準要保護に対する就学援助の国庫補助金廃止。文科省、制度継続を答弁
2005年度より、「生活保護法第6条第2項に規定する要保護者に準ずる程度に困窮している者で
政令で定めるもの」(=準要保護)の国庫補助が無くなり、
実質的に国庫補助があるのは要保護の修学旅行費に関するものだけとなり、国からの補助金が大きく削減されました。
しかし、準要保護に対する就学援助制度が廃止されたわけではありません。
地方交付税での財源措置もされ、国会答弁や通知文書で就学援助が確実に実施されるよう示されています。
◆2005年3月の法律改正で何が変わったのか。
◆就学援助制度に維持に関しての文部科学省の考え。
を紹介します。
何が変わったのか?
この就学援助をめぐっての法律は何がどう変わったのでしょうか?。
国会ではどんな議論がされたのでしょうか?。資料を整理します。
就学困難な児童生徒への援助は学校教育法第25条(中学校準用第40条)で決められています。
学校教育法
第25条 経済的理由によつて、就学困難と認められる学齢児童の保護者に対しては、
市町村は、必要な援助を与えなければならない。
その規定を受けて
○就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律
○学校保健法
○学校給食法
で市町村に対する国の補助金が規定されていました。
これらの法律が2005年3月に改正され、国庫補助が大幅に削減され一般財源化されました。
あわせて、事務職員の加配との関係で「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」
も改正されました。
改正された法律
○就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律
(国の補助)
第二条 国は、市(特別区を含む。)町村が、その区域内に住所を有する学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第二十三条に規定する学齢児童又は同法第三十九条第二項に規定する学齢生徒(以下「児童生徒」という。)の同法第二十二条第一項に規定する保護者で生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第六条第二項に規定する要保護者であるものに対して、児童生徒に係る次に掲げる費用等(当該児童生徒について、同法第十三条の規定による教育扶助が行われている場合にあつては、当該教育扶助に係る第一号又は第二号に掲げるものを除く。)を支給する場合には、予算の範囲内において、これに要する経費を補助する。
一 学用品又はその購入費
二 通学に要する交通費
三 修学旅行費
改正前はこの条文で援助の内容と準要保護の規定がされていました。しかし、改正により、事実上要保護の修学旅行費のみが国庫補助の対象となりました。
■新旧対照表
○学校保健法
学校保健法施行令に定められた疾病に対しての地方自治体の援助が定められています。改正後も準要保護者に対する援助の規定は残っているものの、国の補助は要保護者のみとされました。
■新旧対照表
○学校給食法
改正前はこの条文で準要保護の規定がされていましたが、
改正により要保護者への援助への国庫補助のみとなりました。
ただし、生活保護の教育扶助において学校給食医費に関するものが行われている場合は対象となりません。
■新旧対照表
○公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律
事務職員の加配の規定が変わりました。
■新旧対照表
国会での議論
教育委員会への通知文書
制度の改正を都道県及び都道府県教育委員会に通知した文書の留意事項に、
「……規定により、地方公共団体において適切に実施されなければならないこととされている。
また、これらの事業に係る財源については、所得譲与税として税源移譲されるとともに、
所要の事業費が地方財政計画に計上され、地方交付税を算定する際の基準財政需要額に算入されることとされた。
したがって、今後ともこれらの事業が確実に実施されるよう、法令の趣旨及びこれらの事業の趣旨等を踏まえ、
予算の確保及びその適切な執行がなされるよう御留意いただきたい。」
と明記している。
■文部科学省通知 17文科初第52号(2005年4月1日) 抜粋
【補足】
国会答弁、通知文書に「所得譲与税」として税源移譲されると述べられていますが、
2007年実施の所得税から住民税への税源移譲で「所得譲与税」は廃止されました。