天日手黒目漆


 木から採取したそのままの樹液は荒味漆、それの木クズなどを濾しとっただけのなまのうるしを生漆(きうるし)と呼び、乳白色をしています。
 この生漆から徐々に水分を除き透明度を高めていく作業を黒目(くろめ)、攪拌により、成分を均一化し光沢を調整する作業をナヤシといいます。
 黒目とナヤシを施して精製された漆は、透漆(すきうるし){飴色の漆}となります。
 黒目には大きく分けて2種類の方法「天日に当てながら全てを手作業で行う天日手黒目と火を用いて機械で攪拌する機械黒目」があります。
 当店で上塗りに使用している漆はすべて天日手黒目で精製した漆を使用しています。
 天日手黒目で精製した漆は機械黒目に比べて肉持ちがよく、また艶も抑えられ、しっとりとした肌触りの塗りに仕上がります。
 この漆の精製、ナヤシ・黒目はたいへん繊細な作業で、作業のそばからなかなか離れることはできません。特に、精製中の温度の温度が上がりすぎると、漆の中の酵素が破壊され、非常に乾きの遅い漆になってしまうので、温度管理にはたいへん気をつけます。


8:00
今年も古代あかね塗りに必要な手黒目漆精製の季節になりました。
この時点で、漆を桶から出して10分程経過した状態です。まだまだ乳白色です。

気温18℃、漆温23℃
9:30
1時間半ほど経過しましたが、ほんの僅か茶色掛かってきました。

気温20℃、漆温28℃
11:00
さらに1時間半程経過、上の写真と比べると茶色が濃くなってきましたが、まだまだこれからです。

気温25℃、漆温36℃
12:30
更に1時間半経ったところです。大分茶色になってきました。ここから劇的に漆の色が変化していきます。

気温27℃、漆温40℃
14:00
ほぼ出来上がりに近い状態です。ここでガラスの板に薄く塗って透明度を確認します。その結果、後1時間ほどで完成と判断しました。

気温27℃、、漆温47.5℃
15:00
出来上がり直前です。ガラス板でのチェックでも良好で、良い漆が出来ました。

気温26.5℃、、漆温47℃
黒目終わり
黒目を始めてから約7時間、ようやく出来上がりです。見た目は黒ですが、細かい泡になると茶色をしています。
漆桶に目の粗い布を取り付け、地面に漆が垂れても拾えるように板を敷きます。
特製のお玉で一すくい、一すくい濾し具合を見ながら移していきます。右手でお玉、左手で移すときに下に垂れないようにするための特製の板を持っています。 手前の人は先の丸まった板で漆桶の上を攪拌し、布の目詰まりを防いでいます。
ある程度お玉ですくい終わったら、1滴も残さないようにへらを使ってかき集めます。
フネからすべての漆を移し終わったら、濾し馬と呼ぶ道具に漆が染込んだ布を取り付けます。
濾し馬を使って布を絞り、また、特製の二股の道具を使って漆を搾り出していきます。
最後はやはりヘラを使って最後の1滴まですくい取り、漆桶へ移していきます。
やっと全過程の完了です。
この後、冷暗所へ移して、3〜4日間毎日攪拌して細かい泡を消していきます。
その後蓋をして1年程寝かします。