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GANGAN行進曲       

キサラVSきさらコスプレ後輩!

コスプレ後輩の横恋慕!!  

 

 

 

「せんぱ〜い!!」

 キサラは自分が呼ばれた声に後ろを振り向いた。

そこにはキサラを慕うあまり、自分と同じ髪型、カバン、服装、趣味、好きな食べ物などなど、全てを真似してしまった後輩がいた。

身長も同じ160センチ弱、体重も同じ約45キロ、ロングストレートのやや茶っ毛の綺麗な髪型、しかも小柄だが見事なプロポーションまで同じ大きさときている。

キサラを知らない人が見たら双子としか思えないほどの似方だった。

 無論それは、後輩が整形をしてまでキサラに近づこうとした努力の結果なのだが・・・。

 二人の唯一の違いと言ったらキサラ本人がオレンジのベストにチェックのミニスカートで明るめの色合い、後輩の「きさら」が水色のベストにピンクのチェックのミニスカートで控えめな色合いであるということだった。

 それでもキサラはこの後輩が嫌いではなかった。

 憧れを抱いてもらえるのは正直嬉しかったし、この後輩の真っ直ぐさが好きだった。

 

 例えそれが名前も知らない後輩でも・・・。

 

 そんなわけで、二人は周囲が意外なほど仲が良かった。

「見てくださいよ〜、先輩のブローチ真似しちゃいました〜!」

「あ〜、また真似して〜!ボクが先に見つけたんだぞ〜。」

「ふふ〜、先輩の身に付けるものはぜ〜〜んぶあたしも身につけるんです〜!」

 そう言って嬉しそうにキサラの横に並んだ。

「じゃあ、今日もまたボクと一緒に来るの?」

「は〜〜〜い♪」

 キサラはいつも町をぶらついた。

 そして時には海岸沿いにたまっていた暴走族を撃退したり、女子禁制の道場の道場破りをしたり、地下プロレスに乱入したり、何故か忍者を見つけて倒してしまったりと、奇想天外天真爛漫な生活をしていた。

 そして、いつもその傍らには後輩の「きさら」がいた。

 二人は一度闘った事があった。

 後輩の一方的な申し出をキサラが快く承諾したのだ。

 二人の闘いはなかなか白熱した展開だったが、最後はキサラがスリーパーで勝利を収めた。

 それでも二人の関係に亀裂が入ることはなかった。

 

 しかし、それはたった一つの事で壊れることになってしまった。

 数日後、キサラは「条」という幼馴染みと恋仲の関係になった。

 何でも闘って勝ったら彼女にするという条件だったそうだ。

 そしてキサラは条に奇跡の勝利を収めた。

 条は約束通りキサラを彼女とした。

 しかしここで一つ問題であったのはキサラの傍らには「きさら」がいつもいたということだ。

 キサラが条の彼女になったという事は「きさら」の居場所が条になるということになる。

 しかし「きさら」はそれについて怒る事はなかった。

 もうどうすれば良いのか分かっていたからだ。

(自分も条を好きになってしまえばいいのだ。)

(そうすればまた先輩と同じになる。)

(だから、あたしも条を倒して、あたしの彼にしちゃえばいいんだ!)

 ・・・本人にして見ればごく自然の思考だったのかもしれない・・・。

 

 そして、一週間後、問題が起きた。

条が「キサラ」ではなく「きさら」と一緒に歩いていたという噂がキサラの耳に入ったのだ。

 さすがに怒りを耐え切れないキサラは、「きさら」を放課後の体育館に呼び出した。

「ねえ、どうゆうこと?何でキミと条が一緒に遊んでいたの?」

 キサラは珍しく「きさら」に対して怒っている。

 しかし「きさら」は笑みすら浮かべて答えた。

「だって、あたしは先輩のやる事全て一緒じゃきゃ嫌なんです。」

 キサラは一瞬何を言われたか分からなかった。

 しかし、「きさら」が言った事を理解すると、すこしその端正な顔立ちが少し青ざめる。

「な、何言ってるんだよ!そんなの言い訳になんかなるわけないでしょ!?」

「だって、先輩が好きになった人ならあたしを好きになっても不思議じゃないじゃないですか。」

 そう言った後輩の顔は笑っていた。

 全く罪悪感のない表情だ。

「キ、キミは・・・・。」

「あたしは先輩と同じじゃなきゃイヤなんです。先輩と何もかも一緒じゃなきゃ・・・。」

「そんなの無理に決まってるよ!どんな同じ恰好したって、ボクはボク、キミはキミなんだよ!?」

「あたしは先輩です。だから先輩もあたしなんです。そうだ、ここで闘ってみればきっと分かりますよ。あたしは先輩、先輩はあたしなんだって。」

 そう言って「きさら」はバックを後ろに放り投げた。

 軽く眉がつり上がって睨むようにしてキサラを睨むが、顔はどこか楽しげな雰囲気を醸し出している。

「・・・知らないからね!」

 キサラもバックを後ろに投げ捨てた。

 いつも仲良く一緒にいた後輩との決別の行動のつもりだった。

 そして二人がそっくりのファイティングポーズを取った。

 軽くフットワークを踏みながら、足は内股で手はボクシングのデトロイトスタイルに近い。

 力の入っていない、綺麗な構えだった。

(・・・ほんとにそっくりだ・・・。)

 キサラは今目の前にたつ「きさら」と相対して、内心不安を感じた。

 何もかもが同じな相手。

 自分を真似しつづけて、自分の全てを知っている相手・・・「きさら」。

 本気でやってもおそらくは苦戦は免れないだろう・・・。

「・・・・てやっ!!」

 「きさら」がダッシュから先制のニールキックを仕掛ける!

「くっ!!」

ガシッ!

 キサラはニールキックをしっかりガードした。

「えいっ!えいっ!やあっ!!」

バシッ!バシッ!ドカッ!

 左右の短いジャブと双掌打に繋げるキサラの連続攻撃。

 キサラ得意の連携だ!

「きゃあぁぁ〜〜!!」

 簡単に吹き飛ばされる「きさら」。

 しかしキサラはそこに追い討ちを仕掛けるように走りこみ、

「チアリーダー・キック!!」

 ジャンプをして足を前後に開脚、さらにそのまま回転をして旋風脚のように回し蹴りを連続して入れていく!

ドガッ!ドカッ!ドカッ!

「ああっ!ああっ!ああっ!!」

 3発喰らった「きさら」は再び倒れこむ。

 しかし、「きさら」はすぐに立ち上がってきた。

「まだまだですよっ!!」

 キサラが不安に感じたのはここだった。

 外見だけでなく、その身体能力まで「きさら」は同じなのだ。

「・・・やあっ!!」

 今度はキサラが仕掛けた。同じようにダッシュからのエルボーアタック!

「んっ!!」

ガシッ!

 「きさら」は先程のキサラのようにしっかりとガードをする。そして・・・、

「ピップ・バズーカ!!」

 エルボーをガードされ動きの止まったキサラに、前宙しながらのジャンピング・ピップ・アタック!

  ドムッ!ドガッ!ドカッ!

「あっ!あっ!ああっ!!」

 キサラも自分と同じ威力を持った必殺技を打ち込まれてはたまらない。

 たまらず後方に吹き飛ばされてしまった。

「く、くそぉ!!」

 しかしすぐに立ち上がると、目の前には既にキサラの足があった。

「ビューティー・レインボー!!」

 例えて言うなら回転するドロップキックと言った所か。

ガシィ!!

 しかし、キサラはしっかりとガードを固めてなんとかやり過ごし・・・、

「ビューティー・レインボー!!」

 同じ技での反撃!

 この辺りはキサラの意地だろう。

ドガァッ!!

「うあぅっ!!」

 技を放った影響で背中を見せてしまっていた「きさら」は、背中から受けた衝撃にたまらず前のめりに倒れる。

 それでも決め手にはならない。

 「きさら」は痛そうにしながらも、呆気なく立ち上がってしまう。

(くそぅ・・・・。)

 キサラは余裕の表情など見せられず、緊張からか一筋の汗がつたり流れ落ちる。

(ふふ、やっぱり先輩は凄い人だぁ・・・そうだ!!)

「先輩に勝ってあたしが先輩になっちゃえばいいんだ!!ねえ、先輩。それで良いですよね!?」

「なっ・・・・・!?」

 何を言っているのか全く理解できない。

 キサラは今目の前にいるのが何者なのか混乱してくる。

「・・・キ、キミがボクになるなんて無理だよ!!何をどうしたってボクはボク、キミはキミなんだから!!」

「大丈夫ですよ、だって先輩があたしになっちゃえばいいんだもん。」

 そう言ってキサラは再び構えた。

 「きさら」は自分の言動がおかしい事に気がついているだろうか?

 もし気がついていてくれたら、こんな空しい闘いは終わらせる事が出来る。

 キサラはその希望を抱いていた。

 しかし、今の「きさら」それが無駄だと悟った。

(この娘には・・・思い知らせなきゃダメだ・・・ボクと自分との差を・・・。)

 キサラは決意を固め、構えに力を入れた。

 しかし、それが出来るだろうか?という不安もあった。

 キサラの容姿を真似して、キサラの声を真似し、キサラの運動能力を真似し、自分と同じ戦闘力を持った「別人」に・・・。

 

 時が流れた。

 それは一分にも・・・三十秒にも満たない時間だったかもしれない。

 しかし、二人の間に流れる空気の緊張は一秒ごとに相乗するかのようにその張り合いを増していく。

 そして、不意に・・・コンッ・・・っと物音がした。

 それが引き金になった。

「ピップ・バズーカ!!」

「ピップ・バズーカ!!」

 キサラと「きさら」が空中でぶつかり合う!

バシィッ!!

 前宙式ジャンピング・ピップ・アタックが相打つ!

 二人は同時に背中から地面に落ちてしまうが、すぐに立ち上がると二人同時にローキックを放つ!

ガシィ!!

 二人とも全くの互角で一瞬動きが止まる。

 しかし次いで二人は全くの同時にハイキックを放つ!

ガシィ!!

 やはり拮抗して押し切れない。

「はっ!」

「はっ!」

 再び二人が同時に動く。

 しゃがんで足元を刈る下段の逆回し蹴り。

バシィッ!

 これまでが相打ちとなってしまう。

「えいっ!」

「えいっ!」

 今度は同時に一足飛びのバックエルボーを放つ。

ガシィ!

 これも相打ち・・・しかしキサラは怯まず連続攻撃を繰り出していく。

 ローキック、ミドルキック、ハイキックを蹴り足を地に着ける事無く連続で放っていく。

ガシッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!

 しかしキサラの最強の連続技スプラッシュダンスさえ「きさら」は使いこなしているのだ。

 全く同じ技の入り方で同じ狙いで放たれた蹴りは、お互いの足がぶつかり合うだけで終わっている。

「せいっ!」

「せいっ!」

ゴッ!!

 前げりでのハイキックがお互いの顎を捕える!

 その瞬間、二人の動きが完全に動きが一時停止する。

「たぁっ!!」

 キサラは痛みに耐えつつ身体を沈め、下方から突き上げるようなトラースキックを放つ!

 しかしこれも空を切った。

 何故なら・・・

「たぁっ!!」

 「きさら」も全く同じ行動をしていたからなのだ。

 両者の必勝をかけたトラースキックはお互いの足をぶつけながらもお互いの顎を捕えてはいなかった。

 二人同時に空をきった足を慌てて引いて再び構える。

(・・・くっ・・・なんで!?なんで何もかもボクと一緒なの!?)

 キサラは次第にいらついてくるのを感じた。

 もう不安は感じない。

 しかし今度は目の前の自分と同じ姿の後輩に怒りを覚え始めていたのだ。

「このぉ!!」

「やあっ!!」

 二人が同時にビンタを放つ!

バシィッ!ガッ!!

 しかし、今度は二人の態勢は手四つの力比べの状態になっていた。

 手がぶつかった瞬間間合いを詰め、投げを放とうとしていた。

 結果、両者はこの状態で動きを止めることとなった。

「うっ!・・・・ふっ!・・・・くっ!・・・・このっ!」

「このっ!・・・ああっ・・・・えいっ!・・・・くぅ・・・・。」

 二人は激しい組み手争いを展開し始めた。

 そして、キサラはこれしか決着をつけるすべがない事を察した。

(投げなら必ずどちらか一方しかダメージを受けない!)

 キサラは多少強引にでも組み手を優位にする!

「えいっ!・・・・はあっ!!」

「・・うっ!?・・・・・ああっ!!」

 キサラの強烈な背負い投げが決まった!

背中をしたたかに打ち付けられた「きさら」はさすがにダウンを余儀なくされる。

「くっ・・・・。」

 それでも懸命に立ち上がる・・・が、すでに接近していたキサラはガッチリと「きさら」に組み付いた!

「ていっ!!」

「・・・・・あぐぁっ!!」

 今度はキサラの最大の投げ技、ノーザンライト・ボムが炸裂した。

 さしもの「きさら」も今度は完全にダウンしてしまう。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・。」

 仰向けに倒れたままなかなか立ち上がることが出来ない。

 キサラは「きさら」の左腕をしっかりと捕え、腕ひしぎ逆十字固めを極めた!!

  ギリギリ・・・・

「ああぁぁぁ〜〜〜!!!」

 「きさら」が大きな悲鳴を上げる。

 完全に伸びきった左腕が引っ張られ、身体を抵抗不能な激痛が支配する。

「降参して!そしてもう条の前には現れないで、ボクのマネもやめるって約束して!」

 キサラはさらに締め上げながら「きさら」に降参を迫る。

「ぐあぁぁ〜〜〜〜!!」

 しかし「きさら」には、悲鳴は上げても降参をする気配はない。

「・・・くっ・・・ボク・・・知らないからねっ!!」

 キサラは意を決して顎を上げ、「きさら」の腕ごと弓なりにする。

ビキッ!!

「うあああぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!」

 キサラが嫌な手応えを感じたのと、「きさら」一番大きな悲鳴を上げたのは同時だった。

 腕ひしぎを解いても「きさら」は腕を押さえて悶絶している。

(・・・・折れたかもしれない・・・・・。)

 キサラにとっては苦渋の決断だった。しかし「きさら」に思い知らせるために仕方なかった。

「えいっ!」

「あぐぅ・・・・。」

キサラは「きさら」の後ろに回ると、スリーパーを仕掛けた。

 これで締めつづけて落とせば「きさら」は行動不能になる。

 そしてそのあとは・・・・。

(そのあとは・・・そのあとはどうする?

ボクがこの娘に勝つ・・・。それで何かが解決するの?)

スリーパーを仕掛けながらキサラは迷いを生じさせてしまった。

それは僅かな隙を生んでいた。

「・・くぅ・・・・ふっ!!」

ゴンッ!!

「きゃんっ!?」

 その隙を「きさら」は逃さなかった。

 自分の背後にいるキサラの股間を蹴り上げたのだ。

「くぅぅ・・・ひ、卑怯だぞ!!」

 キサラは涙目になりながら「きさら」を睨む。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・きゃははははは!!せんぱい何言ってるんですか〜?先輩だって男の人たちにいっぱいやってきたじゃないですか〜。」

 しかし、「きさら」は股間を押さえてうつ伏せに倒れ付しているキサラを見下している

 全く悪びれず倒れているキサラを指さして笑う始末。

 これにささすがに怒りを覚えたが、早々に立てるほど弱い一撃ではなかった。

「そ〜いえば先輩、こんな技かけられてましたよね〜〜!!」

 「きさら」が動いた。

 うつ伏せのキサラの足を掴むと、おもむろに自分の脇の下に抱え後方に倒れこむ。

 強烈なアキレス腱固めがキサラを襲う!

メキメキメキ!!

「あああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!」

 キサラが苦しげな声を上げる。

 このアキレス腱固めは地下プロレスにキサラが飛び入りした時、相手の地下レスラー「シン」に決められた技だった。

 「きさら」はその闘いをしっかりと見て、そして相手の技すら覚えていたのだ。

「さあ、せんぱ〜い、ギブアップしてください♪」

「ああぁぁぁ〜〜〜!!だ、誰がするもんか〜〜!!」

 キサラの苦しむ姿をさも楽しそうに眺めている「きさら」。

 その悪気のない笑顔がキサラの瞳に映る。

 背中がゾクッとした。

 自分と同じ顔が自分を痛めつけて喜んでいる姿をみて、身体中に悪寒が駆け巡った。

「・・・・・やめてぇ!!」

 キサラは思わず「きさら」の腕を蹴って脱出を試みる。

 「きさら」のアキレス腱固めは呆気なく外れた。

 慌てて転がって間合いを取る。

「はぁ・・・はぁ・・・・はぁ・・・・。」

 キサラは自分の叫んだ言葉に、自分が呆気に取られていた。

 昨日までは仲が良いと思っていた相手に感じた嫌悪感・・・。

 それを感じた事自体、信じられなかった。

「ふふ・・・せんぱ〜い、追い詰められ始めていますねぇ〜・・・・。」

 「きさら」は笑みを浮かべながら無防備に歩いて近づいてくる。

「くっ!」

 キサラは再び掴みに行き、ノーザンライトボムを狙う。

 しかし、「きさら」はそれが分かっていたかのように技に入ろうとする絶妙のタイミングで背後に回る。

 そしてスリーパーを狙った瞬間キサラも動いた。

 素早く取り返し背後をとると「きさら」の首を掴み・・・、

「えいっ!!」

 そのままジャンプをして空中から床に向けて「きさら」投げつける!

「・・・・きゃあっ!!・・・・・あぅぅ・・・・。」

 さすがにダウンして動きを止める「きさら」。

「・・・・とどめだよっ!!」

 そう叫んで飛び上がるキサラ。

 空中に飛び倒れている「きさら」目掛けてダイビングギロチンドロップを敢行する!

「くっ!!」

 しかし「きさら」は転がって難を逃れた。

「あっ!?・・・うっ!!」

 お尻から自爆をしてしまったキサラは動きを止めてしまう。

「えいっ!」

 その隙を逃さず「きさら」が組み付いた。

「こんなのはどうです?これも先輩苦しそうでしたよね〜?」

 完全に後ろを取った「きさら」はまたキサラが闘った相手の技を使った。

 コブラツイスト。

 暴走族のヘッドでキサラが追い払うために戦った相手、剛。

 序盤は押していたキサラだったが、このコブラツイストだけは逃げられず、散々に苦しめられたキサラは、その後の闘いに大きな影響を及ぼされ、結局剛に苦戦を強いられたのだった。

ギリギリ・・・ギリギリ・・・・

「あああぁぁぁ〜〜〜〜〜!!」

 キサラが大きな悲鳴を上げる。

「あれぇ〜?どうしたんですか、先輩。この程度では終わりませんよね〜?」

「あ、当たり前じゃない!・・・・ああぁぁぁ〜〜〜〜・・・・。」

 「きさら」の言葉に必死に平静を装おうとするが、見事に極められたコブラツイストの威力にやはりどうしても悲鳴を上げさせられてしまう。

「フフ♪せ〜んぱい、ギブアップって言っていいんですよ。そしたらあたしが先輩になって条さんと付き合いますから〜。」

「ああぁぁぁ〜〜〜・・・ギ、ギブアップなんか・・・するもんか〜・・・・。」

 必死に耐えるキサラを笑いながら締め上げる「きさら」。

 二人の激闘は、次第に「きさら」が押し始めていた・・・。

 

「せんぱ〜い、そろそろ降参した方がいいですよ〜?」

「あうぅぅ・・・・し、しない・・・・・ああぁぁ〜〜・・・・・。」

 日がかなり傾いてきた。

 夕暮れの赤い光が二人を照らしている。

 キサラは未だに「きさら」のコブラツイストの前に苦しめられていた。

 二人とも汗を滴らせながら絡み合っている。

「はぁ・・・はぁ・・・・先輩、ギブアップしますか?」

「ノォ〜・・・ああぁぁ〜〜・・・ボ、ボクが・・・ギブアップするとでも思ってるの?・・・ううぅぅ〜〜・・・。」

 頬を赤く染めながら涙目で耐えつづけるキサラ。

 しかし「きさら」も頬を赤くしていた。

 キサラを締めつづけるのはそれだけ重労働だった。

「・・・・くっ!」

「・・・・・・・あぅっ!・・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・。」

 「きさら」が遂に根負けをしてキサラを解放した。

 キサラは力尽きたようにうつ伏せに倒れこんだ。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・、せんぱ〜い、そろそろ楽にしてあげますね〜♪」

 そう言うと「きさら」はキサラの上着、オレンジのベストと白のブラウス、それにレースのひらひらのついたブラを一気に剥ぎ取ってしまった。

 キサラの背丈には見合わない大きな乳房が露わになる。

「あうぅぅ・・・・・はぁ・・・はぁ・・・・。」

 しかし、キサラは力尽きてしまっているのか全く抵抗できない。

「フフ♪やっぱり先輩の身体は綺麗です・・・。」

そう言うと自らも水色のベスト、白のブラウスを脱ぎ、キサラと同じブラを外し、自らの乳房も披露した。

「さぁ、これで止めですね♪」

 「きさら」はキサラの身体を仰向けにさせるとその上に覆い被さった!

 俗に言う縦四方固めだがただの縦四方ではなかった。

 お互いの胸がググッっと押し付けあっている。

 それはお互いに快感を伝えるが、下になっているキサラに圧倒的に不利な状態だった。

ギュウゥゥゥ〜〜・・・

「先輩・・・・逝ってくださいね・・・。」

 そう呟くと「きさら」激しい押さえ込みの締め付けを開始した。

 お互いの胸が刺激され、あっという間に乳首が立ちお互いの胸に快感を伝える。

「ああっ・・・くっ・・・うっ・・・・。」

 キサラは涙目になりながらこの押さえ込みに必死に耐える。

 締め付けられるたびに苦しさのあまり足をばたつかせるが、ほとんど力はなく、よがっている程度の抵抗だ。

「はぁ・・・はぁ・・・んふふ・・・・先輩・・・感じているんですね・・・。」

 「きさら」が笑みを浮かべながらさらに締め付けていく。

 快感が自分にも返ってくるがキサラが感じているほどではない。

「ああっ!・・・・くっ・・・あんっ!・・・ああぁぁ〜〜・・・・・。」

 キサラがたまらず悲鳴と喘ぎ声を漏らす。

押さえ込まれて苦しいのと胸を刺激されて悶えるのと両方がキサラを苦しめていた。

(や、やだ・・・こ、このままじゃ・・・ボク・・・逝かされちゃう!!)

「だめぇぇぇ〜〜〜〜!!」

「あっ!?」

 キサラは必死の思いでブリッジをして、身体を捻った!

 ガッチリとクラッチをしていた影響か、「きさら」は呆気なく上下逆転を許してしまった。

「このっ!このっ!・・・えいっ!えいっ!」

「あんっ!ああっ!・・・・あんっ!ふあっ!あっ!!」

 今度は「きさら」が悶える番となってしまった。

 キサラの締め付けが快感となって身体に襲い掛かっている。

「えいっ!やっ!・・・これで・・・おわりだよ!!」

「あんっ!あん!・・はぁ・・はぁ・・・はああぁぁ〜〜〜〜〜!!・・・・あっあっ・・・・・。」

 キサラがギュッと抱きしめると「きさら」の腰がフッと浮き、ゆっくりと落ちていった。

(・・・お、おわった・・・・・。)

 キサラは激戦に疲労を感じながら押さえ込みを解こうとした。

 その瞬間に「きさら」が動いた!

「えいっ!」

「きゃっ!?」

 再びキサラは縦四方固めに捕えられた。

 いや、今度の態勢は少し違った。

 「きさら」はキサラの股間に顔を寄せていた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・。」

 言葉もなく「きさら」はキサラのショーツを剥ぎ取り、キサラの湿り始めていた股間に舌を這わせた。

ピチュ・・・ピチャ・・・

「あうっ!!・・・はっ!あっ!!・・・んくっ!くあっ!!あんっ!!はあっ!!」

 キサラもこの攻撃には成す術なく悶えさせられてしまう。

「んっ・・・ふっ・・・・んぅ・・・・・。」

 「きさら」は一心不乱にキサラの秘所に舌を這わせ続けた。

 その行為は、もはや勝敗にこだわるのではなく「キサラ」を愛の対象として求める一人の後輩がいた。

「ああっ!あんっ!うんっ!ああっ!ああっ!!あんっ!!!んんっ!!!あうっ!!!」

 キサラは必死に股を閉じて抵抗を試みるが全く功を奏さない。

 「きさら」の舌が自分の秘所に這うたびにビクン!ビクン!と反応してしまう。

「んふぅ・・・・先輩・・・・んっ・・・逝ってください・・・・ん・・・いきますよ・・・ふ・・・ん・・・。」

 「きさら」がその下でキサラの秘所の中の一番感じる場所に舌を這わせる。

「ああっ!!・・や、やだ・・・ノォ・・・あはぁっ!!あっあくっ!!・・・OH!!NOooooo!!

・・・はぁ・・・はぁ・・・・条・・・・。」 

 キサラの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。

 キサラは耐え切る事が出来ず、とうとう逝ってしまったのだ。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・。」

 一方「きさら」はどうしたものかと途方に暮れていた。

 結果的にこれは自分が勝ったことになる。

 確かに自分も逝ってしまったが、キサラは自分の下で組み伏せられている。

 ゆっくりと身を起こした。

 キサラは仰向けに倒れたまま息を荒げ立ち上がれない。

 ・・・・勝った。

 それは間違いない。

 なのに、この先に「キサラ」がいないような気がしていた。

 この勝負に勝った私が条の恋人になる。

 しかし、キサラは条の恋人ではない・・・・。

 では私は・・・・「きさら」はどうしたらいいのだろう?

 キサラ先輩のマネをする「きさら」はどうしたらいいんだろう?

 この疑問が今になって「きさら」の思考を止めてしまっていた。

「・・・はぁ・・・・はぁ・・・はぁ・・・・。」

 キサラがゆっくりと身を起こした。

 「きさら」に目を合わせないように剥ぎ取られた自分の衣服を取りに行く。

「・・・あ、あの・・・・・せんぱい・・・・。」

「・・・・・・。」

 「きさら」の声にキサラは答えられなかった。

 ただ俯いてまずは下着を穿いた。

 自分の股間が濡れているのを実感しざるを得なかった。

「・・・あ、あたし・・・・・。」

「・・・・おめでとう・・・ボクの負けだよ・・・・条と・・・・仲良くね・・・・。」

 キサラは泣いているのを必死に堪えている声で言った。

 このことがさらに「きさら」を動揺させた。

 キサラに苦痛を・・・精神的に追い込み、苦しめるためにこんな事をしたはずがないのに・・・。

「・・・・・もう・・・キミと条の間には・・・・入らないから・・・。」

 キサラは上着をまとめるとすっと立ち上がった。

「・・・待ってください!!」

「きさら」が弾かれたように大声を上げた。

「先輩!あたし先輩の傍にいたいです!!あたし、あたし先輩の恋人にはなれないんですか!?」

 「きさが」は大声で自分の胸のうちを吐き出した。

 その気持ちが歪み、キサラのコスプレをさせ、条を奪おうとする行動に繋がってしまった事のようやく気がついたのだ。

「・・・・・・・。

 ・・・・無理だよ・・・・あたしの恋人は・・・条だったんだもん。」

「違います!!条さんは先輩の彼氏です!!それでいいんです!!それでもあたし・・・あたし先輩の傍にいたいんです!!」

「・・・・・・・。」

 キサラは答えられなかった。

 「きさら」の想いは分かる。しかしここまでの事をやって・・・・今まで通りの関係が成り立つのか・・・。

「キサラ!!」

 その時体育館に男の声が響き渡った。

「じょ、条!!」

 キサラは声の本人の名を呼んだ。

 と、同時に自分が上半身が裸である事に気付き、慌てて豊満な胸を隠す。

「い、いつからそこにいたのよ!!」

「・・・・い、いまだ・・・・。」

 どこか顔を赤らめている。

 これは条がウソをついているときの顔だった。

 おそらく物音がしたのが条だったのだろう・・・。

 キサラはすぐにそれを察する。

「バカ!!エッチ!!あっち向いてて!!」

「お、おう!!」

 条は顔を真っ赤にしながら後ろを向いた。

 キサラは今のうちと服を着ていく。

 「きさら」もそれにあわせてゆっくりと着替えるが、まるで魂が抜けたような動きだ。

 キサラが着替え終わってもまだブラウスしか着ていない。

「・・・キサラ・・・。」

「条・・・。元はと言えば条のせいだからね!!条がこの娘とデートなんかするから!!」

「わ、わりい・・・勝負に負けちまって・・・・仕方なく・・・。」

 条は「きさら」に「もし自分が勝ったらデートしてくれ」と。

 そして条は、外見が恋人と全く同じの別人相手にうまく闘えず負けてしまい、デート騒ぎとなったのだ。

「だから・・・その・・・これはナンパしたわけではなく・・・そのやむを得なかったと・・・。」

「・・・・わかった!もういいよ・・・・でも、今度したら・・・ボク、許さないからね・・・。」

 そうキサラがそう言うとすっと背伸びをした。

 条が自然とそれにあわせて唇を合わせた。

「・・・・・・・・・・・・・。」

 「きさら」はその成り行きを呆然と見ているしかなかった。

 いつの間にか涙が流れていた。

 止める事の出来ない泪が・・・・。

「・・・・・・大丈夫っすか?」

 いつのまにか「きさら」の横に背の低い・・・キサラより低い丸坊主の男が膝をついていた。

 泪を流している「きさら」を気遣い、自分の着ている学ランを背中からかける。

「おい、勝男!・・・男見せろよ・・・。」

 条はキスを終えると、小さな丸坊主少年「勝男」に声をかけ、キサラの肩を抱きながら外へと出て行った。

 体育館には二人だけが残された・・・。

 

「・・・・・・。」

 「きさら」は何も言わなかった。

 勝男の事などまるで目の中に入ってこなかった。

 キサラのキスを目の前で見せられ、心がまた破れてしまった気分だった。

「えっと・・・・自分は・・・・・その・・・・ですね・・・・・ですから・・・・。」

 目の前の少年が何か言っている・・・。

「聞いて下さい!!」

 突然勝男が大声を上げた。

 「きさら」の表情が驚きの色を見せ生き返る。

「ちゃんと聞いて下さい!!自分・・・いま、一世一代の大告白してるんですから!!」

 「きさら」の目の前の勝男は耳まで真っ赤にしながら叫んでいる。

・・・告白?・・・・誰に・・・・?

「ですから・・・自分は・・・・自分は、キサラさんより・・・その・・・あなたが好きなんです!!!」

「えっ?」

 「きさら」の顔が大きく開かれた。

「な、なんで?あたしより先輩の方が・・・あたし・・・先輩じゃないよ・・・。」

「そんなの関係ないっす!自分はキサラさんをいつも笑顔にさせてるあなたが好きです!!

どうか、自分と付き合ってください!!お願いします!!!」

ねる●んよろしく、手を前に差し出して深々と頭を下げる。

本当に自分なのか・・・自分が告白されているのか・・・・キサラの真似をしているだけの自分が・・・。

 「きさら」の手は自然と動いてしまった。

「・・・・・はい・・・。」

 テレビを見ていた条件反射であろうか・・・、空返事とも取れる気の抜けた返事で勝男の手を握り返してしまった。

「やっっっっったぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!」

 勝男は思わず「きさら」に抱きついてしまう。

 が、すぐに顔を真っ赤にして離れた。

「す、すいません!うれしくてつい!!」

(直立不動で謝られても・・・・。)

 「きさら」まだ呆然としている。

「勝男〜!やったじゃねえか〜!!」

 と、そこへ条が入ってきた。

「はいっ!!やりました!!」

 勝男は満面の笑みで答える。本当に嬉しそうだ。

「よかったね・・・・。」

 いつの間にかキサラが「きさら」の傍らに来ていた。

「先輩・・・・。」

「お互い、恋人が出来た。一緒だね♪」

 キサラは笑顔を向けた。

 「きさら」に実感が出てきた。自分は告白を受けて・・・OKしてしまった!

「あ、あの・・・・。」

 何か言おうとした言葉を引っ込めた。

 自分の背中にかかった勝男の学ランは温かく、優しかった。

 好きではないかもしれない・・・けれど、好きになれる相手だろうと感じた。

「・・・・じゃあ・・・・。」

「きさら」はまたキサラのマネをしようと、勝男に近づいた。

「な、なんでしょう!?」

 勝男はそれだけで声を上ずらせて直立不動になる。

「・・・・・・・・チュっ!」

 短いキスを勝男の唇にした。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぅ〜〜〜〜〜ん・・・・・。」

ドデン!

 勝男は真っ赤なユデダコになり倒れてしまった。

 刺激が強すぎたようだ。

「お、おい、勝男!大丈夫か!?」

 条が慌てて介抱する。

「・・・・先輩・・・・。」

 今度はキサラの前に立った。

 二人は笑顔で向かいあった。

「・・・・そろそろ・・・名前教えてくれないかな?

 キミとボクの・・・新しい関係の為に・・・。」

 キサラはそう言って手を差し出した。

 仲直りの握手をしようという意味だ。

 「きさら」もそれに頷き・・・。

 

「・・・・・・はい・・・・あたしの名前は・・・・・・。」

 

 二人の新しい関係が始まった瞬間だった。


 

 

 

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