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第26回教育財政シンポジウム報告


「子育てと青年の未来 −学ぶこと、生きることの危機の中で−」
 
 
財政シンポ写真  2012年12月8日(土)、東京の東洋大学を会場に、 「子ども・青年の未来と教育財政 −学び・育ち・働く権利が生きる社会を−」をテーマに第26回教育財政シンポジウムが開催されました。
 
 
 
パネラー発言
    福島県の学校事務職員
 勤務先は、他の中学校に間借りして学校再開した。
 大震災・原発事故から1年半たった今でも、子どもの作文には肉親や家を失ったつらさが綴られている。
 徐々に避難先から生徒が帰ってきているが、無気力や荒れが気になる。「自分たちはどうせ(被曝の)モルモットだ」という言葉。
 強風の日には空間放射線量は上がってしまう。常に、その中で暮らす息苦しさ。 就学援助申請書には、家と職を失ったり、三重生活を余儀なくされるなど困難さ が表れている。学校現場で子どもに寄り添うことができるよう、教職員をもっと配置してほしい。

    全国生活と健康を守る会 会員
 生活保護での高校進学費用について、2004年に最高裁判決(学資保険裁判)があり、支給されるようになった。ただし、生業扶助であって教育扶助ではない。大学進学は認められない状態。
 会が行った就学援助の調査では、新たに加わった就学援助の費目〔生徒会費、クラブ活動費、PTA会費〕について、多くの自治体が「実施困難」と回答している。

    国民のための奨学金制度の拡充をめざし、無償教育をすすめる会 会員
 日本政府は、高校・大学の教育を段階的に無償にすることを定めた国際人権規約の条項の留保を9月に撤回した。  文部科学省は2010〜2012の3年間にわたり、高校生向けの給付型奨学金を概算要求に入れたが通らず、2013年度に向けては要求していない。 大学生対象の所得連動返済型の無利子奨学金については、申請制であり、アナウンスされていないことから利用が広がっていない。  高校・大学の無償実現とともに、義務教育段階での無償教育の追及も必要。


 
 
 パネラーの発言に続いて討論を行いました。
 
    討論での発言
■ 実際に奨学金を利用している大学生から、学費と生活費を奨学金とアルバイトで負担している厳しい実態。
■ 福島県の学校事務職員から、「避難している」という高いストレスの下で生活せざるを得ない子どもたちの気になる状況や、被曝の恐れ、検査への負担・不安など、子どもたちを覆う厳しさ。
■ 社会人になってからのしかかる奨学金返済の重さ、そのような奨学金でも借りなければ修学できない矛盾。
 
 
 
 最後にまとめの発言がありました。
 
    まとめ
 教育政策が、教育の効果を公的なものと私的なものに分け、「私的効果の部分は本人負担すべき」としてきたことに対し、教育は社会の公共的なものという思想を実現していくべき。
 
 



     「子どものための学校事務」120号に報告を掲載しています。