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NEW321 日野町名 (ひのまちな)
【作者】不明。【年代】明治二四年(一八九一)書。【分類】地理科。【概要】異称『日野町』。横本一冊。「日野町・近在村名・大日本国尽・西京町名」と題した写本中に所収。滋賀県蒲生郡日野町の町名を集めた往来。「松尾町、石原町、横町、玉屋丁、下窪丁、堀端、御舎利丁、上久保丁、越川町、西ノ宮…」から「…大将軍、保知丁、栗屋丁、野田丁、岡本町、麻生町、裏町、藪下」までの四六町名を大字・六行・無訓で記す。後半の「近在村名」は「大谷、松尾、河原、西大路、二本木、音羽、北畑、八丁野…」以下一一一の村名・寺社名を列挙したもので、それに続けて、「淡海十三郡」「大日本国尽」「三都・広邑廿五ヶ所」「近江名所」「西京町名」を同様に列記する。
★「村名」「町名」の類は全国津々浦々にあったはずで、これだけでも数千種はあったであろう。



NEW322 書札文言指南 (しょさつもんごんしなん)
【作者】不明。【年代】江戸中期刊。[京都]升屋孫兵衛ほか板。【分類】消息科。【概要】異称『書札文言指南集』。半紙本三巻三冊。現存本は中・下巻二冊のみ。書簡用語や書簡に用いられる俗字・宛字や表現等の語注や正しい使い方を示した往来。中巻は「貴賤僧俗書札文言之評注」と題し、「態(わざと)」「御状」「此比者久敷不得御意候」「貴公様」「御前様」「如来命」「其旨先へ可申越候」「過分」など合計二五三語(途中からイロハ順に語彙を配列)を解説する。下巻前半部は「充字・正字之部」で、宛字と正字を並記し所々略注を加えたもので、言語并天地門・器財門・衣類門・食物門・魚類門・人倫門・支躰門・草木門・生類門の九門毎に掲げる。さらに後半部に、例えば「計(はかる)」と「量(はかる)」のような同音異義語を集めた「音相似読異字(こえあいにてよみことなるじ)之部」と、俗字・正字の区別を示して略注を付した「俗字・正字之部」を収録する。中巻は本文を六行・付訓、下巻は八行・付訓で記し、それぞれ注釈は割注形式で掲げる。
★本書は完本ではないが、消息用語を解説したユニークな往来で、新出の資料である。



NEW323 〈極楽伝来〉心体安楽丸 (しんたいあんらくがん)
【作者】不明。【年代】江戸後期刊。[大阪]小谷氏施印(半紙本)。【分類】教訓科。【概要】異称『〈極楽伝来〉心躰安楽丸』。半紙本または中本一冊。半紙本の表紙に「第一身を潤し心広く躰胖(たいゆたか)なるの妙薬/但し、小含一反を朝夕とも常に用いてよし」と記すように、薬種の効能書きに見立てて金言を箇条書きに列記した教訓書。「一、親かうは我子孫のため」「一、民をあはれむの君は日月のごとし」「一、民を貪るは芽出しの草を摘むがごとし」「一、忠義は末代のしゆつせの手本」「一、不忠・不孝は人面(にんめん)のけだもの」「一、朝夕の看経は其身の冥加の御礼」以下、半丁七行書きで合計四五カ条を記す。末尾を「右いづれも、そらにてのみこむべし。すべて大人・小児とも不断に用ゆるときは、無量の福徳を得て一生無痕(むきず)に諸人の気請(きうけ)よく、家業繁昌・子孫長久すること更に疑なし」と結び、「極楽は西とはいへどひがしにも きた道さぐれみな身にぞある」と「後生とて聞ば遠きに似たれども しらずやけふも其日なりしを」の道歌二首を掲げる。本書は文化一三年(一八一六)刊『子供早学問(童子早学問)』†(「一、忠義は末代の出世の手本」以下全四四カ条)と共通する文言も多く、類書にも『心安養丸』†『童子教訓』†等の写本のほか、『家運養生訓』『〈童子教訓〉孝行種』†『〈子供〉教訓早心学』†など数種が幕末期に刊行されたが、多くが『子供早学問』にならって編まれたものであろう。中本は半紙本と記載事項に小異があるがほぼ同様で、半紙本・中本ともに本文を七行・付訓で記す。なお、蔵板者を「家内和合所、其身野徳成」としており、特に中本(小泉本)には「静安舎施印」の墨書きもあり、石門心学との関連を思わせる。
★同じ書名で半紙板のものも所有している。多少異なるが、ほぼ同内容。同様の施本にも、色々とタイプがあって(当然、出版コストも変わってくる)、施主が好みのものを選んで印刷する事ができたのであろう。



NEW324 〈通用案書〉証文手形秤 (しょうもんてがたばかり)
【作者】十返舎一九作。月斎補。【年代】江戸後期刊。刊行者不明。【分類】消息科。【概要】中本一冊。「店請状」から「御関所手形」までの証文文例二〇通と「車切手案書」など商用文四通を収録した用文章。本文を小字・七行・所々付訓で記す。例文は他の類書とさほど違いはないが、「里子証文」の宛名を「子宝屋福右衛門」としたり、古屏風売買をモチーフにした「売上案文」の宛名を「目利屋買助」とするなど一抹の滑稽味を含ませてある。書名も「証文手形ばっかり」の洒落であろうか。なお、表紙見返に月斎補訂の「書法大概」を載せる。
★十返舎一九の往来物は最も多いが、いまだに新しいものが見つかる。



NEW325 〈諸人日用〉懐中手形証文集・〈年中重宝〉両点早引集・〈懐中重宝〉手紙案文集(かいちゅうてがたしょうもんしゅう・りょうてんはやびきしゅう・てがみあんもんしゅう)
【作者】不明。【年代】江戸後期刊。[江戸]梅月堂板。【分類】消息科。【概要】中本三巻合一冊。標記の書を順に上中下巻として一冊に合綴した用文章ならびに語彙科往来。類書は多いが、本書は三巻構成が特色。上巻「懐中手形証文集」は表紙に「諸国御関所」「如件」「かしく」の記事を載せ、本文は上下二段に分かち、上段にイロハ引きの日用語集(第一音がイロハ各音で始まる二字熟語六語に両点を付す)である「両点早引集」(上中下巻にまたがる)を掲げ、下段に「御関所手形」から「りゑん状」までの証文文例四通を収録する。中巻「両点早引集」は表紙に「難字」や「仁義礼智信の教訓歌」等を載せ、本文上段は「両点早引集」の続き、下段は「入置申一札之事」以下五通の証文文例。下巻「手紙案文集」は表紙に「十二月異名」と「上中下別の書簡用語」を掲げ、本文は上段が「両点早引集」の続き、下段が「年始状」以下八通の消息文例になっている。
★本書も似たようなものが頗る多い。