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Club DesireY

 

 

Revenge

 

 

 

 

「おはよう!」

裕美はあゆみに声をかけた。

「あっ、笠原先生おはようございます」 

いつになく丁寧な口調で、あゆみが答えた。

「高校生最後の夏休み、有意義に過ごせた?」

「・・・・・・・・・・」

微笑みながら裕美が訊いても、あゆみは真面目な顔のままで答えない。

「どうしたの?なにかあったの?」

「いえっ、なんでもないんです。失礼します」

あゆみは、心配そうに覗き込む裕美の顔を避けるように教室に向かった。

(どうしたんだろう?)

裕美も、あゆみの事を気にかけながら職員室へと歩いていった。

 

「先生、荷物預かってるよ!」

エントランスを通るとき、管理人が声を掛けた。

「ありがとうございます」

裕美は小包を見ると首を傾げた。

(あれっ?なんで来てるんだろう?)

部屋に入ると、小包の中身をビデオにセットした。

 

30分後・・・

「ひどい!理恵のヤツ・・・あゆみちゃんを・・・」

目に涙を浮かべて、裕美はつぶやいた。

「理恵のこと、絶対許さない!」

裕美は立ち上がると、DesireにFaxを送った。

 

 

「裕美さんからFAX来たわよ!」

佳奈はみんなに声をかけた。

「佳奈の目論見どおりになったわね」

真粧美が満足そうな表情で言った。

「じゃあ、裕美対理恵でも1本作れるじゃない!」

「今度は理恵さんに暗示かけとかなきゃ!」

仁美が割り込んだ。

「それは必要ないわよ!理恵さんじゃ裕美さんに敵わないから・・・」

佳奈が言い切った。

 

 

「理恵、なんで私があんたを指名したか判ってるでしょ!」

リング上で裕美が、理恵を睨みつけた。

「さーねぇ、なんでかしら?」

わざとらしくとぼけて答える理恵。

「なんで・・あゆみちゃんにあんな事・・・」

「クソ生意気な小娘に、礼儀を教えてあげただけよ!」

唇を噛みしめて理恵を睨みつける裕美。

「大体、あんたがいつも甘やかすから、あの娘がつけあがるんでしょ!」

「二人とも、コーナーに戻って!」

今にも掴みかからんばかりの裕美と理恵を、佳奈が分けた。

 

 カン

 

ゴングがなると同時に、裕美は勢いよく飛び出して行くと、同じように飛び

出してきた理恵のお腹に、前蹴りをいれた。

 ドコッ

「うっ」

そして、お腹を押さえ前屈みになった理恵の太股めがけ、力強いローキック

を叩きこんだ。

 バシッ

「あつっ」

痛みに顔を歪めた理恵は、太股に手を当てた。

裕美は、理恵の太股めがけて、もう一発ローキック。

しかし理恵はこれを掴むと、裕美のお腹に蹴りを入れた。

 ドコッ

「あうっ」

そして、仰向けにひっくり返った裕美にフットスタンプを連発。

「あっ、あうっ、あうっ・・・」

理恵の脚がお腹にめり込むたびに、裕美はくの字になって苦しんだ。

「あんたにも、再教育が必要みたいね」

理恵は、目に涙を浮かべている裕美の胸を踏みつけた。

「あんっ、いやっ・・」

「なーにが『いやっ』だよ!」

理恵は残忍な笑みを浮かべると、裕美の胸をぐりぐりと踏みにじった。

「あんっ、いやっ、やめてぇ・・・」

裕美は理恵の脚を掴むと、胸の上から退かそうとした。

「ほら、はなせよ!」

理恵は裕美の手から脚を引き抜くと、裕美のお腹に踵を落とした。

 ボコッ

「あうっ」

そしてお腹を押さえて苦しむ裕美の胸めがけて、エルボーを落としてきた。

「あっ、いやっ・・・」

 ボコッ

「きゃぁっ」

裕美は、全身の力を振絞って横に転がって逃げた。

自爆した理恵は、右肘を抱えたままで蹲っている。

ゆっくり立ち上がった裕美が、膝に手を当てて息を整えていると、理恵が腕を

ぐるぐると回しながら立ち上がってきた。

「このやろぉ!」

 バシッ

理恵は、裕美の横顔めがけてハイキックを放った。

「うっ」

慌てて左腕で顔をガードする裕美。

すると今度は、理恵の右脚が裕美の脇腹めがけて飛んできた。

 ガシッ

しかし裕美は、これをがっちり捕まえると、一歩前に出て理恵に小内刈り。

 バタン

「・・・・・」

受身も取れず後頭部を強打した理恵は、うつろな表情のままで動かない。

「こらぁ、起きろ!」

裕美は、理恵の髪を鷲掴みにすると、無理矢理引きずり起こした。

 バシン

「うっ」

裕美の払い腰に、受身も取れずにマットに叩きつけられた理恵は、背中を持ち

上げて苦しんでいる。

「ほらっ、いつまで寝てんだよ!」

「きゃぁ、痛っ、痛っ・・・」

再び理恵の髪を鷲掴みにして立たせると、今度は背負い投げ。

 バシン

「うっ」

またもや仰け反るように、背中を浮かせて苦しむ理恵。

「よくもあゆみちゃんに・・・」

裕美はもう一度理恵を立たせると、左手で理恵の右手首を掴み、腰を落として

左回りで理恵の懐に入った。

(次は一本背負い・・)

「そーりゃっ!」

「いつまでもあんたの好きにさせるかよ!」

どこにそんな力が残っていたのか、理恵はとられている右腕を振り解いて裕美の

首に巻きつけると、左手で髪を掴んで後ろに引き倒した。

「あんっ」

「このやろぉ!」

理恵は裕美のお腹を素早く両脚で挟むと、胴絞めチョークスリーパーの態勢に

持ち込もうとしたが、裕美もすかさず身体を反転させて、理恵と向かい合った。

「てめぇ!」

裕美は左手で、理恵の左首筋を押さえるようにして髪を掴むと、首の下を通し

た右手で、左腕をしっかりと掴んだ。

「あっ、ぐっ・・」

奥襟絞めのように首を極められた理恵の顔が、みるみる真っ赤になった。

「ほーら、もうすぐ楽になるよ」

ばたばたと足でマットを叩いている理恵に、裕美が囁いた。

「・・・・・・・・」

(だめ、落とされる・・)

口をパクパクさせて、必死に酸素を求める理恵。

「ほら、瞼が重くなってきたでしょ」

いつのまにか足のばたつきが止まった理恵の表情が、虚ろになってきた。

と、突然裕美が、理恵の首に回していた腕を放した。

「ヒュゥゥゥ・・・」

急に酸素を吸い込んだ理恵の口が、大きな音を立てた。

裕美は理恵の左腕を掴むと、今度は三角絞めで理恵を攻めた。

「きゃっ、あぁぁぁぁぁっ・・」

「あのまますんなりと楽にさせる訳が無いでしょ!」

「あぁぁぁっ、いやぁぁぁっ・・」

「それっ!」

裕美は、理恵の腕を引っ張るように絞め上げた。

「ぎゃぁぁっ・・」

「痛いでしょ?あんまり頑張ると折れちゃうよ」

「あぁぁっ、いやぁぁぁっ・・・」

 ペチペチ

ついに理恵は、右手で力無く裕美の脛をタップした。

「なにそれ、まだ抵抗するの?」

裕美は、理恵のタップを無視して脚に力を加えた。

「あぁぁぁぁっ、いやぁぁぁっ、ギブ、ギブアップ・・」

理恵は涙をぼろぼろと溢しながら、負けを認めた。

「何なのそれ?」

裕美がさらに力を加えると、伸びきった理恵の腕がぎしぎしと鳴った。

「あぁぁぁぁぁっ・・・」

「あんた、あゆみちゃんに何をやらせたの?」

理恵を絞め上げる裕美の目に涙が薄っすらと浮かんだ。

「もうやめてぇ、許してぇ・・」

 

「裕美さん、ストップ、ストップ!」

佳奈が裕美の肩を軽く叩いた。

「あゆみちゃんに、あゆみちゃんに・・・」

それでも裕美は、理恵を絞め上げたまま放さない。

「あぁぁぁぁっ・・・」

「裕美さん!」

仁美も、裕美の顔を覗き込むよう声を掛けた。

 

「ふぅっ」

裕美は佳奈と仁美に二人に促されて、ようやく理恵の腕を放すと、二人に付き

添われてリングを降りた。

「うっ、うぐっ、うぐっ・・・」

リング上には、左腕を押さえて泣いている理恵が、一人横たわっていた。

 

 

 

6時間目の授業が終わるのを待ってたかのように、あゆみの携帯が鳴った。

「あゆみ、あんた、理恵先生とやった?」

「えっ・・・」

美穂子の問いかけに、言葉に詰まるあゆみ。

「あんた、理恵先生に負けたから、裕美さんに仕返しして貰ったの?」

「な、なんで・・・」

「サイテー!あんたのこと見損なったわ!」

「ちょっ、ちょっと・・・」

《 プー、プー、プー・・・ 》

あゆみは、切れた電話をいつまでも見つめ続けた。

 

「もしもし、美穂子?」

《 ガチャッ プー、プー、プー 》

(美穂子のヤツ、なんで知ってんだろう?)

あゆみは、電話に出ない美穂子にメールを入れた。

 

(また、あゆみからだ)

しつこく鳴る携帯を見つめる美穂子。

(今度はメールだ)

【理恵さんに負けたこと、なんで知ってるの?私は誰にも言ってない!】

(どうゆうこと?)

美穂子は、あゆみの携帯を鳴らした。

「もしもし、あゆみ?あんたが頼んだんじゃないの?」

「なんで知ってるの?」

「だってビデオが・・・理恵先生が裕美さんに負けたビデオが・・」

「なんでそれが美穂子のところにあるの?」

「えっ?なんでって・・・」

「今からそれ持って、私の家に来て!」

 

 

(なんかおかしい・・)

美穂子が持ってきたビデオを見ながら、あゆみの頭に引っかかるものがあった。

隣に座っている美穂子は、いまにも泣き出しそうな表情で唇を噛み締めている。

 

「ひどいっ、裕美のヤツ、理恵さんにあんな事を・・・」

ビデオが終わって画面が暗くなると、あゆみがぼそっと呟いた。

「えっ?」

美穂子は驚いた顔であゆみを見つめた。

(あれっ、いま私なんて言ったの?)

あゆみも自分の言葉に驚いた。

「なんで、あゆみまで・・・」

「もう一回、最初から見よう!」

 

「さっきから時々点くやつなあに?」

不意に美穂子がビデオデッキを指差して、あゆみに訊いた。

あゆみが画面から目を移すと、20秒おきに画質補正ランプがついていた。

(これだ!)

リモコンを手にしたあゆみは、ビデオをコマ送りにした。

「あった!」

「なにこれ?」

裕美と理恵の闘いの途中で20秒ごとに1コマだけ、あゆみのほくそ笑んでる

顔があった。

「ねえ、どうゆうこと?」

「やられた、サブリミナル効果・・

 美穂子、これ見てDesireにFax送ろうとした?」

美穂子が頷いた。

あゆみは携帯を手にすると、裕美にかけた。

「裕美、ありがとう。理恵さんに仕返ししてくれたんでしょ」

「あゆみちゃん、どうしてそれを・・・」

「私と理恵さんのビデオ見たんでしょ?」

「うんっ」

「明日の夜、説明するから。予定通り、みんなで集まろう」

「でもぉ・・・」

「大丈夫、理恵さんも行くから」

あゆみは電話を切ると、美穂子に頷いた。

 

「・・・とゆう訳なの。理恵先生、ちょっと待ってね」

横からあゆみが手を伸ばすと、美穂子は携帯を渡した。

「もしもし・・」

「あっ、あゆみちゃん?私、あなたにとんでもない事を・・・」

あゆみは理恵の言葉を遮ると、急に英語で喋りだした。

「Miss Rie. Once again I will fight!

 But the next isn't defeated and I will!

 (理恵さん、またやろうね!でも、今度は負けないよ!)」

「Ok Ayumi!

 However I win even the next fight!

 (いいわよ、でも、私だって負けないから!)」

 

 

 

                           To be continued

 

 

 

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