児童図書の選択は子どもの手で

            久嶋 和紀(和歌山・和歌山市立吹上小学校)

 

 本離れは子どもの責任ではない

 現職教育で、「今の子どもは本を読まない。何が原因なのか。図書室の本の貸与も減っている。」と論議になったことがありました。本離れはマスコミでも取り上げられていましたが、その論調は、家庭や子育てにその原因を追及していることがほとんどでした。

 職場での話し合いの中で、「改訂の度に指導内容が低学年化している。」「国語の教科書から文学教材が減らされている。」「経済的余裕のない中で、親が子どもとゆっくりと向き合う時間が減ってきている。」などの原因が出されてきました。読み聞かせを実践している教師からは、「読み聞かせの時の子どもの目の輝きから、本が嫌いということはないのでは。」ということも出されました。そのような状況の中で、「学校として何ができるのか。」という疑問が出されました。そして、「本(良書も悪書も含めて)が持つ魅力に触れたいと思う、本を読みたいと思う力(あえて力と呼ぶ)を取り戻すために、身近なところからとりくみをすすめよう」ということになりました。

 私は、子どもの「本を読みたくなる『力』」を呼び戻すためには事務職員として何ができるのか、ということを考えました。

 その当時、家庭で子どもと一緒に過ごしているときには、よく本読みをさせられていました。「次これ読んで」「次はこれ」と、止めどない要求に閉口したことは毎日のような出来事でした。でも、本を読んでいるときの目の輝きなどをみていると、「子どもは本来本が好き(自分で読むということではないが)なんだ」という確信を得ることができました。

 

子どもの本は子どもの手で

 公費の児童図書予算を執行するために、納入業者と話をつけて、3日間児童図書の閲覧期間を設けました。学校の図書室に、児童図書を並べて、低中高学年それぞれ1日閲覧しました。閲覧日には、各学級1時間図書の時間を利用して閲覧をすることにしました。そして購入して欲しい本を5冊選んで、購入希望調査を行いました。放課後希望で出された本のベストテンを壁ニュースに書いて張り出し、雰囲気を盛り上げました。3日間購入希望を集約し、模造紙に書いて職員室前に張り出しました。次の日、「私の本出ている」「あの本買って欲しい人多いなあ」「この本人気あるで」など、子どもからの反響の声が相次ぎました。

 閲覧期間の3日間が終わって、次に購入計画をたてました。子どもの希望だから、いわゆる良い本ばかりではありません。どうするのかずいぶん悩みましたが、せっかく読みたいという気持ちの表れだからということで、購入希望ベストテンの本はすべて購入することにしました。また、本が納入されるとすぐに、本の到着を知らせる壁ニュースを貼り出しました。やはり子どもの希望で購入した本は、図書室に返されるとすぐに借り出されるという状況が続き、図書室の利用が増えたことは言うまでもありません。

 学校事務職員として予算執行する中で、子どもの健やかな成長を保障するということにつながったかどうかわかりません。しかし、担当者が自分の好みで、予算を消化するために(言い過ぎかもしれませんが)購入するのと比べると、少しは制度研がめざしている学校事務に迫れたかもしれません。

 

「子どものための学校事務64号」より    


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