座席指定表示器

 名鉄パノラマカーの三種の神器は『前面展望』『音楽ホーン』『デジタル速度計』でしょうが、座席特急では『座席指定表示器』『黄色標板』『赤シート』が黄色標板時代を象徴する三種の神器ではないでしょうか。
 この『座席指定表示器』は座席指定特急が序々に増えてきた昭和44年製の5次車で採用されました。ところが、この5次車では消灯時にも文字が見えてしまう欠点があったため、6次車からは外側に乳白アクリル板を付けることで対処しましたが、明るい所では見え難いという欠点が残ってしまいました。
 8次車では前面フィルタに赤アクリル板と緑アクリル板を組み合わせ、文字板に乳白度合いの薄い乳白色アクリルを採用することで6次車のような点灯時における見難さの改善と消灯時における消滅度合いの両立を計りました。またこの8次車では将来の連結化に備えて号車表示が可変式に変更されました。
 9次車は一見すると8次車と同じに見える表示ですが、文字板が赤色アクリル板に変更され、消灯時対策の乳白色アクリル板がパンチングメタル板に変更されました。また文字の間隔を詰めることで蛍光灯の当たらない部分をなくす改良も加えられました。9次車では座席指定表示とは別に号車表示のみの点灯が可能であったので、一般列車での運転の際も号車のみが赤く光っていました。
 なおこれら座席指定表示器は昭和56年1月1日の使用停止後はしばらくそのまま放置されていましたが、昭和60年の後半以降から順次『赤板』で塞がれてしまい消滅しました。
 赤く塞がれた座席指定表示器の窓はその後約20年間放置されてきましたが、2005年より鉄板で完全に塞いだ車両も出てきました。

7000系5次車(消灯時)
最初に座席指定表示器が付けられた5次車では写真のように消灯時にも文字が見えてしまう欠点がありました。
構成は赤色アクリル板の文字以外の部分を裏から白エナメル塗料と黒エナメル塗料で塗装したものに裏から蛍光灯で照らすようになっている。

7000系5次車(点灯時予想図)

7700系4連組成車
写真は7700系のものですが、7000系6次車・7000系7次車・7500系6次車・7300系も同様の構成です。
外側の1枚目に白アクリル板を使用することで、消灯時に文字が見えることは無くなりましたが、明るい所では見難くいという新たな課題が残りました。


7000系7次車消灯時(7044)
薄っすらと黒い影のように『座席指定 4』の文字が読めます。7000系6次車や7700系では消灯時に文字が判読出来ることはありませんでした。
鉄道ファン誌No.253(82年5月号)の鳴海で撮影された白帯車紹介の形式写真(7041編成)からはカラー写真で座席指定表示器の文字が判読出来ます。あの写真では文字部分が灰色、文字以外の周りがピンク色に見えます。

使用停止以降に7000系7次車のみが改良??(想像図、5次車写真よりペイントで着色)

パノラマカーの大研究家M氏から昭和55年5月撮影の7000系7次車点灯の写真を見せていただきました。その写真は6次車同様に文字が点灯していました。私が消灯時に実車確認した『文字以外の部分が薄っすらとピンク色に見え、更には文字部分が黒っぽい影のように見えた』や『鉄道ファン誌鳴海7041編成白帯車形式写真』は座席指定表示器の使用停止後のことです。このことから座席指定表示器が使用停止された昭和56年1月1日以降の時期に7次車のみがなんらかの理由で「文字の周りが点灯」するように改良された疑いが濃厚になってきました。


7500系(車番不明)
昭和60年頃の撮影ですが、7500系の内1両だけが、6号車海側豊橋寄りの座席指定表示器の白アクリルが無い状態でした。

7700系2連組成車
7700系2連組成車は他編成との連結を考慮して号車表示が無い。

7000系8次車AoNamazu氏撮影
8次車の点灯写真をAoNamazu氏が発掘してくださいました。一般には完璧な仕上りと思われる8次車ですが、蛍光灯のソケット部の影響で「定」の字の右1/3が擦れています。また「指」の字も9次車とは微妙に書体が違っています。

「座席指定」の文字全体が号車表示に比べてボケて見えるのは文字板に乳白色アクリル板(裏面に黒抜き)を使用している影響です。また文字板と号車表示は別ブロックで構成されていますが、号車表示の数字が座席指定の文字よりも手前に見えるのは号車表示に乳白アクリル板が介されていないからなのでしょう。

7000系9次車タイプ
9次車をイメージして上記5次車写真上にペイントを使って描いてみました。種写真が5次車のため窓押えゴムの形状が実車とは異なりますが、悪しからずご了承下さい。
実際の9次車点灯時の写真はPRESSE EISENBAHN社刊『レイルNo.10』をご覧下さい。

該当車種登場時期構成文字表現方法その他
7000系5次車44年4月赤透明アクリル文字を裏から0.5mmエッチング
文字以外を白エナメル塗装。遮光のためその上に黒エナメル塗装
7000系6次車45年4月外側:乳白色アクリル
内側:赤透明アクリル
赤透明アクリル板の前面に文字を0.5mmエッチング。
遮光のため文字以外の前面に黒エナメル塗装
7500系6次車45年4月外側:乳白色アクリル
内側:赤透明アクリル
赤透明アクリル板の前面に文字を0.5mmエッチング。
遮光のため文字以外の前面に黒エナメル塗装
7000系7次車46年7月外側:乳白色アクリル
内側:赤透明アクリル
赤透明アクリル板の前面に文字を0.5mmエッチング。
遮光のため文字以外の前面に黒エナメル塗装

昭和56年1月1日の使用停止以降に6次車とは逆に文字部分の前面に遮光のための黒エナメル塗装をし、文字の周りが点灯するように改良をした疑いが濃厚。
7043編成は昭和59年頃4連連結化されましたが、既に使用を停止している座席指定表示器の内5・6号車の表示が3・4号車表示に取り替えられていました。
7300系46年10月外側:乳白色アクリル
内側:赤透明アクリル
赤透明アクリル板の前面に文字を0.5mmエッチング。
遮光のため文字以外の前面に黒エナメル塗装
2連組成車には号車表示なし
7700系48年3月外側:乳白色アクリル
内側:赤透明アクリル
赤透明アクリル板の前面に文字を0.5mmエッチング。
遮光のため文字以外の前面に黒エナメル塗装
2連組成車には号車表示なし
7000系8次車49年6月外側:赤透明アクリル
内側:暗緑透明アクリル
文字板:乳白色アクリル
裏面に文字を0.5mmエッチングし、文字以外を黒塗装。 書体をJIS丸ゴシックに変更。号車表示が可変式に
7000系9次車50年6月文字板:赤半透明アクリル
数字部分:赤透明アクリル
文字板外側のフィルター用アクリル板の代わりにパンチングメタルを使用
裏面に文字をエッチングし、表面の文字以外を黒塗装。
書体はJIS丸ゴシック。
文字幅・文字間を8次車より17mm詰めることで蛍光灯の当たらない部分を無くす。
「指」の字が8次車とは微妙に異なる。
号車表示のみの単独点灯が可能に。
パンチングメタルは点灯時の外光反射防止を狙ったものと思われますが、形状は不明

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