〜Kana〜
「加奈、彩、何してんの、行くよ。」
夏樹に呼ばれて起きると、そこはなつきの家。昨日から彩と一緒に泊まってたんだ。その彩は隣のベッドで幸せそうに眠っている。
「さっさと彩を起こして、あの娘寝起きが悪いから。」
「ふぁい。」
そういえば、今日はいつもよりも早く行かないといけないんだっけ。今は八時、そろそろ時間だ。用意をしないと。でも、その前に、彩を起こすのが先か。
いつもよりも早い時間にそこに着くと、二十人近くの人がが揃っていた。中には見知った顔もある。詩織もいるし、大体がここでは結構な有名人だ。その視線が、私達の、正確には夏樹の方に向いた。夏樹は最初の頃からのメンバーで、めったに負けないし、その性格から有名だからだ。
ざわめく会場、しかし、
「おはようございます。それでは全員揃ったようなのでルールを説明したいのですが。」
一人の女性の声に一瞬で静まり返る。その人は宮間さん。私達が行っている所の支配人だ。
「先ず、服は、このワンピースを使ってもらいます。」
そう言って掲げたのは、彩が行ってる所で使っているワンピース、薄くて良く伸びるから、着けていてもあんまり隠す事には向いてない。しかも激しく動くとずれる。
「ルールは、顔への攻撃、激しい投げ、倒れている相手への打撃での追撃は不可です。もっとも、勢いをつけずに、足でアソコを踏みつけるぐらいならありです。決着は、勝者の宣言によって、こちらで判断します。また、やりすぎの場合は強制的に終わらせる事もあります。」
一度は収まったざわめきが、もう一度広がる。ルールとしては私達がしているのと一番近い感じだ。
「それでは、9時30分より第一試合を始めます。それまでに対戦表を見ておいて下さい。」
対戦表を張り出した方がざわめき始めた。「やった」とか、「うそぉ」とか、喜んだり悲しんだりしている。
「夏樹、見に行かないの?」
私の横で腕を組んで何かの紙を見ている夏樹に尋ねる。
「加奈、あんたも大変ね。第一試合よ、相手は大した事無いけど。」
「え、って、まさか、それは対戦表?」
「ええ、さっき貰ったの。」
「早く言ってよ。」
私は、夏樹が手にしている紙を覗き込み、自分の名前と夏樹、彩の名前を探した。
「げ、勝っても次は彩じゃない。それにその次は夏樹だし。」
「運が悪かったと思いなさい。」
運の一言では表せない作為的な物を感じる。
「それじゃあ、先に行くよ。」
「頑張ってきなさいよ。」
気が重い、一日で最高四回もって時点できついのに、組み合わせで私達三人が同じグループにいる。みんなが勝てば、私は二回戦で彩、三回戦で夏樹と当たるようだ。
とりあえず、すぐそこに試合開始の時間ガ迫っているので、着替えよう。
着替えて、第一リング(今回はリングが2つ使われる。)へ向かう。相手は、あんまり強くないから、勝てるだろう。確か、プロレス技とかが得意な娘だと聞いている。当たるのは初めてだ。
リングに上がると、既にそこに相手が来ていて、軽く手足を動かしたりしていた。普段はリングシューズを履いているからか、裸足にちょっと戸惑っているようにも感じる。
「開始、一分前です。」
そんなアナウンスに、動かしていた手足が止まる。私達は、水着を直したり、壁のカメラを見たりしていた。今回は、カメラの1つを人間が担当している。だから、いつもは二人きりのリングに三人いることになる。私はそれに慣れてないから、ちょっと恥ずかしいように思える。一応女の人だし、黒い三角の覆面を被って表情が見えなくなっている。それが逆に恐いけど。
「それでは、これより第一試合を始めます。」
緊張が高まり、睨みあう。
「レディ、ファイッ、」
カーンという音と共に、彼女はこちらに走ってきた。姿勢が低いので、タックルだと読んで、前に重心を倒す。案の定足に飛びついてきたから、それを押さえ込む形になった。
「甘い、」
すかさず、その左足を取り、片えび、だったか、そんな名前だったはずの技をかける。私が彼女の背中に座り込んでいる為、ちょっとやそっとじゃ返せそうに無い。すかさずカメラがマットに押さえつけられている彼女のアソコに近づいてくる。反対側の壁のカメラは苦しむ顔のアップを撮っているはずだ。
しかも、丁寧なことに、そのカメラの映像は壁のスクリーンに映し出されている。全く、無駄な演出に凝っている。
「いやぁあ、」
やっぱり恥ずかしいのか、もう一方の足で隠そうとするが、痛みでバタバタマットを叩くだけだ。
「サービスしたいけど、後が大変なのよ。だから、」
私は、すぐに決着をつける為、そのアソコを守る布をさっさと破いた。そこが丸見えになり、普段なら覗き込まないといけないけど、今回はスクリーンにばっちり映っている。
「恥ずかしいね、丸見えだよ。全部。」
「いや、ひぐぅあ、あん、あっ、はぁん、っく、」
出来るだけ羞恥を煽り、そこを撫でる。撫でると言うよりは、指を擦りつけると言っていいほど力が入ってしまっていた。
「ひぁっ、」
「あっ、」
突然身を震わせた彼女に振り落とされる。調子に乗りすぎたと悔やむ間に、左腕を複雑に極められていた。名前なんて知らないけど、痛い。
「よくも、折ってやる。」
目には涙を浮かべて、真っ赤になった顔で腕に力を入れてくる。左腕が本当に折られるという恐怖感を何とか引っ込めて、対策を考える。そして、いちかばちかの賭けで、右手を私の背中側から彼女のアソコへと伸ばす。彼女は私の腕に集中していてそれに気付かない。しめた、と思ってそこを掴むと、何か変な感じがして、
「ぎゃああああ」
という絶叫と共に左手が開放された。どうも、入っちゃったらしい。アソコを押さえてしゃがみ込んでいる。一歩近づくと、ビクッと震えるが、意を決して立ち上がり、もう一度向かってくる。今度は、ドロップキック、高さは低めだが、威力はあるだろう。当たれば。
「ばーか。」
私は一歩斜め後ろに下がった。それだけであっけなくマットに沈む。腰を押さえて立てろうとしている所を髪を掴んで強引に立たせる。そのままロープに投げつけ、ロープに当たった瞬間、見様見真似のドロップキック。胸辺りに決まり、前に倒れこむ。私もその後、腰を打ってちょっと痛かったけど、追撃に電気アンマ。
「ひゃ、ひゃが、んぐ、ぐ、ぐ、」
「さっさとイケ、」
しばらく続けたけど、思ったほどの効果が無い。だから、攻撃を切り替えることにした。
「さーて、何分耐えれるかな。」
フェイスシット、雑魚にはこれで止めって決めている。抵抗が無い様なので、座り込んだまま、水着をビリビリと、全部破いてしまう。そして、大きさはいいけど、形が今ひとつの胸を揉み、その先端を尖らせる。それを指で思いっきり挟んで、くぐもった悲鳴を聞きながら、腰を前後に動かした。
「さぁ、そのまま落ちな。」
そして、腰を上げた時には、彼女はピクリとも動かなくなっていた。私が勝ちを宣言し、リングを去る時、カメラが倒れた少女の全身を、完全にカメラに収めていた。特にアソコを重点的に。
上にジャージを着て、戻ると、夏樹が出迎えてくれた。彼女は第四試合なので、時間に余裕がある。
「お疲れ。」
そう言ってスポーツドリンクを放って来る。
「ありがと。」
それを少し飲んで、ふたを閉めて返す。
「どうだった?」
「割と苦戦した所もあったけど、概ね一方的に勝ったよ。」
「それは良かったね。」
「彩は?」
「次がそうだから、もう行ったよ。」
「ふーん、」
私の目の前を笑顔の少女が通り過ぎ、その後ろから、俯いてその少女から目を逸らせた少女が歩いて来る。笑顔の少女は知ってる顔だった。
「詩織!」
「ふぇ?」
詩織がこちらを振り返る。私は、手を振ってこっちだと呼ぶ。すぐに気が付いてこっちに歩いて来た。
「勝ったの?」
「もちろんです。」
そこで夏樹が何気なく言う。
「あの娘、たしか結構強かったよね。」
「知ってるんですか?」
夏樹が知ってたのを不思議に思ってか、尋ねる詩織。
「まあね、彩が前に一度イカされたのよ、あの娘に。」
「そう言えば。」
「確かに、強かったけど。」
「その割には余裕じゃない。」
「でも、ほら、結構苦戦しましたよ。」
そう言って胸元を大きく開いてそこの痣を見せる。どうでも良いけど、ジャージの下は何も着てない。
「恥ずかしいから出さないで。」
「この露出狂。」
私達二人につっこまれて慌ててその胸を隠す。
「それに、嫌な戦い方をして来るんですよね。おかげで一度は気を失いましたし。」
「良く、勝てたね。」
「向こうも夢中で、大技を出そうとして失敗したりもしましたし。」
「なるほど、生兵法は怪我のもとって所かな。」
「夏樹、」
「夏樹先輩、」
「何?」
「あんた、本当に女子高生?」「そんな言葉知ってたんですね。」
「あんたらは。」
あ、怒ってる。でも、そんな格言良く出てくるよね。本当に。詩織は夏樹を良く知らないから、てっきり頭が悪いと思ってたみたいだ。無理も無いけど。
「あのさ、彩がどうなったか見に行かない?」
「行けるんですか?」
「私達ぐらいに成ればね。」
まだ怒ってる夏樹を強引に引っ張って、モニタールームへと向かった。
「どうも、」
「あら、加奈ちゃん、一回戦は圧勝だったわね。」
そこではいつも通り、試合の様子がいくつかのモニタに映っていた。これをつなぎ合わせたのが私達の試合テープと呼ばれ、信用があれば誰でももらえる。
「あれ、彩さん、ってこの人ですよね?」
「え、」
詩織に言われて見てみると、そこには、アソコを開かれた状態で抱えられている彩が映っていた。
「嘘?」
時間を見ると、12分、それで決まったようだ。今はショウタイムになっている。
「加奈ちゃん、これが次のあなたの相手、双海多恵ちゃんよ。」
「双海、多恵。」
私の目は、笑いながら彩の身体をいじり続ける、多恵という人間に釘付けになっていた。
そして、次の試合を待った。
時間が来た、私の前には彩を倒した少女、勝てるかどうかは微妙な所。敵討ちって訳じゃないけど、いつもよりも冷静さが足りない感じだ。
「レディ、」
軽く深呼吸をする。
「ファイッ」
カーンというゴングが鳴り、間合いを取ってリングを回る。距離は狭まらない。手を出して、相手の手を掴もうとするが、あっさりかわされる。その瞬間、バシッと言う音と共にふくらはぎに痛みが走る。蹴られたと思った時には一歩踏み込んできた彼女の膝がお腹に突き刺さり、息と涎が口から吐き出される。痛みを堪えてその腰にしがみつくが、背中に重い衝撃が走り、私の身体は呆気なく崩れる。
「まだまだね、」
そのまま逆えび、身体が反り返って、痛いなんて物じゃない。
「う、うるさい、っこのぉ、」
何とか出した肘が彼女のヒップに当たり、その体勢を崩す。その隙に何とか身体の自由を取り返し、もう一度間合いを取る。
「はぁ、はぁ、全く、やってくれるね。」
「まさか、抜けれられるとは思ってなかったよ。」
睨みあう、向こうの方が戦い慣れた感じで、近寄りにくい。でも、攻めないと勝てないし、防戦では向こうに押し切られる。勢いをつけて走っていき、足を狙った蹴りを放つ。
「あう、」
ちょっとは効果があったみたいだ。そのまま追撃にそのお腹を二度、三度、右手と左手で、交互に殴る。
「あ、あう、うぐ、」
そのたびに呻き声を出し、少しづつ後ろに下がっていく。
「っぐ、んのぉ、」
反撃のボディブロウ、でも、破れかぶれな感じで、ちょっと手が止まっただけだ。
「このっ、」
「倒れろ、」
「効かないんだよ、」
「そっちこそ、」
何度殴りあっただろうか、顔は攻撃してはいけないので、お腹が中心だ。もう吐きそうで、向こうも気持ち悪そうだ。途中、何度か股間への攻撃も試みたが、足で庇われて、逆に反撃を受ける結果になった。
「こんのお、」
向こうの大振りの攻撃が来た。それが当たるのを覚悟して、彼女を押し倒す。
「うわああ、あきゃん、」
倒れた拍子に私に押しつぶされ、苦しんでいる。私も肩にちょっと痛みがあるけど、思い切って近づいたのが良かったのか、大した事は無い。
「これで、」
私は、素早く彼女を引き起こし、後ろからチョークスリーパーというか、無我夢中でその首を締め上げた。
「っぐ、」
息が出来なくなって、足をばたつかせて苦しんでいる。私の手を外そうとする手の爪が腕に食い込んで痛いが、ここで放しては反撃される。放すわけにはいかない。
「ごほ、げほっ、がっ、」
すると、彼女の口の中で溢れた涎が私の腕を通ってその胸元へ流れる。私は、早くも『勝った』と思い、それが油断になった。たぶん、私の腕の力が緩んだんだろう。彼女は勢い良く、私の腕の中で横を向き、それと同時に勢いのついた肘が私の脇腹に突き刺さった。
「あぐっ、」
たまらず手を放し、リングに蹲る。彼女は、息も荒いままその口元を腕で拭うと、よろよろとだが、こちらに向かってきた。
「あっ、いや、」
私の髪が彼女の手に掴まれる。無理やり立たせる力はもう無いのか、そのまま私を、後ろに勢いをつけて倒す。頭を強く打った為、一瞬目の前が真っ暗になり、何がなんだか分からなくなる。
「これで、はぁ、止めよ。」
そして、彼女が仕掛けた技が何か分かった時には、私の口からは悲鳴が出ていた。
「ぎゃあああああああああ」
四の字固め、だったはずだ、とにかく痛い、足が折れそうなほど完全に極まった。
「あなたには外せないわ、折れる前に降参しなさい。」
確かに、私にはこれは外せない。そもそも見るのも初めてだ。外し方も、なんかの漫画ではひっくり返してたような気がするが、そもそも動けそうに無い。でも、
「いやぁあ、降参なんて、してたまるかぁ。」
「そう、じゃあ、本当に折るよ。」
何故か、一瞬彼女の表情が曇る。ただ、それは私の足を折ってもいいと決心したことでもあるようだ。さっきに数倍する痛みが走る。
そこで決まるはずだった。私は負ける、そのはずだった。でも、神さまとやらは気まぐれらしい。
「うぅっ、」
足の痛みが一瞬消えた。私は、何とか、苦しみ硬く閉ざしていた目を開き、彼女の方を見る。私の足を締め上げるその足の太ももが真っ赤に腫れている。そこに私の足が当たっているからか、痛みで攻撃が一瞬止まったみたいだ。その隙に、足を少し浮かせて、アソコを刺激する。
「うぅん、」
完全に力の抜けた一瞬を狙って足を抜く。ただ、しばらくは痛くて走ることすら無理だろう。向こうは右足が完全に駄目だ、たぶん、私が彼女のアソコを狙った攻撃を防ぐ内に成ったのだろう。
「残念だったね、勝てなくて。」
「ちょっと技を外しただけで勝ったつもり? 笑わせないで。」
右足を引き摺りながら向かってくる。まともに動けない私はその場で待つしかない。
おそらく、蹴りは無い。だから、
「このぉお、」
おそらくはボディ狙いだと考えて、彼女の胸を狙ったパンチを出す。私の方が早かったし、身体を少し屈めるか、斜めに打つパンチよりも私の方が射程と言うか、間合いが広い。もっとも、今のは単に、今までの経験からの無意識の一撃だった。
「ぐっ、」
よろけた彼女に追撃の膝。更にその体が折り曲がる。
「そうそう、これ、痛かったよ。」
私は、最初の仕返しとばかりに逆えびを極める。ただ、力があんまり無いから、長くは持たないだろう。
「っん、全然、効かないんだよ。」
「そう、そうよね。私はこんなの得意じゃないんだから。」
片足を放して、左手を空ける。
「な、何を?」
私が手を放した意味が分からず、彼女が問い掛けてくる。
「私が得意なのは、・・・・・これよ。」
「へ、っぐ、あ、何を、はんっ、ま、まさか、いや、触らないで。」
私がその空いた左手で彼女のアソコを触った。マットのひんやりした感じと彼女の体温が心地良い。そこを、彼女の水着の中に手を入れて触る。彼女の足が暴れるけど、そこを一撫ですれば、一瞬足を伸ばして動きが止まる。
「どう、イキそう?」
「誰が、はんっ、ぅう、いっ、いぅ、」
ただ、無理な体勢だったし、そろそろきつくなって来た。彼女の右足を支える手は限界が近く、彼女の左足が暴れて彼女の上から落とされそうだ。そうなる前に自分から立ち上がり、少し間合いを取る。
「よくも、」
アソコを押さえて立ち上がるけど、言葉程の凄みは無く、怯えているように見える。
「もうちょっとだったのに、ちょっと遅くなったね。」
「誰が、私が勝つのよ。」
「そう言うことは、」
再び私に向かってこようとした彼女に、私の足の一撃が決まる。彼女のアソコを庇う手の上に。
「この手を放してから言いなさい。」
「あぐぅっ、」
その姿勢が更に前のめりになり、目からは涙が落ちる。だが、痛みを堪えて開かれた目は、殺意に満ちており、次の瞬間。
「ああっ、っつ、」
私はアソコに痛みを感じ、反射的にそこを押さえた。
蹴られた。そう思ったのはその後だった。
「それをあなたが得意なら、私が得意なのはこれよ。」
痛みを堪えて、前を見ると、そこには誰もいない。そして、後ろから声がする。しまった、と思った瞬間、私の足はマットを離れていた。
「あああああああああああああ、」
それは私の悲鳴なのか、彼女の叫びだったのか。そして私はマットに叩き付けられ、
「どう、これが私の得意技よ。」
誰かの声がする。
「禁止されなかったら私の圧勝だったのに。」
私は、
「これであなたの勝ち、良かったじゃない。私より弱いくせに、勝てて。」
視界がはっきりして来た。何があったかも思い出し、ぼんやりしていた意識が完全に戻る。
「それじゃあね、次でさっさと負け、っぐぅ、」
「うるさいよ。」
私の手がその股間を直撃している。
「誰が弱いって?」
そのまま彼女の足を持って引き倒す。彼女はあっさり倒され、私はまだ痛む首に手を当てて起き上がった。
「先にルールを破ったのはあなただから、ね。」
私の足が彼女のアソコを勢い良く踏みつける。
「あぐ、・・・・・・・・・・・」
声にならない悲鳴を上げ、暴れる彼女にもう一発。そして、次は軽く飛んでから両足で踏みつける。
「その弱い私にあっさり逆転されて、あなたの方が弱いんじゃない?」
「んぐ、」
「ねえ、」
私は、片足を後ろに軽く振り上げて、勢いをつけて彼女の胸を蹴り付ける。
「いやあああああああああああああ」
「また、泣いちゃってるの?」
私はもう一度蹴り付け、彼女から降りる。
「そうだ、これから、彼氏の出来ない体にしてあげようか?」
「ひっ、」
投げで優位に立ったけど、その時に勝ったとばかり思っていたのだろう。その興奮であんなに言えただけだ。一度逆転されると、とてももろい。
私は、無抵抗の彼女のアソコを狂った様に蹴り付け、胸を蹴り、顔は無事だけど、彼女の全身に黒い痣を作り、私の息が切れるまでそれを続けた。
「禁止されてなかったら、どっちが勝ってたでしょうね?」
私は、全身がボロボロになった哀れな敗者に吐き捨てるように言って、リングを後にした。
「加奈ちゃん。」
更衣室から出た私を支配人が呼び止めた。さっきの事を怒るのかとばかり思ってたけど、その顔は微笑んでいた。
「どうやら勝てたようね。」
「勝てた、って私も反則負けじゃあ。」
私も反則(倒れている人間への打撃)をしたから、引き分けだとばかり考え、夏樹とは当たらないと思ってたので、意外だった。
「先にやったのは向こうだから。」
「でも、少しやりすぎたような。」
「大丈夫、痣は服で隠せるし、骨には異常が無い。それにあの娘も一人暮らしだし。」
「いや、でも、」
「確かに精神的にはちょっとあれだけど、大丈夫なんじゃない?」
さらりとそう言われると、恐い物がある。たぶん、私がああなってもその相手にこう言っただろう。
「次は夏樹ちゃんとね。」
「でも、まだ始まってないんじゃ?」
「もう始まってるし、あの娘の勝ちは殆ど決まったような物よ。」
「何でですか?」
「あなた達が遅いから、もう1つですることになったの。」
「じゃあ、すいませんけどこれで。」
「もう?」
「ええ、しばらく会わない方がしやすいですし。」
それから、自動販売機の前で彩を見つけた。
「彩、」
「あれ、加奈、あ、もしかして勝てたの?」
「ええ、もちろん。」
「そう、じゃあ、次は夏樹だね。」
「うん、でも、勝てるかなぁ。」
「どうだろうね。」
「どちらかというと、勝てるって言って欲しかったんだけど。」
「でも、あなたにも夏樹にも、どちらに勝って欲しいなんていい難いと思わない?」
「そりゃ、そうだね。あ、そろそろ時間だ。」
「もう?」
「まあね。それじゃあ、行って来るね。」
私は、そこからもう一度リングへと戻った。
「どうしたの、ボロボロじゃない。」
リングに上がると、そう夏樹に言われた。確かに、顔以外にはいたるところに痣があり、薄い布を通してそれが見える。
「さっき、苦戦したからね。」
「そう、じゃあ、悪いけど勝たせてもらうわ。」
「でも、簡単にはイカないつもりだけど。」
そして、それは始まった。
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