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KOF
〜冷たい戦場〜

 

 

少女は一人だった。
微かに硝煙の臭いの漂う戦場で、一人物陰に身を潜めていた。
それは、彼女の育ての親でもある上官からの指令、謎の組織ネスツのエージェントが現れたという情報の確認と、もしネスツに何らかの係わりがある人間がいた場合の捕獲の為であり、普段行動を共にしている二人、ラルフとクラークは研究所後を調査している。
その間、三人の中で最も夜目が利き、暗闇での行動を得意とするレオナが周辺の見張りを担当する事となった。
その青い髪も、月明かりの中では昼ほどは映えず、木々の中でその姿を捉えるのは困難だろう。
だが、レオナは今、何者かに狙われていた。手には通信機があるが、それに通信を入れたと同時に殺されるだろうという事は分かっている。
そして、銃が通用するような真っ当な相手でない事も。
だからレオナは手を真っ直ぐ伸ばし、手刀の形で構える。
これは、彼女が養父、ハイデルンより教わった暗殺術の構えだ。
その手刀は、達人が振るう日本刀よりも速く、鋭く、鉄さえも易々と切り裂いてしまうだろう。

(・・・・・・・どこ?)

曖昧な殺気の主の位置を測りかね、目だけで敵の位置を探る。
と、その瞬間、視界の端に青い残像を捉え、慌てて後ろに飛び退った。

キンッ

「あ〜あ、外れちゃった」

金属が触れ合うような音と共に、能天気な声が重なる。

「あなた、クーラ!?」

普段、あまり表情を変えないレオナの顔が強張る。
それは、目の前にいる、十代半ばの容姿に、レオナよりは低いが、ほっそりとした長身の、色素が薄すぎる少女がそれほどの危険人物であるからだった。
改造人間、ついでに言えば人造人間なのかもしれないが、少女、クーラ・ダイアモンドは、その容姿に似合わず、圧倒的な戦闘能力を持った存在であり、敵だった。

「ダイアナの邪魔をするからいけないんだよ、だから、死んでもらうね」

緊張感の無い声に、人一人楽に殺せる氷をナイフのように纏った手刀がレオナの頚動脈を狙って放たれる。

「くっ」

ギリギリでかわせたが、その髪が一束持っていかれる。

「むぅ〜、避けないでよぉ」

(あれが当たったら終わる)

今、まさに死にかけた直後だというのに、レオナは冷静に間合いを取り、クーラの次の手を予測する。

「それじゃー、ひゅう」

口元に手を当てて、軽く吐息を吹きかける。
すると、それが数多の氷の刃になり、数瞬前まで、レオナがいた場所を襲った。

「くっ」

わずかに掠ったのか、左腕の感覚があまり無い。その事に舌打ちすると、未だ技を放ったままの姿勢のクーラに向かって走り出した。

「はっ」「やあっ」

レオナの手刀と、クーラのワンインチパンチが交差し、二人とも吹き飛ばされる。

(内臓には異常が無い、骨折も大丈夫)

だが、それは相手も同じらしく、特殊繊維で出来た戦闘服がばっさり切れただけだった。
そこから、彼女の操る氷よりも白く、冷たそうな肌が覗いている。

「今度は、外さないよ」

駆け出すクーラ、青い髪が後ろに流れ、矢のように一直線に走ってくる。

(動きが単調よ)

自分の間合いに入る一瞬前、その手刀を縦に円を描くように放つ。

「わっ!!」

それが当たると思った瞬間、慣性を無視したようにクーラの体が横に滑って、必殺の手刀をかわす。

「お返しっ!!」

アッパーのように斜め上に金色のグローブに包まれた拳を掲げ、そのまま斜め上に踏み切る。

「あっ」

その一撃は、レオナの身体には傷を作らなかったが、その服を引き裂いていた。

「これでおあいこ、だね」

嬉々として言ってくるクーラを、思わず露出した胸を隠しそうになるのを自制して、睨み付ける。

「あなた、こわい」

クーラの目付きが少し険しくなる。

「ふっ」

待っていては勝てないと判断したレオナは、素早く、低く構えて走り出す。

「きゃっ!!」

そこから繰り出された連続攻撃を、氷の盾でやり過ごし、もう一度ワンインチパンチで反撃しようとするクーラ。

「何度も同じ手は喰わない」

今度は何とかかわし、クーラの腹に強烈な膝を叩き込む。

「こほっ、っや」

追撃から何とか逃れる事の出来たクーラは、間合いを取って体勢を整える。
一方のレオナは、氷を操るクーラの技のせいで、全身の感覚が薄れ、このままでは長期戦は無理のようだ。

「あなた、きらい!!」

子供が拗ねた様な口調のクーラ相手に、今の攻撃で仕留められなかった事を心底悔やむレオナ。
一方のクーラも、隙の無いレオナに、積極的に攻撃に出れないでいる。

「そうだっ!!」

とてとてと、普通に歩いてくるクーラの考えを図りかね、更に、その運動能力なら迂闊に攻撃してもかわされる事は十分予測可能だったので、動けないでいた。

「こうやるとね、ダイアナもフォクシーも喜ぶんだよ」

ごくごく無造作に、その霜で覆われたグローブをレオナの胸に押し付ける。

「っあ」

その冷たさに、思わず胸を庇ってしゃがみ込む。

(しまっ・・・)

「あれぇ、変なの、冷たすぎたのかな」

そのグローブを見つめ、自分の身体に押し付けてみる。

「あんまり冷たくないんだけどなぁ」

それも当然の事だ。氷を扱うクーラがその程度の冷たさでどうにかなるはずが無い。

「まあ、いっか」

再び、その手がレオナの胸に伸びてくる。

「いやっ」

胸を庇ったまま後ろに飛んでその追撃をかわす。
それを、幼児性からの残虐さ、とでも言うべきか、もう一度試みるクーラ。

「っく、はっ」

何とか平静を取り戻したレオナは、落ち着いて手刀で反撃する。

「危ない!!」

それもまた紙一重で避けるクーラ、だが、完全には避け切れなかったらしく、その胸元に一本の赤い線が刻まれた。

「うぅ、あなた、キライ!!」

叫びながら、手を地面に叩きつけ、そこから氷の槍が生える。

「あ、しまっ・・・・」

その余波を足に受け、足が凍り付いて動けなくなるレオナ、そして倒れたレオナの目の前には、今の自分など簡単に殺せる技量を持った少女がいる。

「そういえば、苦しんでたよね、こうすると」

また、グローブをレオナに押し付ける。
さっきよりも冷たく、刺すような刺激がレオナに伝わる。

「ぅう、あ、い、・・・・・やっ」

苦し紛れの手刀も、クーラの手で軽々と止められる。

「む〜、凍っちゃえ」

パキン

空気中の水分を一瞬で凍結させ、氷の手錠をレオナにつける。
これで半ば身動きが取れない状態になってしまった。

「さっ、続き続きぃ」

さっきまで怒っていたかと思えば、今度はまた嬉々として、レオナへの攻め、もとい責めを再開する。

「ここをこうするとどうなるのかな〜♪」

無骨なグローブで、レオナの胸を揉み始める。
その冷たさで、感覚が麻痺してしまっている。
だが、それでもまだ残っている微かな感覚は、その刺激を伝えている。

「あぁ、う、やめ、なさい」

「やだ」

レオナが苦しむのを見るが楽しいようで、その手に力を込める。

「あ、いっ」

「そういえば、あなたも『おんなのこ』だったねぇ」

「くっ、何を」

「ひみつ」

パキンという音と共に、クーラの手の中に氷の結晶が生まれる。
それは次第に大きく、一定の形を取り、果物ナイフ程度の大きさと形を取った。

「さあ、どうすると思う?」

「まさか、っつ」

「あたり〜」

その氷のナイフで、レオナの服のいたる所を切り裂いていく。
まだその身体を覆っているが、動けばそれも落ちるだろう。
ナイフを投げ捨てたクーラは、またレオナの胸で遊び始めた。

(このままじゃ、駄目、何とかしないと)

足の感覚はさほど戻っていない、手は、氷で自慢の手刀を封じられ、服を脱がされた時に、一緒に銃器や爆弾も遠くに捨てられた。
打つ手は無い、だが、クーラが一瞬でも隙を見せれば何とかなるかもしれない。
そう、一縷の希望を託し、感覚の殆ど無い足に力を入れる。

「わっ」

そのレオナに馬乗りになっていたクーラは、それで一瞬バランスを崩し、レオナから注意を外してしまった。

「はっ」

その、氷で固められた両手を、思い切りクーラに叩きつける。
それでも、さすがに改造人間だけあって、倒れはしたが昏倒させることは無理だった。

(仕方ない)

手が殆ど使えない上、足も動かないレオナは、腕の力でクーラの上に圧し掛かり、そこに残った傷口に舌を這わす。

「ひっ、つ!!」

思わずビクンと身体を反らすクーラ。
その時、レオナの身体を抱きしめる形になり、大きな動きは出来なくなったレオナだが、それでも舌を動かし続ける。

「うぅ、ぁう、うん、んっ」

一心不乱に傷口と、両乳房を舐め続けるレオナだが、クーラが無意識のうちに使っている力による、冷気の肌を刺す刺激がそのなけなしの体力を奪おうとする。

(もう少し時間を稼げれば)

次第に慣れてきたのか、クーラにも余裕が出てくる。
そうとは言え、まだ反撃する様子は無く、少しはもつだろう。
だが、その少しの時間で事態が好転するとは思えなかった。

「はぁ、ん、い、でも、つまんな〜い」

(もう!?)

考えていたよりも早く、クーラが動き始めた事で動揺したが、それでも効果が無いわけではないと自分に言い聞かせ、続ける。

「は、ああ、じゃあ、私もしてあげるね」

頬を微かに紅く染め、ぼうっとした表情で、レオナの胸に手を伸ばす。
その冷たい刺激に、遂にレオナも堪えられず、舌を離してしまう。

「あはっ、じゃあ、こっちも、ね!!」

無骨なグローブがアソコに当てられ、冷たさはそのまま、撫でるように動かす。
確かに、八歳程度の精神年齢のクーラだが、それでもその身体は十四歳の少女である。
そうなれば当然、レオナのそれと扱いが違うわけが無い。
だが、いつもの言動や行動ゆえ、胸はともかく、そこまでされるとは思ってもみなかったレオナは、いきなりの責めにただ身体を左右に揺すり、悶えるだけだった。

「ねぇ、どう? これが、『かんじる』ってこと?」

「ああ、う」

おそらく、クーラがこれに夢中になっている間は大丈夫だろうが、少しでも飽きればレオナは殺されるだろう。
それが分かっているレオナは、出来るだけ退屈させないように、必死になっていた。
それは、子守のようなものだったのだろう。
反応の加減が難しく、段々激しくなる動きに、イカないように、そして、我慢しすぎないように。
とりあえず、鋼のような自制心で、クーラの意識を「自分を殺す」事から外すことに成功した。

「ねえ、この中って、どうなってるの?」

レオナには、その言葉の意味が分からなかった。
ただ、ふと気が付けば、股間に刺すような痛みが走っていただけだった。

「む〜、あんまり分かんない」

それは、クーラが無理やり奥までその指を押し込んだのだとレオナが気が付いたのは、数瞬後の事だった。
その、金色のグローブに包まれた指を。

「ああ、ン、んあ、あぁ、んんん、んぐ、ん」

「あれ、抜けないよ?」

実に楽しそうなクーラだが、やっていることは酷い。
半ば強引に押し込んだ指を無茶苦茶に動かし始めたのだ。
もう一度言っておくが、クーラは改造人間だ。
その少女の容姿で卓越した戦闘能力を有する為には、当然筋力も増加されているだろう。
その力で無理やりにされれば、誰だって堪えられないだろう。

「ああ、ひ、ひぐっ、ん、あん、んぐ、うぅ」

「どうしたの、痛いの? 気持ちいいはずなんだけどな〜」

「ひっ、やめっ、あ、そんなに、いい、あい」

「あ、おもしろ〜い!!」

そこから液体が流れ出す様子を見て、無邪気にはしゃぐクーラ。

「ねぇ、これを『凍らし』たら、どうなると思う?」

「や、やめ」

「やめな〜い」

「い、くっ」

その温度が下がったと思った瞬間・・・・・

「何やってんだ、こらぁ!!」

突然、野太い声と共に拳が跳んできた。
一瞬遅ければ、クーラの細い体なぞ、紙くずのように吹き飛ばされていただろう。
それだけの重さと速さを持つ一撃を放った主は、クーラの目の前で、レオナを庇うように構えを取った。

「大佐、どうしました?」

「おう、クラーク、ビンゴだぜ」

「それでは・・・」

「ああ、アンチK’だ」

「私は、アンチK’じゃない」

突然怒りだしたクーラの冷気に、駆けつけた二人、ラルフとクラークは防御の姿勢のまま動けないでいた。

「みんな、死んじゃえ!!」

「クーラ!!」

三人まとめて吹き飛ばす程の冷気を放とうとしたクーラだが、横からの声に動きが止まる。

「ダイアナ!!、フォクシー!!」

そこに立っていたのは長身の女性二人組み。
無防備にそちらを向いているクーラに攻撃を仕掛けようかと考えたラルフだが。
目の前にいる三人が相手では勝ち目が無いと考え、手が出せない。

「そろそろ引き上げましょう」

「でも、」

「大丈夫、問題は無いわ」

少し不満そうなクーラと共に、二人は現れた時と同じように、唐突に去っていった。

「ふぅ、どうなるかと思ったぜ」

「ええ、あのまま戦っていたら、正直、思い出してもぞっとしますよ」

「そうだな、それと、ほれ」

「何です? その手は」

「お前のジャケットを貸せって言ってるんだ」

「え、ああ」

ラルフの足元で倒れているレオナを見て、納得がいった様子でジャケットを差し出す。

「ほら、意識はあるか?」

「大丈夫」

「しっかし、お前ほどの奴を相手にして勝つとはな」

「今日は不覚を取っただけ、次は勝つ」

「ま、次は、って言えて良かったな、お互い」

「大佐、レオナは自分の娘と言ってもおかしくない年齢ですよ、ドサクサに紛れて口説こうとしないで下さい」

「ば、ばかやろう、誰が、そんな」

「とりあえず、本部に連絡を」

「そうだな」

END

 

 


あとがき

これってキャットファイト小説なのでしょうか?
実は、これは僕があるホームページに投稿したキングオブファイターズの2000と2001の間に当たる小説の一部を、キャットファイト小説としてリメイクした物です。
どこがリメイクかというと、実は戦闘シーン全部です。
所で、実際にそのキャラの技を使わせてみたんですけど、気付いた人っているんでしょうか?
まあ、戦闘能力がレオナとクーラでクーラの方が上のはずなんで、クーラ優勢になったのも納得出来ると思います。
それと、クーラの「幼児性ゆえの残虐性」が上手く表現出来なくて、戦闘中はあんまり明るいキャラに見えないし、でも結構話すキャラだったりで、混乱しながら書き上げました。
タイトルも元のから変えています。
元々は、「戦場に舞う氷」といって、第三章辺りの最後です。知らないでしょうし、どうでもいいでしょうけど。
本当はウィップとレオナとか書きたかったんですけどね。
絶対ウィップはSですから(笑)
鞭で相手をしばいて、頭を踏みつけて高笑いを上げたり。
あれで普段は結構クールだというのだから、笑っちゃいますよね。

データはこちら

クーラ・ダイアモンド 14歳
身長169cm 体重48kg B81 W57 H83
格闘スタイル アンチK’アーツ
得意スポーツ スケート
趣味 キャンディに落書きする事(KOF’00)※キャンディはクーラのサポートロボット

レオナ・ハイデルン 18歳
身長176cm 体重66kg B84 W60 H87
格闘スタイル マーシャルアーツ+ハイデルン流暗殺術
得意スポーツ なし
趣味 工場見学

 

 

 

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