を拡大し、ホームページ・Eメールのネットワークを創り出していこう。機関紙活動の改善を検討する全国活動者会議を実施しよう。
 理論政策委員会、労働運動部(仮称)などの専門委員会の活動を軌道にのせよう。
 各地方で目標を定めて、党オルグを推進しよう。広く青年・学生とむすびつき、彼ら彼女らの社会・政治問題への興味と関心を促しながら、共産主義思想を訴え、共に闘うことを呼びかけよう。青年、女性の仲間をふやそう。
6、 われわれは、共産主義運動の再編に向けた・地方での発掘を含む政治工作を着実に推し進め、新たな統合の展望を手繰り寄せていく。
 われわれは、「共同声明」において「統合に当たっては、党建設の総括の相互了解を重視しつつ、綱領上、戦術上、組織上での基本的一致をその条件とする。原則を譲らず、しかし柔軟に相違を処理し、出来るだけ大きな統合を実現する」と確認してきた。核心は「綱領上、戦術上、組織上での一致」である。その際われわれの「綱領・戦術・組織」(「共同声明」と「規約」)は、「マルクス・レーニン主義の現代的発展を目指す」という態度表明にある通り本質的柔軟性をもって、世界史的新時代に適合したより高い地平での合意の可能性を想定しつつ、提起されている。全党は、このような統合の基準をもって、統合のための協議の可能性を広く模索し、また統合のための提案に対して誠実に応じていこう。地方組織は、地方における統合の可能性を積極的に発掘しよう。
 また、共産主義諸党派・グループ・個人によっては、当面組織統合が無理でも政治的協力関係を形成することは可能だという場合もある。様々なレベルの協力関係を形成し、共産主義運動の再編・統合の流れを大きなものにしていこう。   
                                 (以上)
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