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堕落


第三話 油断

 

 

ゴングが鳴り井沢アキ子と花村薫はゆっくりと間合いをつめていく。
薫は突然ダッシュして飛び蹴りを放つ。
アキ子はこれを余裕でかわし、薫の後頭部にキックをいれる。

「ぐあっ・・・」

倒れそうになるのを必死でこらえアキ子の方に向き直る。
今度はアキ子が薫の顔めがけてパンチを打つ。
薫は小手打ちのようにパンチを叩き落とし、ガラあきになったアキ子の喉を突く。

「げほつ・・・」

ダウンするアキ子。
観客は新人がアキ子から最初にダウンを奪ったことに歓声をあげた。
薫は喉をおさえながら立ち上がるアキ子の髪を掴み、顔に数発膝蹴りをいれる。

「がっ・・・くぅっ・・・」

鼻から血を流しながら膝をつこうとするアキ子を無理矢理立たせ金網に振る。
正面から金網にぶつかったアキ子の背中を蹴る薫。
続けてもう一発蹴りを放った瞬間、アキ子は体をずらしてかわし薫の顔に裏拳をくらわす。

「ぐぁっ・・・」

今度は薫がダウンする。
アキ子は薫の足をとりヒールホールドをかける。

「きゃあああああ!!」

場内に響く薫の悲鳴に歓声は一層大きくなる。
薫のかかとはがっちりと極められていた。
ヒールホールドは3分間離れることはなかった。
アキ子は薫を立たせ金網に振り、サンドイッチにしようと後を追う。
だが薫は痛む足で金網を蹴って飛び上がりアキ子の背後にまわる。

「なっ・・・!?」

驚き振り返るアキ子の顔に強烈なパンチがヒットする。

「ごあっ・・・!!」

アキ子が倒れたのを確認すると薫もしゃがみこむ。
足のダメージは相当大きいようだった。
しばらくして二人は立ち上がり激しい攻防を繰り広げた。
血と汗が飛び散り、互いの関節が悲鳴をあげた。

「きゃあああああ!」

アキ子の蹴りで薫は倒れた。

「ハァハァ・・・ここならではの闘いの仕方を教えて・・・ハァハァ・・・あげるわ・・・」

アキ子はそう言い薫の両足を持ち広げる。
そしてガラ開きになった股間を足で踏みゴリゴリと刺激する。

「ひゃああ・・・あふぅ・・・」

身をよじり悶える薫。
しばらくすると薫の白い水着の股の部分が濡れてきた。

「(勝った・・・!!)」

アキ子がそう思った瞬間、薫は突然上体を起こしアキ子の膝関節を殴る。

「ぎゃあああ・・・!!」

アキ子は膝をおさえて転げまわる。
薫はゆっくりと立ち上がり無防備なアキ子の顔や腹を蹴りまくる。
何発もまともに蹴りをくらいアキ子は大の字になって天井のライトをぼんやり眺めていた。
薫はアキ子の水着に手をかけ引き裂いた。
もはや負けを覚悟したアキ子は何の抵抗もしなかった。
だがなんと薫は自ら水着を脱ぎ捨てアキ子と同じ裸体にリングシューズとサポーターのみの姿になり、アキ子と体を重ねる。

「えっ・・・?なっなに・・・?」

負けると一方的な性的暴力を受けてきたアキ子は初めてのケースに驚いた。
薫はアキ子の首筋や乳房をやさしくなめた後、股間に手を伸ばす。
二人の形のよい胸が重なり合い潰れる。

「はぁ・・・あんっ・・・ふぁ・・・」

アキ子を愛撫しながら薫自身も快楽に身を委ねる。

「あっ・・・ふはぁっ・・・」

すさまじい快感がアキ子を襲い、あっという間に果てた。
指に絡みつく液体を確認し、おもむろにアキ子の口に突っ込む薫。

「んぐっ・・・んんーんんー!!」

口に突っ込んだ手でアキ子の頭部を固定して強烈なパンチを何発も打ち込む。

「んごっ!んがっ!あぐぇ!」

アキ子はガードすらできず、とうとう両手を上に上げ失神した。
口からは血に混じって薫の指についた液体が流れていた。
薫は足を引きずりながらリングを降りた。                 


         
10分後、安藤ミドリの試合が始まっていた。
ミドリはアキ子の試合結果を知らなかった。
だがリングに残る血痕から壮絶な試合だったということはわかっていた。
自分は目の前の敵を倒すことだけ考えればいい。
対戦相手は黒木純子、九州女子体育大学バスケットボール部一年、身長はなんと185センチという長身だった。
もし純子が闘う格好ではなくブランド物の服等を身につけていたらモデルと間違うであろう顔とスタイル。
体も無駄な部分は一切なく、ここでの特訓の成果かすっかり闘う為の筋肉が身についている。
純子の本性はバスケットボールの試合中にあらわれる。
普段はおとなしいのだが試合となると審判や観客、控えの選手の目を盗んで相手選手にケガを負わせる。
純子によって再起不能になった選手は数知れない。
                          
ゴングが鳴るとミドリの震えは止まり、すさまじい攻撃を始めた。
打撃から投げそして関節技という攻撃パターンで純子の体力を奪っていく。
対する純子も強力な打撃を中心に、ときおり見せる関節技で力まかせにミドリを締めあげ苦しめていた。
二人が闘い始めて15分が経過していた。
純子は口と鼻から血を流ししゃがんでいた。

「(さっきの不安は気のせいだったのかしらね・・・)」

純子の髪を掴みながらミドリは心の中でつぶやいた。
だがその時、純子の本性が目を覚ました。
純子は立ち上がる勢いでミドリの顎にアッパーをいれる。

「がぐっ!!」

ミドリの体が宙に浮き、そして落ちる。

「ふーっ!ほらっこれからよ!」

観客に向かって手を叩きアピールする純子。

「あう・・・ぐぐぐ・・・」

ミドリは立ち上がるがフラフラしていた。
そこを純子のパンチのラッシュが襲いかかる。
強烈なパンチは的確にミドリの体にヒットする。

「げぼぉっ・・・!!」

腹にパンチをくらい金網に背をつけ崩れ落ちるミドリ。
純子は片手でミドリの首を掴みネックハンキングツリーで持ち上げる。

「はっ・・・うううう・・・」

苦しむミドリの白い水着に手をかけ引き裂く純子。
ミドリは裸にされるが叫び声一つあげない。
多くの人に自分の裸を見せることに慣れていた。
それよりもここからが問題だった。
純子のあいた方の手の指はすでにミドリの股間に入っていた。
指を股間に入れ、まるで鍋の中のスープをかき混ぜるかのようにまわしている純子。

「うっ・・・うんっ・・・はぁ・・・うぐぐぐ・・・」

ミドリの股間が濡れてくる。
純子はミドリの首から手を離す。
そしてミドリの体は股間に入った純子の指一本で持ち上げられるかたちになった。

「あひゃあああああああああ!!」

ミドリが叫ぶ、しかし指一本で人一人持ち上げられるはずもなく、すぐにミドリはマットの上に落ちた。
純子がミドリに近づいたその時、伸ばした純子の左腕にミドリの足が絡みつき純子は倒れた。

「うわあああああああ!!」

腕ひしぎをかけられ純子は悲鳴をあげた。
だが純子は体をねじりその長い足をミドリに叩きつける。
ミドリは腕を離し立ち上がる。
純子も腕をおさえながら立ち上がる。
しばし睨み合ったあとミドリが純子に向かって走った。
そしてスライディングで純子の足を引っかける。
ミドリは純子を倒して必殺のストレッチプラムで一気に決着をつけるつもりだった。
だが純子は倒れなかった。
全体重を足にかけふんばっていたからだ。

「そっ・・・そんな・・・」

驚くミドリの胸板に強烈なパンチがヒットする。

「がはぁっ・・・!!」

そして剥き出しの股間に膝を落とす。

「ひぎぃっ!!」

ミドリがこんな無様に悲鳴をあげるのは久しぶりだった。
ミドリの悲鳴を聞いた観客の興奮は一気にヒートアップしていった。
純子はミドリの胸を鷲掴みにする。

「はぁう・・・あんっ・・・」

そして股間に手を伸ばし指を入れる。
激しくなっていく純子の指の動きにミドリは意識が飛んでしまいそうだった。
だがやがて、

「ああああああ・・・」

ミドリの体が大きくケイレンし、股間からぬめりのある液体を流す。
純子は指についたそれをなめてから勝利の雄叫びをあげる。
観客の大歓声が純子の勝利を称える。
金網がクレーンで上げられリングを後にしようとする純子

「ま・・・待ちな・・・さい・・・まだ・・・私は・・・立ってるわよ・・・」

純子が振り返るとミドリが体を震わせながら立っていた。
その股間からは滴が糸を引きながら垂れていた。
ミドリの目を見た時純子は一瞬脅えた。
だがミドリに近づくとバスケで相手のシュートを防ぐようにミドリの頭を思いっきり殴る。

「あっ・・・」

ワンテンポおいてミドリは白目を剥き前のめりに倒れた。
ミドリが完全に失神したにもかかわらず純子の胸の鼓動は恐怖で張り裂けそうだった。
                         
「あの二人は使えますね」

秘書の都築由利が滝川京子にはなしかける。

「まだダメね・・・」

滝川が答える。

「今日あの二人が勝てたのは井沢と安藤に油断があったからよ・・・当然次に闘う時は油断はないわ、そうなると今の花村と黒木じゃ勝てないわ・・・」

そう言ってタンカで運ばれていくミドリに目を向ける。

「花村をよびなさい」

滝川にある考えが浮かんだ。
都築はすぐに花村を呼びにいく。                     
     
桜井弓子は池上奈美ら三人が誘拐された翌日からレスリング部の練習場に泊まり込み特訓を始めていた。
体力の続く限り体を鍛え、すでに全盛期の力は取り戻していた。
全ては自分が悪いという自責の念が弓子を駆り立てていた。
自分が滝川に負けなければ奈美達は連れていかれることもなかっただろう。
下手したら奈美は弓子と同じように夢を壊されるかもしれない。
藍や友恵にも同じことが言える。

「(全部自分が悪いんだ!!)」

弓子は心の中で静かに叫んだ。
ふと気づくと練習場の入り口に人が立っていた。

「誰?」

見慣れない人物に弓子は胸騒ぎがしていた。

「滝川京子からあんたの力を試すように言われて来た」

「た・・・滝川?まさかあなた・・・?」

「そう、UGPWから来た、花村薫。さぁ・・・勝負よ」

薫は突進していくが弓子のパンチ一発で吹っ飛ばされた。

「がっ・・・」

壁に叩きつけられ倒れる薫。

「UGPWと聞いたからには容赦しないわよ、あなた達を潰す為だったら私は鬼でも何でもなるわ!!」

完全にキレた弓子は現役時代を越す力を発揮した。
薫も全力で向かっていくがとても太刀打ちできなかった。
弓子は自分でも怒りをコントロールすることができなかった。
                          
弓子が我に返ると薫は失神していた。
弓子も頭と口から血を流していた。
一体どうやって倒したのか自分でもわからなかった。
そして驚いたことに薫は全裸でその股間には弓子の手が添えられていた。

「え・・・?なに・・・この手・・・?」

弓子はおかしくなりそうだった。
これでは滝川達とやってることが同じではないか。

「まさか・・・あそこのリングで闘えるということが嬉しいとでもいうの・・・?私の夢を壊したリングで闘うことが・・・?」

弓子は呆然としていた。
その様子を黒木純子は窓からビデオカメラで撮影していた。
相棒的存在の薫を目の前で倒され純子は今すぐにでも弓子に飛びかかりたい気持ちで一杯だった。
だが滝川の命令に背くと制裁が下る為、グッとこらえていた。
いつか弓子を倒す。
そう決意して純子は弓子が消えたあと、薫を担いでUGPWへと戻って行った。

 

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