反動石原の即刻辞任を


 都知事・石原慎太郎が四月九日の陸上自衛隊第一師団の式典で、「不法入国した三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返している。大きな災害が起こった時には大きな騒擾事件すら想定される。こういうものに対処するために皆さんの出動を」などと挨拶して、在日朝鮮・韓国人、在日中国人、外国人(移住)労働者への差別・排外主義を扇動し、自衛隊による武力弾圧をけしかけた。
 これは、公職にある者の暴言としては、戦後最大級の凶悪犯罪発言である。当然ながら在日諸団体、移住労働者、日本市民、内外から抗議・謝罪・辞任の要求が次々と突き付けられたが、石原は直後にも「凶悪犯罪は全部三国人」「必ず騒擾事件が起きる」とデマを続け、確信犯ぶりを示し、十九日に都議会民主党に「三国人という不適切な言葉は使わないようにする」というだけの文書回答をしたのみで、暴言を撤回しないまま全く居直り続けている。
 さらにはその後も、独誌シュピーゲルのインタビューで「中国は日本の最大の脅威であり、いくつかの小国に分裂するのが最も良く、日本はそうした展開を力一杯促すべきだ」とわめくなど、極右・軍国主義・ファシストの暴言を続けている。
 政府は、「公職にある人が、こういう言葉を使うのは適当でない」(十二日・森首相)と言うのみで問題を矮小化し、犯罪者・石原の居直りを放置している。
在日本朝鮮人人権協会は四月十四日、石原暴言を人種差別撤廃条約違反として国連に通報し、調査・再発防止を要請した。人種差別撤廃条約第四条C項は、「国または地方の公的機関が人種差別を助長、扇動すること」を国際法的犯罪としている。人権(自由権)規約も、「差別、敵意または暴力の扇動となる民族的、人種的または宗教的憎悪の唱道」を加盟国が犯罪とすることを義務づけている。
 兵庫県の在日三団体(総連兵庫、民団兵庫、神戸華僑総会)は四月十七日、阪神淡路大震災での実際をふまえつつ連名で抗議声明を提出した。その声明では、石原暴言を「七十七年前の関東大震災直後に起きた在日朝鮮人、在日中国人に対する虐殺事件を恐怖の思いをもって想起させないわけにはいかない」と糾弾し、阪神淡路大震災では「多くの朝鮮学校や神戸中華同文学校が避難してきた日本の市民のためにも開放され、お互いに励まし助け合」った事実を無視し、「一貫して他民族を敵視し、…民族間の対立を煽ろうとしている」と厳重抗議している。
 今日、関東大震災での大虐殺は、3・1独立闘争を弾圧した直後の日帝軍部・警察がその治安観点からデマの発生元となったことが解明されている。石原が、当時の日帝支配者と同じ思想構造を固守していることは明らかである。
 四月十二日、日本の市民団体である移住労働者と連帯する全国ネットワークは声明を出し、「30万人とも言われる正規の在留資格を持たない外国籍住民を含む100万人以上の移住労働者とその家族」への差別発言の撤回・謝罪と、辞職を要求した。移住労働者たちは、全国ネットとともに四月二十日、都庁抗議行動をたたかった。
 石原は、「不法入国した」を共同通信が省略したと言って責任転嫁を図ろうとしたが、つまり彼は、不法入国・不法在留者は武力弾圧の対象であるとする確信犯である。こんなことを言うのは世界でも石原だけである。オーバースティなどの国際的現象は現代資本主義の在り方から不可避に出てくる問題であり、弾圧によって解決することはできない問題である。石原暴言は、ブルジョア行政としても時代錯誤・自己矛盾であるにせよ、移住労働者の労働権・生活権を直接に脅かしている点で極めて悪質である。
 また、移住労働者全国ネットの声明は、「来日外国人犯罪が減少しているという事実」に石原が基づいていないことを強調している。声明によると、最近六年間の警察庁統計では、日本全体の刑法犯検挙者数は増加しているが、「来日外国人」の刑法犯検挙者数は九三年をピークに毎年減少しており、その全体比は一〜二%に過ぎず、凶悪化もしていない。石原暴言後、これを援護するかのように、昨年度は不法滞在者の犯罪が増加・凶悪化したとの警察庁統計が出されたが、むしろ問題は統計評価の以前に、何か異質なものはあぶないとする差別排外主義的情緒が不断に煽られている点にあるだろう。石原のようなデマでも、世間に浸透していく危険を過小評価できない。
 四月二十一日、「石原やめろ ネットワーク」が結成された。暴言直後から抗議の先頭に立ってきた辛淑玉さんを始め、朴慶南、梁石日、石坂啓、大谷昭宏、佐高信、松崎菊也、宮崎学らの各氏が共同代表である。二十八日付けでネットワーク賛同の募集を開始した。「発言を撤回し、謝罪、辞任しない限り、リコール運動も辞さずという決意」で、石原を都知事辞職に追い込むとする。まったく同感である。(「石原やめろ ネットワーク」の連絡先は、TEL:03−5283−0660 FAX:03−5283−0665)
また最後に石原暴言で見落としてならない点は、彼の式典挨拶が、自衛隊は平和憲法などは無視して国家権力の前面に出よ、という基調であることだ。
 「アメリカは、あのいびつな憲法に象徴されるようにこの日本の解体を図って、…その結果が今日露呈されている」、「皆さんがこういった状況に決して屈することなく、一旦緩急の時に崇高な目的を達成されるために」「治安の維持も大きな目的として遂行していただきたい」という憲法蹂躙発言である。かっての三島由紀夫は一民間人であったが、石原が都知事という公人であることは重大な違いである。この基調のなかに「三国人」発言があり、九月三日の都「防災」訓練への自衛隊三軍の参加要請が結びとなっているのである。
 このような男が知事であり続けることは、われわれ都民にとって耐えられない恥辱であり、また極めて危険なことである。昨年、都民の少なからずが彼の役人答弁でないスタイルに騙されて一票を入れたが、彼のはっきりした言動なるものの本質が誰の目にも明らかになったのである。
 石原を即刻辞任させ、9・3の自衛隊出動を中止させよう。 (都民K)