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第3章 強制参加〜下級生の罠〜




1 執行猶予期間〜偽りの安らぎ〜


デビュー戦から1週間、ロープに擦られた大切な部分の痛みがまだ癒えぬ通代はこれまでのいきさつを教員か父に話してしまおうかと悩んだ。話そうとしては躊躇する。美香たちのこれからの責めがどんなものか、何とも判断がつかない。あの試合で責めが終わったのなら、何もことを荒立てる気にならない。いじめの事実が発覚すれば向こうも痛手を負うのだ。そんなにひどいことはもうしてこないのではないか。
しかしこれからもっとひどい目に合わされるのなら、被害が大きくならないうちに手を打たねば。だが、そんな彼女に思いもよらない出来事が起こりだしたのである。

「渡辺さん、お弁当いっしょに食べようよ」

とりたてて不良っぽくもない4,5人の生徒が通代を囲んで楽しく昼食をとる。美香も智美もとくにとがめる様子はない。
体育の授業で普通のブルマーを履いていても、どうっていうことはない。もう終わったんだわ。通代はそうひとりごちて、平穏な学園生活への希望を取り戻したかに見えた。春江もややよそよそしいが話してはくれる。しかし何だか心配そうに自分を見ているのが気がかりだ。
それでも

「宣言書なんて…・、あれを読ませるだけで気が済んだのよ」

と生来の色気と清純さを取り戻しつつあった。そしてもう誰かに相談しようなどという考えはどこかに飛んでしまっていた。偽りの安らぎとも知らずに…・。
7月上旬のある夜、大森邸ではクーラーを効かせてミーティングが行われている。

「プリティーのやつさ、何だか哀れだよね。何にも知らないでさ」

尚子がチョコパイと烏龍茶を両手に持って言う。

「でも元気になってきたから、いいじゃない。うちらはさあ、その辺の、すぐ新聞ざたになって、親が呼び出されて“ハイおしまい!”みたいなものとは違うんだから。目指すものが」

と美香は計画性を重視するタイプだ。だがデビュー戦の相手を努めた智美は、

「プールの授業なんかさ、男子がいなかったらやりたい企画はいっぱいあるんだけどなあ。みんな結構我慢してるよ、美香」

とやや不満そうだ。美香の指示により、クラスメイトたちは故意に通代と仲良くしていたのだ。そして安易ないじめは一定期間厳禁であった。とくに男子の目のあるところでは、絶対彼女らはいじめの気配も見せない。このゲームに男子生徒あるいは男性教員を絶対介入させないというのが彼女らのポリシーなのだ。鈴木浩二は良いシーンに出会えないものかと、うろうろするのだが徒労に終わるばかりであきらめかけていた。そして彼の通代チェックは以前のように窓からの肢体観察に戻っている。

さて物語は夏休みが過ぎ、2学期が始まろうとしている青春の学び舎から再開されようとしている。実は1学期の終盤、通代は3人の男子生徒から言い寄られた。しかも3人とも女子からかなり人気のある生徒で、思い入れの強い何人もの女子を片想いにさせている面々だったのである。
大野の幻影にいまだ恋していた通代は、丁重に交際を断った。断り方がまた思いやりがあって丁重なので、男どもはさらに好意を増幅させてしまっていた。そんなものだから、既に2年生女子の間では、通代が気づいていないだけで、“通代憎し”の風がかなり強くなっていった。どこまでも大人し過ぎるため、女子の間で身近な感覚がなく、かえって男子からの“人気取り”の側面だけがクローズアップされてしまっていた。大人し過ぎるにしては、人気があり過ぎるところが、気に入らないらしい。そう2学期のK中学、秋の陣は噴火寸前だ。




2 下級生の視線


通代には、春から気になる視線があった。谷山くみという、長身で浅黒い、目のくりっと丸い美形の1年生のそれだ。いつも登校や下校の際に、時間を合わせているとしかいいようのない、付け回し方をするのだ。それだけならまだいいのだが、体育館へ体操服で向かう際もたびたび“見に来る”のだった。たいてい窓から視線を注ぐ浩二とは違って、至近距離からなので通代本人も気づかざるを得ない。Tバックブルマーを着用させられた際も、渡り廊下でかなり視線を注がれた記憶がある。
きゅっとしまった足首、柔らかで品のあるふくらはぎ、とろけそうな太股・・、といつも下から順番になめ回されているようでとても嫌だった。あれはちょうど大野と視聴覚室で会うようになったころであろうか。

「せ、先輩、あの、私1年の谷山くみといいます。え、英語を教えていただきませんか」

と急に話しかけてきたのだ。

「え、英語ってべつに、先生に聞けばいいでしょ」

とくに親密になる気はないという態度を匂わせて通代は答える。

「授業で、橋本先生がおしゃったんです。2年の渡辺さんの発音は最高にいいって。日本人くさい、開き直ったカタカナ読みでもなく、かといってネイティブをわざと真似るような嫌らしさがない、素晴らしい読み方だって」

通代とくみの英語担当は同じ教師だった。そして英語教師がそう言ったのは事実であった。通代の父は世界中を駆け巡る商社マンで外国人からの電話に、もちろん英語でも応対する。その言うべきはいい、へつらわず、かつ見下さない堂々とした感覚を彼女は慕い、見事に受け継いでいるのだった。そして彼女の発声は高学歴・国際派の女性にありがちな息の強さを感じさせない。

「お、お願いします。先輩」

というくみを通代は、

「ご、ごめんなさい」

とそれだけ言って振り切った。その頃通代は大野のことで頭が一杯だったのだ。くみは唇を噛み締めて、去り行く通代の肢体を見つめた。その瞳から明らかに“可愛さ余って、憎さ百倍”という意志が読み取れた。通代が応対した雰囲気は、くみにとっては“レズ版片想いの玉砕宣告”といったところであろうか。
そんなくみが女子の地下情報で通代のことを知り、美香に相談をもちかけた…・。




3 予感


9月の中旬、プールの授業も終わり、女子の体育はまた体育館で行われるようになっていた。彼女らの発育が急なこの時期、半数ほどの女子は水着姿を同性にさえ見られるのを嫌い、プールの授業を見学するので、体育館での体育は成績を取り戻すための大切な機会だ。まだ残暑厳しく、葉々の間からもれる日差しはかなりきつい。
さて嫌な予感がしたのは、美香が体育館へ行ってこれをある下級生に渡してこいと通代に体操着の布の鞄を押しつけていったときだ。知り合いの下級生に貸してやるのだという。次の時間の英語が自習であるので、皆がざわざわしている。そのなかで美香の命に背けない通代は、

「いったい何?」

と聞くのが精一杯だった。もう制裁は終わったはずなのに、まさかという感じだ。

「いいから行けばいいのよ、自習のプリントはちゃんとだしておいてあげるから」

そう美香にいわれ、通代は教室をでて、体育館へ向かった。すでに授業が始まっているところもあれば、まだざわついて教師がくるのを待っているクラスもあった。何もたいしたことは起こらない・・・・、心に言聞かせた彼女であったが、やはり美香や智美のあのニヤリとした表情を思うとどこまでも不安であった。
 校舎を出て体育館の近くまで行くと、にぎやかな声が聞こえてくる。バスケットボ−ルが体育館の床に響いている音、シューズが床と擦れる音、それに下級生たちの声が交わってざわめきを形成している。
 体育館の2つか3つの階段をのぼり、2、3人の生徒に

「あの、谷山さんは?」

と先刻美香が告げた下級生の名を言った。と同時に前述の春の出来事を思い出しハッとする。

「あら、おそかったんですね、みんな待ってたんですよ・・」

少し奥から、背が少し高く、やや細身だが、顔の輪郭のはっきりした美少女がでてきた。肌はやや浅黒い。日焼けして春よりさらに黒くなっている。だがその下級生はすでに体操服を着ているではないか。

「あ、あの、大森さんに頼まれてこれをわたしにきただけだけど、もういいみたいね」

通代が振り返ろうとするまでに、

「ちゃんと、先輩に用事があるんですよ・・」

となかば威圧的に谷山くみは返答する。通代は、今は毅然とした態度をとらねば、数学教師との噂で脅されてもビビッタところをみせてはだめだと、心のなかでつぶやき、指先に少し力をいれて、こぶしをにぎりしめる。
 くみのクラスの40人ほどの女子がそろそろと集まってきた。こちらも自習らしい。担当は飯島だ。




4 悪夢再び 


「先輩って、大野先生とキスしたって本当ですか?」

くみはややからかうように聞く。

「そんなの、でたらめよ、用がないんだったら、帰るわ」

毅然として、振り向いて帰ろうとする彼女に

「じゃあ、これは、なんなんですか、先輩?」

一枚の写真をひらひらと、うちわのようにして彼女の後にちらつかせる。

「あっつ・・・、」

通代は美香を妬んだ。許してくれたのでは…。しかしここでひるむわけにはいかない。シラを切りとおすのだ。

「こっ、これは、合成写真かなにかで、誰かのいたずらよ、先輩をからかうのもいい加減にしなさい。怒るわよ!」

いつになく自分を鼓舞した。しかし相手は上手だった。

「じゃ、これは合成ビデオですか?」

しっかりとした黒い台に乗せられてきた大きなテレビから流れているのは、美香達が隠し取りしたものだ。なんでこんなものが、ここに・・。美香がここまでやるとは。

「ほら、絶対本物よ、ほくろの位置がぴったりよ」

「ほんと、ほんと、」

「いい加減にしないと怒るのはこっちよ」

下級生たちは勝ち誇ったかのようにざわめく。通代はだまるばかりだ。うつむいて画面から目を背ける。

「先輩、このことだまっておいて欲しいですか?」

くみはこのときを待っていたとばかりに威圧的になる。

「…・」

ゆっくりうなずくのが精一杯の通代だ。

「そう、じゃ、わたしと勝負して、勝ったら、黙っててあげます、先輩が負けたら、わたしたちの奴隷になるんですよ、いいですね?」

選択肢はなかった。どうせ一度きりだ。奴隷なんて格好つけて言葉を使っているだけだと通代は念じた。それに相手は下級生だ、勝てるかもしれない。

「それは、大森先輩からのプレゼントです。先輩の、コスチュ−ムですって。着替えてきて下さい、先輩」

先刻美香から渡された布の袋の意味は、そういうことだったのだ。

「しょ、勝負って?」

「なに、気取ってるんですか。大森先輩から渡辺先輩がプロレス強いって聞いてるんですよ。ル−ルはわかってますよね。」

「…・・」

 美香や智美が体育の授業で強要したル−ルだ・・・。通代は誰よりも人と争うのが嫌な性格だった。テストの成績がよくても、人と比べたりはしない。そんな彼女のできたおとなしい性格は多くの男子生徒から大変好かれていた。しかし美香たちはかえってそういう状況をことごとく妬んでいたのだ。

「倉庫でどうぞ、先輩」

別の下級生に促されややうつむいて倉庫へ向かう。1学期に美香たちに写真を撮られた見たくもない場所だ。薄暗い倉庫に電気が付けられ、灯りがともる。そして袋の中身を取り出そうとする。

「こ、これは、・・・・」

体操着だとばかり思っていたが・・、白い水着に美香のメモがついている。

「(下級生の奴隷ちゃんにならないように、せいぜい頑張りなさい・・・リングシューズは倉庫にあるわ。)」

「ドンドン!」

「先輩、まだですか?」




5 超キチキチ水着


「い、いま」

メモをはずして着ようとするが、あまりの悔しさに涙がでそうになる。サイズがあまりに小さ過ぎるのだ。とりたてて小学生用でもなさそうだが、どうしたらこんな特注の水着ができるのか。前回のデビュー戦のコスチュームはまだ、通代の体の方が主な原因で尻肉のはみだしがあったのだが、今回はそうではない。足にビキニの下部分を入れて、はこうとするのだが、太股半ばより少し上のほうで、かなりきつくなり、なかなか引き上げられそうにない。大の大人が幼児のあまり伸びない繊維の水着をはくみたいだ。ひどい・・・・、通代はたまらず、いったんビキニを脱ぎ、パンティを履き直して制服のまま倉庫をでた。

「あ、あの、しょ、勝負はするから、体操着を持ってきているときにして」

くみに頼む。このときはまだ先輩モードだ。

「だめですよ、宣言書をお読みになったでしょ。早く着替えて、先輩」

「早くしないと、ばらしてもいいって受け取りますよ」

意地悪く他の生徒が言う。何か殺気に押されるように通代はまた倉庫に入った。哀しく観念し、再びビキニをはこうとする。先ほどと同じ位置まではなんとか引き上げられた。そしてもう少し努力してみる。だが結果的にいくら頑張ってみても、それは“水着らしく”ない履き物なのだ。股間の大切な部分を何とか見られない感じにまでは、キチキチにして上昇してくれるものの、お尻のすじの半分も隠すことができない。太股を締め付けて引っ張り上げるのも“限界”だ。前を引っ張れば後ろがもう尻筋のほとんどをあらわにしてしまい、逆に手で感覚を確かめながら、尻筋を何とか隠そうとして後ろを少しでも引っ張り上げれば陰毛が覗いてしまう。要するに引っ張り上げようがないのだ。ほとんど伸びない材質でもあるようだ。胸のほうもキチキチで、柔らかい両胸が押さえあってすし詰め状態。泣く泣く下級生に懇願して、後ろのホックを強引にとめてもらう。




6 テーマ曲


通代が思案していると、待ちきれない下級生たちが倉庫のドアを開け、プリティー通代を連れ出した。すでにリングが体育館の地下から上昇していきている。いないはずの飯島がまたレフェリーとしてリング上にいる。今回は縞模様のタンクトップに黒の皮製ビキニショーツを履いている。そして館内にはあるアイドル歌手の曲が、やや割れた音でスピーカーから鳴っている。

「先輩の入場テーマ曲なんですって」

ある下級生がいう。通代は戸惑いを隠せずに首を不安げにかしげる。

…・♪いつも貴方、通る道で今日も挨拶するだけなの、花言葉も分からないおばかさんね紙飛行機に書いて飛ばして…・

大泉今日子の「私の14才」という曲だった。何だか大野への想いを見透かされたようで恥ずかしい。

「さあ、全国9千6百万のキャットファイトファンの皆さんこんばんは。会場では既に選手の入場が始まっています。」

…・♪ねえ、髪をかきあげる癖が好きだわ、ねえ照れた目元が好きよ好き…・

好き、好きという言葉が連発される歌詞を聴いてある下級生がいう。

「大野のこと考えてるんじゃないの」

というのも春からしばらくの間、くみのクラスの担任は大野だったのだ。それだけにファンも多く通代への風当たりも察しがつく。

…・♪もう胸がパンクしちゃいそうだわ…

という歌詞のところでカメラはプリティー通代の胸元を一気にアップでとらえる。ガウンはなしだ。美香の演出だろうか、通代の髪には赤い造花がふわりと飾られていた。白で統一されたコスチュームに赤い花が冴えているが、倉庫をでたときからすでにうっすらと涙をにじませている。下級生の前で見世物にされる屈辱と恥辱に必死で耐え、四角いジャングルへ歩を進める彼女だ。

…・♪今日も赤いリラの花、髪に挿して待つわ、いつまでも…・

「先生、なかなかテーマ曲と選手があってますね」

「ええ、カメラワークもいいですな」

ゴホンゴホンと関東。




7 マイクアピール


谷山くみのリングネームはスーパーサディスト谷山。「吹けよ風、呼べよ嵐、やってこい雷、どんとこい台風」という長い題名のテーマ曲はある男子外国人悪役レスラーのものだった。いかにもSMルックのコスチュームでくみは入場する。網タイツ、ハイレグっぽい皮製の黒いワンピース水着。手には鞭。シューズも黒だが、スパイクのような気がしないでもない。
 くみにとって形態はどうあれ念願の“取り組み”なのだろう。智美とはまた違った笑みを浮かべる。

「さあ、恒例の試合前インタビューをお聴きください。スーパーサディスト谷山選手からどうぞ」

「まずは、念願のっといえばいいんでしょうか。今日はプリティー通代選手との対戦ですが」

「ありがとうございます」

「今日はどういう展開になるんでしょう?」

「私を好きになってくれれば、手荒なことはしません」

「ならなかったら?」

ニヤリとして、くみはその場を去る。

「続きまして髪にさした花も愛らしいプリティー通代選手です」

「プリティー通代選手。前回のデビュー戦では痛い敗北でしたが、今日の相手は後輩ですね」

「え、ええ」

「先輩の意地にかけても勝ちたいんじゃないですか?」

「は、はい」

「それにしても窮屈そうなコスチュームですねえ。お忘れになって小学生から借りてきたとか」

「…・・」

顔を赤面させて消え入りそうに下を向くしかない彼女だった…。

「さ〜て、リング上ではコールが終わり、両選手が向かい合います。95ポンドプリティー通代、118ポンドスーパーサディスト谷山!。おっとここでスーパーサディスト谷山がマイクを持ちます」

館内は一瞬静まり返る。

「先輩!…」

通代を見つめてくみは一息つく。

「私のことを好きだっていってくれたら、今ならまだ許してあげますけど…」

やや高慢さが感じられるが、最後の懇願という意志が明らかに声の色から読み取れる。くみは相手のコーナー近くまでいって通代にマイクを渡す。

「絶対に嫌よ、貴方なんか好きじゃないわ!」

通代はめずらしく語気を荒げた。本人は自覚していないが、女性同志の性的な関係をかなり生理的に嫌っていたようである。ましてや浅黒いくみはとても普通の後輩としても、彼女の趣味には合わないらしい。カメラは強気のプリティー通代の表情、そして全身を捉える。興奮してサラサラした前髪をかきあげる姿もまたいい。通代は肉付きがいいが、太股は細い。そのため股間の幅は見る者にとってかなり広く感じさせる。

「渡辺先輩ったら、大丈夫かしら。あんな啖呵切っちゃって」

「後で泣きべそかいても知らないわよ」

 下級生たちはくみのレスラーとしての凄さと通代に対する想いを知っているだけに、何か期待じみたざわめきをなす。

「先生!、プリティーはやけに強気ですね?」

「ええ、レズを毛嫌いするタイプでしょう。しかし谷山選手の目はもう選手モードの割合が増えてきましたよ」




8 キス


「勅使河原先生、スーパーサディスト谷山はリングネームを改めたんですよね」

「ええ、以前はレズビアン谷山と名乗っていてですね、相手を官能的にイカでることにかけては日本でも5本の指に入る選手です」

「それと関東さん、レスリングテクニック的にも素晴らしいものを持っているとか」

「うん、レズビアンと名乗っていた時代の試合をいくつか見たんだけど、グラウンドよし、とび技良しで、でも怒ったらすごい技を出すらしい」

「なるほど、それにしても先生、プリティーのコスチュームちょっとキチキチ過ぎませんか?」

下級生たちに尻筋を見せねばならない通代は、自分を鼓舞しつつも、今にも消え入りたい気持ちだ。そしてとても動きにくい。少し駆け足でもすれば太股の付け根までずり落ちてきそうな気がしてならない。緊張のためか何度も水着と肉体の間に指をいれて締め付け感を回避しようとするのだが。

「う〜ん、おそらくご指定なんでしょう」

「さあ、両者いったんコーナーに戻ります。スーパーサディスト谷山、プリティーの肢体を睨めつける!」

「カン!」

ゴングと同時に通代はリング中央を目指して歩を進める。くみは猛然と恋人に会いに行く。静かな館内に選手のシューズがリングをバタバタと叩く音が伝わる。

「(何とか勝たなきゃ…・)」

通代はそう言い聞かせて手をからめて体を組もうとする。

「さあ、両選手、手四つに組むか」

通代は先輩の意地を見せくみに覆いかぶさろうとする。この辺は実況しにくいところだ。手を何とかしてくみの肩に届かせようとして、足も一応踏ん張っている。

「プリティー通代、先制攻撃をかけたいところですが、かけたいところ…」

だがくみの手が、通代の手を軽々と払いのける。

「お〜っと!、スーパーサディスト谷山、いきなりキスしようとします!」

通代の首を抱えたくみは唇を奪おうとする。通代は顔をのけぞらせ、まさに嫌悪の表情を浮かべるのであった。




9 ボディーブロー


「先生、性的な攻撃は3分以降でないといけないのでは?」

「まあ、建前としてはそうですが。キスも4カウントまではいいということでしょう。ほらレフェリーが」

勅使河原顧問が言ったとおり、飯島が例のごとく注意らしきものをする。

「谷山、ノーキス、ノーキス!」

何度かロープブレイクした後も、執拗にくみは通代の唇を狙う。くみはどうも通代の方から、キスを求められたいらしい。心の底にそういう基準があるので、なおさら顔をのけぞらせて、嫌がられると無性に腹が立ってくるのであった。

「愛してくれたら手荒なマネはしませんから、ね。先輩」

そういって何度も通代の頭を抱えようとする。ボクシングのロープブレイクが何度も続く感じだ。

「いやあ、関東さん。いきなりのキス攻撃、なかなか決まりませんが。どうごらんになりますか?」

「う〜ん。力づくではなくってですね、求めてますね。」

「い、嫌、もう」

関東の解説にもあったように、くみの迫り方は強引さがあまりなかったため、通代にも反撃のチャンスができた。

「お〜っと、プリティーが平手でスーパーサディスト谷山の顔面を打つ!」

ぴしゃりという音が小さくする。効いてはいないのだが、くみにはショックだった。呆然と通代の瞳を見つめる。

「プリティー通代、間合いをとってリング中央へ。谷山は頬をおさえて何ともいえない表情!」

その間、通代は太股の付け根までずり落ちそうなビキニを再び引っ張りあげようとする。

「あっつ!、スーパーサディスト谷山猛然とプリティーに襲いかかる!」

「キスして、先輩、ねええ」

だが通代はリング中央で首を左右に振るばかりだ。

「何で言うことを聞いてくれないんですか・・」

そう投げ出したように言うとくみは通代をコーナーに追いつめて、方針転換だ。

「ボディブロー!!!が1回、2回、3回!!!」

「うう、…」

通代はにぶい声を胃から発する。柔らかな腹部にめり込むように放たれたそれらは、どれもが強烈で、通代がばたりと前のめりに倒れるに十分だった。1発目でダウンを奪うほど、かなり効いているので、2発目、3発目は駄目押しといったところであろうか。

「3分経過、3分経過・・」

と館内アナウンス。




10 オッパイクラッチ


「プリティー通代、うつむせのまま立てません。カメラは今苦悶の表情を捉える!そしてスーパーサディスト谷山、キャメルクラッチの体制から、プリティーのブラを強引に…・!」

“キチキチ”だけあって少し取りにくいが、通代のプワンとした胸がキャメルクラッチをされながら、晒される。

「先生、プリティー通代の胸というのはですね、垂れもせず張りもせず何ともいえませんね」

「ゴホン、ええ、私は学術的なキャットファイト論が専門ですので、解説できないこともありますから…」

「何言ってるんですか先生!?、プリティー通代のファースト写真集を予約してたでしょう!?」

と突っ込む関東。

キャメルクラッチの体制から、意識朦朧とする通代の胸を、何とくみは両手で揉みだした。

「う〜ん、これはオッパイクラッチですな」

胸を揉みながら通代の上体をのけぞらせる。通代は腹部の痛みが癒えぬまま、両手でくみの手を振り解こうとする。くみは平手で揉んでいるかと思うと、カメラがアップでとらえれば、人差し指で乳首を弾いたり、人差し指と親指でコリコリと圧力をそれに加えたりしているではないか。

「あああっつ、嫌、痛い、痛い」

くみの指先の圧力が強くなるたび通代は本能的に痛みの声を発する。

「関東さん、どうですか」

「谷山は体重を後ろにかけてますから、プリティーが解こうとしてもなかなか無理なんです」




11 ボディーへのキック


 オッパイクラッチから通代を解放すると、くみは彼女を仰向けにさせて、また乳房に手を伸ばす。今度は平手のまま乳首をなで上げる。通代は逃げたいのだが、先刻のボデイブローの痛みが徐々に重みを持ってきていて、持続的に彼女の腹部をキリキリと痛めつけるのであった。

「(何でこんな後輩なんかに胸を触られないといけないの…・。)」

お腹を手でかばいつつ通代は今更ながら悲運を怨んだ。だが心とは裏腹に感じてくる。

「ああ、・・」

「関東さん、プリティー通代全く手が出ませんね」

「う〜ん、先輩の意地にかけても何とか頑張って欲しいですね」

「ふふ、先輩ったら。やっぱり私のこと好きだったんでしょ。気持ち良さそうなあえぎ声だしちゃって」

くみは平手から揉みだす感じに手の動作をチェンジする。まずはやさしいバージョンだ。

「き、嫌いよ。貴方なんて・・」

通代は、腹部の痛みをこらえて、心は感じていないのだという意思表示をしたくて声に出す。

「何ですって!?もう一度言ってみなさい!」

くみはもう被虐感を煽るためのわざとらしい丁寧な口調を破棄し、リングネームどうりのファイトをするのか。

「谷山がプリティーを無理矢理引きずり起こして、コーナーに追い込んでどうする!」

通代の髪を鷲づかみにしたくみは、コーナーへ獲物をもたれさせると、膝蹴りをボディにぶち込む。

「うう、げぶっつ…」

通代はにぶい声を発し、だらんとリングにのめって倒れるしかなかった。腹部をおさえて通代は半失神状態だ。くみは通代の腹部に座り込むと、頬を打って目を覚まさせようとする。

「ほらほら、先輩、起きなさい。オネンネするのはまだ早すぎるのよ」

そうやって通代の意識を回復させてから、くみはビキニをずりおろしにかかるのであった。

「こんなキチキチビキニはいちゃって。挑発しなくっても愛してあげるのに」

くみは通代の大切な部分をひとさし指でパチンとはじくと、ビキニをずりおろそうとする。

「い、嫌、やめて…・、やめて」

ビキニを脱がされまいと通代は腰の方まで手を必死に伸ばして対抗する。

「お〜っと、リング上では、可憐なプリティー通代の純白ビキニがスーパーサディスト谷山によって剥奪されようとしています!」

くみは白いリングシューズからキチキチビキニを抜き取るのを邪魔くさく感じ、何と引き裂きにでた。

「あ〜っつ!、スーパーサディスト谷山、プリティーのビキニを今怪力で引き裂きにかかる!。視聴者プレゼントの企画はもろくも崩れ去ったか?!」

ビリっという繊維を引き裂く音が館内に立ち込める。

「いやいや、古猫さん、引き裂かれたものだからこそいいというマニアもいるかも知れませんよ」

勅使河原氏がそういうとすかさず関東が、

「それって先生のことですか?」

と突っ込む。

30秒ほどたって、何とか通代は白いリングシューズのみの格好にされることを逃れた。腰の部分がやや引き裂かれているが、まだ大丈夫だ。




12 ニードロップの失敗


 すんなり引き裂けないビキニにイライラして、くみは通代の腹部に再びパンチを入れる。

「ううっぷ…」

通代は苦悶の表情を浮かべて横たわり、足の裏が2,3センチリングをこする動作も緩慢だ。その緩慢なしぐさを見極めるようにくみは、コーナーポスト上段に登る。

「ふふ、ちょっとかわいそうだけど、動きを止めさせてもらうわ、先輩」

くみは通代の腹部めがけて両膝を立てたニードロップを落とすため高く舞い上がった。

「お〜っと、コーナーポスト上段にスーパーサディスト谷山、かがみ込んでジャンプ!、両膝を立てるのか!?」

とそのとき、通代は自分の脳裏に大野の微笑みを自力で浮かべた。くみの膝が落ちてくるのがスローモーションのように見える。

「あ〜っつ!、プリティー通代間一髪、ニードロップをかわしました!スーパーサディスト谷山は自爆!膝を抱えてうずくまる!」

くみはまさかという気持ちと膝の痛みを混合させた表情を浮かべる。通代はごろんと体を入れ替えつつ、立ち上がろうとする。反撃のチャンスだ。

「関東さん!、プリティー通代かわしましたね。館内はまさかといったざわめきがおこっています」

「いやあ、プリティーにあんな反射神経があるとは思いませんでした。ここは反撃のチャンスですよ。さすがの谷山もこりゃあ痛いです」

両膝の痛みが徐々に重みを持ってきてくみは目をキュと細めてうずくまる。通代は先輩の意地にかけて勝つのだという気構えでくみの膝を蹴りにかかる。

「先輩、いいわよ、先輩がそういう気なら…私だって」

苦しみをこらえつつくみは心の底でつぶやくのだった 。




13 フットスタンプ


「さあ、プリティー通代、先刻奪われたブラをもう一度着用します」

倉庫では哀しみのなか、後輩の手を借りてやっと身につけたキチキチブラだったが、今の通代は力ずくでそれを着用することができた。はあはあと息をつきつつも、くみをどうやって倒すか考える。
とりあえず今は膝を抱えてもがいているのだ。一気に勝負をつけねば。
無理にくみを引きずり起こしてドロップキックを見舞う。さらに通代は2回リング中央に横たわったくみの膝を蹴ると、自ら勢いよくロープへ走った。ロープに肢体がリバウンドする際、お尻の下のほうがロープに押されて尻筋がほとんど見えそうになる。

「おーっと、プリティーが両足を揃えて谷山のお腹に着地!フットスタンプだ!こんな愛らしいフットスタンプがあっていいのかああ!」

「ぐえっつ!」

「スーパーサディスト谷山、にぶい声を上げる!先生プリティー通代すごいんじゃないですか?」

「う〜ん。こりゃあいけるかもしれません」

なんとか勝たなきゃ…。そう考えた通代はコーナーポストに登り出す。

「関東さん、プリティーがコーナーポストへ登りますよ」

「プリティーでも体重をかければ、どんな技でもそれなりに効果はあるでしょう!」

通代はバランスを失いそうになりながらもコーナー上段へ登り詰める。いったん座り込んだ際には尻筋のほとんどを観衆に晒していた。右手で髪をかきあげて、立ち上がり体制を整える。膝が少々不安定だ。両手でバランスをとる。その姿は何とも愛らしい。
くみは苦悶も表情を浮かべてはいたが、表情ほどに痛みはなかった。かといってすぐに立ち上がれるわけでもない。コーナーポストに登った通代を見て描いていた理想の風景が脳裏をよぎる。

「くみちゃん、LとRは全然違う発音なのよ。さあもう一度…恥ずかしがらないで思い切って」

「はい、先輩…」

英語を教わりつつ、自然に通代の手がくみの制服の胸元あたりをなぞる。

「ああっつ、渡辺先輩・・」

「くみちゃん、好きよ・・」

だがくみの夢はもろくも崩れ去ったのだ。今自分を倒そうとコーナーポストからフットスタンプをしかけようとしている。ジャンプの準備のしぐさからニードロップではなさそうだ。

「力ずくでも愛してもらうわ」

くみは痛みのなかでそう念じた。




14 執念のまわし蹴り


館内の視線はスローモションのように二人を見守る。ジャンプする通代。上体を起こすくみ。さらにくみの足がまわし蹴りで上へ向って伸びる。その先には通代の大切な部分が…。

「うっつ!」

通代はとっさの鋭い痛みに何が起こったのか理解できない。だが確実にくみのまわし蹴りは、くみの体の突っ張りと、通代が地球の中心に向って下降した分だけの圧力を通代の股間にかけていた。
何とシューズの先のラインは通代の丘の溝にしっかり突き刺さっているではないか。

「あ〜っつ!!!、スーパーサディスト谷山逆転のまわし蹴り!、プリティー通代失神か!関東さんどうでしょう、この切り替えし」

「うーん、執念としか言いようがありません。でもあの体制からよくまわし蹴りがでましたね。体の柔らかさが凄い!」

通代は股間を両手で押さえてうずくまり、目をキュッと細めて痛みにひたすら耐える。くみとて先刻のニードロップ失敗の痛手が癒えたわけではあるまい。膝をついてゆくりと立ち上がろうとする。

「先輩、絶対に許さないわ。私のキスを拒絶したうえに、こんな痛みまでくれちゃって」

くみは尻筋のほとんどを晒してリング中央にうずくまる通代を睨み付けるのであった。
勅使河原氏が身を投げ出して何か言っている。

「いやあ、怒ってますよ彼女は、もしかしてあの技を出すかも!」

「先生?あの技っていうのは…」

解説を求めようとする間にも、くみは通代のコスチュームを剥ぎにかかろうとする。

「ああっつ、嫌よ、嫌・・」

通代は完全にグロッキーだ。もはや抵抗する余力などない。股間を押さえていた手を振り解き、上上体だけを無理矢理おこす。そして鬼のような形相でまさにスーパーサディストと化したくみはビリビリと音をたててビキニを引き裂くのであった。通代の胸が再びぼろんとあらはになる。

「お、お願い…」

通代の哀願など聞く耳を持たずにくみは下の布地に手をかける。怪力でビリビリっとあっという間にそれを引き千切ってしまった。

「先生、あんなにボロボロになってはプレゼント商品にはできないでしょう?」

関東が尋ねると、

「じゃあ私が…」




15 愛撫


 体育座りのような格好に通代をおこし、背後からくみは、抱え込むように座った。そして豊満かつふくよかな胸を揉み出す。ひとさし指と中指に乳頭をつまんだりしているが、その一方で通代の首筋に息を吹きかける。
 通代は、朦朧とした意識の中で、先ほどのくみのシューズが追突してきた部分についてあれこれと思案するのであった。これほどじんじん痛むのだ、青じゅんでいるのだろう。だがもはやそのような自分の局部を注視する気にはならない。
 そんなことにはかまうものかと、くみは執拗に通代の性感帯をまさぐる。首筋にあった手が太股の内側に回り、微妙な線を描く。感じ出した通代がピクッとリングシューズを動かさざるを得ないのを見てくみはニヤリとし、さらに通代の両方の乳頭を摘み上げて左右や上下に引っ張ってもで遊び、

「ほらほら先輩、下級生に乳首を、“縦々横々丸書いてチョン”てやられて悔しくないの」

と言葉で屈辱感を煽るのだ。
通代は目に涙をうっすらと浮かべ、残った力でイヤイヤをし、くみの愛撫を振りほどこうとするのだが、かなわない。心ではどこまでも嫌悪と怒りが渦巻いているのだが。

「先輩、もう一度聞いてあげる。私のこと好きでしょ?」

ギュっと乳首に爪を立ててくみはせまるのだが、通代は目をつぶって涙を流し、顔を背けたかと思うと、首を横に振って拒絶の意志を強調するのであった。くみはムッとして決意を固めた。

「先生、この試合もう28分も経過しているのにプロレスもイカし合いのほうも何も決まってませんよ」

「そうですね、谷山にすれば制限時間いっぱいまで時間を共有したいということでしょうか…」

「あっつ、先生、スーパーサディスト谷山が急にリング下に降りていきますよ」

勅使河原顧問とダイナマイト関東は、“まさか”といったふうに目を合わせる。




16 スーパーサディストスペシャルドライバー(略してSSD)


 くみがリング下から取ってきたのは、片側が黒い極太の男根模型、もう片方の端が金属の突起のある70センチほどの棒状のものだった。朦朧とする通代を尻目にくみはリング中央にその金属の突起部分を怪力で突き刺した。リングの金属板が破ける鈍い音がする。ちょうどリングサイドのカメラマンからすると、男根部分だけがリング中央にニョキっとそびえ立っている感じだ。くみは突き刺したそれがぐらつかないか確かめる。

「言うことを聞いてくれないんだから、仕方がないわ。先輩おしおきよ。先輩が素直に本心を言えるようになるようにね」

両膝をくの字に曲げて横たわっている通代をくみは抱え上げてつぶやく。

「スーパーサディスト谷山、リングシューズのみのプリティー通代をアトミックドロップの体制に抱え上げて…・・、あ〜っと!そのままコーナーポストに登ります!何という脚力だ!」

「な、何…・どうするつもり…・」

体内の血のめぐりの変化からか、ハッとした通代は、自分がなぜこんな高いところにいるのかと呆然としながらも、くみに問いただす。くみが一端しゃがみこんでジャンプしようとしたとき、やっとリング中央の男根模型に気がつき、くみが何をしようとしているかとっさにいくつかのシナリオを頭で描いてみる。

「そんな、そんなのって…、お願い。言うことを聞くから…。許して…、ねえ・・」

首を振ったり、全身を使ってイヤイヤをしようとする。

「(今さら、なによ。もう遅いわ)」

くみはそう心でつぶやき、天高くジャンプする。いったん体育館の天井に届きそうなくらい通代を抱えたままジャンプすると、まるで狙いすましたかのように、男根模型目指して急降下だ。

「嫌ああああ〜〜〜〜〜〜〜」

ズブっとにぶい音がすると同時に、プリティー通代のすさまじい鳴咽が館内にこだまする。通代自身が男根模型をきっちり覆ってしまったのだ。だがそれだけで事は終わらなかった。

「あ〜っと!、スーパーサディスト谷山、プリティー通代を抱えたまま大回転!、こんなアニメみたいなことが起こっていいのかあああ!」

カメラが天井のものに切り替わると、男根模型があるであろう点を中心に、くみが通代を抱えている姿が肉眼では確認できないほど早いスピードで回転している。漫画ならズビュズビュビュウ!!!!という強調文字と風の流れを示す線が描かれるのであろうか。

「これがSSDか…・」

勅使河原顧問が驚愕のため息をもらす。通代自身は動じない男根模型とくみの高速大回転による摩擦によって快感と痛みの二重奏をなす。リングの金属板から通代自身までは10センチほどあったのだが、やがて男根模型から凄い勢いで液体がつたい出した…。




17 フェイスシッティング


 さっとスーパーサディスト谷山は風の中から帰ったきた。プリティー通代は男根模型を咥えたまま失神している。愛液の量と失神した通代を確認した飯島がゴングの合図を送る。

          ○ スーパーサディスト谷山(40分23秒 KO&SSDによる昇天)プリティー通代×

男根模型から通代を解放してやるとくみは、仰向けにさせた。そしてなんとくみもコスチュームを脱ぎ出したのだ。こんなものといった感じでSMっぽい黒いそれを脱ぎ放つ。くみも黒いシングシューズのみの格好となったのだ。

「スーパーサディスト谷山、何と自ら裸体を晒します。そしてまだリングでプリティーに何か仕掛けるようです…・。ああっと、しゃがみこんでプリティーの顔面に股間を押し付けます」

くみは通代の頬に往復ビンタを見舞い強引に意識を取り戻させる。

「先輩、さあ、私のここを舐めてちょうだい…・」

通代は目の前にくみ自身がどアップで近づいてきてたまらず顔を背ける。

「舐めて…・」

「嫌、絶対嫌…」

くみはすかさずシックスナインの体制になり通代自身に手を出す。先刻来の攻撃で、もはや通代のアソコは悲壮なまでに痛めつけられていた。にもかかわらずくみは己の指をこじ入れ下から上に動かし、ついには舌で舐めまわすのであった。

「私のアソコを舐めて、先輩…」

「もう許して…」

「そう、じゃあ仕方がないわ、これでどうかしら」

くみは通代の秘唇の合わせ目あたりを左右から、指でつまみ、ギュっと引き裂きくように力をこめてくる。本気だ。

「や、止めて!。お願い、もう堪忍して。何でも言うことを聞くから…、お願い…」

通代は涙を流して哀願する。

「じゃあ、なめさない。心をこめてよ」

「……・」

「できないのかしら」

くみが再び力を入れようとした瞬間、通代の舌先がくみの秘唇に触れた。




18 ビデオ


 体育館の外では車内のモニターで試合を見終えた大森信次が例のごとくたばこをくゆらせていた。そしてたった一本のビデオをある老人に見せるはずだった通代のデビュー戦のビデオが、女闘コンツエルンの闇販売網に乗ることを知らされたときのことを思い出した。

「いやあ、大森君。君はとんでもない逸材を発掘してくれたよ。SMキャットファイト好きの彼も大喜びだったよ。医者に体力が増強されたんじゃないかって言われたってね。それでうちの闇ビデオルートに乗せることにさせてもらった」

女闘コンツエルン総帥が満足げに話す。

「しかしあれはメセナだったのでは」

「収益性が見えたんだから。予定変更だ」

「うちの妹はまだまだ色々考えてるみたいですが、問題にならないうちに止めさせたほうが。そんなに資金がおありなのなら、現在のキャットファイトショップのビデオにもっと上質のAV女優を出演させるとか」

「表の世界はあれでいいんだ。それに君は命令どうりに動けばいい。妹さんの計画が男子生徒や教員に知られないように気をつけなさい。そうそう君の借金は全部返済しておいた」

(正しいことをやりたければ上に行け)誰かがそんなことを言ってたっけ…・・。信次はそうひとりごちた。

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