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三角関係

 

 

 

「キャッ! 何するのよ。やめてよ」
「いいじゃないの。鏡花の胸、かわいくて素敵よ」
 二人の女の子が下着姿でベッドの上に乗って取っ組み合いをしていた。
 と言うよりも、二人はじゃれあっていたと言っていいだろう。その証拠に、先程からキャッ、キャッと、笑い声を出している。
 一人の女の子がうつ伏せに倒れると、その後からもう一人の女の子が抱きつき、胸を揉み始めた。
 後から抱きついた女の子は西村千草。ショートカットがかわいいく活発的な女の子。私立の女子高校に通う高校一年生である。
 うつ伏せに倒れた女の子は山本鏡花。そばかすにめがねをかけ(もちろん今は外している)、少々物音なしそうな、こちらもかわいい女の子であった。
 二人は数日に1回こうして、布団の上でじゃれあって遊んでいた。時には、本気で喧嘩をしたり、時にはこうして、イかせっこのバトルをしているのだ。
「あっ! ああああ……」
 揉まれている鏡花の胸が徐々に硬くなっていく。
「さぁ〜って、このまますぐにイカせてあげるからね」
 千草は鏡花の胸を揉むスピードを上げようとすると、鏡花はパンティーの上から中指をギュッとアソコにめり込ませ、グリグリと回した。
「キャッ! アッ、イタイ!」
 悲鳴を上げ、攻めが止まってしまう千草。
 鏡花は体を反転させ正面を向き合い千草の下着を脱がすと、胸をなめながらアソコを再び指で愛撫し始めた。
「千草ちゃん。さっきのお返しよ」
「イヤンッ やめて、」
 千草は大きくのけぞった。
 さらに鏡花は左腕を千草の首に巻きつけると、そのまま締め上げた。フロントネックロックだ。
「うっ、ウウウウウウウウウンンンン……」
 千草は手足をばたつかせるが、どうにも抜け出すことができない。締め付けと快感で千草の顔が真っ赤になった。
「ねえ、千草ちゃん。イクのか、落ちるのか、どっちがいい?」
 胸から口をそらせた鏡花が聞くが、すぐに再び千草の乳首を舌で転がした。
「イ、イク方がいい……」
 搾り出すように千草が答えると、鏡花は左腕を外して、千草の左胸を揉み始めた。
「アッ! アアッン!」
「どう? イッちゃっていいのよ。千草ちゃん」
 千草は鏡花の攻撃を受けるがままである。そんな千種に、
「ねえ、千草ちゃん。私つまんないわ。ねえ、もっと反撃してよ」
 勝利を確信した鏡花は千草を挑発する。
 元々、鏡花は学校でも会話が少ないおとなしい女の子であった。しかし、この戦いのときだけは燃え上がり、好戦的な態度を出す。
 一方千草も元々男っぽく、いいたいことはずけずけと言う性格のため、こんな戦いでもあまり変わることがなかった。
「言ったわね!」
 千草は太ももを鏡花の腹に入れた。それでも、怪我をしないように力は抜いている。
「痛い!」
 千草の上からどき、腹を押さえてうずくまる鏡花に、再び千草が両方の手で鏡花の胸を揉みはじめた。
「鏡花が私に勝とうなんて百億万年早いのよ」
 そう言うと横になり、ボディーシザースで鏡花の動きを止め、さらに愛撫を重ねていく。
「アッ。やめて、駄目! 降参、降参するから……」
 悲鳴を上げるように鏡花は叫ぶが、千草はその手を止めなかった。
「ふふふ……相変わらず胸が弱いのね。でも降参は駄目。あんな悪いことする子は、こうしてお仕置きしないと」
「そ、そんな……」
 千草は舌で鏡花の耳、頬を丹念になめていった。鏡花の右の頬は、千草の唾液がべっとりとついてしまっている。
「さぁ〜て。そろそろとどめよ」
 千草は右手を胸から放すと、アソコに挿入させ、きつい愛撫をはじめた。
「あっ、駄目。やめて、アッ…アアアアアアアアアアアアア!」
 

「おっはよ〜」
 元気のいい千種の声が教室に響きわたった。
 すぐに他のクラスメートが「おはよう」と、返事をする。
 千種は自分のカバンをおく前に、しずかに自分の席で小説を読む鏡花の背中をパンと叩いた。
「おはよう〜。きょっうか〜」
 千種と鏡花が通う高校は、特別頭が良いわけでもない可も不可もない女子高校である。二人は同じクラスで、席も鏡花の席が黒板を見て、一番左端。千種の席が左から三番目の一番後ろである。二番目の一番後の席は空席になっており、つまらない授業中は、紙に手紙を書いて投げて遊んでいた。
「あっ、千草。おはよう」
 鏡花は背中を叩かれるのはいつものことなので、怒る様子もなく笑顔で返した。
 千草は鏡花が読んでいた本を取り上げると、
「たっくぅ、朝からこんな陰気臭いことして……そんなんだからいつも私に負けるのよ」
 鏡花は昨日の戦いを思い出すと、顔が真っ赤になった。
「ちょっと、こんな所で言わなくてもいいじゃない」
「いいじゃない。そんだけじゃ、なにやってるかわかんないんだから」
 あっけらかんに言う千種が少しうらやましいと思った鏡花であった。
 鏡花はこのクラスでは少し浮いた存在であった。誰とも話しをしない放課中は本を読み、一人で登下校していた。そんな鏡花に声をかけたのが千草であった。
 千草は女らしい所が少なく、さばさばとした歯切れの良さを持った女の子であった。
 性格が近くなかったことも手伝い、二人はすぐに親友になった。そして、現在に至るのである。
「まっ、そんなことじゃ、いつまでたっても私に勝てないんだから、少しは何か練習をしなさい」
 まるで、先生用に言う千種。
「練習って、どんなことするのよ」
「えっ……」
 思わず、千草も顔が赤くなったのだった。
「と、とにかく、今日もどうせ暇なんでしょ。だから、もう一戦しよ」
 鏡花が頷くと同時に、
 
 キーン コーン カーン コーン

 チャイムが鳴った。
「ちゃんと、練習しなさいよ。私は手加減しないからね」
 そう言って千種は自分の席に座ったのだった。
 それからしばらくして、担任の先生が教室に入ってきた。
 日直が起立礼をさせると、担任が
「はい、深山さん。入ってきて」
 教師が促して入ってきたのは、一人の女子高生であった。
 転校生なのであろう、青を基調としたこの学校の制服ではなく、黒いブレザー形の制服だ。
 深山と呼ばれた少女は、ペコリと頭を下げ、
「深山恵です。これからよろしくお願いします」
 と、おどおどとした口調ではなくハッキリと言って、笑顔で挨拶をした。
 恵は、ポニーテールの活発そうな女の子だ。運動も得意そうで、筋肉はないが、しまったきれいな体をしていた。

 パチパチパチパチ

 教室には、歓迎の拍手がわき上がった。
「それじゃあ、深山さんの席だけど……」
 教師が教室を見回していると、
「あっ、鏡花じゃない。鏡花!」
 恵が叫んだ。
 鏡花は軽く手を振って笑ったのだった。
「あら、山本さん知り合いですか?」
 軽く頷くだけの鏡花に変わり、恵が答えた。
「そうです。中学の時の同級生です」
「それなら、深山さんの席は、山本さんの隣で」

「よろしくね」 「よろしくね」

 恵は一人一人に挨拶をしながら、自分の席に向かう。最後に、自分が次ぎに挨拶しようと手を差し出した千種であったが、
「久しぶり、鏡花」
 鏡花に挨拶すると、そのまま座ってしまった。
「あっ……」
 偶然であろうが、無視された格好になった千種は、かなりムッとした。
「どうしたの、いきなりで驚いたよ」
 鏡花の方は、久しぶりにあえた友人にとても嬉しそうだ。
「鏡花に会いたかったからよ」
 妙に真剣な表情で言う恵に鏡花はまた、顔が赤くなったのだった。
 二人は、中学時代に一緒の高校に行こうと約束したのだが、受験当日に恵が高熱を出してしまい、試験を受けることができなかったのだ。
「ふふふ……赤くなっちゃって、だから鏡花はかわいいのよ」
 昔と少しも変わらない恵に、鏡花は心の中で苦笑した。
「もう、からかわないでよ……」
 二人がおしゃべりをしていると、
「こら、そこ! 私語は慎みなさい」
 教師から、しかりを受けてしまった。
 しかし、静かにしていたのはほんの少しだけであった、また話をはじめた。
「ねえ、鏡花、今日暇?」
「えっ、今日……うん、別に用はないけど……」
 思わず言ってから千種との約束を思い出して、しまったと思った鏡花はチラリと、千種を見ると、千種がこちらを見て睨んでいた。
 すかさず、アイコンタクトでゴメンと伝え、千種は今回だけだよと返事を返したのだった。
「だったらさあ、一緒に制服買うのつき合ってくれない」
「いいけど……それよりも家に来ない。家に、制服が余ってるから、それもってっていいよ」
「いいの?」
「うん。ほんとは一着を予備にして、二着買おうとしたんだけど、間違えてお父さんとお母さんが別々に注文しちゃって四着もあるの。だから、二着もってって」
「ふうん……じゃあ、遠慮なしにもらおっかな」
「そうして。一応サイズも見ておきたいから、一緒に帰ろ」
 そう鏡花が誘うと、恵はいたずらっぽい表情をして、
「とか言いながら、又、私と戦いたいのね」
 一気に顔が真っ赤になる鏡花。
「もう、ここでそんなこと言わないでよね」
 鏡花は千種に聞こえないように小さな声でいったのだった。
「それじゃあ、放課後ね」
 恵と鏡花は話をやめ、授業に集中をしたのだった。
 だが、横で二人の会話を盗み聞きしていた千種は深刻な表情をした。
 恵が戦うといったこと。それを言われて、鏡花の顔が真っ赤になったこと。これはいつも千種が言うと、鏡花が真っ赤になるのと同じであった。
 千種の中で、何か怒りを覚えてきた。まるで、浮気でもされたような気分であった。


 それから数日後。
 恵はすっかりクラスになじみ、千種と同じくらいのクラスでの人気者になった。
 その数日間、千種はかなり不機嫌な日々を過ごしていた。
 どうしても恵が転校してきた日の「戦いたい」と言った言葉が放れないのだ。あれから、鏡花を問いつめることはしなかった。もし、自分の想像通りであったときの自分が恐いのだ。別に、千種は鏡花のことを愛しているとは思ってもいなかった。別に同姓だからと言うわけではない。ただ、友達としてじゃれあっている感覚でしかなかった。しかし、時がたつに連れ、たった一人の友人。親友としてみていた。千種は誰にでもすかれる性格であった。しかし、今まで親友といえる友人はいなかった。それは、彼女の交友関係が大きすぎたからかもしれない。そしてできたのが鏡花であった。だがその親友に裏切られるような感覚にさえ陥っていた。
 あの戦いもやっていない。いや、一度だけ、無理やり鏡花の家に行って戦おうとしたのだが、何をしても鏡花のノリが悪く最後には二人とも戦いをやめてしまったのだった。それ以来、鏡花との間でも、気まずい雰囲気が流れていた。
 何とか今の状況を打開したい千種は、じっくりと二人だけで話をする時間が欲しかった。
 そんなことを考えていた体育の時間。
 準備体操も終わり、生徒たちは体育館で四列横隊で体操座りをしていた。
 今日は、マットを使った運動をする。
「よし、それじゃあ、マットを持ってきてもらおうか……山本、それと……」
 二人ッきりになれるチャンス。そう見た千種は自らが名乗り出るため手を上げようとするが、
「はい。私が山本さんと行きます」
 千草よりも先に手を上げたのが恵であった。
「よし、それじゃあ深山に頼もう」
 教師がすぐに了解を出すと、
「じゃあ行こ鏡花」
「うっ、うん……」


 薄暗くかび臭い体育倉庫に入ると、すぐに千草が持っていくマットを見つけた。
「あっ、このマットを持っていくのね。恵、反対側もって」
 だが、恵はマットを持つどころか鏡花の後ろから抱きついた。
「ちょっと、恵……」
 いきなりのことで驚く鏡花の反応を無視して、恵は手を伸ばして、体操服の上から鏡花の胸を揉み始めた。
「鏡花。久しぶりに、やらない?」
 鏡花は顔を赤くする。しかし、あまり不快な顔はしておらず、それどころかしょうがないなと苦笑している。
「恵っ。やめなって……」
 まるで子供を諭すように言う。
「とか言いながら、鏡花もしっかりとエッチな所触ってるじゃない」
 恵の言う通り、鏡花も手を後に回して恵のアソコに触れていたのだった。
「恵が変なことするからでしょ」
「鏡花ぁ〜。ねえ、鏡花の家でやろうよ……久しぶりに」
 何とも言えない甘えた声を出す。
 だが、鏡花の方は今一つ乗り気ではないようだ。
「でも………」
 しかし、恵は強引に鏡花を誘う。
「それじゃあ、学校終わったら、一緒に帰ろうね」
 そう言うと、マットの反対側を持って早く行くように言うのだった。
 

 鏡花はあの後、何とか断ろうとするのだが、その話しを恵にするとなにかとはぐらかされ、結局恵が家に来ることになってしまったのだった
 そんなこんなで今日の授業が終った。
「鏡花。一緒に帰らない」
 放課後、千草が鏡花をそう誘ったのだった。千草はこの言葉を言うのに今日一日かかった。本人自身、今の言葉がものすごくぎこちなく感じたのだった。
 しかし恵と約束があったため、たとえ遊べたとしても鏡花は断るしかなかった。
「ゴメン。今日ちょっと用事があって……その、塾が……」
「えっ? 今日は何もない日じゃなかった」
「そうなんだけど……ちょっと来いっていわれて、とにかくゴメン。またにして」
 ここで鏡花はなぜか塾といって嘘を付いた。しかも恵の名前も出さなかった。
「え、うん。わかった……じゃあ、またね」
 二人とも、その場は何とも言えない気まずい雰囲気が流れた中別れた。


 千種は一度学校から出たのだが、忘れ物があったため、戻ってきた。そして、再び自転車に乗り、校門を出ようとした。その心の中は鏡花のことでいっぱいだった。
 ふいに駅へと歩いていく生徒たちを見ると、鏡花の姿があった。鏡花は掃除当番で遅い帰りだったのだ。千種は心の中で叫んだ。
(待ってよ鏡花……一緒にいてよ……)
 そんな千種の願いも鏡花の横に歩く人を見てうち砕かれた。
 鏡花の横を恵が歩いていたのだ。
 愕然とする千種。
(今日は塾があるって……それなのに、どうして、あの子が一緒にいるの……)
 二人は仲睦まじく、恋人のように歩いていた。
 気が動転する千種。しばらくはうつろな表情で街を歩いていた。そして、気がついたときは鏡花の家の側まで来ていた。そして、千種の数十メートル前を鏡花と恵が歩いていた。
 千種はほとんど無意識のまま二人の後を付けていたのだった。
 鏡花と恵の二人はそのまま鏡花の家へと入っていった。
 そのまま千種は電柱に隠れるようにして鏡花の家を見張っていた。


 一方、鏡花の部屋に入った二人は、
「きょうかっ」
 いきなり恵が抱きついた。
「鏡花……あいたかったよ〜。高校になって分かれちゃったじゃない。私寂しかったんだから……」
 鏡花とこうして二人っきりになり、恵は涙声になって優しく鏡花の体に手を回した。
「恵……」
「ゴメン……もう少し、このままでいさせて。あのころと同じように……」
 鏡花はこのとき気がついた。転校当日に鏡花がなぜ転校してきたのか。その答えが「鏡花にあいたかったからよ」その言葉が本当であったことを。そして、恵もまた、失うことのできない友人であることを。
 

 それからどれだけ待っただろう、千種はじっと二階の正面にある窓を見つめていた。そこは鏡花の部屋なのである。
 まるで刑事の張り込みのようであった。だが、刑事の張り込みならば、これほど自分の胸が痛くなってくることもないのであろう。
 千草はじっとその窓を見ていると、その奥に鏡花の姿が現れた。
 だが、鏡花は下着姿であった。
 そして、鏡花の後ろから恵がそっと抱きつき、鏡花の胸を乱雑に揉んでいた。
 あの手つきは、セックスをするようなものではなく、千草と同様にイカせっこバトルをするときのものであった。
(やっぱり……恵とやっていたんだ……)
 肩を落とした千種の心の中に、大きな穴があいたようであった。愕然とし、1歩2歩と弱い足取りで千草は電柱の陰から出てきた。
 そうして、再び鏡花の部屋に目をやったとき、
 千草と恵の目が合った。
 一瞬二人の動きが止まり、お互いの瞳が張りついたように見詰め合った。
 短くも長いようなときが流れたのだった。
 

 それから数日。鏡花を何とか取り戻そうと必死の千草は何度も鏡花に話しをかけていた。
しかし、鏡花の方はいつもと違い、なにかそっけない態度であった。
 鏡花にしてみれば、恵と戦ったことで千種を裏切ったような気分があったのだ。そのため、その戦いを千草に気取られたくないため、鏡花にそっけない態度を取ってしまったのだ。
「鏡花。あのさあ、この間のことなんだけど……」
「うっ、うん。ゴメン。ちょっと職員室呼ばれたから……」
「そ、そう……じゃあ、放課後に……」
「ゴメン。用事があるから早く帰らないといけないんだ……」
 鏡花自身、こんな下手ないいわけでいいのだろうかと思ったが、今はこれしか出なかった。
 じっと、千草が鏡花を見つめた。
「なっ、なに……千草。そんな怖い目で見ないでよ」
「恵なのね……」
 静かな声で言う。
「えっ? 何のこと……」
 口ではとぼけながら、あからさまに動揺してしまった。
「彼女と、なにやってるのよ!」
 思わず叫んでしまった。
 このとき教室には誰もいなかったため、誰にも聞かれることがなかったのが幸いであった。
 千種は思わず鏡花につかみ掛かってしまいそうな勢いが合った。
 そんな危険を感じた鏡花は、
「と、とにかくゴメン」
 そう言って、逃げるように教室から走り出していったのだった。
「バカァ」
 一人残された教室でつぶやく千草。
 そんな様子を窓の陰から見つめる恵に、千草は気づくことがなかった。


 またまた数日後。
 この日は体育祭があり、運動場にはさまざまな種目で生徒たちがしのぎを削っていた。
 女子高校と言うこともあり、さほど危険な競技はないのだが、男子がいないぶん花があって、さわやかなものであった。
 この日ばかりは、千草も鏡花も十分に楽しんでいた。
 千種の方は、自分の出場する競技が午前中に終っていたので、後は、自分たちのクラスの子を応援するだけであった。
「西村。すまんが職員室からストップウォッチを持っていてくれんか」
「はい。わかりました」
 教師に言われ、千草は校舎へとはいっていった。
 そのとき、下駄箱で下履きと上履きを履き替えるのだが、千草が自分の下駄箱を開けると、1枚の手紙があった。
 それを開いてみると、
『二人だけで話がしたいので、体育館に来てください。ずっと待ってます』
 と書かれてあった。
 字体には覚えがないが、千草には二人だけで話しがしたいという言う人間は、鏡花しか思いつかなかった。
 飛び上がらんばかりに喜んだ千草は、すぐにストップウォッチ教師に届けると、鏡花が待つ体育館へといった。
 今日の体育祭では体育館は使われておらず、二人っきりで話すにはもってこいの場所であった。
「鏡花……いる」
 千種が体育館を覗くと、真っ暗の中にマットが敷き詰められていた。
 千種はそれに構うことなく入っていった。どうせ、前日に体操部が練習をしてそのままにしてしまったのだろう。
 千種が体育館の真ん中あたりまでは行くと、

 ガシャーン、
 
 一つしかない扉が閉まる。
 体育館は真っ暗になり、一寸先も見えなくなる。
 一瞬不安に陥る千種。だが、すぐに電気がついた。
「恵……」
 千種の目の前に表れたのは、あの恵であった。
「まさか、あなたがあの手紙を……」
 恵は頷いて、
「そうよ、千種。あなたと一対一で話がしたかったの」
 二人の間に、どよどよとした重苦しい雰囲気が流れてくる。
「単刀直入にいうわ。鏡花と別れて欲しいの」
 その言葉に千種はムッとする。
「いやよ。千種は私の立った一人の友人なの。簡単に別れられないわ」
「そう……でも私にとってもかけがえのないのない友人。いえ、親友なの。だからお願い」
 心底鏡花を大切に思っているのだろう。邪念などはまったく感じられなかった。もしこんな態度でお願いされれば、どんなことでも千種は了解をしたであろう。しかし、これだけは譲れなかった。例え、大金を積まれてもだ。
「いや、私だって親友だもん。別れられないよ……そんな話ならもう帰るから」
 と言って、千種は恵の横を通り、外に出ようとした。しかし、
「どいてくんない」
 千種の行く手を恵が阻んだ。
「いやよ。あなたに別れるといわせるまで、ここにいるわ……例え、力ずくでもね」
 恵がじっと千種を見つめた。どうやら、誘っているようだ。
「いいわ。こちらも、力ずくで、ここから出てやるわ」
 二人とも、フウ、吐息を抜いた瞬間、一気に組み合った。
 手四つで、激しく相手を押す。
 千種は水泳部に所属しており、力には少し自信があったのだが、二人の力は互角であった。
 体操着姿の二人の女子高生はお互いを押し倒そうと必死だ。
 だが、一瞬の隙をついた恵は千種の後ろにまわって、スリーパーをかけた。
「うっ、ウゥゥゥウゥ……」
 千種から苦痛の表情が浮かんだ。
「どう、苦しいでしょ……」
 恵は千種の首をを左右に振って、奥へと腕を入れていく。
「調子に乗らないで」
 千種が恵の腹にエルボーを入れた。
 たまらず恵は千種を放してしまった。
「ウッ、ゥゥゥゥ……」
 恵は腹を押さえて苦しそうだ。
「ゴホゴホゴホ……」
 千種も首を押さえている。
 そして、再び二人は見合った。
 先に動いたのは千種の方であった。千種は、捨て身で恵にタックルした。
 後ろに倒れる恵、さらに千種はマウントポジションを取ろうと、恵の上に乗って、移動をする。
 恵もそうはさせないと、体を入れ替えようとするが、うまくいかない。それでも、仰向けながら、手足を使って、マウントポジションを取られないでいる。
 二人は見る見る汗をかいて、体操着や、ブルマがうっすらと湿気ってきた。さらに、千種と恵が移動すると、たびたび、胸と胸が触れ合ってり、太股が相手の股に当たったりする。
 そのたびに、あえぎ声が上がりそうになってしまう。
 恵の抵抗もあったが、千種はついにマウントポジションを取ってしまう。
「さあ、覚悟して」
 千種は手をグーにして振り上げた。
 下にいる恵は千種の髪を引っ張ろうとするが、千種の髪は短くつかみにくかった。かわりに体操服を引っ張った。
「キャ!」
 うつぶせに倒れる千種。その背中に恵が乗る。
 千種は背中越しに恵の胸が以外に大きかったのを感じた。
 千種は恵を振り下ろそうとする。恵も振り落とされないようにと、しっかりと、千種に捕まる。
「おりてよ。重いよ」
「何よ、千種の方が重いわよ」
 そのまま、二人が暴れ回った。そして、次の二人の行動は同じであった。鏡花との戦いで自然にやっていることをやってしまったのだ。
「ウッ……」
「あっ……」
 二人同時に、うめき声が上がった。二人の手が、ブルマの中に入ったのだ。
 二人はそのまま手を突っ込んだまま、お互いに向き合った。
 初めて触ったお互いのアソコに二人は興奮を覚えた。
「フフフ、同じね」
「そうね。こっからは、鏡花と戦っている時みたいにやらない」
「いいよ。早くやろうよ……」
 二人はそのままの格好で指を動かし始めた。
「アッ。いい……恵……上手……」
「そ、そっちだって……」
 そして、空いている手でブルマを下げようとする。


 その頃、鏡花は自分の種目を終え、待機所に戻ってきた。
 しばらく、自分のクラスを応援していたのだが、まわりを見たとき、千草と恵の姿がないのに気がついた。
「ねえ、千草と、恵知らない?」
 鏡花は近くにいたクラスメイトに聞いた。
「さあ、そう言えば見てないわね……まあ、あの二人が一緒にいるとは思えないし……」
 クラスメイトは冗談半分に笑った。
 恵が転校してしばらくたってから、千草と恵の仲が悪いという噂が流れていた。
 クラスメイトたちは冗談半分で言っていたのだが、鏡花はその言葉を聞いていやな予感がしていた。二人の仲が悪いとは思っていないが、決していいものではない。実際に、千草も恵も、クラスでは利発で元気が良かった。しかし、なぜか二人が話している所は見たことがなかった。そのためであろう、二人の仲が悪いという噂が流れたのも。
「ねえ、千草か恵。見なかった?」
 鏡花は辺り中に聞きまわった。
「ああ。そう言えば、恵が体育館の方に向かったのをみたなあ」
 その答えががえられたのは、となりのクラスの子に聞いたときだった。
「今日って、体育館って使わないじゃない。何の用かなって……」
 鏡花は最後まで聞くことなく、走っていった。
(私が悪いんだ。私が、二人にちゃんと説明しなかったから……)
 鏡花は自責の念にとらわれながら、走った。
 鏡花自身。二人との戦いを楽しんでいた。二人は性格上とても良く似ていた。そのためであろう、鏡花があのような戦いを二人にだけできたのは。二人は鏡花にとって太陽のようなものであった。中学の時は恵が、高校では鏡花である。その両名が鏡花を明るくさせてくれた。しかし、太陽は天に一つしかないはずなのに、鏡花の中には二つになってしまった。その罪が鏡花を襲ったのだ。
 実際の所、鏡花は二人に今までのことを話そうとした。しかし、それができなかった。先程も述べたが、二人の性格は似ていた。似ている性格同士の人間はS極とS極のように反発する。鏡花はなんとなく二人が合わないと思っていた。もし、話せばどちらか片一方を選べといわれるのが怖かった。選べるはずがない。そんなことも合って、先延ばしにしてしまったのだ。
(お願い、なにもなくって)
 二人が喧嘩するのを見たくない。
 鏡花は走った。全力で走った。鼓動が張り裂けそうになっても走った。
 そして、体育館のドアを開けた。


「鏡花……」
「きょ、鏡花……」
 いきなりの来訪者に千草と恵は動きが止まってしまった。
 二人はお互いのアソコに手を入れたままだ。
 顔は赤らみ、今まで闘っていたのがはっきりとわかる。
「そ、そんな……」
 鏡花にははっきりとわかった。二人が今までやっていたのは、いつもの自分との戦いのようなものではなく、相手を憎しみあった戦いであったと。
 鏡花の分厚いメガネの奥からは、ぽろぽろと涙がこぼれてくる。
 二人は手を抜くのも忘れて、鏡花を呆然としてみていた。二人にもわかっていた。鏡花がなぜ泣いているのかを。
「鏡花……聞いて。話を……」
「そ、そうよ……」
 二人にも言い分はある。二人にとっても、鏡花はかけがえのない人。それを他人に取られたくない。
 ようやく二人はお互いを離し、鏡花に近づこうとする。指にはネットリとした汁がついている。
「こないで!」
 鏡花はそう一言叫ぶと、飛び出していった。
「鏡花!」
 千種と恵は同時に叫ぶと、鏡花を追って行く。
 幸い、体操着は乱れていなかったのでさほど目に付くことはなかった。
 だが、二人は鏡花の姿を見失ってしまった。
「ねえ、鏡花見なかった」
 今度は千草と恵がクラスの子に聞くことになった。
 クラスの人間は千草と恵が一緒にいることを意外に思いながら、
「えっ、さっき鏡花も探してたよ」
「うん、そうなんだけど、今、たった今見なかった?」
「え? 見なかったけど……」
「そう、ありがとう」
 そうして、二人は聞きまわったのだが、誰も鏡花の居場所を知っている人間はいなかった。
 そして、二人があきらめかけた頃。

 キキッーーーーーーーーーー。         ドン。

 車の激しいブレーキ音と共に、なにかがぶつかった音がした。それは体育祭の騒がしい喧騒の中でもハッキリとしたものであった。そして、二人のいやな予感はあたってしまった。

 それから二日後。
 激しい雨の中、山本鏡花の葬儀がおこなわれていた。
 即死であった。狭い路地を通行してきた車に、左右の安全を確かめなかった鏡花が突っ込んでしまったのだ。
 クラスメイトが集まり、すすり泣く声がする中、千草と恵の姿はなかった。
 二人は鏡花の部屋に来ていた。
 鏡花の家族には、鏡花に貸した物があるといって、入っている。すでに家族は会場に向かって、家には二人だけしかいない。
 別に二人があわして、ここに来たわけではない。
 自然に足が運んだのだ。
「やっぱり私たちにはこうして、鏡花を送るのが一番ね」
 千種の言葉に恵は頷いた。
 今の二人にはこれしか考えられなかったのだ。いや、自分たちと鏡花をつなげる一番太い物がこれであった。
 あの時と同じように、体操着姿になった。
 そして、アソコに手を入れた。
 前の戦いの時に鏡花が入ってきたのと同じ体勢である。
 二人はお互いの眼を見つめ、同時に頷いた。
 と同時に、指を動かしはじめた。
「あっ、アアアア!」
「イッ、気持ちイイ……」
 二人とも、すぐに、下着ごとブルマを脱がせてしまう。
 千種はしゃがむと、恵のふくらはぎを腕で払った。
「きゃっ!」
 仰向けに倒れ込んでしまう恵。千種の目の前には露わになった恵のアソコ。
「わー。ビショビショだ」
 千種はそこに向かって舌をはわせた。
 甘い香りが千種の口の中で広がる。
「あっ、やめなさいよ」
 恵は足蹴りで反撃をする。
「ウワ!」
 千種は肩をけられ後ろに倒れ込んでしまう。
「このう」
 恵は千種の上に乗る。
「やったね!」
 二人とも、上になったり下になったり転がりまわっている。
 お互いに時折、意図的に胸と胸とあわせたり、アソコをあわせたりしていく。
 そして、横になったまま動きを止め、アソコに指を入れ動かし出す。
「千種。ベチョベチョだよ」
「アアッン。恵だってこんなに濡れているじゃない。」
「私、鏡花にこんなことしたのよ」
「私だって、こうやったんだから」
 恵は千種のアソコから指を抜くと、逆になり、シックスナインの体勢にした。
「アソコの汁がなくなるまで吸って上げる」
「受け手立つわ」
 二人はチュウチュウと音をたてながら、お互いのアソコを吸い始めた。
 舌を出したり入れたり、あふれる汁を吸い続ける。
 それは、息が止まるまで放さない獣のようでもあった。
 千種によって吸い上げられた恵の愛液が千種のの頬を伝って床に流れ、恵によって吸い上げられた千種の愛液が恵の頬と伝って床に流れる。板敷きの床に二人の混じった愛液が泉を作る。
 すでに、いつもの鏡花との戦いならば、すでにいってしまっていたであろう。しかし、お互いに負けられない戦いであった。ここで負けてしまっては、今まで積み重ねてきた鏡花との思い出が、相手の思い出に負けてしまいそうであったからだ。
 このままでは、お互いがイッて終わってしまう。そう感じた千種は恵のアソコに歯をたてた。
「痛い!」
 悲鳴を上げる恵。けがをするほどに強くは噛んでいないが、それでも恵の動きが一瞬止まった。
 その間に、千種は後ろにまわって、恵の胸をもむ。
「どう、気持ちイイ?」
「誰が、千種の愛撫なんか。」
 恵は必死に強がる。
「そう、ならこうして上げる」
 千種は恵の乳首をコリコリとつまみはじめた。(これは、実際には痛いそうです)
「ああ。ダメ。やだ、負けないんだから」
 恵は後ろに手を回し、千種のアソコに爪を立てた。
「いたぁぁぁい」
 思わず手を離してします千種。
 恵は、千種に正面に向くと、すっと、キスをした。
 ただのキスではない。しっかりと、相手の口内に舌を入れ、千種の舌に自分の舌を入れ、自らの唾液を相手の口に送り込む。千種も同様に、恵の口内に舌を入れ、唾液を送り返していく。
 二人は体を寄せ合って、胸と胸、アソコとアソコをひっつた。口からはお互いの混ざった唾液が、流れ落ちていく。
 唾液だけではない。千種の太股からは、恵から流れた愛液が自分のと混じって流れ、恵の太股からは千種から流れ出た愛液が自分のと混じって流れ出す。
 まるで、二人の人間が一人の人間になったようである。
 二人はお互いにキスを続け、頭がぼんやりとしてきた。
 遠のいていく意識の中、かつての鏡花との戦いを思い出していく
(ああ……鏡花、なんでなんで!)
(鏡花。いつまでも一緒に戦おっていったのに、)
 ぼんやりとする意識の中、二人は鏡花を見た。いや、お互いの顔が鏡花に見えた。
「きょ、鏡花。勝負よ」
「最後の決着をつけましょ」
 二人はしゃがみ込むと、アソコとアソコをあわし始めた。貝合わせだ。
 激しく、自分の腰をグラインドさせる。火花が出るほどの勢いだ。
「あっ、アアアアアアアアアアアアアアア!」
「ダ、ダメェェエェェッェェェェェェェェェ!」
 二人は同時にイッてしまった。お互いに前にもたれかかるように気絶する。
 二人の夢の中で鏡花は笑っていたのだった。



 あとがき

 どうもすみません。
 いきなりあやまってしまいました。今回は、ただのバトルに少しあきてしまいました私が、こんなのもどうですかと思って、書いてみましが、私ごときの文章力ではこの程度が精一杯でした。
 初めの予定では、もっと恵にも注目するつもりだったのですが、あまり登場しませんでした。また、最後はどちらかが勝って決着がつく予定でしたが、書いているうちに、千草、恵と両方に愛着がわいて、引き分けの結果にしてしまいました。(そう言えば、電車でファイトも引き分けでした)ビデオなどを見ているぶんでは、決着がつく方が絶対にいいと思いますが……
 また次回は、一度見てみたい、アニメのバトル(予定では、サクラVSササミ。なんか、どんどんロリにはしっていきそうな気が……しかも、天地無用は少し見ただけで、サミーは見たことがない)なんかも書いてみたいと思っています。(違う可能性も大)
 この21世紀は、もっとキャットファイトが増えるといいですね。

 

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