階層性テクスト
HIERARCHIC TEXT
1995 Furuya Toshihiko


 電算機によって合成された平仮名文字による意味のない文章が書かれた百枚の紙が壁面に配置される。全体は、上下二重の階層構造を構成している。中央の行では、平仮名文字の中の使用される文字の範囲が、五十音順の体系にしたがって横十枚に分配されており、上下各々十段階の混合を経て、頂点ですべての文字が混ぜて使用されている。一枚一枚の文章は、形が文章に見えるように句読点などの様々な規則を組み込んで完全に機械的に作られたものである。ここには、仮名文字という日本語の文字に特有の体系の視覚的構造が現れる。
 平仮名文字は、音の系統に従って十に分類できる。文字の組み合わせによってできる文章には、文字の範囲というものは特定されていない。実際には、どのような文字が使用されても構わないし、また使用されなくても構わない。とりあえず、この十の分類の内部から、平仮名文字全体へと文字の範囲を順番に広げてみると、文章の成立にとって文字の範囲はあまり関係がないことがわかる。