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Club desire V

 

 

Omen

 

 

 

とある有名結婚式場のブライダフェア開催日。

係員に扮した仁美は、麻里に声をかけると控室のひとつに案内した。

結婚を2ヶ月後に控えた麻里は、仁美に促されるままソファーに腰掛けた。

「白河さん、実は困ったことになってしまったんですけど・・・

 あなた、笠原裕美さんという方をご存知ですよね」

「ええ、大学の後輩ですけど・・・それがなにか?」

「実は笠原さんが、貴方から大学時代に受けた屈辱を仕返ししたいと・・・」

「えっ、裕美が?上等じゃないの、返り討ちにしてあげるわ!」

「では来週の土曜日に、この場所まで来ていただけるかしら?」

仁美は時間を書いた地図を渡すと、風のように消えていった。

(私に復讐?上等じゃないの!

 泣くまで痛めつけて、素裸にひん剥いてやるわ!)

 

 

 

深夜0時、FAXの前で美奈子は迷っていた。

その手には、【あなたの願望を・・】と書かれたチラシが握り締められていた。

 

「高橋さん、あなた言いたいことがあるなら、陰でこそこそ言ってないで直接

 私に言いなさいよ!」

あゆみは、いきなり美奈子の横っ面を引っ叩いた。

「いきなり何するの!」

頬を押さえながら、美奈子もあゆみの頬を叩き返した。

「本当のこと言って何が悪いのよ!」

もう一発叩こうとした美奈子の手を、あゆみは押さえつけた。

 

(やっぱり許せない!)

学校での出来事を思い出した美奈子は、意を決したようにFAXを送った。

 

 

 

「あゆみちゃん、今日はこれを着てくれる?」

あゆみを控室に招き入れた由美子は、クローゼットの中からあゆみの学校の

制服と同じものを取り出した。

「ゆ、由美子さん・・どこでこんなもの・・・

 どっかのエロジジイのリクエスト?」

あゆみは、半ば呆れ顔で由美子に訊いた。

「今日の相手の女性は、旭ヶ丘高校の山田あゆみを倒したいんだって・・・」

「じゃあ、相手は女子高生?」

「それはリングに上がれば判るわよ。下はどうする?水着つけとく?」

頷くあゆみに、由美子は薄いピンクのビキニを渡した。

 

真っ暗なリング上であゆみが体をほぐしながら待っていると、反対側の通路から

二人の人影が静かに入ってきてリングに上がった。

シルエットからすると、相手もやはりブレザーとスカートの制服姿のようだ。

 カチッ

スポットライトが点くと、リング上が明るく照らされた。

反対側のコーナーに上がってきたのは、同級生の高橋美奈子だった。

 

「ふーん、そういうことか・・・」

あゆみは、小さな声で呟いた。

 

「遠慮しないで、思いっきりやっちゃいな!」

リング下から佳奈が囁くと、美奈子はこっくりと頷いた。

 

 カン

静かにゴングが鳴った。

あゆみと美奈子はゆっくりと歩み寄ると、リング中央で睨み合った。

「あんた、頭おかしいんじゃないの?こんな格好させて・・・」

「うるさいっ!あんたが目障りなんだ・・」

美奈子が言い終わらないうちに、いきなりあゆみは横っ面を引っ叩いた。

 パシーン

「あうっ」

大きく右を向く美奈子。

しかし美奈子も、お返しとばかりにあゆみの横っ面を叩き返した。

「このやろぉ!」

あゆみは両手で美奈子の髪を掴むと、乱暴に揺さぶった。

「あっ、痛っ、痛っ・・」

しかし美奈子も、負けじとあゆみの髪を掴み、同じように揺さぶった。

「きゃぁっ、痛っ、痛っ・・・」

するとあゆみは、美奈子の太股に膝蹴りを入れ始めた。

 ボコッ ボコッ・・

「あっ、あんっ・・」

だが美奈子も、おなじように蹴り返してきた。

互いに髪を掴みながら相手を蹴りつづける、あゆみと美奈子。

「あっ、あんっ・・・」

「あうっ、このぉ・・・」

 

「えっ・・・」

「きゃぁ・・・」

相手の太股に膝を突き刺し合う二人の脚が縺れ合って、あゆみと美奈子は、

リング中央で倒れてしまった。

しかし、倒れても相手の髪を離さない二人は、そのまま、お互い上に下にと

転がるように取っ組み合っていた。

「In broken English that was sorry!

 However nowadays Queen's English are not speaking even who!

(ブロークンイングリッシュで、悪かったわね!

 でも、今時誰もクイーンズイングリッシュなんて使ってないわよ!)」

取っ組み合いながら、あゆみは美奈子に言った。

「You good if you have not come back America!

(あんたなんか、留学したまま帰って来なければ良かったのよ!)」

美奈子も言い返す。

「Son of a Bitch(このやろぉ)」

「You were the senior of yearning.But It got so that I hate you,

 after it becomes the same academic year as you!

(入学したときは、綺麗でかっこいい憧れの先輩だったのに・・・

 あんたが、留学なんかするから同じ学年になっちゃったじゃない・・・)」

リング上でお互い髪を掴んだまま、上に下にと転がりながら言い争うふたり。

 

(私も、同じ理由で裕美に喧嘩を売ったんだっけ・・・)

あゆみは転がりながらもタイミングを図り、丁度、美奈子の上に覆い被さった

ときに大きく脚を開いて馬乗りになった。

そして美奈子の髪を掴み直すと、頭を何度もマットに叩きつけた。

 ボコッ ボコッ ボコッ・・

「あっ、あっ、あっ・・・」

美奈子は、目を瞑って小さな悲鳴をあげ始めた。

するとあゆみは素早く立ち上がり、美奈子のお腹にストンピング連発。

 ドスッ ドスッ ドスッ・・

「あっ、あうっ、あうっ・・・」

苦しげな表情で呻き声を上げながら、お腹を押さえて懸命に耐える美奈子。

美奈子が蹲るような格好でに動かなくなると、あゆみは美奈子の髪を掴んで

引きずるようにコーナーまで連れて行き、両腕をトップロープに絡ませた。

「あっ、い、いやっ・・・」

ファイティングポーズをとったあゆみを見て、美奈子は小さな声で呟いた。

しかしあゆみは美奈子の呟きなど無視するかのように、握り締めた拳をお腹に

何度も何度も叩き込んだ。

 ボコッ ボコッ・・

「あうっ、あうっ、あうっ・・・」

目に涙を溜めて苦しげな表情の美奈子。

「こんなの邪魔ね。由美子さん、上着脱ぐよ!」

ボディブローに耐え切れず、美奈子がコーナーポストに寄りかかったまま崩れ

落ちると、あゆみはリング下の由美子に声を掛けながらブレザーを脱いだ。

そして、黙って頷く由美子にブレザーを放り投げると、あゆみは美奈子の髪を

鷲掴みにして引きずり起こし、再び腕をトップロープに絡ませようとした。

だがそのとき、美奈子はあゆみの股間めがけて膝蹴りを入れた。

 ドコッ

「あんっ」

隙をつかれたあゆみは、スカートを押さえながら後ろに下がった。

すると美奈子は、あゆみのお腹めがけてヤクザキック。

 ドスッ

「うぐっ」

お腹を押さえるあゆみの太股に、美奈子は連続してローキックを入れた。

 パシッ パシッ パシッ・・

「あっ、あんっ、あんっ・・・」

美奈子の脚は、同じ場所を正確に叩きつづける。

「Even I foreign country life long!

I can defend the body of a self with a self!

(私だって、海外生活が長かったんだから・・・

 『自分の身は自分で』って教え込まれてるのよ!)」 

美奈子が吐き捨てるように言いながらローキックを何発も入れると、痛みに

耐きれなくなったあゆみは、ついに膝をついてしまった。

すると今度は、目標を太股から顔面にと変える美奈子。

(こいつ、普通のパンツのまま?水着つけてないの?)

美奈子の脚があゆみの顔面を狙って飛んできたとき、舞い上がったスカートの

中を見てあゆみはあらぬ事を考えていた。

 バシッ

「あうっ」

慌てて左腕を顔の横に立ててガードをするものの、美奈子の蹴りの威力に、

あゆみは右に転がるように吹っ飛ばされてしまった。

美奈子は追いかけるようにあゆみの元へくると、お腹を狙って膝を落とした。

「がはっ」

そして美奈子は、くの字になって苦しがるあゆみの両足を掴んで身体を返すと、

逆えび固めであゆみの腰を責めた。

「あっ、いやぁぁぁぁっ・・・」

スカートが捲くれて薄いピンクのビキニが剥き出しになったあゆみの悲鳴が、

リング上に響き渡った。

「山田さん、降参する?

 もう生意気な態度をとらないって言うんなら、この辺で許してあげるわよ!」

「だ、だれがお前なんかに・・・」

あゆみが言い返したとたん、美奈子はさらに腰を落とした。

「あぁぁぁぁぁぁっ・・・」

あゆみは目に涙を溜めながらもロープの方へと這いずりだすと、美奈子も後ろ

に下がりながら、懸命にあゆみの脚を掴み続けた。

「ぐっ、はっ・・・」

「くぅっ、こいつ・・・」

あゆみの手が漸くロープに届くと、美奈子は足を離して背中にストンピングを

何発も入れた。

 ドスッ ドスッ ドスッ

「あっ、あっ、あっ、あっ・・・」

目にいっぱい涙を溜めながら、うつ伏せのままで腰を押さえて苦しむあゆみ。

美奈子はあゆみの脚を掴んでリング中央まで引きずって行くと、あゆみの背中に

馬乗りになってキャメルクラッチを極めた。

「あぁぁぁぁっ・・・いたーーいっ・・・」

度重なる腰への攻撃に絶叫するあゆみ。

「ほらっ、いい加減に降参したら?」

「あぁぁぁっ、だ、だれが・・・」

言い返そうとするあゆみの顎に腕を引っかけると、美奈子は仰け反った。

「あぁぁぁっ・・・」

あゆみは悲鳴を上げて耐えながらも、美奈子の剥き出しの脚に爪を立てた。

「きゃっ、いたっ、いたーーっ・・・」

美奈子は逃げるようにキャメルクラッチを解くと、あゆみの髪を掴んで引きずる

ようにコーナーへ連れていった。

そしてあゆみの両腕をトップロープに絡ませると、美奈子はあゆみの両肩を押さ

え、お腹に膝蹴りを連発した。

 ボコッ ボコッ・・

「うっ、あうっ、あぐっ・・・」

膝蹴りが何発も入ると、あゆみはコーナーポストに寄り掛かったまま崩れた。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

(高橋なんかに負けたくない!)

あゆみが苦しそうにお腹を押さえて座り込んでいると、美奈子はあゆみの髪を

掴んで引きずり起こし、再びトップロープに絡ませた。

「そろそろ、お終いにしようね!」

美奈子は、あゆみがグロッキー状態だと見てとると、リング中央まで行った。

そして、助走しながら勢いをつけ、あゆみ目掛けてドロップキックを放った。

(あっ、だめ・・)

迫りくる美奈子の足を見たあゆみは、トップロープに絡まる腕を懸命に外すと、

ロープに身体を預けながら回り込んで逃げた。

 ボコッ

「きゃぁぁぁぁっ・・」

目標のいなくなった美奈子は、コーナーポストに思いっきり股間を打付けると

セカンドロープに両脚を引っ掛けて逆さづりになった。

想像を絶する痛みに泣き出す寸前の美奈子は、大事なところを押さえながら、

必死になってロープに絡まった脚を外そうともがいている。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

お腹を押さえながら前屈みで息を整えているあゆみは、ゆっくり近づくと、美

奈子のお腹に踵を落とした。

「ぐはっ」

お腹への衝撃に美奈子がくの字になった勢いで絡まった脚がロープから外れた。

あゆみは、美奈子の髪を掴んで引きずり起こすと、再び、両腕をトップロープに

引っかけた。

「はぁ、はぁ、はぁ・・お返しだぁ!」

そして荒い息をつきながら、美奈子のお腹に握り拳を何度も叩き込んだ。

「あっ、あっ、あっ・・」

美奈子は、目に涙を浮かべながら小さな悲鳴を上げ続けている。

するとあゆみは、美奈子の両肩を掴んで、鳩尾めがけて膝蹴りを入れた。

「あうっ」

美奈子は、お腹を押さえて崩れ落ちた。

「これも邪魔!」

あゆみは脇のホックを外すと、スカートも脱いでリング下に放り投げた。

そしてお腹を押さえて座り込んでいる美奈子の脚を掴み、リング中央へと引き

ずり始めた。

美奈子のスカートが捲くれ上がり、白いショーツが剥き出しになる。

あゆみはリング中央までくると、美奈子に足四の字をかけた。

「きゃっ、あぁぁぁぁっ・・・」

脚への激痛に気を取り戻した美奈子が、絶叫する。

「そろそろ降参したら?『私が悪うございました』って」

「だ、誰があんたなんか・・・きゃぁぁぁっ・・・」

美奈子が言い返さないうちに、あゆみはマットをばんばんと叩いた。

目に涙を溜めた美奈子は、両手で顔を押さえ嫌々をするように頭を振りながら

必死に耐えている。

あゆみは両手をマットにつけると、もたれかかるようにして腰を持ち上げた。

「あぁぁぁぁぁっ・・・」

再び美奈子の絶叫が、リング上に響き渡った。

あゆみは何度も仰け反るようにして、美奈子の脚を締め上げる。

絡まり合ったあゆみと美奈子の太腿が攻防を繰り広げる度に、捲くれあがった

美奈子のスカートから顔を覗かせている白いショーツと、あゆみのブラウスの

裾から顔を覗かせているピンクのビキニが、チラチラと見え隠れする。

美奈子の悲鳴に気を良くしたあゆみが得意げな顔で腰を持ち上げた瞬間、美奈

子は身体を思いっきり右に捻って、体位を返した。

「あっ、きゃぁぁっ・・・」

今度は、あゆみが悲鳴を上げた。

「痛いでしょ!あんたこそギブアップしたら?」

「く、くっそぉ・・」

あゆみは腕立てをするように上半身を起こそうとするが、美奈子も負けじと、

お尻を持ち上げて、あゆみの抵抗を封じる。

「まだ頑張るの?いい加減にギブアップしたら?」

「だ、だれが・・・んあぁぁぁぁっ・・・」

あゆみは、気合いと共に右肘をつくと、身体を強引に返した。

が、美奈子も、あゆみが身体を返した勢いを使って、再度返した。

「あぁぁぁぁぁっ・・・」

「きゃぁぁぁっ・・・」

四の字固めを掛けたまま、リング上をごろごろと転がるあゆみと美奈子。

 

ロープに手が届いたあゆみは、四の字固めをといて素早く立ち上がり、美奈子の

太股に何度もストンピングを入れた。

「あっ、あっ、あっ・・・」

ロープ際で、小さな悲鳴を上げながら、太股を押さえる美奈子。

あゆみは、美奈子の髪を掴んでリング中央まで引きずって行くと、お腹めがけて

膝を落とした。

「ぐはっ」

美奈子がお腹を庇おうとして蹴られていた太腿から慌てて離した手を、あゆみは

素早く取ると腕ひしぎを極めた。

「きゃっ、あぁぁぁぁっ・・・」

美奈子は大きな悲鳴を上げながらも上半身を必死に起こすと、クラッチをきって

腕ひしぎを防いだ。

するとあゆみは、美奈子の鳩尾に踵を落としてから立ち上がった。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・高橋っ、降参する?」

あゆみは、お腹を押さえて倒れたままの美奈子に訊いた。

「だ、だれが・・・」

美奈子はあゆみを睨みつけながら、ふらふらと立ち上がった。

するとあゆみは、待ってましたとばかりに美奈子に飛び蹴りをくらわした。

「きゃぁぁぁっ・・・」

美奈子が仰向けにひっくり返ると、あゆみは、素早く頭の方にまわり、美奈子の

髪と右腕を掴んで、三角締めをかけた。

「あっ、あぁぁぁっ・・・」

目に涙を溜めて、必死に逃げようともがく美奈子。

「ふんっ、無理しちゃって!これならどう?」

あゆみは、三角締めをかけたまま、美奈子の右腕を捻った。

「あぁぁぁぁっ、痛っ、痛ぁぁぁぁっ・・・」

美奈子は、泣きながら足でマットをばたばたと叩いて、必死に耐えている。

「しぶといな・・・」

あゆみはぼそっとつぶやくと、今度は、美奈子の腕を捻ったままで引っ張った。

「きゃぁ、あぁぁぁぁっ・・・」

 ペチッ ペチッ・・

ついに美奈子は、あゆみの脚にタップした。

「どうしたの?」

しかし、あゆみはタップを無視したまま、美奈子を締め続けている。

「あぁぁぁぁっ、いやぁぁぁぁぁっ・・・」

大きな悲鳴を上げ続ける美奈子。

「なんなの?ギブアップするの?」

「いやぁぁぁぁ・・・」

美奈子の悲鳴が一段と大きくなった。

「ギブアップは?」

「あぁぁぁぁっ・・・ギブッ、ギブッ・・・」

美奈子がギブアップすると、由美子と佳奈がリングに入って来た。

「あゆみちゃん、もうお終い!」

由美子に促されて、あゆみはようやく三角締めを解いた。

そしてあゆみは、最後に一発、美奈子のお腹に踵を叩き込むと、由美子と共に

リングから降りた。

 

「うっ、うっ、うっ・・・」

控室に向かうあゆみがちらっと振り返ると、リング中央には、嗚咽をあげながら

右肩を押さえて、横たわったままの美奈子の姿があった。

 

 

 

 カン

 

静かにゴングがなると、裕美と麻里はゆっくりとリング中央に向かった。

「あんた、いい度胸してんじゃないの!私に勝てるとでも思ってんの?」

黒いビキニを着けた麻里が、裕美を睨みつけながら言った。

「先輩こそ、そんな格好で大丈夫なの?」

青い競泳用の水着をつけた裕美も、やや緊張しながらも睨みながら言い返した。

「あんたこの前、杏子先輩やっつけたからって、いい気になってんじゃないの?

 私は杏子先輩なんかとは違うわよ!私に喧嘩売ったこと、後悔させてやる!」

「ぺらぺらと良く動く口ねえ!

 今まで自分がしてきたこと、後悔するのは先輩よ!」

 パシーン

裕美は、麻里の頬をひっぱたいた。

「こ、このぉ・・・」

お返しとばかりに、麻里も裕美の頬を叩いた。

「うっ」

裕美の顔が大きく右を向いた。

「このやろぉ!」

裕美は麻里の太股に回し蹴りを入れた。

思わず太股を押さえる麻里。

しかし麻里は、すかさず、お返しとばかりに裕美のお腹に蹴りを入れてきた。

「うっ」

(あれ?)

裕美は怪訝そうな顔をしながら、お腹を押さえて少し後ろに下がった。

が、すぐに気を取り直すと、先程と同じ場所めがけて回し蹴りを叩き込んだ。

麻里も、ローキックで応戦する。

「そりゃっ!」

 バシッ バシッ バシッ・・

裕美は掛け声と共に太股に回し蹴りを連発すると、麻里は堪らず膝をついた。

すかさず裕美は、麻里の顔にやくざキックを入れた。

「あうっ」

蹴られた顔を押さえながら、麻里は仰向けにひっくり返った。

裕美は余裕の表情でリング中央に戻ると、麻里が立ち上がるのを待った。

 

「なかなかやるじゃない!」

麻里は切れた唇を手の甲で押さえ、裕美を睨みながら立ち上がった。

(なにこいつ?たったこんだけで・・・)

半ば唖然としながら、麻里を見つめる裕美。

すると麻里は、裕美のお腹にボディブローを叩き込んだ。

「うっ」

裕美がお腹を押さえると、麻里はミドルキックを連発してきた。

 パシッ パシッ パシッ

裕美は、麻里の攻撃をかわそうと、じりじりとロープ際までさがった。

すると麻里は、裕美の髪の毛を掴んでリング中央まで連れてきた。

「あっ、痛っ、痛っ・・・」

そして悲鳴を上げる裕美の両肩を掴んで手前に引くと、お腹に膝蹴りを入れた。

「うっ」

(あれ?思ってたほど痛くない・・)

またしても、怪訝そうな顔をしながら、お腹を押さえて少し後ろに下がる裕美。

「これで、楽にしてあげるよ!」

一言呟いた麻里は、裕美の顔面めがけて握り拳で殴りかかってきた。

だが次の瞬間、

「そーりゃっ!」

 バシーン

麻里の腕をとった裕美が、一本背負いで麻里をマットに叩きつけた。

叩きつけられた衝撃で、麻里の左の乳房がビキニのトップから食み出した。

「うぅぅぅっ・・・」

仰け反るように背中を浮かせ、苦しそうな表情で倒れている麻里。

裕美は麻里の髪を掴んで引きずり起こすと、払い腰でマットに叩きつけた。

「うぅぅぅっ・・・」

またもや麻里は、背中を仰け反らして苦しそうな顔で倒れたまま動かない。

痺れを切らした裕美は、麻里の髪の毛を掴んで引きずり起こした。

 

 バシーン バシーン バシーン・・

裕美は、何度も何度も麻里を引きずり起こすと、背負い投げ、大外刈り・・・・

やりたい放題投げ飛ばした。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・先輩、全然強くなかったんだ」

麻里を投げ飛ばすのに疲れた裕美が、ぼそっとつぶやいた。

何度もマットに叩きつけられた衝撃で黒いビキニのトップは外れ、リングから

姿を消している。

既に自分の力では立ち上がることは出来なくなっている麻里は、豊満な胸を隠す

事も出来ずに、リング上に横たわっている。

 

「ほらっ、なに寝てるの!起きなさいよ!」

裕美は息を整えると、麻里を無理矢理立たせて、一本背負い。

 

バシン

「・・・・・・」

背中からマットに叩き付けられ、息が詰まって悲鳴すら上げることが麻里。

すると裕美は、掴んだままの麻里の右腕に、両脚を絡ませるようにしながら

お尻から倒れ込んだ。

「きゃぁっ、痛ぁぁぁぁっ・・・」

腕ひしぎ極まると、麻里はあまりの痛さに悲鳴を上げた。

「先輩、口だけだったんだ」

「あぁぁぁぁぁっ・・・」

「杏子先輩の方が、全然強かったわよ!」

「あぁぁぁぁぁっ、いやぁぁぁぁっ・・・」

「先輩、泣いてるの?」

「あぁぁぁっ、いやぁぁぁぁっ、やめてぇ・・・」

どこにそんな力が残っていたのか、麻里は足でマットをバタバタと叩きながら

泣き叫んでいる。

「3年間私たちにやった代償は、右腕ね!ふんっ!」

気合いと共に、裕美は腕に力を込めた。

「あぁぁぁっ・・いやぁぁぁっ・・やめてぇ・・」

「泣けば済むと思ってるの?」

「ひぃぃっ、お願い、ゆるしてぇ・・・もうやめてぇ・・・」

何時の間にか、黒いビキニに包まれた麻里のお尻の下に水溜りが広がっていた。

「裕美さん、ストップ、ストップ!」

佳奈と仁美が、慌ててリングに上がってきた。

「裕美さん、もうお終い!」

佳奈にうながされると、ようやく裕美は麻里の腕を離した。

そして、立ち上がって麻里を見下ろすと、

「サイテー、なにもう・・・」

そこには、水溜まりの中で右腕を押さえながら泣き続けている麻理の姿があった。

 

 

 

土曜日の深夜、裕美の部屋に、理恵、あゆみ、美穂子の3人が遊びに来ている。

3人とも泊まっていくつもりなのか、いつまでも楽しそうにお喋りをしている。

 

「麻里先輩に勝ったんでしょ!どうだった?」

理恵が裕美に訊いた。

「冗談じゃないわよ!あの人口だけ!もう、3年もあんなのにビビってたかと

 思うと、悔しいやら、情けないやら・・・」

裕美は、思い出したくもないといった表情で答えた。

「そーだったの・・・じゃあ、あの3年間はなんだったのよ!」

「みんなが、あの女に騙されてたってこと・・・だって最後なんか、泣き喚き

 ながらおしっこ漏らしちゃったのよ!ほんとにもうっ・・・」

「サイテー!」

 

「ところであゆみちゃん、何で高橋さんなんかとやったの?」

先日送られてきたビデオの事を思い出した裕美が、あゆみに訊いた。

「『家には送らないで』って言っておいたけど・・・

 あのテープ、裕美のところに来たんだ。

 だって、高橋ったら失礼しちゃうのよ!

あの娘、お祖父さんが外交官か何かで、イギリスに6年位居たんだって。

 それでいつも『私の英語はQueens Englishなのよ!』だって。

 それに『笠原先生も可哀相よね。山田さんのあんなbroken Englishで話し掛け

 られたら、誰だって判らないわよね』って・・・」

「あははは・・・そうよ、あゆみのbroken Englishじゃあ英語教師の私だって

 判らないわよ!」

笑いながら答える裕美。

「なに言ってんのよ!裕美は英会話が苦手なだけでしょ!」

「あっ、ばかぁ」

慌てて言い返す裕美。

「えっ、あんた英会話が苦手だったの?

 あきれたぁ、それでよく英語の先生なんかになったわね・・」

理恵が呆れ顔で言った。

「ところで、あゆみはどこの大学受けるの?」

美穂子が話題を変えて訊いてきた。

「大学ねぇ、どうしよっかなぁ・・・」

「うちの大学受ければ!一緒に陸上やろうよ!」

「えー、嫌だよぉ、美穂子の後輩なんて・・大学行くのやめよっかなぁ・・・」

「だめよぉ、今時、大学くらいは行っておかなきゃ」

「そうよ、大学くらいは出とかなきゃぁ」

裕美と理恵が口々に言った。

「大学行って、教員免許とって、挙げ句の果てが教え子と取っ組み合いの喧嘩?

 私はごめんだね!」

あゆみが何気なく言った。

「あゆみちゃん!」

理恵が嗜めるように言った。

が、裕美の目にはじわっと涙が湧いてきた。

「ごめん、言い過ぎた。」

あゆみは慌てて裕美に謝った。

「私だってねぇ、本当は、喧嘩なんかしたくないの・・・

 でも、やってるときすごく気分が良くなって・・・

 そんな自分が嫌でたまらないの・・・」

裕美は泣き出してしまった。

黙り込む3人。

部屋の中には、裕美の嗚咽だけが続いていた。

 

 

 

                           To be continued

 

 

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