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土曜日(既に日付が変って日曜日だが)深夜2時。

いわゆるキャットファイトマニアである孝之は高校2年生。

家族が寝静まったリビングで1人、深夜映画『アマゾネス』を見ている。

(あぁ〜〜、俺の部屋にもテレビがあったらなぁ〜〜!)

 

日曜日の午後・・・

孝之は、家中誰も居ないのを確かめると、父親の書斎へ忍び込んだ。

「おっ、あった、あった・・・」

父親秘蔵のキャットファイトビデオを探し出すと、1人リビングで鑑賞を始めた。

高校生の孝之には、深夜興行しかないキャットファイトライブなんか行けない。

ましてやSMクラブでの、キャットファイトコースなんか論外である。

今はまだ、本屋で立読みか、たまにこうしてビデオを見るくらいしかできない。

(おっ、これ、新しいじゃん。

 『謎の覆面女子高生ファイター《マスク・ド・チェリー》

              VS

           地獄の女戦士《ヘルクイーン・ユウカ》』か・・)

画面では、2人の女性が相手を叩きのめそうと闘っている。

孝之が、ふと、パッケージを見ると、

『ユウカの手がチェリーのマスクにかかり……』と書いてある。

孝之が目を戻した時、ユウカの手がマスク・ド・チェリーの覆面を剥ぎ取った。

(「きゃぁぁー!いやぁぁぁーーー」)

チェリーが両手で顔を覆って、リング中央に蹲るその瞬間、

「あっ…!(今の娘は、高見澤・・・・)」

小さな叫び声をあげて、孝之は固まってしまった。

 

 

月曜日の2時間目と3時間目の間の休憩時間。

孝之は意を決して、クラスメートの高見澤優美に声をかけた。

「お願いがあるんだけれど、ちょっといいかな?」

階段の踊り場まで優美を連れ出す孝之。

「優美ってさあボクシング部だよな!優美もボクシングとかするの?」

孝之は、周りに誰もいないことを確かめると、唐突に訊いた。

「しないわよ!ただのマネージャーだもん!」

いきなりのことに、戸惑いながら答える優美。

「じゃあ、プロレスとかは?」

「しないったら!なに言ってるのよ!!」

「俺に、プロレスの技をかけてくれよ!」

「いきなり、何を言い出すの?馬鹿なこと言ってないで本当の用事は何?」

「マスク・ド・チェリー・・・ヘルクイーン・ユウカ対謎の覆面・・・」

孝之は、顔を強張らせながら言い返す優美に向かってボソッと呟いた。

「・・・・・・・・」

言葉に詰まる優美。

「俺、ビデオ見ちゃったんだ。たのむからさあ!」

 

(どうしよう?強気に出て、しらばっくれたほうがいいのかな?

 でも、断ってみんなにバラされちゃってもマズイしな?どうしよう?)

 

「みんなには、この事は言わないからさあ!」

「・・・・・」

考え込んでいた優美だったが、諦めたように、

「しょうがないわねえ。でも誰にも言わないでよ!!」

「わかった。じゃあ、昼休みに体育倉庫なっ!」

「えっ、今日なの?」

「待ってるぞー!」

足取りも軽く、孝之は教室に戻っていった。

 

(まいったなぁ!あのシーンはNGにするって言ってたじゃない。

 まぁ、しょうがないか。

 それに、もう3ヶ月やってないからそろそろやりたくなってきたし。

 それに、孝之も結構いけてるし。

 まぁ、しょうがないか!)

 

優美が、キャットファイトを始めたのは、高校1年の夏休み。

買い物帰りに、一人、繁華街を歩いていたとき、スカウトされたのだった。

アダルトでは無いのが判ると、素顔は出さないことを条件に始めたのだった。

初めての試合は、レズ系バトルであった。

しかし優美にはそれが判らず、相手が泣くまで、本気で叩きのめしてしまった。

2試合目も、レズ系バトルにもかかわらず、相手が泣くまでやってしまった。

そこで3試合目からは、セメント系の試合を組まれるようになった。

が、優美の勢いは止まらず、これでも負け知らずだった。

そして、孝之が見た試合でも、1度マスクを剥がされたものの、そのお返しに、

相手が本当に泣きだすまで、叩きのめしてしまった。

 

(まぁ、軽く技をかけてあげればいいかな?お昼は抜いておこう・・・)

以外と、あっけらかんとした優美だった。

 

 

昼休み・・・

孝之のいる2組に向かう晴美は、廊下で、体育館に向かう優美とすれ違った。

(2組は次は体育だっけ・・・なんでこんなに早く行くんだろう?)

首を傾げながらも、2組の教室に向かう晴美。

「あれっ、孝之は?」

晴美は、教室中を見回しても孝之の姿が見えないので、2組の男子に声をかけた。

「孝之なら先に行ってるって」

「えっ、なんで・・・ちょっと早いんじゃない?」

一瞬顔色が変わった晴美だが、それを気づかれないように何気なく言った。

「知らねーよ!なんかやることがあるって言ってたけど・・・」

晴美はそれ以上口を出さずに、急ぎ足で体育館に向かった。

 

そのころ体育館の倉庫では・・・

ジャージ姿の優美が、短パン・Tシャツ姿の孝之に、プロレス技を掛けていた。

「じゃあ次は、ドラゴンスリーパーね!」

優美は、孝之をのけぞらさせておいて、右手を顎の下から首の後ろにまわし、

孝之の左の脇の下からまわした左手と組んだ。

 ガラッ

倉庫の扉が開いて、いきなり晴美が入ってきた。

「孝之っ!どういうこと!なんでこんな女とじゃれあってたりするわけ?」

「ちっ、違うん……」

「こんな女とは何よ!」

慌てて弁解をする孝之を押しのけて、晴美の前に立ちはだかる優美。

「ひとの彼氏にちょっかい出さないでほしいわ!」

「へぇぇ〜、孝之に彼女いたんだ。

 でもこんな女なら別れたほうがいいんじゃない?」

「晴美、違うんだ。優美にプロレスの技をかけてもらってただけなんだ。」

「そうよ、あんたの彼氏の変態趣味に付き合ってあげただけなんだから・・・

 私が、あなたの彼氏に手を出したなんて言わないでちょうだい!」

「孝之っ!本当なの?」

「そうだ。俺が頼んだんだよ。だから、少し落ち着けって。なあ・・・」

「その話は後でゆっくり聞いてあげるわ。でも、あんたは・・・」

凄い形相で優美を睨み付ける晴美。

「あんたが何だって言うの?」

「私とプロレスで決着つける勇気ある?」

「あなた本気なの?体操部のお嬢さんが?」

優美が笑い出した。

「孝之に手を出したこと、後悔させてやるわ!」

晴美は、鬼のような形相で優美を睨み付けた。

 

晴美は、過去にプロレスをやった経験があった。

それどころか、中学一年生の時、WPPW(女子中学生プロレスリング連盟)の

ジュニアチャンピオンになったほどの実力の持ち主であった。

しかし2年生の時、トーナメント戦の決勝で相手選手に大怪我を負わせてしまい、

それ以来、2度とプロレスに近づくことはなかった。

そして孝之も、その事はまったく知らないのであった。

 

優美も、晴美を睨み返す。

「二人とも落ち着けって!」

 シューー、キーンコーンカーンコーン

孝之が二人の間に割って入ろうとしたとき、5時間目の予鈴が鳴った。

「授業が始まるぞ!」

孝之が二人をうながす。

「はいはい、しょうがないわねぇ。わかったわ、放課後にうちの部室に来て。

 今日は練習試合で誰も居ないから、ゆっくり話を聞いてあげるから。」

そう言うと優美は、晴美を押しのけて、体育倉庫を出ていった。

 

 

「なあ優美、頼むよ!晴美にプロレスなんてできるわけ無いんだから・・・

 晴美が来る前に、帰ってくれよ!」

放課後、ボクシング部の部室で、孝之が泣きそうな顔で優美に頼んでいる。

「なんで私が逃げ出さなきゃならないの?

 言い出したのはあの娘の方なんだから。

 それに彼女、私とあなたがいちゃついてただけにしか思ってないわよ。

 ビンタのひとつでもすれば、私が謝るとでも思って、脅そうとしただけよ。」

優美だって本気にしていたわけではない。

ただ、頭にきたから部室に来いと言っただけだった。

 カチャ

ジャージ姿の晴美が、部室に入ってきた。

「へぇ〜、立派なリングがあるじゃない。ここで私とプロレスやるの?」

「あなた、本気なの?」

驚いた優美が尋ねた。

「晴美、冗談だろ?」

「孝之は黙ってて!これは女同士の問題なんだから!」

そう言うと、晴美はジャージを脱ぎ捨てた。

ジャージの下には、花の絵がプリントされている水色のレオタードを着けていた。

「本当に、本気なの?」

「当り前じゃないの!」

「しょうがないわねぇ。じゃあ着替えてくるから待ってて。

 でも、どうなっても知らないわよ!」

ボストンバッグを持って、更衣室に向かう優美。

中には、スポーツジムに寄るつもりで持ってきた、赤の競泳用水着が入っている。

「晴美、やめろよ!」

孝之が懇願する。

「優美には本当に、プロレス技を掛けてもらってただけなんだから・・・

 おまえじゃ優美にはかないっこないって。」

「やってみなければわからないじゃない。それに・・・」

晴美が言いかけたところで、優美が赤の水着に身を包んで、更衣室から出てきた。

「本当に、どうなっても知らないからね!」

晴美を睨み付けながらも、孝之に近づき耳元で、ささやいた。

「良かったじゃない、目の前で本物が見れて。好きなんでしょ!」

そう言い残すと、サッとリングに上がっていった。

「ほら、おいで!」

優美は晴美に手招きををすると、腕を組んで、晴美が上がってくるのを待った。

リングに上がった晴美は、リング中央で優美と向かい合って立った。

(よく見ると、結構可愛いじゃない・・

 この娘を、彼氏の前で叩きのめして泣かせるのも悪くないかもね・・)

ビデオ出演のせいか、少し、サドっ気の出てきた優美。

(へぇー、結構いい身体してるじゃない・・痛めつけ甲斐がありそうね・・)

晴美も、赤い水着姿の優美を見て思った。

そして晴美から先に口を開いた。

「あなたが負けたら、どうなるか判ってるでしょうね?」

晴美がすごい剣幕で言う。

「ええ、どうとでもすれば!・・・でも、あなたが負けたら、どうなるか・・・」

「好きにしていいわよ!もし、私に勝てればね!」

(この女、絶対潰す・・2度と学校には出てこれないようにしてやる。)

晴美は、優美を睨みつけたまま、両手の拳を固く握り締めた。

優美が両手を腰にあてて聞く。

「ルールはどうするの?」

「そんなもん必要ないわよ!」

優美の問いかけに、晴美が言い返した。

「それでいいの?あんたが泣くまで、私はやるわよ!」

睨み付ける晴美の顔に向かって、一方的に叩きのめすと言い放つ優美。

「その言葉、そっくり返してやるわよ!

 でもあなたが泣いても、私はやめないかもよ」

「・・・・・・・」

今度は、晴美の言葉に驚いた優美が、言葉を無くした。

「もう、あなたを泣かせるだけでは気が済まないのよ!」

 

(ドミネーションマッチ・・・

 どんなに負けを認めて泣こうが叫こうが、気が済むまでいたぶりつづける。

 撮影では見たことがあるけど・・

 でも、その時はちゃんとシナリオがあって・・

 それに、いたぶるといったって・・

 せいぜい、フェイスシッティングぐらいだし・・

 だいたいあれは、SMビデオじゃないの!

 でも、これはシナリオ無し?

 バーリ・トゥード・・・『女と女の何でも有りの闘い!』)

 

「なにしてもいいの?」

もはや優美の表情に笑みは無かった。

「どうでもいいわ。プロレスでもなんでも・・・」

「いいわ、まずプロレスで痛めつけてあげる・・・」

「その後は、何でもありって事ね?」

「私に挑んだこと、あとで後悔したって知らないわよ!」

優美は、そう言うと赤コーナーに向かっていった。

そして、コーナーポストに背を預けて晴美を睨みつけた。

「孝之っ!ゴングを鳴らして!」

青コーナーで、晴美も同じように優美を睨みながら孝之に言った。

「OK!」

孝之の表情には、先程までの怯えや躊躇はない。

目の前で始まるキャットファイトに、期待を込めて目を輝かせていた。

 

 カーーン

 

ゴングと同時に、晴美が飛び出した。

そして、優美の胸に向かってドロップキックを放った。

「あんっ」

吹っ飛ばされた優美は、コーナーポストに叩きつけられ、そのまま崩れ落ちた。

 ボコッ

すると晴美は、優美の胸に向けて、更に低い角度のドロップキックを放った。

「あっ、ああんっ・・」

後ろに逃げる事のできない優美の胸に、晴美の足がめり込んだ。

優美が日頃から自慢にしている胸が、無残にもひしゃげた。

「オラァ、もうおわりかぁ!」

晴美が、優美の髪を掴んで立たせると、コーナーポストに押さえつけた。

「いたっ、いたぁぁぁい」

堪らず悲鳴を上げる優美。

 ドスッ、ドスッ・・

すると晴美は、優美のお腹に何発も膝蹴り入れた。

「がっ、ぐはっ・・・」

優美が苦しげな呻き声をあげると、今度は髪をつかんで、ヘアーホイップ3連発。

 ズダン、ズダン、ズダン

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

いきなりの攻撃に、荒い息で、マットに倒れたままの優美。

晴美は、優美の髪を掴んで起き上がらせると、今度は、ボディスラムを3連発。

 ズドン、ズドン、ズドン

そして、仰向けに倒れている優美の胸に、エルボーを落とした。

「ああんっ・・」

苦悶の表情で、胸を押さえる優美。

晴美は、その胸に向けて、もう一発エルボーを落とした。

 ドコッ

「うっ・・・」

間一髪で優美が転がって逃げたので、晴美は自爆。

そのまま、右肘を押さえてうずくまってしまった。

優美はロープを掴みながら立ち上がると、晴美を見下ろした。

 

(この娘、プロレスの技、少しは知っているじゃない・・

 でも、掛けることはできても、掛けられたらどうなるか・・)

 

晴美は、右腕を軽く回しながら立ち上がってきた。

すかさず優美は、晴美に向かっていくと、鳩尾に爪先蹴りを入れた。

「うっ」

お腹を押さえ膝をつく晴美の横顔に、ローキックを放つ優美。

「あうっ」

堪らず横に吹っ飛ぶ晴美。

すると優美は、晴美の右足を掴んで、自分の足を絡ませ尻から倒れこんだ。

 ドタン

「晴美ちゃーん、プロレス技のお勉強の時間ですよー!」

優美は言いながら、トウホールドを極めた。

「あぁぁっ、いてぇ、いててててっ、離せバカヤロー!」

 ドスッ、ドスッ・・

晴美は、なんとかトウホールドを外そうと、優美の右の肘に蹴りを入れた。

「いてぇなぁバカヤロォ、蹴るな!」

優美は、右肘の苦痛に耐えながら、晴美の右脚を更に締め上げた。

「プロレスって掛けてるときはいいけど、掛けられると辛いでしょ!」

「いててっ、離せコォノヤロゥ!」

今度は、優美の太股を蹴る晴美。

優美の太股がたちまち赤くなる。

優美は絡ませている右脚を外すと、そのまま踵を、晴美の股間に突き刺した。

「きゃぁぁっ、あっ、ああぁぁぁんっ・・、馬鹿、なにすんのよ変態!」

優美は素早く立ち上がると、苦しげに悶える晴美の両脚を抱えた。

「あっ、い、いやぁー」

晴美は逆エビを恐れて、大事なところに当てていた手を左右いっぱいに広げた。

優美は必死になって、晴美の身体を返そうとした。

しかし、晴美が手を広げて耐えているので、いつまでも逆エビが極まらない。

すると優美は、晴美の脇腹を蹴って、身体を返そうとした。

体中に力を入れて、返されまいと必死に堪え続ける晴美。

しかし晴美は、優美の執拗な蹴りに、ついに力が抜けて返されてしまった。

「いやっ、いたたたたたたっ、やだ、やめてぇぇぇぇっ」

優美の逆エビが極まり、晴美は悲鳴を上げる。

「これが逆えび固めね!・・痛い?」

優美は不敵な笑顔で、晴美に訊いた。

「あぁぁぁぁっ・・・」

「じゃあ次は、片えびね!」

悲鳴を上げながらも、必死に返そうとする晴美に向かって優美は言った。

そして晴美の左脚を離すと、右膝を両手で抱え、思いっきり後ろにたおした。

「きゃぁぁぁっ、いたあああああいっ!」

リングをバタバタ叩きながら、目に涙を浮かべて必死に耐える晴美。

「そぉりゃぁぁっ!」

気合を入れながら、優美はさらに背中をたおした。

「きゃぁぁぁぁぁぁ・・・」

晴美の悲鳴が一段と大きくなった。

が、その時、大きく開いたレオタードの背中の部分に、髪の毛の感触があった。

(髪の毛をつかめる!)

晴美は必死に上半身を捻り、優美の長い髪を掴むと、思いっきり引っ張った。

「あっ、いたたたたたたっ・・・、離せバカヤロー」

「誰が離すかっ!」

執拗に髪の毛を引っ張り続ける晴美。

すると、優美の腕の間から、汗で滑る晴美の脚がスポっと抜けた。

「きゃぁ」

勢い余って、後ろにひっくり返る優美。

晴美は、リング上を転がりながら、ロープ際まで逃げた。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

そして腰を押さえがらロープに掴まり、なんとか立ち上がることができた。

 

(なんなのこの娘、プロレスできるの?

 こんな娘、WPPWにいたっけ?

 絶対に素人じゃない!

 でも、技の掛け方がなんか変!

 喧嘩の場数をふんでいるだけ?

 違う!喧嘩で、逆エビなんか掛けない・・

 じゃあいったい・・・)

 

ロープに掴まり腰を押さえながら考える晴美を睨みながら、優美が起き上がった。

「あなた、私を、本気で怒らせたみたいよ!」

引っ張られた髪を押さえながら、優美が言った。

(丸裸にひん剥いて、それから泣かしてやる!)

そう思いながら、優美は、少しづつ晴美に近づいて行った。

 

 ボコッ

お互いに手が届きそうになったとき、晴美の爪先蹴りが優美の鳩尾に入った。

「あうっ」

お腹を押さえて、膝をつく優美。

「あんたこそ、私を本気にさせたみたいよ!」

晴美はそう言いながら、優美の髪を掴んで立たせると、ロープに飛ばした。

「グェッ」

胸からもろにロープにあたり、跳ね返されて、仰向けに倒れる優美。

「もう一丁っ!」

晴美は、優美の髪と左腕を掴んで立たせると、今度は、コーナーポストに振った。

「きゃぁぁぁっ・・」

正面から叩きつけられ、コーナーポストを抱くような格好で崩れ落ちる優美。

 ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ・・

優美の背中に容赦なくストンピングを浴びせる晴美。

「あっ、あっ、あっ・・・」

晴美の攻撃に、呻き声しか出せない優美。

「本当のプロレスを、教えてあげるよ!」

晴美は、優美の髪を掴んで起こすと、またもやヘアーホイップを連発。

 ズダン、ズダン、ズダン・・

「あうっ、あうっ・・・」

何度も何度も、優美の身体がマットに叩きつけられた。

またもやグロッキー状態の優美。

すると晴美は、優美を引きずり起こし、頭を脇に挟んで逆さまに抱え上げた。

「やっ、いやっ・・」

そして、かぼそい悲鳴を上げる優美に、滞空時間の長いブレンバスター。

 ズデーン

リング中央で大の字になっている優美に、晴美は足四の字固めをかけた。

「あぁぁぁっ、いたあああああいっ・・・」

バタバタとマットを叩きつづける優美。

「ほらぁ!ギブしないと足が折れちゃうよ!」

「はっ、離せ!いたっ!だれが!いたぁぁっ」

優美の目から涙がこぼれる。

「もっとも、ギブしても、離さないよ!あんたの足を折ってやる!」

「いやぁぁぁ、やめてぇぇ・・、あぁぁぁぁぁぁっ」

激痛と恐怖で、悲鳴をあげる優美。

「でゃぁ!」

晴美は、優美の泣き顔を見ながら、腰を持ち上げて更に締める。

「あああああん・・いやぁぁぁぁぁっ」

頭をかかえ、上半身を右に左によじらせ続ける優美の悲鳴が、リング上に響く。

「これだけじゃあ、つまらないわね!」

晴美は四の字をとくと、優美の身体をひっくり返してうつぶせにした。

そして、優美の太股を踏みつけると、内側から足の甲を自分のすねに引っ掛けた。

「この技知ってる?」

不敵な笑みを浮かべた晴美は、優美の腕を掴むと、そのまま後ろ向きにたおれた。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・」

ロメロスペシャルが極まると、またもや大きな悲鳴を上げる優美。

優美の悲鳴がだんだん小さくなってくると、ふいに、晴美が優美の腕を離した。

 ズドーーン

うつぶせにマットに落ちる優美。

晴美は、優美の髪を掴んで引きずり起こすと、ロープ際まで連れて行った。

「うっ、うっ、うっ・・・」

「もう泣いてるの?」

半泣きの優美の顔を覗き込みながら言うと、腕をロープに絡ませてしまった。

 パシッ、パシッ・・

「あうっ、あうっ」

晴美のビンタが、優美の頬を襲う。

「いたい?」

聞きながらも、ビンタしつづける晴美。

 パシッ、パシッ・・

「あうっ、あうっ」

されるがままの、優美。

「よけないの?」

 パシッ、パシッ・・

「あうっ、あうっ」

 パシッ、パシーーン

「あなたが、何時までも避けないから、手のひらが痛くなったじゃないの!」

そう言うと、今度は水平チョップで、優美の胸を襲いだす。

 バシッ、バシッ、バシッ・・

「あっ、あんっ、あんっ・・」

(さっきのヘアーホイップやブレンバスタ・・

 四の字固めならともかく、素人はあんなこと出来ない!

 この娘、プロレス知っているの?

 撮影では会ったこと無いわ!

 他のビデオに出てるの?

 でも四の字とか、いつもより、ずっとずっと痛かった!)

 

 ドスッ、ドスッ・・

「あうっ、あっ、あうっ・・」

ロープにはりつけにされ、晴美のなすがままの優美。

(こ、これって、本当のプロレス?

 この娘、本当のプロレスラー?なんで・・?)

 

「もう終わりなの?さっきのはただの虚勢?」

優美の腹部に、膝蹴りを入れながら晴美は聞いた。

そのとき、優美の脳裏に、撮影後の控え室の記憶がよみがえった。

 

(「あなたのは、プロレスじゃない!」沙織が言った。

 「なんでよ!」優美が聞き返す。

 「あなた、プロレスってものがわかってるの?」

 「じゃあなんで初代女王や、なんとかクィーンとかが、私に勝てないの?

  私が強いからでしょ!」

 「あの娘たちだから、30分も40分もあなたの相手が出来るんでしょ!」

 「あたりまえよ!他の弱い子たちなら、5分もあれば充分よ!」

 「だから、あなたは、わかってないって言うのよ!

  プロレスには見せ場が必要なの。

  あなたみたいに、ただ、相手を叩き潰せばいいってもんじゃないのよ!」

 「それは、負けた娘のいいわけでしょ!じょあ沙織さん、今度やってみる?」

 「あなたには、まだ、無理よ!」

 「私が怖いの?私に負けるのが怖いの?」

 「なんですって!」

 「試してみる?」

 「沙織,やめときな!優美、あなたも!」トレーナーが割って入った。)

 

 バシッ、バシッ・・

晴美の攻撃が続く。

「はぁ、はぁ、・・・本当にもう終わりなの?

 はぁ、はぁ、はぁ、今だったら、水着を脱いで、下座したら許してあげるわ!」

荒い息遣いの晴美が聞く。

(プロレスには,見せ場が必要。プロレスには・・・)

優美の頭の中で、沙織の言葉が繰り返される。

(プロレスには、見せ場が必要。技を掛けたり、掛けられたり。

 だから、このままでは、終わらない。

 プロレスには・・・)

 

「はぁ、はぁ、・・気絶してるの?しょうがないわねえ。」

荒い息のまま、晴美は優美の左腕をロープから外して自分の右肩にかけた。

そして、右腕もはずそうと、優美の右腕に手を伸ばした。

優美の右腕に絡まっていたロープが外れて、ダラーンと垂れた。

晴美は、優美の右腕を掴もうと、左手を伸ばした。

 むにゅぅっ!

その瞬間、優美の右手が、晴美の股間を思いっきり握り締めていた。

「きゃぁ、ちょっ、ちょっと何するのよ変態!あっ、いっいやぁぁぁぁっ」

「あ、あんたが言ったのよ!プロレスで痛めつけた後はなんでもありって!」

「いやぁ、離してぇぇっ」

突然の、それも予想もしなかった攻撃に、悲鳴をあげながらも戸惑う晴美。

「こんな攻撃受けたこと無いでしょ!」

言いながら、左手で晴美の胸を潰そうと握り締める優美。

「ああーん、もうっ・・・」

必死になって、後ろへ逃げようとする晴美の足を、優美の左足が引っ掛けた。

 ズドンッ!ドカッ

仰向けに倒れた晴美の腹に、優美はヒップドロップを落とした。

「うっ・・」

そしてそのまま、晴美の上に馬乗りになる優美

優美は、苦悶に顔が歪む晴美の髪を掴むと、マットに頭を何度もうち付けた。

「あんっ、あんっ・・」

「はぁ、はぁ、・・さっきの、生意気な口は何処言ったのかなぁ?」

晴美の目が虚ろになってくると、優美は立ち上がり、晴美の胸を踏みつけた。

「何度も何度も、私の自慢の胸を、叩いてくれたわねぇ!こうしてやる!」

「きゃぁ、あっ、いたああいっ・・」

晴美の目に涙が浮かんできたのをみると、お腹へストンピングを連発。

「うっ、うっ、ううっ・・」

そして優美は、晴美の髪を踏みつけると、両腕をとって引っぱりあげた。

「いたぁ、いたぁぁぁぁぃっ・・・」

 

(この娘、なんで復活したの?

 この娘もプロレスを・・?

 ちがう!でも、ただの喧嘩でもない。

 【キャットファイト!!】

 この娘がやってるのキャットファイトだ!でも・・、なぜ?)

 

突然、晴美の手を離した。と、今度は、晴美の顔を踏みつけた。

「んぎゅぅ、んがぁ・・・」

「これから、本当の地獄をみせてやるよ!」

うめき声をあげる晴美を見下ろしながら、言い放つ優美。

そして、晴美の脇腹にストンピングを入れた。

「あっ、あぁっ・・」

苦しむ晴美をうつぶせにして、すかさず、キャメルクラッチを掛ける。

「あーーーーーっ、いたぁぁぁぁぁぃっ、あーーーーーーーーっ・・・」

晴美が悲鳴をあげる。

「どう?さっきのお返しよ!あなたの背骨どこまで曲がるかしら?」

言うなり、晴美の髪を掴み、体を後ろに反らす優美。

「あぁぁぁぁぁぁぁっ・・・」

目に泪を浮かべ、必死に耐える晴美。

優美は、晴美の髪を放すと、顔に手をかけてさらに後ろにそらした。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・・」

頭を左右に振り、必死で逃げようとする晴美。

 

 ガブッ

「きゃぁぁっ、痛っ、痛ぁぁっ・・・」

晴美は苦しんで頭を振るふりをして、右頬にかかる優美の親指に噛み付いた。

咄嗟に右手をひっこめる優美。

「うぉぉぉぉぉっ・・」

叫びながら、晴美が起き上がると、横にはねたおされる優美。

「てめぇぇっ!このやろぉ!」

 ズドンッ、ドカッ、ドカッ、ズドンッ・・

ボディースラム、エルボードロップ、ストンピング、ブレンバスター・・・・。

次から次へと、技を繰り出す晴美。

晴美は、またもや動きが止まった優美の腕を掴むと、喉元にギロチンドロップ。

「うげぇっ、げほっ、げほっ・・」

そのまま晴美の腕ひしぎが、優美の左腕に極まった。

「いやあぁぁ・・、いたぁぁぁぃっ・・・、やめてぇぇっ・・」

左肩を押さえて、暴れまわる優美。

不敵な笑みを浮かべて、さらに締め上げる晴美。

優美は、必死になって逃げようと、さらにはげしく暴れた。

と、そのとき、

 ゴキッ

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・・」

悲鳴が絶叫に変わった優美。

「あれっ?折っちゃった?」

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・・」

極めていた腕を離すと,立ち上がり、優美を見下ろす晴美。

「ぐぁ、ぐぁぁぁっ、ぐぁぁぁぁぁっっ・・」

左肩を押さえ、泣き叫びながらのたうちまわる優美。

「本当の地獄って、こういうものよ!」

晴美はそう言うと、優美の肩を踏みつけた。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・、いたああいっ・・・、やめてぇぇぇぇぇぇっ・・」

「痛いの?」

晴美は、不敵な笑みを浮かべながら足を下ろした。

 ボコッ、ボコッ・・

そして今度は、優美の肩を蹴りはじめた。

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・・・・」

泣きながら悲鳴を上げる優美。

「そろそろ楽にしてあげるね!」

晴美は、優美の髪を掴んで起こすと、コーナーポストめがけて走り出した。

「いやっ、いやぁぁぁぁぁっ・・・」

 ドカッ

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・・」

左肩をコーナーポストに叩き付けられて、絶叫しながら倒れこむ優美。

 

(あれっ?さっきまでの激痛が無くなっている。手がとれちゃったの?)

恐る恐る左手を見る優美。

(折れたと思っていたけど、脱臼だったんだ!

 今、叩きつけられた弾みで、元に戻ったんだ。

 こぉのやろぉっ!みてろよ!・・・)

 

声も無くコーナーにうずくまる優美に、近づく晴美。

(今度こそ本当に駄目みたいね!結構しぶとかったな! 

 後は,裸にひん剥いて・・・)

晴美は、優美の髪の毛を掴んで立たせると、こちらを向かせた。

 ドコッ

「んあぁぁぁぁぁっ・・」

優美の、渾身の膝蹴りが、晴美の股間に突き刺さった。

「あぁぁぁぁぁぁっ・・・」

晴美は、大事なところを押さえながら膝をついてしまった。

 ボコッ

優美は、晴美の横顔にローキックを放った。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

股間を押さえて、もだえ苦しむ晴美に、優美の脚が何度もうちおろされる。

 ドカッ、ドカッ、ドカッ・・

腹といわず、胸といわず、狂ったように晴美を蹴りつづける優美。

「・・・・・・・・・・・・・・」

そして優美は、悲鳴もあげられなくなった晴美に、足四の字をかけた。

 

「いやっ、ああぁぁぁぁぁぁぁっ・・」

「あんた、さっき、本気で折ろうとしたでしょ!私も本気でやってあげる!」

いつもの撮影の時とは違い、さっき晴美がかけたのと同じように、完全に極まる。

「ああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・」

「まだ折れないの?しぶとい脚ね!」

優美は、さっき晴美にやられたように、腰を持ち上げて更に締め上げた。

「いやぁぁっ、いたぁぁぁぁぃっ、やめてぇぇぇっ・・・」

晴美は、目から大粒の涙をボロボロこぼしながら哀願する。

「ギブは?」

「うっ、うっ、うっ・・・ギッ・・ギッ・・あぁぁぁっ」

しかし優美は、晴美がギブアップしそうになると、マットをバンバン叩いた。

「ギブは?」

「・・ギッ、ギブッ・・あぁぁぁっ」

またもやマットをバンバンと叩いて、晴美のギブアップを遮る優美。

ギブアップもできず、泣きながら耐えるしかない晴美。

(怖い、怖い・・!

 このまま本当に脚を折られちゃうの?いやっ・・)

「いやぁぁぁぁぁっ・・」

恐怖から、絶叫する晴美。

「まだ折れないの?丈夫な脚ねえ!」

優美は、四の字固めをとく様子は全く無い。

それどころか、晴美の脚を更に締め上げようとしている。

(痛い!痛い!・・・

 そうだ、孝之!なんで助けてくれないの?)

カッと目を見開いて、孝之をさがす晴美。

涙にかすんだ、晴美の目に映ったのは・・・・。

なんと、自分の棹をしごいている孝之の姿があった。

(えっ、うそぉぉ・・・なんで、なんでそんなこと・・・・)

ふぅっと意識が遠のいていく晴美。

 

しばらくして、晴美が失神しているのに気が付くと、優美は漸く、脚をはずした。

(やだぁ・・・あそこが食い込んでる・・)

優美は、汗で身体にぴったりと張り付いていてる水着を直し始めた。

そして水着の食い込みを直し終わると、晴美を見下ろした。

ピクリとも動かない晴美のレオタードも、汗でピッタリと身体に張り付いている。

(あれっ、なんで・・)

優美は、レオタードの胸のふくらみの頂上に、小さな突起があるのに気がついた。

そして視線を下にずらしていった。

(やだぁ、この娘もらしちゃったの?)

食い込んだ股間が、ほかの部分より濃い水色になっているのに気付いた。

恐る恐る、晴美の股間に指を当てる優美。

そこには、ヌルッとした感触があった。

(やだぁ、なんでぇ!)

そう思った瞬間、優美の股間も、汗とは違う湿り気を帯びているのに気が付いた。

(やだぁ!私まで!なんでぇ?)

「はぁ、はぁ、はぁ・・」

そのとき、孝之の荒い息遣いが聞こえた。

振り返った優美の視線の先には・・・

「あっ、こらぁ、ばかぁ!なに考えてるのよっ!この変態!!」

優美は素早くリングから降りると、孝之の顎にハイキックを放った。

「ああっ・・・」

苦痛に顔をゆがめながら、仰向けに倒れていく孝之の棹が爆発した。

 

このときになって、ようやく優美は、すべてを悟った。

(あのビデオを買う人は、女版アルティメットなんかを見たいんじゃない!

 女同士が、あられもない格好で取っ組み合い・・

 胸がはみ出し、股間がくいこみ、悲鳴を上げながら、互いに、悶え苦しむ。

 そんな姿が見たいのだ。

 

 『5分や10分の試合に、1万円も出す人がいるわけ無いじゃない!』

 優美の頭の中で、沙織の言葉が甦った。

 私たちは、AV女優と一緒だったんだ。)

 

優美は、ふと、時計を見上げた。

晴美と闘いだしてから,ちょうど、40分が過ぎていた。

 

2ヵ月後・・・

「きゃぁぁぁぁぁっ・・」

 ズドーン

リングの上で二人の少女が闘っていた。

攻められているのは、赤い水着を着た、長い髪の少女。

「あっ、あぁぁぁぁぁぁぁっ・・」

苦しそうに悲鳴を上げている。

スリーパーフォールドで攻めているのは、水色のレオタードを着けた少女。

レオタードの少女が、相手の耳元で囁いた。

(「優美、あなた返され方が、まだ、わざとらしいわよ!」)

(「しょうがないじゃないよぉ、晴美!そんなこと言うなら、本気で返すわよ!」)

「きゃぁぁぁぁぁっ・・」

「あっ、あぁぁぁぁぁぁぁっ・・」

リングの上には、いつまでも少女たちの悲鳴が響いていた。

 

                                (END)

 

 

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