日共・現代修正主義の総選挙綱領
欧米標準の帝国主義国家へ
日共・書記局長の志位が五月二九日、日本外国特派員協会での講演において、総選挙で党として何を訴えるかについて語っている。その基調は、「日本の政治のゆがみをただす」というものであった。何を標準に想定して「ゆがみ」をただすとしているのかと言えば、それは欧米帝国主義諸国なのである。彼は、五つの「ゆがみ」について、以下のように語った。
「政治のゆがみ」については、森の「神の国」発言を指摘し、「戦前体制への郷愁がいまだ抜けきれない」流れの残存を批判する。それは、戦後の現在の国家体制を「ゆがみ」から救い出し、欧米諸国のような現代的覇権国家への道を掃き清める役割を引き受けます、という意志表示なのである。
「経済のゆがみ」については、日本の資本主義は「ルールなき資本主義」だと指摘し、批判する。しかしその真意は、労働者人民の雇用と生活の防衛にあるのではない。それは、「ルールある資本主義」なら良いと考えてますとの見解表明にあり、ブルジョア階級の頭目たちに向けた、手を結びたいとする意志表示なのである。志位は、「関西財界のリーダー」と懇談し意気投合したと、うれしげ語っている。
「財政のゆがみ」については、「巨額すぎる公共事業を大幅に縮減して、予算の主役をくらしと社会保障に移していく、その流れの中で財政再建をはかっていく」と改善策を提案する。この提案も、ブルジョア階級の主流の意向に何ら抵触するものではない。
「安保・外交のゆがみ」については、一例として「サミットで、沖縄基地のあまりに異常な現実について、世界の首脳とマスコミに訴え、その解消を訴えたい」との態度を示す。だが今回のサミットは、まさに沖縄米軍基地の存在を沖縄内外の人民に受け入れさせるために、沖縄で開催されるのである。その沖縄サミットに日共は賛成している。実際志位は講演の中で、沖縄米軍基地の撤去を語らず、慎重に米軍の「傍若無人と横暴勝手」だけをとりあげた。日米安保の現状凍結論を実践し、独占資本家たちに日共の政権参加を認めてもらおうという訳である。
「教育のゆがみ」については、「受験中心のつめこみ教育、競争教育、子どもをふるいわける教育」をとりあげ、特に問題だと批判する。だが文部省でさえ、次世代を再生産するこの領域で進行している支配秩序の破綻に関して、「ゆがみをただす」レベルで改善できる問題だとは考えていない。支配階級から安心を買おうとするあまり、ブルジョア的改革の見地からしてもお粗末になりすぎた訳である。
日共が民主党などによる当面の連合政権に参加する可能性は全く無いとは言えない。それが、今回の総選挙の隠された焦点の一つだと言って良いだろう。日共は、支配階級に政権参加の許し得るため、総選挙綱領の作成おいても大いなる苦心を払ったのであった。(M)