ロゴ.gif (20659 バイト)

 

夜の組曲

 

 

真昼の月の前奏曲


「う〜、ただいま」

玄関のドアを開けて、少女が入ってくる。その少女は真依といって、世間一般の常識からすればかなりの美少女だろう。背が少し低い事もそれに一役買っている。とにかく、マスコットの様な愛らしさのある少女だった。

「はあ、三回目にして負け、か、結構早かったなぁ」

躊躇いも無く服を脱ぎ、その身体の数箇所にある痣に、薬箱から取り出したビンに入った怪しげな色の薬を塗りつける。

「痛っ、うう、しみるぅ、それにこの臭い、これで効果が無かったら使わないのに」

「薬がしみるのも嫌な臭いなのも当然よ」

「って、うあわ、ね、姉さん、いつからそこに?」

「あなたが帰ってきた時からいたけど」

「じゃあ、電気位点けたら?」

「まだ明るい」

確かに、日はまだ沈んでいない、が、空はもう赤から深い紫に変わりつつあった。

「で、誰に負けたの?」

「そ、それは」

「とりあえず、言った方が身のためよ」

「そんな、まあ、瑞穂って言って、三回目でようやく私に勝った、っていうか」

「ふぅん、あなたに勝つなんて、強いのね」

「え、ぜ、全然、姉さんに比べたら雑魚、そう、雑魚よ、全然勝負にもなんない」

「そう、あ、お風呂、入れといたから」

「え、どうしたの、急に」

突然、訳の分からない事を言われ、混乱する真依。瑠依は、その真依に音も無く近づくと、その手にしたビンから薬を指にベッタリと取り、いきなり真依の股間に塗りつけた。

「ぃ・・・・・・・・・・ぅ・・・・・・ぁ」

声も出せず床で転がりまわる真依を、どこか冷めた目で見ながら、瑠依は散らかった部屋を片付け始めた。妹が怪我をしないように。だが、決して善意ではなく、完全なる悪意の為に。


その翌日、休日でにぎわう町の中、瑠依は一人で立っていた。前日に真依を説得(力ずくで言う事を聞かせる、とも言う)し、瑞穂に連絡を取らせたのだ。
しばらく待っていると、ツインテールの髪をなびかせて一人の少女が走ってきた。

「あれが?」

真依から聞いた特徴と一致するその人物を見つけ、とりあえず近づく。もちろん人込みに紛れて気付かない様に。

「あなたが瑞穂?」

「え、何で私の名前を・・・」

「昨日の真依の電話で知ってると思うけど」

「真依、って事は、瑠依さん?」

「ええ、用件は電話の通り、来たって事はいいって事ね、じゃあ、場所を変えましょう」

「はあ」

淡々と簡潔に話す瑠依に、呆気に取られるまま、瑞穂はリングのある場所まで来ていた。


「それじゃあ、普通でいいよね」

気が付けば、着替えが終わっていたといった感じで二人がリングの上に揃った次の瑠依の言葉がそれだった。ちなみに、瑞穂は当然の如く相手の観察中だった。

「別にいいよ」

瑞穂の見た所、瑠依の胸は瑞穂と同じ位、だが、ウエストはより細く、身体の線では少し負けている。顔は、ぱっと見た所では、瑞穂の方が上に見えもするが、その実、瑠依の圧勝であった。それは、瑠依は全く笑わない、だから、地味に見える。そして、その顔はまだ十代の少女の幼さを残してはいるが、それは客観的に見れればの話であって、その目の前に出れば、落ち着きすぎているその態度から、十代とは認められないだろう。とにかく、雰囲気に飲まれそうになるのだ。

「じゃあ、少しは手加減するから、少しはもってね」

そう言うと、足を前後に軽く開き、相手に対して斜めに構え、手はダラリと下げたままという独特の構えを取る瑠依。

「ん〜、じゃ、いっきまっすよぉ、やっ」

その場で飛んでのドロップキック、それが瑠依に決まり、その軽い身体を吹き飛ばす。

「ふぅん、まあまあの威力ね」

倒れながらも、音も無くすぐに起き上がり、腕を回したり、身体の調子を確かめている。

「な、効いてないの!?」

「ええ」

あっさりと肯定する瑠依、そのまま、最初と同じ構えを取る。

「じゃあ、やああ」

瑞穂の大振りの右ストレート、それが瑠依の胸に決まった、かと思った次の瞬間、瑠依の身体がくるりと回り、瑞穂の右腕を脇に挟む様にしてその身体を前に倒す。

「っく」

「あ、それと、このまま折る事も出来るから」

そう言ってあっさりと外す。

「うう、強い」

「それは当然よ、私は真依よりもずっと強いから」

瑠依にとってはただの事実だが、言われた方にとってはただの挑発に、その真依に二度も負けた瑞穂はムッとする。

「まだ私も本気じゃないから」

馬鹿の一つ覚えの様に腕を大きく振り、瑠依に突進していく。

「じゃあ、さっさと本気を出した方がいいよ」

そう言うと、その身体が瞬時に沈み、そして、瑞穂は宙を舞った。

「え、がっ」

頭から落ち、飛びそうになる意識を気合で繋ぎ止め、身体を起こそうとすると、その上に瑠依が乗っかって来た。

「何か格闘技やってるの?」

今までの技で、瑠依が合気道か何かをしていると予想しての瑞穂の言葉。

「何もしてない」

「じゃあ、この技は」

瑠依が何でこんな技を使えるのか、疑問に思っている瑞穂。瑠依は、その胸に手を伸ばした。

「ねえ、これ、得意なんでしょう、だったら、これでは私に勝ってみて」

挑発のつもりか、その胸を軽く、少しの力で握って見せる瑠依。

「それなら、受けて立つよっ!!」

瑠依から、自分の大好きな事を誘われ、断る瑞穂ではない。
嬉々として目の前の瑠依の胸を揉み始めた。

「ん、中学生にしては、上手い方ね」

「あなたも中学生でしょ」

「当然よ」

微かに顔を顰める瑠依だが、効果は薄いようだ。

「あん、まだまだ始まったばかりですよ〜」

「そうね」

やはり淡々と言う瑠依。

お互い、細い指に余る相手の胸に、水着の上からでは大した効果が無いと考え、殆ど同時に水着を脱がし始める。

「うわあ、やっぱり綺麗」

その白い肌と同じく、真っ白で、支えが無くても形を変えない胸に素直な感想を漏らす瑞穂。

「どうでもいいけど、何をしたい?」

「そうですねぇ、キスとか・・・・」

言葉の途中、瑞穂が『キス』と言った瞬間、その口を自分のそれで塞ぐ。
しばらくそのままの体勢で、呻き声のようなくぐもった声が微かに聞こえてくるだけだった。

「っはぁ、いきなりなんて、ひどいじゃない」

少し息を乱し、口から毀れた唾液を腕で拭いながら言う瑞穂。

「そう言って、ちゃんと反応してた」

相変わらずの淡々とした口調ながら、少し嬉しそうな瑠依。

「これも、中学生にしては、かなり上手いけど」

「どうです、愛美お姉さまの直伝ですよ」

「へぇ、そんな人がいるの」

「ええ、すっごいんですよぉ、もうあれだけで誰でもイキそうになるんですから」

「じゃあ、私もイカせてあげる」

「え!!」

気が付くと、押し倒されていた瑞穂は、突然の出来事に呆然としているうちに、キスをされていた。

「ふぁ」

さっきの数倍の時間、そうしている内に、次第に瑞穂の抵抗が弱くなっていく。
だが、さすがにそれだけでイクはずもなく、動きが少なくなるのは単にちょっとした酸欠の為だろう。

「やっぱり、無理か」

「はぁ、いいえ、良かったですよ」

「でも、あなたの知り合いはこれでイカせれるんでしょ」

「それは、愛美お姉さまは例外です」

「ふぅん、私にはまだ無理かな」

そう言うと、瑞穂の股間に手を持って行き、軽く掴むような形で撫で始める。

「あん、そうきますか」

瑞穂も負けじと、同じようにする。

「久しぶりに、楽しめそう」

「そうですか、じゃあ、愉しませてあげますよ」

上に乗られた形ではあったが、瑞穂には余裕が見える。

「それで、どうして何もしないの?」

「え、してますよ」

「そう?」

なんとも無いと言わんばかりの態度の瑠依。
どちらも、まだまだ余裕で、何もされてない様な瑠依と、明らかに感じているが、それでもそれが全く応えていない様な瑞穂。
そんな二人は、もそもそと微かに動き、時折瑞穂の声が漏れる以外は殆ど動かず、壁に掛かった時計の針の方がよく動いている位だった。

「あなたも、意外と粘るね」

「それが私の取り柄ですから」

顔を真っ赤にしながら、それでも最初の元気は失わずに応える。
それを聞いた瑠依は少し何か考える様子を見せる。

「どうしたんです?」

「ちょっと、どこまで耐えられるか、とか試したくなって」

さらりと、そう応え立ち上がる。

「ねえ、関節技とか、好き?」

「どっちかって言うと、さっきみたいな方が」

「そう・・・・」

それを聞くと、もう一度何か考え込んでいる。

「え・・・と、一体何を」

「別に、ちょっとプロレスっぽい事をしたくなったから」

突然そう言って、手を突いて立とうとしている瑞穂に絡みつく。

「い、いつつ、これって一体何の技なの」

「知らない、今思いついた」

何と言うか、複雑に手足を絡めつつ、要所をちゃんと押さえている。
抜け出す事は一見可能に見えるが、それは胸やアソコに当てられた手の動きが阻止している。

「あ・・・・いい・・・・・・うん・・・・んぐ・・・」

関節技としての痛みと、胸やアソコに感じる瑠依の指の動きに、ただなす術もなく、弄ばれるだけの瑞穂、まあ、たとえその技に抜け出せる余地があっても、自分から抜け出す人間ではないのだが。

「どう、苦しい?」

「苦しいけど、嬉しい」

「嬉しい?」

良く分からない感想に、珍しく戸惑う瑠依。

「それは、まあ、別にいいけど」
少しではあるが、瑞穂を締め付ける力を強くする。
そして、これも少しだが、その胸やアソコへの攻撃も強くする。

「うあ・・・・いい・・・・」

「別に、良くなくてもいいけど」

その顔からは意思が読み取り難いが、真依か奈江香辺りがみたら、喜んでいるのが分かっただろう。
まあ、一緒にちょっとした呆れも入っているかもしれないが。

そうしている内に、瑠依の指から水滴が流れ落ち。
瑞穂の汗が密着している瑠依にもはっきりと分かる。

「ねえ、このまま落とすのは簡単だけど、それじゃあつまらないよね」

「ふぁ、何?」

瑠依の腕が首に掛かっている為か、軽い酸欠状態になっている瑞穂を開放する。

「ふぅ、あのままでも良かったのに」

「私がつまらない」

大きく息を吸い、何事も無かったかの様に振舞う瑞穂に、今度は誰にも分かる呆れ顔になって、一言で否定する。

「まあ、手応えはともかく、しばらく退屈はしないでしょうね」

瑞穂からは目を離し、軽く手足を伸ばしてみる。
有体に言えば挑発だが、瑞穂は『意味が分からない』とでも言わんばかりに、その場に立てっている。

「ねぇ、何されたい?」

「別に、何でもいいけど」

「じゃあ」

サッと走り出した瑠依を視界の端に捉えた次の瞬間、瑞穂は足を掴んで引き倒された。

「電気アンマとかはどう?」

「それ、大好きですよ」

「初めて見たわ、そんな人」

口調こそ淡々としているが、その足元では普通以上の電気アンマに瑞穂がのた打ち回る、とは少し違っていたが、とにかく、傍目には苦しんでいた。

「あ・・ぐ・・・ぐ・・・あ・・・う・・・ぐ・・・うん・・」

「本当みたいね」

瑞穂の顔が真上に来た時に見える表情に、さっきの言葉が本当だった事を実感する。

「ねえ、あなたは責められるのが好きなの? それとも・・・・・・」

そこで少し言葉を選ぶ。

「イクのが好きなの?」

その言葉に、答えることこそ出来なかったが、態度は『両方』と答えたも同然だった。

「なら、イカせてあげる」

そう言って、瑞穂の股間に当てている踵をつま先に変える。
そして、少し入ったようだが、気にせず、電気アンマを続ける。

「ああ、あうあ、あぐ・・ん、あ・・・ああ」

「もう、終わるの?」

そう言って手を離した瑠依の目の前で、倒れたままの瑞穂。

「真依が言ってたよりも早いね」

そう言って去ろうとした瑠依、だったが。

「まだ動けたの?」

「ええ、それが取り柄って言いませんでした?」

「言った」

何事も無かったかのように、というわけでは無かったが、普通に立ち上がった瑞穂。

「あのまま続けてくれても良かったのに」

「嫌、そんな事しても疲れるだけだもの」

「それだけじゃ無いですよ」

「じゃあ、何?」

「私が嬉しい」

やけに自信満々の瑞穂。
これには瑠依も言葉を失う。

「と、言うわけで、早く次の技をかけて」

何かをねだるような瑞穂、そのすぐ目と鼻の先には、いつの間にか瑠依が立っていた。

「じゃあ、お望みどおり」

そのままベアハッグの様に胴を締め、そのまま、そう、アトミックドロップのように、股間に膝を当てる。
そして、そのまま膝を上げ、腕を下げるようにして、瑞穂の股間に膝を押し付けていく。

「あ・・・・い・・・いい」

「これでもまだ余裕か」

普通の人間なら、とっくにギブアップしてもおかしくない、それどころか、あんな隙だらけの技からは抜け出すだろう。
だが、瑞穂はそれから抜け出す事も、悲鳴を上げる事も無かった。

「ねぇ、早く次の技を・・・・」

「やだ」

技を解いた瑠依に、早くも次の技をねだる瑞穂だが、即座に却下される。

「うぅ、どうして?」

少し怒った様な仕草を見せるが、まあ、本気で怒ってはいないのだろう。

「少しはあなたも何かしてくれないと」

そこで一旦言葉を区切り、一呼吸置いて言った。

「私が面白くない」

「は? ああ、そういえば、じゃあ、私もしてあげる」

始まってから、殆ど瑠依が責め続けている事を思い出した瑞穂は、そのまま瑠依に抱きつく様にして、頭を瑠依の胸に擦り付ける。

「それ、攻撃なの?」

髪の毛が当たる微妙な感じに、一瞬表情が歪んだ瑠依だが、すぐに何とも無いかのような顔になる。

「じゃあ、これは?」

今度は、膝を折って、正座するような形で瑠依の股間に顔が来るような体勢になる。

「あ、これやったら、また続きをお願いね♪」

「別にいいけど」

ふと何かを思い出した様に、顔を上げて瑠依に言う瑞穂。
まあ、その顔が見えたわけではないが、短い時間ではあったが、どんな顔をして言ったのかが分かる程度の時間はあった。

「それじゃあ・・・・」

瑠依の太ももを抱きかかえるようにして引き倒す。
抵抗らしい抵抗もせず、瑠依はそのまま倒された、当然、受身は完璧に取っている。

「ふふっ、後悔しても知らないよ〜?」

「何を?」

「い・い・こ・と」

「まあ、いいけど」

やけにテンションの上がる瑞穂に、いつも通りの淡々とした口調を崩さない瑠依。
どちらも相手の事を無視しているのではないかと疑えるほど様子が正反対だ。

「先ずは、ここからね」

最初に瑞穂が取り掛かったのは、瑠依のアソコ、最初にそこを選んだ理由は、多分、早く瑠依を満足させて技をかけられたいからだろう。
はっきり言って、瑞穂には勝とうという意思が感じられない、それでも今までに、それなりには勝っているのだから、結構不思議である。

「で、まだしないの?」

「ちょっと待って、今脱がせてるから」

緊張感とは程遠い空気が辺りを支配していた。

「よし、じゃあ、今度こそ本当にやっちゃうから」

「いいよ」

瑠依も、さっきの瑞穂の様に、全く反撃せずに、されるがままになる。
その間、瑞穂の位置からは瑠依がどんな顔をしているかははっきりと分からないし、瑠依の股間に、一心不乱に顔をうずめている瑞穂には見えるわけが無かったが、それでも、その息や身体の震えなどで、どういう状態かは瑞穂には分かっていた。

「ここまでやっても、何とも無いの?」

「どういう意味?」

瑠依のアソコに指を入れて、それを動かしながら聞く瑞穂に、涼しい顔で、『わけが分からない』と言わんばかりの瑠依が聞き返す。

「あ、もしかして、真依と同じでやせ我慢してるんじゃ」

「さあ、どうでしょう」

倒れたまま、器用に肩を竦めて、惚けてみせる。

「まあ、ここはあんまり感じないってだけかも」

気を取り直し、少しは効果のあった胸への攻撃を開始する。

「これなら、少しは感じます?」

「少しはね」

「うぅ、また効果なしぃ〜」

どんなにやっても涼しい顔の瑠依に、難しい顔をして考え込む。

「で、次は?」

「え〜と、他にどこかあったっけ?」

「無いの?」

瑠依の上に乗っかったまま、人差し指を唇に当てて、いかにも、『考え中です』といった様子の瑞穂。
だが、どれだけ考えても、あまり意味は無かった。
その二箇所への攻撃で、効果らしい効果は確認出来なかったのだから、他を試すとしても、あんまり効果は無さそうだ。

「えと、もう終わりです」

少し気まずい雰囲気が流れ、少し引き攣った笑顔のまま、瑞穂の動きが止まる。

「で、いつまでそこにいるの?」

「え!?」

「重いから」

「失礼な、結構スマートなんですよぉ」

少し怒っているようだ、もっとも、それでも迫力は皆無だったが。

「いいから」

身体を捻るようにして、瑞穂を払い落とす。

「わっ、いたた、いきなりな・・・・」

目の前が真っ暗になり、単に瑠依がいきなり近づいて来たせいだが、不意打ちでのキスに、反撃はおろか、反応する事も出来ず、押し倒されていた。
瑠依の唐突な行動に驚きながらも、今度は反撃を・・・・・・・出来なかった。
主導権を握られ、一箇所に神経を集中していれば、思いもかけない場所を責められる。
それは、瑠依に先手を取られた瞬間に、もう反撃する余地すら失っていたとも言える。

「ねえ、本当に、どれ位耐えられるの?」

長い長い口付けを一旦止め、口を離して瑞穂に聞く。
気だるげな表情、人は憂い顔と言うこともあるだろうが、それに、目だけで笑いながら、ぼうっと頬を赤らめている瑞穂を静かに見つめる瑠依。

「瑠依さんが飽きるまで、では?」

「ふうん」

身体の向きを変え、瑞穂の股間の上に顔が来る様な体勢になる。
当然、そうなれば瑠依のそれも、瑞穂の顔の前に来る。
どちらも、自分の目と鼻の先に相手のアソコがある状態に、身体が触れ合っている部分から、相手の心音が高鳴るのを感じていた。

「これ、もういらないよね?」

唯一、瑞穂の肌を覆っている布を、ゆっくりと引き剥がす瑠依。
途中、濡れた水着が肌に張り付き、手間取る所があったが、それでもすぐに作業は終わる。

「あなたを見てると忘れそうになるけど、一応中学生だったのよね」

「人のことが言えますか」

それを脱がしている合間に、ふと思い出した様に言う瑠依に、瑞穂が呆れたように言い返す。
確かに、二人が並んでいたら、瑠依の方が年上に見られるだろう。
顔が、というよりも、雰囲気が中学生離れしすぎているのだから。

そんなやり取りが終わると、申し合わせた様に同時に目の前の物に噛み付くような勢いで舌を伸ばす。

「ああ・・・・いい・・・・」

開始早々、声が上がり始める瑞穂、技能ではかなり圧倒的な差がついてしまっている。
だが、それを耐え、瑠依の動きが一瞬弱まった時、動きを変える時に少し反撃をする。
常人離れした体力を持つ瑞穂ならではの攻撃だが、瑞穂には勝算があったわけではない。
ただ、瑠依が飽きないように、その為だけの攻撃であった。
結局、瑞穂が何回イったかはどちらも覚えておらず、終わったのは、何もしなくなった瑞穂に『飽きた』瑠依が瑞穂を窒息させて、失神させたからであった。
正確に言えば、飽きたというよりは、責め疲れたからだったが。





本当の夜の間奏曲


「さあ、起きなさい」

瑠依は、倒れたままの瑞穂の身体を揺さぶり、荒っぽく起こす。

「うう、何ぃ?」

頭を押さえて起きた瑞穂は、瑠依の顔を見て驚き、すぐに今までの事を思い出す。

「えと、おはよう」

「今はもう夕方」

「それは、そうなんだけど」

「それと、あなたの知ってる強い人を今すぐ紹介して」

「今からぁ?」

「そう、言わなかったら力ずくで言わせるけど」

「あ、それちょっといいかも」

「いいの?」

「だって、ちゃんと最後までイってないもん」

最後が、ちゃんとイって終わらなかったのが不満なのか、唇をとがらせ、拗ねたように訴える瑞穂。

「それじゃあ、時間も大してないから・・・・・・少し乱暴にやるよ」

いきなり瑞穂の髪を掴み、無理やり立たせ、そしてロープに向かって走り出す。

「あ・・・・・・・」

瑠依がどうやったのか、腕を捻る様に動かすと、瑞穂が、人間ではなく綿の詰まった人形の様に、簡単に縦に回転する。
更に、その瑞穂の足をロープに引っ掛け、落ちないように片手で支えるといった事まで一瞬のうちにしてしまった。

「あ・・頭に血が・・・・」

「本当に、余裕があるね」

既に、何度イったか分からない瑞穂の股間に、逆さにしたまま連続で攻撃を加える。
手刀は当然の事として、握りつぶしたり、肘を落としたり、極めつけは踵落としの様な大技まで、瑠依がちゃんと手加減していなければ、冗談では済まない結果になるほどの連続攻撃と、時折混ざるイカせる為の技に、失神寸前にしか見えない状態になる。
それでも、意識を保っているのはさすがとしか言いようが無い。
その身体には、自分の股間から流れ出る液体が掛かり、どう見ても無残な敗者の姿だが、それでも笑っていられる事は、ある意味勝利なのかもしれない。

「それじゃあ、そろそろ教えて」

瑞穂を解放、というかは分からないが、とにかく、ロープから降ろした瑠依は、そう言い、瑞穂は急かされるまま、雪香に連絡を取った。


瑞穂が雪香に連絡を取った所、雪香にここにいる、と聞いて訪れたのは、古い寂れた建物。その言われた通りの場所にある扉を開けて中に入ると、外からは信じられないほど綺麗な内装と、たくさんの人がいた。

「うわ、すごい、こんなのあったんだ」

「ふぅん、みんな弱そう」

思い思いの感想を述べ、瑞穂はその中を興味津々といった感じで見ながら、瑠依は堂々すぎる程堂々と、奥のリングまで歩いていった。

「やぁああああ」

「はい」

そこでは、当然の事ながら、二人の人が戦っていた。いや、良く見れば三人、更に良く見れば、リングの下に倒れているのも含めれば七人はいるようで、それを一人で倒したらしい中心の女性は、また一人、あっさりと投げ飛ばして失神させた。

「相変わらず強いな、雪香さん」

「あれが、雪香?」

雪香は、そんな瑞穂達に気が付いた様子で、手を振ってみせる。その横から、仲間を全員倒され、たった一人残った少女がゆっくりと雪香に近づいて行く。

「捕まえた」

後ろから、抱きつく様にした少女は、そのまま雪香をバックドロップで投げようとする。

「一体、何をなさろうとしているのです?」

「なっ!!」

どんなに力を入れても、雪香を持ち上げる事はおろか、少しも動かせれず、あせる少女を、あっさりと掴んで抱え上げ、一気に落とす。それでその少女も一撃で失神、雪香の、『とりあえず』の七人抜きが達成された。

「ふぅ、で、そちらの方は?」

もう動かない人間には興味は無いとばかりに、倒れて泡を吹いている少女達を無視し、瑞穂に向き直る。

「まるで、築地のマグロみたい」

足元に倒れる少女の一人を、呼び動作の無い速い蹴りで自分の進路から外し、雪香に向かって歩いて行く瑠依。

「ち、ちょっと、えと、あの、この娘が電話で話した瑠依って娘で、えと」

「ねえ、あなたは、強い?」

いつの間にかリングに上がっていた瑠依が雪香に尋ねる。

「さあ、負けた記憶はありませんから、たぶん強いのでは?」

「そう」

次の瞬間、雪香の腕を一瞬で取った瑠依の一本背負いの様な投げが決まった。
その時、微かに瑠依が顔を顰めた事に気が付いたのは、リングの外には一人もいなかった。

「ふう、やっぱ、今日は止めとく」

それだけで、あっさりリングを降りる瑠依。

「な、何を、え、雪香さ、ん、あれ、何で」

「どうして、帰るんです?」

慌てる瑞穂の声を遮り、立ち上がった雪香が尋ねる。

「今日は、日曜日、明日は学校、あなたとやって、これ以上無事に終わる自信は無いから」

やはり、簡潔すぎるほど簡潔な瑠依の答えが返ってきただけだった。

「そうですか、では、またいつか」

「ええ」

そのまま、瑠依はその建物を後にした。
その時の瑠依の顔は、本当に珍しい事に、恐怖と歓喜、そして、悔しさにも似た微妙な表情が入り混じっていた。





夜に迷った子犬の歌曲


「それで、何もせずに帰ったの?」

「ええ、そうなんですけど」

「まあ、それよりもあなたが無事で良かったわ」

少し気まずそうな顔で、奈江香が瑞穂に言う。

「無事で、って、どういう事です?」

「う〜ん、実は、私、あの娘に病院送りにされた事あってね、真依もそうだったはずよ」

「はあ、病院に」

病院という言葉にあまり縁の無いせいか、実感のわかない瑞穂。

「うん、今でこそ手加減を覚えたけど、前は全く加減をしなかったからね、骨折で、真依なんて二回も病院のお世話になったのよ」

「うわ、という事は本気だともっと凄いのかな?」

「そんな期待に満ちた目をしない、病院のお世話になったらあれはしばらくお預けよ」

「それは、嫌かな〜?」

「はは、またね」


「・・・・・それで、いるんでしょ、瑠依」

「知ってたの?」

「一応・・・・・何となくよ」

「メール、見た?」

「正直気は進まないけど、あんた怒らすと危ないからね」

「じゃあ、行きましょう」

「はあ、全く、顔に似合わず強引なんだから」

あきれた様子の奈江香だが、その顔は少し引き攣っていた。


「で、手加減はしてくれるんでしょうね」

「当然よ」

「じゃ、いいや、始めようか」

二人は約二歩分の距離を開けて向かい合った。奈江香としては、打撃は瑠依に何一つ効かない事を知っており、投げ合いでは勝てない。そうなると、仕掛ける為の攻め手が何一つ見つからない。だから待つ、そうすれば待つのに『飽きた』瑠依が仕掛けてくるから、それにカウンターを仕掛けようと、そう考えている。

「面白くない」

開始してすぐだが、痺れを切らした瑠依が、これ以上無い程堂々と歩いてくる。

「く、やっ」

タイミングを外し、一歩下がってからの右ストレートを奈江香が放つと、それを気にしていないようにスッと接近し、その肩を奈江香の胸元に当てる。直後、重い衝撃と共に奈江香の身体が前のめりに崩れた。

「ぐ、何を」

「何かの中国拳法の技で、靠っていうの」

「どこで、そんなの覚えたのよ」

苦しそうな奈江香、意外と威力があったようだ。

「忘れた」

これもあっさりと答える。

「本当に、訳の分からない」

「まだ、倒れないで、私が満足するまでは」

「あのね、瑠依、私は格闘技は苦手なの、だから・・・・」

蛙が跳ぶ時の様に、足を一気に伸ばして瑠依に跳びかかる。
その一瞬に、その手が瑠依の胸を捕らえていた。

「瑞穂ちゃんのは通用しなかったみたいだけど、私のはどうかな」

「ふ、少しは、まし」

「いつもより余裕が無いよ」

「じゃあ、私もしないと」

少し遅れての瑠依の攻撃は、奈江香には劣るが、巧みで、淀みが無く、失敗しない確実性では勝っていた。そして、気が付けば両者は互角、いや、体力ではるかに勝る瑠依の圧倒的な優勢と言ってもいいだろう。

「まったく、どこで覚えてくるのよ、こんなの」

「砂江香が教えてくれた」

「な!!」

その名前に一瞬硬直する奈江香、その一瞬の隙に、完全に瑠依に主導権を握られる。

「私の勝ち、みたいね」

「く、否定、できるわけ無いじゃない」

額には玉の汗が流れ、顔は真っ赤で、いつの間にか責められていたアソコは既に飛沫を上げ、それでいて瑠依は少し頬に朱が散った程度、始まって少しの時間であったが、勝敗は既に歴然としていた。

「私は今日は機嫌がいい、だから、もう決めてあげる」

「ふ、あなたにしては、早かったじゃない、まだ大して経ってないよ」

「今日は、あなたがメインじゃない、ただの肩慣らしよ」

そう言った次の瞬間、奈江香の顔を引き寄せ、瑠依の胸の谷間に押し込んだ。

「私の方が奈江香より小さいけど、でも、十分」

そのまま、窒息とアソコへの攻撃に、落ちたのかイったのか、とにかく奈江香の意識はそこで途絶えた。ただ、それが奈江香にとってはかなりの屈辱だった事を付け加えておく。


「それで、誰か強い人知ってる?」

「知ってても教えるわけ無いじゃない」

「そう言って、私の機嫌を損ねる気?」

「そっちの方が後悔しなくて済むからね」

近寄った瑠依の手が、剥き出しになった奈江香の胸を強く握る。

「っつ、痛いじゃない」

「痛くしてるもの」

段々と、その白い胸が変色し、奈江香の顔も苦しんだ様子になる。

「さっき負けたからじっとしてたけど、そんなにしたら反撃するよ」

「別に、そっちの方が面白い」

「じゃあ」

その手が瑠依の股間に伸び、いつもより力を入れて掴むように触る。

「奈江香も、痛い」

「あなたに痛いって感情があったとは、知らなかったわ」

瑠依の無反応ぶりに、効いてるのかすら分からず、とりあえず指をその中に入れる。

「それで、何をしてくれるの?」

「少しは反応しなよ、そんなんじゃ彼氏も出来ないよ」

「今まで彼氏のいない奈江香に言われたくない」

そう言って奈江香の胸を軽く噛む、その時に少し身体が下に下がり、奈江香の指がより入ったが、瑠依は相変わらず気にしない。
このままではまずいと、霞む頭で考えた奈江香は、そのまま身長差を生かして瑠依を押し倒す。

「それで、どうするの?」

「こうするのよ」

唯一勝っている点である、胸で瑠依のそれを押しつぶす。更に、身体を前に持って行って、瑠依の顔に押し付ける。

「さっきはよくもやってくれたね」

そのまま胸を擦り付ける奈江香、瑠依の胸が少し邪魔だが、それでも十分であった。
だが、やはり瑠依には焦った様子の欠片も見えない。

「そろそろ、終わりにしようか」

下になっていた瑠依が、その手を横に払うと、あっさりと奈江香が転がり落ちる。

「な、っく」

次の攻撃に身構える奈江香の後ろに素早く回りこんだ瑠依は、両胸を後ろから掴み、そのままそれを後ろに引っ張るようにして膝蹴りを決める。他の誰でもない、瑠依の早い膝に、背骨が折れそうな痛みを受け、そのまま前に倒れる奈江香。

「今度は、完全に失神してもらうから」

その顔を上に向かせ、座り込んだ。

「真依も、これのどこがいいんだろ」

そのまま、完全に奈江香の意識を絶つまで座り続けた瑠依は、そのままそこを後にした。
瑞穂から聞き出した、もう一人の人間の所へ行く為に。
結局、奈江香はただ瑠依に遊ばれただけだった。
そして、ちょっとした確認の為でもあったが。





夜に囚われた天使のバラード


その家は、有体に言えば豪華だった。瑠依の家も豪邸とはいかないが、その一歩手前といった所だったが、ここはそれが池一つの大きさも無い。

「ここが・・・・」

そんな、常人なら絶対に気圧される雰囲気の中、瑠依は恐れもせずに入っていった。

『どちら様でしょうか?』

「瑞穂の知り合い」

『ご、ご用件は何で・・・・』

「愛美が瑞穂から聞いてるはず」

『し、少々お待ち下さい』

しばらくの間、その間、瑠依は何をするでもなく、ただその庭を眺めていた。

「その庭が気になりますか?」

「別に、少し岩が多すぎると思っただけ」

「庭に興味が?」

「知り合いが芸術家だから、それで、あなたが愛美?」

「年上にはさんくらいつけるものですよ」

「ねえ、さっさと案内して」

「ふぅ、聞いていた通り、強引な方ですわね」

そのまま、特設リングへと向かった。


「それで、水着は」

「いらない」

そのまま服を脱ぎ、下着姿になる瑠依、ついでにそのブラも取ってしまい、中学生とは思えない胸が揺れる。

「まあ、誰もいませんし」

そう言って愛美も服を脱ぎ、瑠依と同じ様にブラまで取る。世間一般では巨乳の部類に入る瑠依の胸が問題にならない程の大きさの胸が、瑠依よりも激しく揺れる。

「ふうん、作り物みたい」

ボソリと、その不自然な程大きく形のいい胸を前に呟く。

「失礼な、ちゃんと天然ですよ」

「分かってる、砂江香の方が大きいから」

「砂江香、さんですか?」

「奈江香の姉」

そのまま、あの独特な構えで待つ瑠依。

「あの奈江香に勝ったんだってね、楽しみ」

「その期待にお答え出来ればいいのですが」

「私も愉しみたいから、打撃と投げと関節は使わない」

スッと近づき、かなりの身長差のある愛美の顔を手で持って、キスする。

「ふ、受けて立ちますわ」

そのまま静かな戦いが繰り広げられる。

「ふぅ、なかなかのものですわ」

「そっちも、悪くない」

同時に離れると、口元に着いた唾液を舐め取りながら、何か考えてる瑠依。

「ねえ、あなたにアソコを舐められると、私はイクと思う?」

「それは、当然ですわ」

「ふうん、じゃあ、イカせてみせて」

どうなったのか、少し瑠依が動いたと思えば、愛美は倒れ、その目の前にはいつの間に脱いだのか、何も覆われていない瑠依の股間があった。

「自信があるようですね、なら、イってもらいます」

何をされたかは分からないが、これ程までのお膳立てをされて、挑発に乗らないのは月島家の名折れ、その得意とする舌技を見せろと言われ、躊躇う理由は無かった。

「ん・・・・・・・少し、いい」

「少しなんですの?」

「まだ、あんまり良くない」

「そうですか、なら」

愛美の中で、スイッチがローからハイに切り替わる。

「う、あ、いい」

微かな呻き声を聞き取り、それで瑠依が感じているのだと分かり、安心する愛美。

(雪香さんみたいですわね)

殆ど見せた事の無い全力でやっても、未だイカない少女に、親友の顔が重なる。
だが、時間が経つにつれ、さすがの瑠依も限界が近づき、鉄仮面の様な無表情にも、色々な感情が見て取れるようになってくる。

「っく、ありがとう、これで少しは分かった、けど」

「逃げるのですか?」

立ち上がり、間合いを開けた瑠依に、ゆっくりとした動作で立ち上がりながら挑発する愛美。
今までの経験から、瑠依はあと少しでイクと分かっているから、焦りはしないが、自分が挑んだ勝負を、自分から止める瑠依の真意が分からず、首を傾げる。

「まだ、イっていない様ですが、どうしたのです?」

「何もせずに負けるのも間抜けだから、少しは何かをしようと思って」

「それで、何をしていただけるのでしょう?」

「もう『知ってる』と思うけど」

ボソリと呟いた瑠依が、素早く愛美に飛び掛り、その動きに反応出来ても、行動は何も出来ない程の速さで、その股間に手を滑り込ませる。

「さて、どれ程のものでしょうか?」

余裕の愛美だが、すぐにその余裕は崩れる、いや、完全にではなく、動揺からだろうが。

「これは、奈江香さんと同じ、ですね?」

「そう、奈江香が使ってたのを、『覚えた』の」

「覚えた、ですか?」

「そう、試しにやってみると、結構簡単だったよ」

喋りながらでも動きは休まず、唯一奈江香が愛美に対して優位な点である言えるのは、こう言った口撃によって動揺を誘う事であったが、奈江香では愛美の確固たる自信を崩す事は出来ない、だが、奈江香に比べ、自信の塊の様な瑠依の言葉には、愛美ですら頷いてしまう様な信憑性がある。
それが、知らず知らずの内に愛美の自信という鎧に穴を開けていた。
それは、微かな、ほんの小さな、針の穴の様な穴だったが、次第に大きくなっていく。

「それと、私は見た技を全部覚えれるから、当然、あなたのも」

「そ、そんな訳・・・・」

「なら、試してみようか?」

指を抜き取り、そこに舌を這わせる。

「な、ありえません」

「でも、ありえるから、だから、出来るんだから」

「しかし、私は舌技では負けません」

「知ってる、だから」

指に切り替え、余裕の表れか、愛美が少し首を持ち上げれば届く位の所に、自分のアソコが行くように身体を動かす。

「その余裕が、命取りですわ」

舌技の技能意外ではそれなりの力しかない愛美、あのままずっと自分の舌の届かない所から攻撃されれば、瑠依程の技能を持った人間には勝ち目が無いのは分かっていた。だが、瑠依が見せた余裕が、ゼロに近かった勝算を引き上げる。

「別に、一回位イってもいいし」

「果たして、一回で済むでしょうか?」

「済むよ、最後には私が勝つから」

それから、互いに静かなガチンコ勝負、愛美は当然声を我慢しなければならないし、瑠依もそれほど余裕があった訳ではない、正直な所、瑠依は体力が殆ど残っていなかった。

「これで、私の勝ちでしょうか?」

呼吸の為に、上下に動いている以外は、動きらしい動きもしなくなった瑠依を、倒れそうな様子で見つめる愛美、その顔は、疲れ果てていたが、満足そうでもあった。

「多分、私の勝ちじゃないの」

今まで殆ど動かなかった瑠依が、足を大きく振り上げて、勢いを付けて立ち上がる。

「まだ、そんな余裕があったのですか?」

「ええ、でも、イったのは私が先、久しぶりに面白かったよ」

「それは、良かったですね」

「ねえ」

「何です?」

「悪いけど、今晩泊めて、このままじゃ歩いて帰れないと思うから」

「何なら、お送りしますけど?」

「あんまり遅くなるのも嫌だから」

少し、本当に少しではあったが笑って。

「それに、まだやり足りないし」

その言葉に、一瞬驚いた愛美だが、すぐに微笑み返して。

「私は、もうあんまり動けませんよ」

と言って立ち上がった。
夜はまだ、始まったばかりなのだろう。
少なくとも、この室内には。





そして、夜の組曲


「意外と古風な呼び出し方をしますね」

「手紙じゃいけないの?」

「手紙、と言うよりは果たし状では?」

朝、自分の部屋にあった手紙、もとい果たし状で、瑠依に呼び出された雪香は、その場所、瑠依が手配しておいたリングの上で、呼び出されたはずなのに、堂々と瑠依を待ち構えていた。

「それで、時間が開いたけど、約束は守るわ」

「約束、ああ、今日はいいんですか?」

「もう脇腹も痛くないしね」

「あれはすみません、ひょっとしたらあばらが折れているのでは、と心配していたんですよ」

「そんなにやわじゃないし、掠っただけよ」

数日前までは痛かった脇腹を、何となく押さえる瑠依。
その姿は、既に水着姿だった。
そして、用意をしていなかった雪香は、下着姿で、向かい合っている。

「それは、挑発のつもり?」

「何のことです?」

下着姿の雪香にそう言っても、惚けるだけで、時間の無駄だと判断した瑠依は、そのまま無言で雪香を睨み付ける。

「ねえ、愛美に教えて貰ったあれ、試したいんだけど」

「いきなり、ですか、打撃技等は苦手ですか?」

「得意だけど、当たる気がしない」

「それは、奇遇ですね、私も確実に当てれる自信はありません」

それは、最初から当てれはしないが、何度かすれば当てれるといった自信の表れだったのだろう。
当てれない、と言う瑠依に対し、確実には当てれないと言う雪香、それは、体格ではるかに勝り、筋力、体重共に確実に勝っている雪香の圧倒的優位を表していた。

「だから、一応年上なんだから、少しは手加減してくれてもいいでしょう?」

「仕方ありませんね」

二人はゆっくりと近づき、雪香が少し膝を曲げ、瑠依が背伸びをする形でのキス、それは、特に長いわけでは無かったが、他の誰とよりも激しかった。

「なるほど、確かに愛美さんと同じ動きではありますね」

「愛美に聞いてるでしょ、私が愛美の技を完全に覚えているって」

「ええ、気を付けろ、と言われました」

「疑っているみたいね、なら、試してみる?」

「ええ、本当かどうか気になりますから」

自ら進んで横になる雪香に、覆いかぶさるように、そのアソコに舌を這わす。

「ん、確かに・・・・・」

「どう、感じる」

「ええ、とても・・・」

そこで、少し熱を帯びかけていた声は一転し、普段の余裕の溢れる声に戻った。

「とてもよく出来たフェイクですわ」

その言葉に、一瞬動きの止まる瑠依、だが、すぐに髪をかき上げ、笑い出す。

「あはは、良く分かりましたね、しばらくは気が付かないと思ってたんですけど?」

「ええ、私も、動揺していれば引っかかっていたかもしれません」

「そうですか、焦りすぎてましたね、最後まで取っておけば良かった」

ゆっくりと立ち上がり、最初と同じように向かい合う二人。

「今のあなたが、本当のあなたですか?」

「違います、ただ、私の嘘を見破った人がいるのが嬉しくて」

「あの無表情は嘘を付く為の芝居だった、そうでは?」

「どうでしょう?」

冗談っぽく、肩を竦めてみせる瑠依。
こうしていると、どこか真依と似ている。

「さて、どうします?」

「それは・・・・・・まだ始まったばかりですから」

不敵な笑みを浮かべ、あの独特なファイティングポーズを取る。
何の格闘技を元にしているかは分からないが、格闘技の才能だけは雪香にも引けを取らない瑠依だ、雪香でさえ、まともに決まれば負けもありえる。
まあ、雪香位になると、相手の攻撃がまずまともに決まらないのだが。

「ふふ、久しぶりに面白い方がいたものです、いえ、いたわね」

嬉しそうな雪香が、ジリジリと、慎重に間合いを詰める。
本能的にか、危険を察知した瑠依が雪香に合わせて後ろに下がり、何もしないまま、ロープに追い詰められた。

「く、はあっ」

そこで、苦し紛れにか、鋭いハイキックを放つ。
普通の人間なら反応も出来ず、容易く頭を捕らえる一撃も、雪香には見切られ、余裕を持って左腕でガードする。
しかし、その一撃は、途中で起動を変え、雪香の足元に打ち下ろされた。
瑠依の口元に、『してやったり』と笑みが浮かぶ。

「つ、まだまだ」

軽い痛みを堪え、瑠依の身体を力任せに引っ張り、一本背負いのような投げでマットに落とす。

「あっ、く」

「ふぅ、あの時のお返し、投げ始めに少しコツがいるけど、慣れれば簡単ね」

「一応、それはオリジナルなんだけど」

「そう、なら、著作権使用料を払おうか?」

軽く冗談を言いながら、瑠依が立ち上がるのを待つ。
そして、その手は脇腹を擦っていた。

「いいよ、私も同じ事をしたから、でも、少し入りが浅かったかな」

「こう言っては何だけど、私に『痛い』と思わせただけでも、賞賛に値すると思うよ」

「凄い自信ね」

「事実だから」

その言葉が、あながち冗談でもない事を、瑠依は分かっていた。
二度、攻撃が当たったのは、正直言って偶然も味方した結果に過ぎない。
だから、勝つのは無理そうだったから、瑠依は、久しぶりにただ楽しむ事にした。

「ねえ、本気出していいよ、私はみんなより少しは丈夫だし、避けるのも得意だから」

「それは、願っても無い事よ」

勝敗はある意味、既に決まっていても、どちらも嬉しそうだった。

(瑞穂、だったっけ、あの娘の気持ちも少しは分かる・・・・とまでは行かないけどね)

普段あまり無い事だが、積極的な雪香の攻撃が瑠依を襲う。
その、早い攻撃を何とかかわしながら、圧倒的に不利な状態で、どうなったのか、倒れた瑠依の上に雪香が覆いかぶさっていた。

「重いんだけど」

「あれだけの攻撃の後にそれだけ言えるなんて、面白いね」

やさしく、包み込むように瑠依の胸を揉み、ゆっくりと、すぐにイカそうとするのではなく、長く楽しむ為のそれは、瑠依の顔に変化を起こす事は出来なかったが、左胸に当てた雪香の手は、高くなる心音を感じていた。

「ふふ、無理をせずに、我慢はいけないよ」

「胸ばっか、卑怯」

「なぜ? 私の胸もあなたの目の前にあるじゃない?」

「ええ、本当に、少し身体を浮かしても、私の身体に当たっている程大きな胸がね」

「クスッ、なら、体勢を変えようか」

ゆっくりと、瑠依の目の前、もとい、顔を胸で挟み込む様に移動する。

「これは、嫌がらせ?」

そう言いながらも、舌と指をフルに使い、雪香の胸を攻撃する。
瑠依には、愛美の技のコピーとは言え、長くしていれば雪香も危ない技があり、奈江香と全く同じ指の動きは、一緒に使えば雪香にも十分な効果がある。
その為、少しすると、微かな、ほんの微かな吐息が雪香の口から漏れ始めた。
その時、瑠依は胸だけでイキかけていたが、瑠依は特に気にしていなかった。

「ねえ、もうすぐ私はイクけど」

「あら、もう?」

「ええ、だから、とりあえずアソコでイカせて」

「いいよ」

そのままの姿勢で前に移動する雪香、瑠依の目の前は、身長差の為、真っ暗になっているが、雪香の目の前には瑠依の濡れたアソコがあった。

「それじゃあ」

ゆっくりと、そこに指を入れ、段々加速させ、そして、瑠依はイった。

「本当は、『奥義』というものもあるんだけど、下手に使って覚えられたら困るから、使えないのが残念ね。だけど、それ以外の技なら、いくらでも使ってあげる」

「わ、私は、痛いのが好きってわけじゃないよ」

「さあ、どうかな?」

ふらふらだが、立ち上がった瑠依を、やさしく抱きかかえる雪香。
ただの抱擁に見えて、その実、強烈なベアハッグだったりする。

「う・・・ぐ・・・・・・・ん・・・・・」

「次は、アトミックドロップよ」

その瑠依の身体を、思い切り振り上げ、膝に叩きつける。

「ああっ・・・・」

「次は・・・・・」

崩れ落ちようとしている瑠依を捕まえ損ねた雪香は、その瑠依が自分の後ろに回りこむのに気が付き、少し驚いた。

「あ、まだ動けたの?」

「何とか、もう、最後の力だけど」

「それで、何をしてくれるの?」

「それは・・・・」

その次の瞬間、後ろから、雪香の股間に当てた手の力で、瑠依の身体を支点にし、雪香の身体を持ち上げ、頭からマットに叩き付けた。
もちろん、股間に当てた手を、強く押さえつけている。

「う・・・・・・・・・あれだけされて、これ程の技が出せるとはね」

頭を振りながら、少しふらつく足取りで倒れたままの瑠依に近づく雪香。

「う、うう・・・・・」

「もう体力が限界の様だけど、最後に一度」

その一言の間に、悲しそうな顔から、笑顔に変わり、そして、瑠依はもう一度イク事になった。


やはり、雪香は今の所最強のようだ。

 

 

 


あとがき

改訂版+雪香戦です。
これは、書きたかった事を伏線にしすぎて、訳が分からなくなった文を直し、少しは読みやすく、また、雪香戦までに、いくつかの事実が分かる様にしてみたのですが、どうでしょう? 瑠依がどんなキャラか分かりました?
雪香戦の途中、敬語になる所といつもの淡々とした口調の所がありますが、それはわざとです。
微妙な瑠依の心情が分かる様に、としたつもりですが、変に感じたらすいません。

主な変更点は、瑠依対瑞穂戦は、殆ど書き直しました。
瑞穂のタフさや、天然が入った性格を出せるよう、受け、責めをはっきりさせてみました。
瑠依を人間らしくしたのも変更点の一つです。

雪香とのファーストコンタクト、これは瑞穂の性格を修正、そして、分かりにくかった伏線を前面に押し出しました。

対奈江香戦、殆ど変わってません。

対愛美戦、愛美の技をコピーするシーンを減らし、決着は他の技に変更、少し分かりにくくなったけど、次の雪香戦の繋ぎに変更。

対雪香戦、付け加えました。
これだけで一作にしようと考えたけど、それをあきらめ、瑠依のすべて、では無く、半分位が明かされるこれを加えて、瑠依編一応の完結としました。

やっぱり、瑠依でも雪香に比べれば弱いっすねえ、防御力が高く、回避も体力も高い奴相手にスピードとテクニックだけで勝てる道理はありませんもん。
ガンダムで例えればジオングとゲルググ?
それ位違いますから、ええ、きっぱりと。
分かりにくい方は、ボクシングのヘビー級にフェザー級のチャンプが戦いを挑んでいる図を想像して下さい。
更に分かりにくくなった気がしますが、まあ、かなりの能力差があると考えればいいんですが。

瑠依は、書きにくいけど、面白いキャラでした。
僕は、『真依と似てない』ってたくさん書いてたんですが、それも実は伏線で、真依と同じ嘘つきでした、という落ちを作りたかっただけです。

これも気に入らない人は、メールを下さい、また書き直します。
それでは、坂本(仮)でした

 

 

戻る