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一触即発

 

 

4月の第2月曜日。

真新しい制服に身を包んで入学式を終えた亜希子は、美佳と一緒に下校するため校舎中央の階段を駆け降りてきた。

 

(美佳ネエ待ってるかなぁ?)

亜希子が下駄箱の前で立ち止まり、外履きを取ろうと腰を屈めた時、亜希子と背中合わせの下駄箱でも、脱いだ上履きをしまおうとした女子生徒がしゃがみこむところだった。

 

 ドン

「あっ」「きゃっ」

二人が突き出したお尻が、まるで尻相撲でもするかのようにぶつかり合った。

 

 ゴツン ゴツン

「痛っ」

「いったーい・・・」

反動で前のめりになった亜希子とその女子生徒は、二人とも額を下駄箱にぶつけて悲鳴を上げた。

 

「ったいなー、気をつけてよね!」

「んだとぉ!テメ・・あ、あんたこそ気をつけなさいよ!」

いきなりドンケツを食らった上に文句まで言われ、ヤンキーモードに入りそうなのをぐっと堪えて、亜希子は打ちつけた額を押さえながら振り返った。

相手の女子生徒も同じように、下駄箱に打ちつけた額を押さえながら振り向いてきた。

 

「あーーーーーーー!!」

「あーーーーーーー!!」

 

相手の顔を見て驚きを隠せない二人は、すかさず胸倉を掴み合った。

「クソまい・・・テメエ、なんで長浦にいんだよ!」

「あんたこそ・・・なんでアンタみたいなヤンキーがココに・・・」

 

昇降口の真中で真依子と亜希子が互いに相手の胸倉を掴み合うと、二人の周りにはたちまち人垣ができあがった。

 

「喧嘩だ!喧嘩だ!・・・」

「1年の女子同士だって・・・」

「新入生の女子が・・・」

 

 

(アキちゃん遅いなぁ・・・ん、なんか昇降口のところ・・・)

騒ぎに気がついた美佳が昇降口まで来ると、厚い人垣に阻まれてしまった。

「どうしたの?何かあったの?」

美佳は、目の前にいた新入生に声をかけた。

「なんか1年の女子同士が喧嘩してるみたい・・・」

新入生の答えを最後まで聞かずに、美佳は人垣の中へと入っていった。

「ちょっとゴメン・・通して・・ちょっと・・・」

 

「こらっ、あんた達・・・アキちゃん!あーー・・・」

美佳は亜希子たちの間に入ると、亜希子の相手を見て驚きの声を上げた。

 

(ゲッ、こいつもいるんだ・・・)

突然現れた美佳に、真依子の表情が険しくなった。

「あんた、大西のところにいた・・・」

「だったら何なのよ!」

 

 

「せんせー!こっちです・・・」

「どうしたぁ?」

「こっち、こっち・・」

 

 

「二人ともその手を離して!こっちに来なさい!早く!」

他の生徒に呼ばれた教師が近づいてくると、美佳は亜希子たちを素早く校舎から連れ出し、一番近い東長浦駅とは反対の、急行も止まらない西長浦駅の方に向かった。

 

 

 

「ここなら良いかな?」

美佳は住宅街の外れにある神社の前で立ち止まった。

「ほらっ、おいで!」

そして真依子と亜希子を促すと、神社の境内へと入っていった。

 

「あんたたち、こんなところで・・・」

美佳が真依子と亜希子を連れて本堂の裏手へまわると、美佳のクラスでオタッキーズと呼ばれている3人の男子生徒が隠れるようにタバコを吸っていた。

「か、川村・・・」

「密告らないでくれよ・・・」

「頼む、このとおり・・・」

3人は慌ててタバコを消すと、美佳に向かって両手を合わせた。

「ったく、情けない声を出すんならタバコなんか吸わなきゃ良いでしょ!」

美佳は真依子と亜希子に向かって目で合図すると、神社から出ていった。

 

 

「ここまで来ればもう大丈夫・・」

滅多に人も通らない雑木林の中で立ち止まると、美佳は亜希子たちの方に振り向いた。

 

「美佳ネエ、手を出さないでよ!」

亜希子は一歩前に出ると、真依子を睨み付けた。

 

「後ろから見守ってもらえば恐くないって?」

真依子は鞄を置くと、亜希子を睨みつけながら構えた。

 

「テメエひとり殺るのに、わたし一人でもお釣がくるよ!」

「あんたが卑怯な事しなければ、地面に這い蹲うのはあんたの方だよーだ!」

「卑怯卑怯って・・テメエこそ、いつもいつもスプレー使うじゃねえか!

 ポケットのもん全部出しな!どーせ、また、隠してんでしょ!」

「ふざけるな!あんたこそ着てるもの全部脱ぎなさいよ!

 スタンガン隠し持ってるんでしょ!」

「上等じゃねえか!テメエが脱いだら、わたしも脱いでやるよ!」

 

「ちょっとあんた達、自分が何を言ってるか判ってるの?

 女の子が『服を脱げ』だ『裸になれ』だって・・・」

真依子と亜希子のやりとりに、美佳が口を挟んだ。

「だって美佳ネエ・・・」

亜希子が喋りかけた時、遠くから大勢の足音が近づいてきた。

 

「みんな〜、滑らないようにゆっくり歩くんですよ〜」

「はーい」「はーい」・・・

 

「ここも人が来るか・・・」

ぽつりと呟いた美佳の横を、大勢の保育園児が賑やかに通り過ぎていった。

 

「かわむらぁ、あんたさっきからわざと邪魔が入るようなとこ選んでない?

 可愛い『アキちゃん』を守る為に・・・」

「なんですって?!」

真依子が言うと、美佳がものすごい剣幕で睨み返した。

「美佳ネエに守ってもらわなくても、テメエなんか・・・」

「・・・だったら、誰にも邪魔されずにやれる場所いっぱいあるのに・・・」

美佳と亜希子を無視するかのように真依子が呟いた。

 

(服を脱ぐ・・・誰にも邪魔されずに・・・)

美佳の頭に、何かもやもやとしたものが浮かんできた。

(服を脱いで裸になる・・・水着に着替える・・・渋谷?!)

 

「あっ!」

「美佳ネエ、どうしたの?」

突然大声を上げた美佳を、亜希子は訝しそうな顔で見た。

「いい所があった・・・ついておいで!」

 

 

 

2時間後・・・

美佳たちは、道玄坂にある雑居ビルの前に居た。

「こっち、こっち・・・」

美佳は非常階段の横にある扉を開くと、真依子と亜希子を電気室に招き入れた。

そして配電盤に近づくと、手慣れた調子で中にあるパソコンを操作した。

 

 シュー

 

「えっ、なに?」

「なんなの?」

奥の扉が開くと、真依子と亜希子は驚きの声を上げた。

「いいから・・・おいで!」

 

 

「そこに指を当てて!」

地下1階に降りると、美佳はインターホンのようなものを指差した。

美佳に言われるままに亜希子が指を当てると、左側の扉が音も無く開いた。

 

「あんたも!」

亜希子が扉の中に消えると、美佳は真依子にも促した。

「ちょっ、ちょっと何なのこれは・・・」

「いいから!」

 

 

《 このやろぉ・・  きゃぁぁぁぁっ・・ 》

《 わたしの爆乳であなたのこと・・・ 》

《 だめっ・・ あぁぁぁぁっ・・ 》

《 あうっ、あうっ・・ てめえー・・ 》

《 だれかプロレスしませんか? 》

 

 

美佳が中に入ると、真依子と亜希子は呆然とした表情で広間を囲むモニターを見ていた。

「いっぱいかぁ・・・」

美佳がポツリというと亜希子が振り向いた。

「美佳ネエ、これは・・・」

予想だにしなかったの光景に、亜希子の言葉も途中で途切れた。

「ちょっと待ってね」

美佳は二人を残すと壁際のパソコンの方へ行ってしまった。

 

《 きゃぁぁぁっ、いやぁぁぁぁっ・・・ 》

広間に突然、悲鳴が響き渡った。

真依子と亜希子が悲鳴のした方を見ると、ブラジャーを剥ぎ取られ泣きながら胸を隠している少女の姿がモニターに映し出されていた。

「もう直ぐあんたも、あーなるんだからねーだ!」

「その言葉、そっくり返してやるよ!」

真依子が言うと亜希子もすかさず言い返した。

モニターには、両手で胸を隠して泣いている少女に向かって、それでも残忍な顔で攻め続ける少女が映っている。

「あんたを絶対に泣かしてやるから!」

「あんたが泣いても許してやんないから!」

またもや掴み掛かりそうになる真依子と亜希子。

 

「こっちにおいで!」

戻ってきた美佳は、真依子と亜希子を促して化粧室の方へと歩き出した。

 

「美佳ネエ、そっちは男子用・・・」

美佳が電気の消えている男子用トイレに入ろうとすると、亜希子はその場で立ち止まった。

「ここにオトコは入って来れないから・・・」

美佳は構う事無く男子用トイレに入ると、清掃用具入れを開けた。

するとそこには、更に下の階へと降りる階段があった。

 

 

《 ドスッ ドスッ・・・  ぐふっ、がはっ・・・ 》

《 ほら、来いよ・・・  テメエ、ふざけんな! 》

 

美佳たちが地下2階に入ると、そこでも女性同士が闘っている姿がモニターに映し出されていた。

 

「ここで良いか・・・」

美佳は、モニターが消えている一番奥の扉の前で立ち止まると振り返った。

「あんた達がどうしてもやりたいって言うなら、私は止めない・・・

 でも、やるんだったら素手でやりなさい!

 良い?わかった?」

真依子と亜希子が黙って頷くと、美佳は扉の中に入り正面にある螺旋階段を登っていった。

 

「逃げるなら、いまのうちだよ!」

真依子は亜希子をひと睨みすると、扉の中に入り右側の更衣室に消えていった。

「テメエこそ後悔すんじゃねえぞ!」

亜希子は真依子の背中に怒鳴りつけると、左側の更衣室に入っていった。

 

 

(これで良いや・・・)

亜希子は、衣装棚から紺のスポーツ用ホールターと同じく紺のボクサーショーツを取り出すと着替え始めた。

(そうだ、これも・・・)

そして着替え終わると、オープングローブを手に更衣室を後にした。

(絶対泣かしてやる!)

 

 

(やっぱギャルは可愛い方が良いもんねー)

真依子はライトブルーのスポーツビキニを手に取ると着替え始めた。

(アイツ、川村の真似ばっかするけど・・・

 やっぱりアイツも関節を狙ってくるかなー?)

真依子の脳裏に、足首を捻られて立ち上がれなくなったノアの姿が蘇った。

(一応、念のために・・・)

真依子は肘と膝にプロテクターをはめると、オープングローブを手にリングに向かった。

 

 

美佳が真依子と亜希子を連れ込んだのは、リングの回りを金網で取り囲んだ『金網デスマッチ』用の部屋。

亜希子が金網の一角にある扉を開けてリングに上がり、コーナーポストに向き合うようにトップロープを掴んで身体をほぐしていると、真依子が亜希子を睨みながらリングに近づいてきた。

 

「あんまり遅いから逃げたのかと思ったよ!」

亜希子は近づいてくる真依子に向かって、リング上から声を掛けた。

「うるさい!誰があんたみたいなヤンキーに・・・」

「それより何なの、その格好は・・・」

「あんたこそ、わたしが言ったこと気にして『脱がされ難いように』って

 そんな格好してるんじゃない?

 それとも格闘家みたいな格好したら、わたしに勝てるとでも思ってんの?」

真依子は金網を掴むと、リング上の亜希子に向かって更に挑発した。

「おいヤンキー、『パブロフの犬』って知ってるか?」

「自分の名前も漢字で書けないくせに、難しい言葉知ってんじゃん!」

「うるさい!

 あんたは今から、このまい子様に徹底的に傷めつけられんだよ!」

「それはあんたの方でしょ?」

亜希子は金網に近づくと、真依子を見下ろしながら言った。

「強がりが言えるのも今のうちだよーだ!

 あんたはこれから3年間、わたしの顔を見る度に今日の事を思い出して

 震え上がるんだよーだ!

 丁度、パブロフの犬がベルを鳴らされたみたいに・・・」

 

 ガシャン

「ごちゃごちゃ言ってねーで、さっさと上がって来いよ!」

亜希子は金網を蹴って真依子を睨みつけた。

 

真依子は亜希子を睨みつけながら、ゆっくりとコーナーに上がった。

「これで逃げられないよ」

亜希子に言ってから振り返ると、金網の扉を閉めて鍵を掛け始めた。

 

 ガッシャーン

突然亜希子は、自分に背中を向けて鍵を掛けている真依子めがけて、勢い良く飛び蹴りを食らわした。

「あうっ」

亜希子の飛び蹴りが背中に入ると、真依子の身体は金網に叩きつけられた。

「てめぇ、卑怯だ・・」

「うるせぇ、このやろう!」

亜希子は真依子の髪を掴むと、顔面を金網に何度も叩きつけた。

 

 ガシャン ガシャン ガシャン・・

「あっ、あっ、あうっ・・」

早くも真依子の額には、薄っすらと血が滲んできた。

「テメエがパブロフの犬になりゃあ良いんだよ!」

亜希子は真依子の顔をこちらに向かせると、血が滲んで赤くなったところに拳を叩きこんだ。

 ボコッ ボコッ・・

「きゃぁ、あっ、あっ・・」

必死に額を庇おうとする真依子の手を避けるように、亜希子の拳は情け容赦無く真依子の額にヒットし続けた。

 

(くっそー、まい子もう怒ったぞー!)

「いい加減にしろ!このやろー!」

 ブスッ

額の痛みを我慢してVの字にした真依子の指が、亜希子の目に突き刺さった。

「きゃぁぁぁぁぁっ・・・」

真依子の反撃に亜希子は両手で顔を覆うようと、バタバタと足踏みするようにもがきながら、真依子から逃げるようにリング中央へ後退った。

 

「このやろー!よくもまい子の顔を・・・食らえ!」

真依子はロープをくぐってリングインすると、勢い良く駆寄りながらローリングソバットを亜希子に叩きこんだ。

 バシッ

「あうっ・・」

無防備な亜希子の身体がロープめがけて吹っ飛んだ。

 

 ガシャン

「ぐぁ・・」

背中からロープにぶち当たった亜希子の身体が、勢い余ってロープを乗り越えるように金網に叩きつけられると、後頭部を強か打ちつけた亜希子は、そのままロープ際に崩れ落ちた。

真依子は、仰向けでひっくり返る亜希子の顔面に、強烈なストンピングを叩き込んだ。

 

 ドスッ

「あがぁ・・」

亜希子の鼻から、真っ赤な鮮血が流れ出した。

 

「よくも、よくもまい子の顔を・・」

真依子は何かに取り憑かれたかのように、亜希子の顔面にストンピングを連発。

ドスッ ドスッ・・

「がっ、ぐぁ、がはっ・・・」

慌てて両腕で顔を庇う亜希子の額にも、薄っすらと血が滲み出した。

 

「このぉ、このぉ・・」

亜希子が顔面をガードすると、真依子はがら空きになったお腹にストンピングを連発。

ドスッ ドスッ ドスッ・・

「うっ、あうっ、あうっ・・・」

真依子から逃げるようにのたうち回る亜希子。

 

「あんただけは、許さないかんねー!」

真依子のつま先蹴りが、横向きで身体を丸めて耐える亜希子のお腹を襲った。

 

 ドスッ

「ぐはっ・・・」

だが亜希子は、腹筋にありったけの力を込めて真依子の足を掴まえていた。

「どうだ、つかまえたぞ・・・」

「あっ、くそっ・・」

真依子は慌てて足を引き抜くと、亜希子と間合いを取って構えた。

 

「くっそぉ・・」

亜希子はオープングローブで鼻血を拭いながら立ち上がると、真依子を睨みながら構えた。

「テメエ、覚悟は出来てんだろうな!」

鼻から胸元を滴り落ちる鼻血で赤く染めた亜希子は、ファイティングポーズをとりながら、じりじりと真依子に近づいていく。

 

 バシッ

「あうっ・・」

亜希子のローキックが真依子の太股に叩きこまれた。

「くっそー・・」

 バシッ バシッ・・

真依子は一歩踏みこむと、お返しとばかりに亜希子の太股に蹴りを連発。

「このやろぉ!」

 

 バシッ ボコッ バシッ ボコッ

亜希子も負けじと、ローキックを連発しながら真依子の胸元を殴りつけた。

 

 

 バシッ ボコッ バシッ ボコッ・・

 バシッ ボコッ バシッ・・

 

まるで空手の接近戦のように、ローキックを放ちながら互いの胸元を殴りつける真依子と亜希子。

 

「このやろぉ!」

亜希子は一歩踏みこむと、真依子の太股に膝蹴りを入れた。

 ドスッ

「あうっ・・」

バランスを崩す真依子。

 

(もう一発・・)

亜希子の右脚がピクッと動いた。

 

(次は右にくる・・)

真依子は亜希子の僅かな動きも見逃さなかった。

 

 バシッ

「あうっ・・」

真依子は、右の太股に襲い掛かる亜希子の脚を掬い上げるように掴まえた。

「あっ・・」

 

亜希子の脚をしっかりと抱え直す真依子。

「今度はこっちが・・」

「てやぁっ!」

しかし亜希子は、真依子が言い終わらないうちに、飛びあがるように右足でリングを蹴ると延髄蹴りを叩きこんだ。

 ボコッ

「あうっ・・」

真依子はリングに吸い込まれるように、うつ伏せに崩れ落ちた。

亜希子は素早く立ち上がると、真依子の背中に座りこんで髪の毛を引っ張った。

「あぁぁ・・」

慌てて両手で髪の毛を押さえる真依子。

「そりゃっ!」

亜希子はすかさず立てた自分の膝に真依子の両肩を引っ掛けた。

「きゃぁぁぁぁぁぁ・・」

「ほらっ、さっさと降参しちゃいなよ!」

「だ、だれがお前みたいなヤンキーなんかに・・」

真依子が言い終わらないうちに、亜希子は左腕を額に回して締め上げた。

「あぁぁぁぁぁぁぁ・・」

「ほらっ、さっきの威勢はどうした!」

「あぁぁぁ、ぜ、絶対負けない・・あぁぁぁ・・」

 

「くそっ・・これならどうだ!」

亜希子は右手で真依子の髪を鷲掴みにすると、左腕を今度は顎の下にまわし、そのまま後ろに引っ張った。

「あぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

「どうだっ、参ったか!」

「あぁぁ、あぁぁぁ、あぁぁ・・・」

亜希子がグイグイと引っ張るたび、小刻みに悲鳴を上げる真依子。

「そりゃっ、そりゃっ、そりゃっ・・・」

「あぁぁぁ、あぁぁ、あぁぁ・・」

 

「くそっ、しぶといな・・・」

亜希子はポツリと呟くと両手を離した。

「はぁ、はぁ、はぁ・・」

両肩を亜希子の膝に引っ掛かけられたまま、うなだれるように頭を垂らして荒い息をつく真依子。

亜希子は真依子を放して素早く立ち上がると、うつ伏せに倒れている真依子の脇腹に、何発も爪先蹴りを入れた。

 ドスッ ドスッ ドスッ

「がっ、うがっ、ぐぁっ・・」

亜希子の爪先がめり込む度に、真依子の身体がビクンビクンと跳ねた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・」

(くっそー!こいつ本当に強いの?)

真依子は蹲ったままで荒い息をついている。

「ほらっ、もうシメエかよ!」

すっかりヤンキーモードに入っている亜希子は、真依子を見下ろした。

「ほらっ、起きろよ!」

亜希子は真依子の髪を鷲掴みにすると、無理矢理引き摺り起した。

「きゃっ」

小さな悲鳴を上げる真依子。

(くっそー・・まい子、絶対に負けないんだから!)

 

「このー!」

 ドスッ

真依子の強烈なパンチが亜希子のお腹に突き刺さった。

「あうっ・・・」

油断しきっていた亜希子は、お腹を押さえて前屈みになった。

「散々やりやがって・・・死ねヤンキー!」

 

 ボコッ

真依子のストレートが、亜希子の頬を襲った。

「がはっ・・」

亜希子は頬を押さえると、そのまま2・3歩後に下がった。

「逃げんじゃないよ!」

真依子は亜希子に飛び掛るように勢いをつけながら、再び強烈なストレートを放った。

 バシッ

ところが亜希子は、襲い掛かる真依子の腕をしっかりと掴まえた。

「あっ」

「あんたのやることはミエミエなんだよ!」

「くそっ!」

右腕を掴まれている真依子は、不意に左腕で亜希子に殴りかかった。

「おっと・・・」

亜希子は右腕を斜めに立てて真依子の拳を振り払うと、真依子の右腕を力一杯握り締めた。

「美佳ネエ直伝の・・そーりゃっ!」

そして腰を落としながらくるっと懐に入ると、前屈みになりながらこころもち曲げた膝を、一気にピンと伸ばした。

 バシン

「あうっ・・」

強烈な一本背負いでマットに叩きつけられると、真依子は背中を浮かして苦痛の呻き声を上げた。

「そーりゃっ!」

亜希子は真依子の手首をしっかり掴み直すと、そのまま真依子の右腕に両脚を絡めながら、ギロチンドロップのようにお尻から倒れ込んだ。

 

「ぐあっ」

喉元と胸に亜希子の太腿が叩き込まれると、真依子は呻き声を上げながらビクンと大きく跳ねた。

「それっ!」

亜希子は腕ひしぎを極めようと、真依子の手首を掴んだまま大きく後ろに仰け反った。

「あっ、くそっ・・」

真依子は慌てて半身になると、左手を伸ばしてクラッチを切った。

「くっ、このぉ・・・」

 ボカッ ボカッ ボカッ・・

亜希子は左手で真依子の手首を一段と強く握り締めると、右手を固く握り締めオープングローブ越しに真依子の左手を殴り付けた。

「諦らめてその手を離せよ!」

「誰が離すもんか!」

 ボカッ ボカッ・・

真依子の手を執拗に殴りつける亜希子。

「離せよ!」

「くそっ・・このっ・・・」

真依子は右肘を曲げると、亜希子から逃れようと必死になってもがき暴れた。

「あっ、こらっ・・」

あまりにも激しい真依子の暴れ方に、亜希子は再び両手で真依子の手首を握り締めると、無理矢理クラッチを引き剥がそうと力を込めた。

 

「くっ・・かはっ・・(絶対に離すもんか!)」

右肩を支点に半身になりながら、両手をしっかり握り合わせる真依子。

「くそっ・・くうっ・・(ちくしょう!さっさと離れろ!)」

背中を丸めて太腿の間に真依子の肘を挟むような格好で力を込める亜希子。

 

 ビクッ ビクッ・・

 

鋭角に曲げられた真依子の肘を守るプロテクターのゴワゴワした感触が、何度も何度も亜希子の股間を擦ると、亜希子の大事なところが、くすぐったいような気持ち良さに襲われた。

「あんっ・・・(いつまでもこんな事やってたら感じちゃう・・)」

 ボコッ

亜希子は真依子の鳩尾に踵を叩き込むと、素早く真依子から離れた。

「ううっ・・」

予想もしなかったお腹への攻撃に、一瞬、力の抜けた真依子は、お腹を押さえて仰向けに転がった。

 

「そりゃっ!」

亜希子は素早く真依子に覆い被さると、お腹を押さえる腕を払いのけて横四方固めを極めた。

「きゃっ・・」

すかさず半身になろうと左肩を持ち上げる真依子。

「それっ!」

亜希子は脇腹で真依子の鳩尾を押さえつけて動きを封じると、素早く真依子の左腕を真横に伸ばしてアームロックを極めた。

 

 

「ほらっ、折るぞ!」

「あぁぁぁぁぁっ・・」

目を瞑って頭を振りながら必死に耐える真依子。

 

「さっさと降参しろ!本当に折るよ!」

「あぁぁぁっ・・くそっ・・」

真依子は苦し紛れに亜希子の股間を握り締めた。

「きゃあ、何すんのよ、この変態!」

「あんたのココ、握り潰してやる・・」

亜希子が腰を浮かせて激痛から逃れようとすると、恥丘を握り締める真依子の手には更に力が加えられた。

「あぁぁっ、痛っ、痛っ・・離してよ!」

あまりの痛さに泣き出しそうになる亜希子。

「腕の一本なんてくれてやるよ!

 その代り、あんたのココを一生使い物にならなくしてやる!」

「あぁぁぁぁぁっ・・・」

亜希子の悲鳴が一段と高くなった。

 

(くっそぉ・・そっちがその気なら・・・)

亜希子は頭を持ち上げると、真依子の胸に噛み付いた。

 ガブッ

「きゃぁぁぁぁぁっ・・・痛ーい・・」

真依子は脚をばたつかせて、大きな悲鳴を上げた。

 

(噛み切ってやる!)

亜希子が噛む力を強めると、あまりの痛さに真依子の身体はまるで痙攣するかのようにガタガタと震えだした。

「あぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

目に涙を溜めて、またもや頭を振りながら必死に耐える真依子。

 

(ヤバっ・・・)

痙攣にも似た小刻みな震えが、真依子の腕の先から亜希子の大事なところを伝わって、奥深くにまで刺激を与えた。

(このままじゃあ・・・)

真依子が胸の痛みに耐えながらも亜希子の股間を握り続けると、亜希子の大事なところを痛みと快感が交互に襲い出した。

と、それに反応するかのように、真依子の胸を噛みつける力も強弱を繰り返すようになった。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ・・離せ、離せこのやろー!」

なんとか亜希子の髪を掴んだ真依子は、絶叫しながら乱暴に亜希子の髪の毛を引っ張った。

すると、負けじと亜希子も真依子の髪を鷲掴みにした。

女性自身に迫る来る快感から力が抜けそうになるのを必死に堪え、真依子の胸を噛み続ける亜希子。

それを引き剥がそうと真依子が亜希子の髪を乱暴に揺さぶれば揺さぶるほど、真依子の胸もまるで乱暴に愛撫されているかのような反応を示し出した。

 

「テメエ、マゾかよ!」

真依子の胸の先端が固く尖っているのに気が付くと、亜希子は顔を上げた。

「痛めつけられて乳首おっ勃ててんじゃねーよ!」

 

 ヌルッ

その途端、亜希子の女性自身の奥深くから迸る蜜に、真依子の手は滑るように亜希子の股間から離れた。

「あんたこそ、なに感じてんだよ!」

額と額がくっつくほど思いっきり亜希子の髪を引っ張った真依子は、再び蜜が滲んでヌルヌルと滑る亜希子の股間を鷲掴みにした。

「あんっ・・このぉ・・・」

負けじと亜希子も、真依子の股間に手を伸ばすと、中指を割目に強く押し当てるように強く握り締めた。

「あっ、あんっ・・」

「テメエこそ、何なんだよココは!」

割れ目の中に食い込んだ水着が僅かに湿り気を帯びているのが判ると、亜希子は左手で真依子の胸を鷲掴みにした。

 

「もう、このスケベ!汗だよ・・汗にきまってんでしょ!」

真依子も言い返しながら亜希子の胸を鷲掴みにすると爪を立てた。

「あんっ、痛っ・・・汗がこんなにヌルヌルしてるかよ!」

亜希子が割目に沿って強く押し当てるように指を動かすと、真依子の女性自身の奥深くから迸る蜜も、水着の表面に滲み出てきた。

「あっ、こらっ・・何やってんだよ・・・」

亜希子の指使いに、ついつい感じてしまう真依子。

「テメエだって感じて・ん・だ・ろっ!」

亜希子は指をぐっと突き立てると、真依子の秘所を思いっきり握り締めた。

「痛っ・・・このー!」

真依子も負けじと、ショーツに穴が開くのではと思われるほど指を突き立てて、亜希子の秘所を握り締めた。

 

「あんっ、あっ・・」

亜希子が手に力を込めると、真依子は悩ましげな声を上げてビクンと跳ねた。

が、直に気を取り直した真依子は、お返しとばかりに力一杯亜希子の秘所を握り締めた。

「あっ、ああっ・・・」

すると今度は、亜希子が喜びを隠しきれないような呻き声を上げて身体を震わせた。

 

「あっ、あんっ、ああっ・・」

「あんっ、あんっ、くうっ・・・」

 

互いに相手の秘所を掴み合う二人の右手は、握り締めていたのがだんだんと揉み解すような動きになっていった。

それと連動するかのように、相手の胸を鷲掴みにしていた左手も同じように優しく揉むような動きへと変っていった。

 

「あっ、あっ、あっ、あっ・・」

「ああっ、いいっ、あっ、あっ・・」

 

真依子がショーツ越しに割れ目に沿って指を優しく動かすと、股間に走る快感に目を瞑って仰け反る亜希子の胸の先端も、ホールターを突き破らんばかりに固く尖ってきた。

真依子は胸の先端の突起を親指と人差し指で摘むと、優しく転がした。

 

「あっ、あああっ・・・」

思わず大きな声を上げた亜希子は薄らと目を開けると、真依子にも同じようにした。

「あんっ・・」

 

一瞬仰け反った真依子が元に戻ると、二人の目が合った。

真依子と亜希子の顔が、どちらからともなく近づいて行った。

 

ごく自然に二人の唇が重なり合うと、互いに舌を絡ませ合いながら、相手の秘所を一生懸命に擦り始めた。

 

 

(あっ、いいっ、いいっ・・・・

 

 ???

 

 ってなんでコイツとこんな事しなきゃなんねーんだよ!)

「テメエ、このやろぉ!」

突然正気に戻った亜希子は、真依子に頭突きを入れた。

 

 ボコッ

「きゃぁぁ・・」

慌てて顔を押さえる真依子。

 

 ガブッ

「あぁぁぁぁぁぁぁっ・・」

再び亜希子が胸に噛みつくと、真依子は頭を振りながら大きな悲鳴を上げた。

 

(ちきしょー!見てろよ!)

真依子は胸の痛みに耐えながら目をキッと見開くと、右手を亜希子のボクサーショーツの中にさっと入れて、指を直接割れ目の中に突っ込んだ。

「きゃぁぁぁぁぁっ・・・」

堪らず大きな悲鳴を上げる亜希子。

「くそヤンキー、覚悟しろ!」

真依子は亜希子の秘壷の中を乱暴に掻き回した。

「あぁぁぁぁぁっ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

亜希子は泣き叫びながら真依子の腕を必死に掴んだ。

すると真依子は、左手をホールターの中に突っ込んで、亜希子の胸の先端で固く尖った突起を指先で思いっきり摘んだ。

「あぁぁぁぁっ、だめえぇぇっ・・・」

目に涙を浮かべて仰け反りながら必死に耐える亜希子の中で、痛みがだんだんと心地良いものに変っていった。

 

「ほら、イクならさっさとイっちゃいな!」

亜希子の表情の変化を見た真依子は、吐き捨てるように言った。

 

(ちくしょう・・)

亜希子は唇をぎゅっと噛み締めて噛んで快感を紛わすと、右手を真依子の水着の中に入れた。

そして、自分がやられているように割れ目に指を突っ込むと、爪を立てるように乱暴にこねくり回した。

「きゃぁ・・あぁぁぁぁぁぁっ・・・」

今度は真依子が目に涙を浮かべて仰け反った。

亜希子は真依子の秘壷をこねくり回しながらビキニのトップをたくし上げると、またしても真依子の胸を鷲掴みにした。

 

(くそっ、このー・・)

真依子も亜希子のホールターをたくし上げると、胸に爪を立てた。

 

「あぁぁぁぁぁぁっ・・・」

目に涙を溜めて悲鳴を上げながら、亜希子は真依子の秘壷の中を乱暴に掻き回した。

「あぁぁぁぁぁっ・・」

真依子も負けじと亜希子の秘壷の中を乱暴にこねくり回した。

 

「あっ、あっ、あっ、あっ・・」

「あんっ、あんっ、あんっ・・・」

 

再び女性自身に快感が蘇ってくると、亜希子は無意識のうちに真依子の指をぎゅっと締め上げながら腰を動かし始めてしまった。

それに応えるかのように、真依子も同じように腰を動かし始めた。

 

二人のリズミカルな動きが、だんだんと激しくなっていった。

髪を振り乱し、プルルンプルルンと胸を揺らしながら、互いに相手の一番敏感な部分を探り合う真依子と亜希子。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・」

「あんっ、あんっ・・・」

またしてもリング上に、二人の喘ぎ声が木霊した。

 

 

「あの娘たち何やってんのよ・・」

少し高いところに設けられた観戦席で、美佳は呆気に取られたように呟いた。

「ったくもう・・・」

だが言葉とは裏腹に、金網リングを見つめる美佳の目は、少しづつ輝きを増していった。

そして無意識のうちに何度も舌なめずりをすると、左手がスカートのポケットへ自然に滑り込んでいった。

 

 

亜希子は、真依子の胸にくっきりと残る自分の歯形に、そっと舌を這わせた。

真依子は一瞬ビクっとすると、亜希子の頭を優しく押しのけて、薄っすらと血が滲んでいる自分の爪痕に舌を這わせた。

 

「あんっ・・」

真依子の指が、大きく膨らんできた亜希子の蕾に触れた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

真依子が蕾を優しく転がし始めると、亜希子の喘ぎがだんだんと高まってきた。

そして何度か痙攣のようにピクピク震えると、力が抜けたように座り込みそうになった。

 

真依子は左手で亜希子の手首を掴むと、自分のビキニから優しく引き抜いた。

そして、自分の右手を亜希子のショーツから引き抜くと、左手で誘導するように亜希子の右手を亜希子のボクサーショーツの中に入れた。

 

「自分で一番良いとこ判る?」

今まで亜希子が一度も見た事のないような優しい顔で真依子が訊くと、亜希子はこっくりと頷いた。

そして亜希子も真依子の手首を優しく掴むと、真依子の右手をビキニの中へと導いていった。

 

真依子と亜希子は自分自身で満足する場所を探り当てると、互いに凭れ掛り合うように胸の先端の突起を互いに擦り合わせながら唇を重ねた。

 

亜希子はうっとりと目を瞑りながら、割れ目の入口近くに膨らんだ蕾を緩急織り交ぜて転がし続けた。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

真依子の息遣いがすぐ近くに感じられると、亜希子は左手で真依子を優しく抱きしめた。

すると真依子も、これに応えるかのように亜希子を力強く抱きしめると、唇を押し当ててきた。

「あっ、んぐっ、んー・・」

「んぐっ、んーー・・・」

真依子と亜希子は、抱き合ったままゆっくりと倒れるようにリング上で横になった。

そして互いに舌を絡ませながら、一番敏感な部分に刺激を与え続けた。

 

 

(いくっ、いくっ・・いっちゃうよぉ・・・)

亜希子の脚がピンと突っ張った。

「ま、まいこぉぉぉ・・・」

そして何度かピクピクと痙攣すると、真依子の名を叫んだ。

 

 

 

 

 

(あれ?)

薄っすらと目を開けた亜希子は、目の前に真依子の姿が無いのに困惑しながら、きょろきょろと辺りを見まわすように、真依子の姿を探した。

だが、亜希子の目に映るものは、亜希子の部屋の天井、亜希子の部屋のカーテン、亜希子の机、亜希子の洋服ダンス・・・。

 

「きゃっ」

股間に挟まる異物感と、指を締め付けられるような感覚で、亜希子は自分が何をしていたのかをはっきりと自覚した。

慌てて下着から抜いた手には、蜜が糸を引いて伸びてきた。

 

(なんなのよ!なんでアイツとあんなこと・・・)

夢の中の出来事とは言え、真依子とあのような行為に及んだ事に、亜希子は自分自身に対して怒りが込み上げてきた。

(今日は大事な日だって言うのに・・・)

ハンガーに掛っている長浦高校の真新しい制服を見ると、亜希子の頭の中で怒りと自己嫌悪が交互に繰り返された。

(やーん、もう・・びちょびちょ・・・)

亜希子はティッシュを何枚も乱暴に取ると、大事な部分と下着に押し当てながら、布団が濡れていないか手で擦って確かめた。

 

 

「あきこー、いつまで寝てるの!早く起きないと入学式に遅れるわよー!」

「わかってるー!」

母親の声に怒鳴るように返事をすると、亜希子はそそくさと着替えを始めた。

 

(もう・・サイテー!)

 

 

 

おわり

 

 

 

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