シーン8/T市・ビルの屋上「……探したよ、フィリア=ブルースカイ」
「……シェリー=ミゲル……ッ!」
ある春の日の夕方。ビルの屋上で、2人の女性が10mほど離れて対峙していた。
片方……フィリアと呼ばれた女性は、金髪ロングで、長身のスレンダーな美女。髪の隙間から覗く耳は、何故か人間の物とは思えない程鋭く尖っている。まるでファンタジーに出てくるエルフのようだ。服装も、ファンタジーっぽいレオタードである。そして、左右の耳に白と黒のイヤリングをしていた。
もう片方、シェリーと呼ばれた女性は、同じく金髪だがショートで、なによりもその、モデルが裸足で逃げ出すような美貌とプロポーションが特徴的であった。服装はボンテージ風でビキニ状のラバースーツで、胸には黒いサクランボのマークが縫い取ってあった。
「さあ、そのイヤリングを渡してもらいましょうか?」
フィリアに詰め寄るシェリー。
「誰が、貴女達ブラック・チェリーなんかに!」
「ふふっ……良いのよ、なら力づくでも渡してもらうから」
その言葉が響いた次の瞬間、すっとシェリーの腕がフィリアの首に絡まった。
「遅いわ」
「えっ……」
繰り返すが、2人は10mほど離れて対峙していたのである。その距離を一瞬で詰めた上に後ろに回り込み、さらにスリーパーを極めるなど人間業ではない。
「ほら……渡してもらうわよ、イヤリング……」
「あっ……んはっ……誰が……あぁんっ……」
技を極めたまま胸を揉むシェリー。その巧みな愛撫に、熱い吐息を漏らすフィリア。レオタードの股間の部分にはあっという間に染みが出来始め、全身が真っ赤に染まる。
「ほら……どうする気?」
「あっ……あひゃっ……いや……ぁ……」
ピクピクと身体が震え出すフィリア。だが、その左手がゆっくりと耳元に伸びる。
「貴方達なんか……に……渡さない……っ!」
「何っ……あっ!」
フィリアは、白い方のイヤリングを外すと、いきなり遠くへ投げ捨てた!
「しまっ……このっ!」
慌ててフィリアを投げ捨てて、それを追うが、イヤリングは下の道路に落ちていった。人通りの激しい通り、表立って探すわけにはいかない……こんな所にビキニで来るから悪いのだ。
「……貴様っ!」
「ふふっ……いったでしょ……渡さないって……」
「……っ!」
怒りに震えたシェリーは、フィリアの顔の上に立つ。
「貴様の顔……座布団にしてやる!」
そのまま、その豊満なヒップや股間でフィリアの顔を擦り潰していく。激しく腰を振ってグラインドさせるシェリー。
「むぐ……むぐっ……」
ビクッ、と身体を跳ねさせて意識を失うフィリア。だが、怒りをぶつけるように、シェリーはフェイスシッティングを続けた。
シーン9/その下の道
その頃。神崎玲美は、生徒会の仕事を終え帰宅する途中であった。
「良い天気……日射しが気持ち良いな……」
と、足に何かが当たる。
「……ろ?」
拾い上げてみると、それは白いイヤリングだった。
「なんだろ、これ……?」
とりあえず拾って、明日警察に届ける事にした。
シーン10/秘密結社『ブラック・チェリー』日本支部
「お帰りなさいませ、シェリー様」
メイド服の女性達が、一斉に頭を下げる。その間を通って、シェリーは奥へと進む。と、紫の髪の美女が話しかけて来た。科学者なのか白衣を身に纏っているが、その隙間からは、真っ赤なビスチェとそれに包まれたグラマラスな肢体が見える。
「随分と機嫌が悪いようですね、失敗なされたのですか?」
「カティナか。……失敗したわけでは無い。闇の宝玉は手に入れた」
そう言って無雑作に黒いイヤリングをカティナと呼ばれた白衣の美女の方へ投げた。
「……なるほど」
「光の方も、すぐに手に入るだろう。あれの使い方を知っている人間などそうはいまい。」
「……では、『キャット』を差し向けましょう」
「そうだな……そうしておけ」
「はっ……」
そういって、カティナは闇の中に消えた。
シーン11/S駅前交番
「ふぅ、暇ねぇ……」
駅前交番に駐在している婦警、御崎明日香は、椅子に座ってぼんやりと溜め息をついた。他の警官は丁度パトロールなどに出かけていて、明日香1人である。
「何か起こらないかしら……」
「起こりますよ、すぐに」
「え!?」
警官としては、不謹慎な呟きに、しかし答が帰ってきたので慌てて振り返る明日香。と、そこにはいつの間にかカティアがいる。
「あ、あなたは……」
と、突然カティアは、明日香の目の前に淡く、黒く輝く手錠を突き出す。
「……」
途端に、明日香の目が虚ろになって、腕がだらりと下がった。その虚ろな目は、手錠に釘付けになっている。
「この『キャットアイテム』……これには、人間の煩悩を増幅する効果がある……そして、このアイテムを体内に埋め込む事によって……!」
説明的なセリフを明日香の身体に手錠を押し付けるカティナ。すると、手錠は身体の中に吸い込まれていく。すると、明日香の身体から黒い光が発せられる。
「その煩悩が最大限に増幅され……女性型モンスター『キャット』が生まれでる……さあ、現れよ、【警官女】!」
そのまんまじゃん、名前。
それはさておき、その手錠が身体に埋め込まれた途端、明日香の身体が闇に包まれた。
シーン12/翌日・S駅前交番
「すみませ〜ん」
翌日は日曜日だったので、玲美は朝早く、イヤリングを届けに交番を訪れた。が、誰もいない。
「……すみませ〜ん…………誰もいないのかな?」
「それを渡しなさい!」
「は?」
「そのイヤリングを渡すのよ!」
「な、何〜!?」
突然、後ろから、婦警さんが襲い掛かって来た。普通の婦警さんならば、玲美だって素直にイヤリングを渡しただろう。だが、その婦警さんは、怪しかった。何が怪しいって、制服のかわりに青いビキニを着ていたのである。ああ、怪しい。……まあ、色っぽいけどさ。胸、大きいし。でも、そんな婦警さんを信用しろというのは無理な話である。だから玲美も拒んだ。
「い、嫌ですっ!」
「渡しなさいったら渡しなさ〜い!」
と、突然警官女は手錠を飛ばして来た。
「きゃっ!」
かろうじてかわす玲美。だが、警官女は続けざまに手錠を飛ばしてくる。
「ど、どっからでてくるのよ〜!?」
自分の『キャットアイテム』ならいくらでも生み出せるのが『キャット』の特殊能力の1つだが、無論玲美にそんな事はわからない。
「あっ……」
そのうちの1つが、玲美の腕を捕らえた。そのまま、椅子に固定される玲美。
「これで逃げられないわよぉ」
「くっ……」
手の中のイヤリングを見つめる玲美。これを渡すと、何だか大変な事になりそうである。といっても、ここから逃げられそうにはない……考えた玲美は……
「……えいっ!」
玲美は、イヤリングを飲み込んだ。
「これで、取られないわよっ!」
「なっ……何故それの使い方を……」
「え?」
その瞬間、辺りが光に満ちた。
シーン13/光の空間
「何……?」
(力が……欲しいの?)
目を開けていられない程の眩い光の中で、玲美の前に、光り輝く女性が現れた。……参考までにいっておくが、玲美は目を閉じていないので、それを見る事ができたのである。目を開けていられるのは魔法の光だからである。何故魔法の光だと目を開けていられるかって?そんな事は知らん。
「あなたは?」
(私は光の精霊『シエラティア』。シエラ、と呼んで頂戴)
「シエラ?その貴女が、何でここに……というより、精霊って?」
(……?あなたは力が欲しくて私を体内に招いたんじゃないの?)
「体内に招いた……じゃああなた、さっきのイヤリング!?」
(そう……私はあのイヤリングの中に閉じ込められていたの。そして、あなたが私を呼び覚ました。ペンダントを飲み込み、私を身体の中に招き入れる事で。今、私とあなたは一つになる事が出来る……)
「一つに?」
(そう、今から言う呪文を、後について唱えて……)
そう言うと、シエラは朗々と呪文を唱え始める。
(我が手には光……正義を示す白き光!)
玲美も後に続く。
「我が手には光……正義を示す白き光!」
(悪を倒す力を……この手に!)
「悪を倒す力を……この手に!」
そして玲美の口が自然と呪文を刻み始め……シエラと唱和するように、最後の呪文を叫んだ。
『ホーリー・ミューテーション!』
そして、光が溢れた。
シーン14/S駅前交番
光が、晴れた。
「な……何が……」
目を開けた警官女は、手錠で繋がれていたはずの玲美がいない事に気付いた。
「ど、どこだ……」
「ここよ!」
声は、後ろから聞こえた。慌てて振り返る警官女。そこには、水色ビキニの美少女がいた。
「光の精の名の下に、悪に下すは正義の鉄槌!魔法の女闘士ミラクル・レミ、ここに推参!」
……敵の目の前で言うと、あんまり格好良く無いのだが、それは秘密だ。
「ミラクル・レミ!?」
「そう……悪を倒す正義の魔法少女よ!」
「ふん……ふざけた事をっ!」
睨み付けると、レミにとびかかる警官女。
「そぉらっ!」
鋭いパンチがレミの顔面を襲う、が……
「ミラクル・バリアーッ!」
バリアといいつつ地道なガードで、警官女のパンチを受け止めるレミ。さらに……
「ミラクル・バストアターックッ!」
「きゃあっ!」
魔法を帯びたバストを突き出して警官女に体当たりするレミ。そのバストアタックの直撃をモロに受けて、吹き飛ばされる警官女。
「追撃の、ミラクルヒップアターックッ!」
「きゃあっ!」
それを追撃するようなヒップアタックが、警官女の顔面に炸裂する。が……
「しまった……」
「捕まえた……!」
ヒップアタックを喰らいながらも、しっかりとレミを捕まえる警官女。そのまま……
「ジャーマンスープレックス!」
「きゃああっ!」
床に激しく叩き付けられる。
「っつぅ……」
魔法の力のおかげでダメージはあまり無いとはいえ、痛いもんは痛い。さらに、倒れた玲美にのしかかる警官女。
「ほぉら、大きな胸しちゃって……」
「あぁんっ……」
ゆっくりと胸を揉み始める警官女に、顔を赤らめるレミ。
(気をつけて、性的絶頂に達すると変身が解けちゃうから)
「何それぇ……あんっ」
シエラの警告に、悶えながら応対するレミ。
(逆に性的絶頂に追い込めば、キャットを……人間から変身した魔物を、元の姿に戻す事ができるの!)
「んっ……やってみる!」
というと、レミは手に魔力を集中させる。
「ミラクル・ハンド!」
その手で、胸を揉みはじめるレミ。
「んっ……上手い……?こんな、小娘が……」
「そりゃあまあ……結構慣れてるしね……」
複雑な笑みを浮かべつつ、警官女の胸を揉み続けるレミ。次第に、警官女の力が弱まってくる。
「今だっ!」
「しまっ……」
すかさず上下を入れ替えるレミ。その手が、警官女の股間に伸びた。
「あっ……」
「行くわよ……ミラクル・フィンガー!!」
魔力を込めた指の壮絶なピストン運動が、警官女を襲う。
「それそれそれ〜っ!」
「あっ……ああっ……ああああああああっ!!」
甲高い悲鳴を上げてイキ果てる警官女。その瞬間、その身体がブレる。
「何?」
(キャットアイテムと人間が分離するの。これで、この人は人間の姿に戻るわ)
その言葉通り、警官女は、婦警さん……御崎明日香と、手錠に別れる。
(その手錠は回収して。後で浄化しないといけないし)
「わかった」
手錠を拾い上げるレミ。そして、転移の魔法を使ってその場から立ち去った。
「……うぅん……って……きゃっ!」
しばらくして、目を覚ました明日香は、自分が全裸な事に気付いて真っ赤になったりしたが、それは別の話である。
シーン15/神崎家・玲美の部屋
「それで……」
玲美は、体内にいるシエラに話しかけた。ちなみに、すでに変身は解いている。
「さっきはノリでやっちゃったけど、結局、何がどうなってるの?」
あんな事ノリでやるなよとか言う事は、あえておいておく。
(私達精霊族は、目に見えないだけで地球のあらゆる所に生息していたの。ところが、それを悪の秘密結社『ブラック・チェリー』が悪用しようとしたのよ。精霊の存在に気付いた『ブラック・チェリー』は、2組のペンダントを作り上げ、片方に私を、片方に闇の精霊ルナシアを封じ込め、それを兵器として使おうとした。けど、私達を作った魔術師、フィリアが、私を逃がしてくれたの。それをあなたが拾った、ってわけ)
「ふぅん……何かとんでも無いもの拾っちゃったのねぇ」
(というか、世界を救えるのは、もうあなたしかいない、って事よ)
「……私が?世界を救う?」
(そう。あなたしか、いないの)
「……」
なんか、引き返せない所に来ちゃったなぁ、と、玲美は頭を抱えた。
何だかんだで、これが魔法少女誕生の顛末である。
次回予告
はぁい、玲美の親友の鈴城梨香です♪
さてさて、赤蘭女学院は一学期のメインイベント、体育祭の時期。ところが、陸上部のエースである風見先輩の様子がおかしいの。いったい何があったのかはわからないけど、これはなんとかしなくちゃね。というわけで……頑張って、玲美。
次回、魔法の女闘士ミラクル・レミ・第三話『疾走・乙女心と体育祭』
さあ、みんなで一緒に、ホーリー・ミューテーション!
でざいなぁず・のぉと
はい、紫電の騎士です。第一話から結構間が開いてしまいましたが、ここにプリティー・ルナの第2話をお届けします。
さて、今回は設定解説編、だったはずなんですが……なんだか、あんまり上手く解説出来ていませんね。何故でしょう。……実は、シェリーとフィリアの戦闘、当初の予定では無かったんですよね。けど、それじゃ寂しいって事で追加したら、話がちょっとだらだらして来て、少し切り落としたらこうなりました。……まあ、書きたい事はだいたい書いたから良いかな、と。
ところで、お気付きとは思いますが、各話サブタイトルの最初に、二字の漢字がついています。……はっきりいって、ちょっと後悔しています(爆)なんか、ストーリー以上に、ここが一番悩むんですよね〜(苦笑)
今回、もとい、次回の『疾走』なんか、かなり無理してます。東京アンダーグラウンド(テレビ東京系のアニメ)のタイトルも同じように漢字二字が最初についてるんですが、あれは無理なくおさまってるので、あんな風にちゃんとしたいなぁと、思ったりしてます。
あと、もう一つ困ってるのが、予告編の人。このままだと第三回は誰が予告をすれば良いんでしょう(笑)
多分、第三話で他のキャラもうちょっと目立たせて、そのキャラがやる事になると思いますが。
さて、とりあえず今回で設定はだいたい出しましたので、次回からは本格的に魔法少女物になります。さて、どうなる事やら?
それでは、第三話でお会いしましょう。今度はいつになるだろ?
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