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堕落

 

 

第八章 終章

 

 

弓子は五年ぶりにUGPWのリングに上がった。
マットに染み付いた血や精液の匂いが弓子の鼻をつく。
気分が悪くなりそうになりながらも弓子はこの匂いに不思議となつかしさを感じていた。
試合のルールは先程の試合で理解している。
とにかく滝川を倒せばいい、ただそれだけだった。
そして滝川が会場に姿を現す。
白い水着、白いリングシューズ、そしてサポーターという弓子と同じ格好をして滝川はリングに上がってきた。
この格好は弓子と滝川が五年前に闘った時と同じだった。

「・・・・・・」

弓子は無言で滝川を睨む。
滝川も弓子を見ていた。
そしてリングの周りを十六人のレスラー達が囲む。
その後ろから失神している友恵、藍、奈美がレスラーによって運ばれてきた。

「奈美!友恵!藍!」

弓子が大声で呼びかけるが三人はピクリともしない。

「ではゴングの前にルールの説明を致します」

水着姿の都築が観客に向かって言う。

「基本的には先程の試合と同様ですが、
桜井選手が負けた場合、桜井選手と共にそちらの三名が、
滝川選手が負けた場合は、私が共に下位レスラー達に襲われます。」

都築は平然と言ってのける。
その口調からは滝川の勝利を100%信じている様だった。
都築は二人が賭けた物の説明のすると、レスラーに手錠をかけてもらいリングサイドの椅子に腰掛けた。

「滝川・・・」

弓子の怒りがこもった呟きの後に運命のゴングが鳴らされた。


                          
ゴングが鳴ると二人は軽快なステップを踏みながら距離を詰めていった。
そして互いの射程距離に入ると同時にハイキックを放つ。

「ぐっ・・・」

「くっ・・・」

キック同士が激突し二人は再び間合いをとる。

「合格ね・・・」

「えっ・・・?」

滝川の言ったことの意味がわからず聞き返す弓子。

「この前プールで会った時のあなたは弱すぎた。
もしあまり進歩してない様だったら、さっさと片付けるつもりだったけど、
今のキックであなたが私と闘うのにふさわしいということがわかったわ・・・」

滝川が間合いを詰めてくる。

「五年前より激しい闘いをしましょ・・・」

滝川が弓子の目の前まで来た。
すかさず弓子のパンチが滝川を襲う。

「踊ってみせなさい・・・」

弓子のパンチをかわした滝川は懐に入りラッシュを始める。

「きゃっ!かはっ!くあっ!」

滝川のキックやパンチでロープ際まで追い込まれる弓子。
たが滝川のパンチを受け止め、胸元にお返しのパンチを打ち込む。

「ぐあっ・・・」

滝川が後ずさる。
弓子は続けて滝川の首に手をかけてネックブリーカードロップでマットに倒す。
そして間髪入れずにフェイスロツクをかける。

「くううううう・・・」

苦悶の声をあげる滝川は足を振りあげ弓子の顔を蹴る。
フェイスロックから脱出した滝川は顔をおさえてうずくまっている弓子の髪を掴んで正座の状態にさせると、顔をおさえている手の上から膝蹴りを叩きこんだ。

「あぐっ!」

たまらず顔から手を離す弓子。
そしてガラ開きになった顔面にもう一度膝が叩きこまれた。

「げあっ・・・!!」

鼻血で曲線を描きながら弓子は仰向けに倒れた。
滝川はゆっくりと弓子の腹の上に乗り、パンチを打ち始めた。

「ぎゃっ!がおっ!はがっ!」

口の中を切り血が流れてきた。
しかし弓子もただ黙ってやられてはいない。
滝川がパンチを打った瞬間に勢いよくブリッジする。
そして体制を崩した滝川を落として、すかさず左足にトーホールドをかける。

「ぐああああああああああ!!」

滝川が悲鳴をあげる。

「まずい!まだ完治してなかったんだ!」

都築が叫んだ。
滝川は左足をこの間の相沢茜との闘いで痛めていた。
弓子との闘いまでに治るかと心配されていたが、痛みがすぐにひいたので安心していたところ、弓子に足を捻られたことで再び痛みが戻ってきてしまったのだ。

「ぐううううううううう!!」

滝川はなおも叫んでいた。
弓子は滝川の足を持ったまま回転する。

「うぐぁっ!うぐぁっ!」

捻りが加えられる度に滝川が声をあげる。
だが弓子がもう一回転加えようとした時、滝川があいている右足で弓子の股間を蹴り上げた。

「はぁうっ・・・」

弓子は滝川の足を離して、股間をおさえて膝をついた。
滝川はその隙にロープ際まで転がっていく。
二人共しばらく立ち上がることができなかった。
                          


「う・・・ううう・・・」

観客達の大歓声で友恵は意識を取り戻した。
友恵の目に写ったものは、リングから落ち、場外にいるレスラー達によってたかって蹴られている弓子の姿だった。

「コ・・・コーチ!?」

友恵が驚きの声をあげ、それに気づいた弓子はチラッと友恵の方を見て頷く。
弓子の頭からは一筋の血が流れていた。
どうやら場外に落ちた時に頭を打ったらしい。
リング上では滝川がコーナーに寄り掛かって座っていた。

「コーチ!頑張ってぇ!!」

友恵の声援を受け、弓子はリングに上がっていった。
藍と奈美も友恵の声で目を覚まし、弓子を応援する。



弓子がリングに戻ると滝川は立ち上がってゆっくりと弓子に近づいてくる。

「正直、ここまで楽しめるとは思わなかったわ・・・」

闘いはすでに45分を過ぎていた。
ライトに照らされて二人の汗が光っていた。
滝川は弓子に近づくと顔に向けてパンチを打っていった。
弓子はこれをガードしようと両手で顔を覆ったが、滝川はパンチを引っ込めて弓子のバックにまわった。

「しまっ・・・」

言いかけた弓子の頭はジャーマンスープレックスでマットに打ちつけられた。
続けて滝川は弓子の体を乗り越えもう一度ジャーマンで打ちつけた。
さらにもう一度、さらにもう一度と合計で七回マットに打ちつけた。

「コーチイイイイ!!」

友恵達の悲痛な叫びが会場に響いた。

「あ・・・う・・・」

よろよろと起き上がろうとしている弓子を立たせる滝川。
そして弓子の頭を股に挟みパワーボムを放とうとした。

「ぐっ・・・」

たが弓子の体を持ち上げた瞬間、左足が痛みそのまま後ろに倒れてしまう。
パワーボムをくらう覚悟をしていた弓子は自分の股の下にある滝川の顔面を殴りつけた。

「ぐおっ・・・」

滝川の鼻から血が流れる。
弓子は滝川から離れると急いでトップロープに登った。
バランスを崩さないように立ち上がると滝川の腹にめがけてニードロップで飛びかかる。

「ぐぼえええええええ!!」

弓子の膝が滝川の腹にめり込み体をくの字に曲げる。
のたうち回る滝川を弓子は場外に落とした。

「ぐぁっ!はぐぅっ!がぁっ!」

レスラー達の攻撃は滝川にも容赦無く加えられた。
滝川がよってたかって攻撃されているのを見て観客は歓声をあげた。
一分後、滝川はロープに手をかけリングに上がってきた。
弓子は滝川の髪を掴んでリングに入れると、コーナーに振る。
そして滝川の後を追って自分も走り、滝川がコーナーについた直後、滝川の体をコーナーに串刺しにする様に腹に再び膝をいれた。

「ごぼおおおおおおお!!」

滝川の口から唾液が大量に飛び散る。
弓子は滝川の手を掴み反対のコーナーに振ろうとしたが、途中で切り返されコーナーに飛ばされた。
滝川はコーナーにつくとロープに足を乗せ、弓子の髪を掴み額に肘を何発も叩き込む。

「ぎゃあああああああああああ!!」

肘が額に当たる度に弓子の血が辺りに飛び散る。
続けて滝川はトップロープに登ると弓子の後頭部をおさえてフェイスクラッシャーでマットに叩きつけた。

「ぷぁっ・・・」

マットに弓子の血が流れる。

「(ま・・・負けられない・・・)」

起こされた弓子は滝川に反撃していく。
滝川も負けじと攻撃する。
二人の闘いは一時間を越えていた。
二人共立つのもやっとの様で、足がガクガク震えていた。
ゆっくりと近づいていく二人。

「ああああああああ!!」

弓子が力を振り絞って右ストレートを打つ。
だが滝川はかわすとパンチに腕をからませ、脇固めの体制で弓子を倒す。

「あぎゃああああああああああ!!」

弓子が大きな悲鳴をあげる。
弓子の右腕は脱臼していた。
滝川は弓子から離れ、ロープにもたれかかる。

「あがががが・・・」

弓子は左手をマットにつけ立ち上がろうとするが、体力が限界で立ち上がれない。

「もう・・・いいよ・・・」

「もう・・・やめて・・・」

「もう・・・いいから・・・」

友恵達が涙を流しながら訴える。
滝川が立ち上がり、弓子を起こす。

「ああ言ってるけど・・・?」

弓子に友恵達の方を向かせて聞く。
弓子がそちらを向くと三人は下を向いて泣いていた。

「わ・・・私一人だけならいいけど・・・あの娘達まで・・・あなた達・・・の物には・・・させられ・・・ない・・・」

弓子は息も絶え絶えになりながら答える。

「私達は・・・一緒にいられれば・・・それでいいからぁ・・・」

「お願いコーチ・・・もうやめてぇ・・・」

「これ以上やったら・・・怪我じゃすまないよ・・・」

泣きじゃくる三人。
都築には三人の気持ちが痛い程わかった。
滝川が茜に痛めつけられている時と状況が似ていた。

「あ・・・あなた達・・・」

弓子がそう言った瞬間、滝川の腕が首に巻きついた。

「あがうっ・・・」

弓子の左手は一直線に友恵達に向かって伸びていた。

「あ・・・あああああ・・・」

弓子の苦しみの声が三人に届く。

「ふんっ!!」

滝川が腕に力をこめた瞬間、弓子の左手は倒れた。

「コーチ・・・?」

奈美がそっとリングの方を見ると、弓子は白目を剥き、口から泡を吹き失神していた。
奈美はあまりのショックで声も出せなかった。
ゴングが鳴り、手錠をはずされた都築が滝川の元へ走る。

「ハァーハァーハァーハァー」

滝川は都築に肩を借りてリングから降りた。
滝川が降りたと同時にリングに四人のレスラーが弓子に襲いかかる。
場外では友恵達がその肉体をレスラー達に弄ばれていた。

「ひゃぅっ!!」

「あはぁっ!!」

「くぅおおおおおおお!!」

三人の喘ぎ声の聞きながら滝川は会場を後にした。
リング上ではうつろな目をした弓子がその肢体をさらしていた。



「ううっ・・・」

会場から見えない場所まで来ると滝川は都築の胸に顔を埋める様に気を失った。

「滝川さん・・・」

都築はその場に座り込み滝川をそっと抱き締めた。


                          
「ひゃああああああああう!!」

リング上では意識を取り戻した弓子が悶えていた。
叫ぶ弓子の口にバイブが差し込まれ、股間からは愛液を大量に流していた。

「はふっ!はふっ!んんんんんんん・・・」

弓子の意識は再び遠のいていった。


                          
一年後、金網でしきられたリングの上で一人の少女が一人の女に襲われていた。

「あああっ・・・やめてっ・・・お願い・・・・」

裸にされた少女の股間に女の手が伸びていく。

「ひああああああああああああっ!!」

数分後、叫び声と共に少女の体はケイレンして股間から愛液を流した。
女はその愛液をナメると少女の腹にパンチをいれた。

「げぼぉっ!!」

少女は小さく叫ぶと気を失った。
女は再度少女の股間から流れる愛液をナメるとリングから降りていった。

「お疲れ様、コーチ」

花道の奥で三人の女が迎える。

「コーチはやめなさいって言ったでしょ」

女は微笑みながら差し出されたタオルを受け取った。
女の名前を桜井弓子といった。

 

〜 End 〜

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