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NEW301 〈新撰〉女小学読本 (おんなしょうがくどくほん)
【作者】大須賀竜潭作。吉田庸徳校。巻菱潭書。【年代】明治七年(一八七四)刊。[東京]丸屋正五郎(耕養堂)板。【分類】女子用。【概要】半紙本二巻二冊。結婚前から結婚後まで女子一生の心を記した教訓書で、近世以来の封建道徳の焼き直しに過ぎない。上巻は男女の別、外出を控えること、女子教育の必要性と年代別教育法、父母への孝、婚姻、舅姑への孝養と柔順など、下巻は夫婦関係や夫への従属、婦道や女子の心持ち(貞節、不嫉妬、柔順等)、家政、三従、四徳、胎教、女子教育における母親の重要性などを説く。「天の人を生ずるや、同じ類ひに男子あり、亦、女子の別あれど、皆万物の霊長にて、いきとし生る物の中、是尊きものならん。されども、女子と生るゝものは男子とかわり、身の行ひ柔順なるを旨として、先、我家ニ在るときは、朝夕、父母の傍に教を請て能(よく)敬ひ、善事(よくつかう)ることを第一に…」で始まる本文を大字・五行・付訓で記す。
★明治初年の女子用往来も次々と見つかる。いったいどれほどの種類が刊行されたのか分からない程だ。



NEW302 〈新撰〉女用文章子持宝 (おんなようぶんしょうこもちだから)
【作者】千葉柳雫軒書。【年代】安永二年(一七七二)年初刊、天保四年(一八三三)再刊。[仙台]西村治右衛門(流輝軒)板。【分類】女子用。【概要】異称『女用文』。大本一冊。「年始乃文」から「平産の文・同じくへんじ」までの二四通を収録した女用文章。五節句・四季に伴う例文が大半で、末尾に婚礼・出産に関する例文を収める。本文を大字・五行・付訓の並べ書きで記す(末尾二通のみ散らし書き)。頭書には本文の一部の略注や「文書様の事」「源氏目録」「もく録の事」「折紙もく録の事」「色紙書様の事」「短冊書様の事」「懐妊慎の事」「七夕歌尽し」「小笠原流折方」「十二月の異名」を載せる。
★安永2年板も同じ書名であろうか。改題本の可能性も含め、今後究明していく必要がある。



NEW303 〈日用重宝〉女文章宝鑑 (おんなぶんしょうたからかがみ)
【作者】浅田春卿作・書。下河辺拾水・藤田求馬画。【年代】天明八年(一七八八)刊。[京都]山路義助ほか板。【分類】女子用。【概要】大本一冊。「初春の文」から「首途(かどいで)の文」までの女子消息文例三〇通を収録した女用文章。例文の多くが四季・五節句に伴うもので、後半に婚礼・出産・元服等の祝儀状、病気見舞状、弔状、花見誘引など交際上の文例を掲げる。本文を原則、大字・五行・付訓の並べ書きで記すが、散らし書きを数通含む。前付に「伊勢御」「筑紫琴・箏曲十三組事」「女子三従の道訓草(おしえぐさ)」「和歌短冊之図」「短冊したゝめやうの図」「万折形の図」、頭書に「三十六歌仙」「御改服忌令」「増補本朝年中行事」「双六打様秘伝抄」、巻末に「小袖飾り方」「片仮名」「十干十二支」を載せる。
★女用文章も似たような書名・内容が多い。



NEW304 女消息往来宝庫 (おんなしょうそくおうらいたからぐら)
【作者】蘭下人乞童作。鳥飼幸十郎編。【年代】文化一二年(一八一五)刊。[大阪]河内屋太助板。【分類】女子用。【概要】大本一冊。元禄一七年(一七〇四)刊『女文常盤の松』(蘭下人乞童作)の増補・改題本である享保一四年(一七二九)刊『〈児女躾方・万宝〉女訓文章真砂浜』のを再改題した女子用往来。本文は享保一四年板の首題「女文真砂の浜」を削除したほかは変化がないが、前付には異同がある。すなわち、寛保三年(一七四三)刊『女要訓和歌文庫』の前付の一部を取り入れ、前付の一部を後付に移動させるなどの手が加えられ、最終的に「赤染衛門家形之図」「摂津名寄八鳥和歌」「伊勢両宮二見の図」「御参宮みやめぐりの事」「婦六徳温公家話」「〈和歌詠方〉唐土三美人」「婦の五等」「紫式部以呂波歌」「名歌称号六女」「和泉式部」「小大進がさいはひに逢し歌の事」「俊成卿歌の事」「十干十二支」「一代守本尊乃事」「紋尽」「万積様の図」「万年暦大ざつしよ相生之事」「不成就日之事」「暦之中段をしる事」「こよみの下だんの事」「男女相姓之事并ニ歌」「やまとこと葉」「懐胎十月の大概」「三十六歌仙」「女教訓百ヶ条」「女中文の封様之事」「色紙短冊之書法」などが収録された。また、旧版前付の約半分を後付としたため、巻末に「蓬莱宮」「管弦の事」「五常・智恵・分別・頓知・才覚・利口教訓歌」「四季によつて事を作べき事」「掛物・軸物かけ巻の仕様」「立花砂物并生花」「鷄・鴉・鳩・蜘・蟻・蟷螂の弁」「女職人・女商人の図」「小笠原折形之図」を載せる。
★書名から「女消息往来」の一種と思いきや、全くの別内容であった。『女文常盤の松』も改題を繰り返した用文章である。



NEW305 〈百人一首・女文章〉女詩経宝書 (おんなしきょうたからぶみ)
【作者】定栄堂(鳥飼酔雅・吉文字屋市兵衛)編・序。桃渓画。【年代】明和五年(一七六八)序(教訓百ヶ条)。安永二年(一七七三)刊。[大阪]吉文字屋市右衛門板。【分類】女子用。【概要】大本一冊。「百人一首」「(女)教訓百ヶ条」「嫁女教訓書」等から成る大部な女子用往来。巻頭に「弾琴図(色刷り)」「京極黄門定家卿百人一首撰作図」「源氏物語絵合」や「横笛」「袈裟御前」「葵」「狭穂姫」「松浦佐夜姫」「橘諸兄」「梶原景末(季)妻」「赤染右衛門」「和泉式部」「紫式部」「馬内侍」「伊勢太(大)輔」「待賢門院侍女尾張」「P川采女正」「衣通姫」等の小伝、また、「四季の和歌」「四季の異名」「女躾方百箇条」「和歌二聖人歌」「絵馬之書様」「目録認やう」「三十六歌仙」「進物箱曲もの樽書付仕やう」「折紙認やう」「金銀包やう」「進物数書やう」「硯墨筆紙由来」「万積物之法」「色紙短冊寸法」「懐紙書やう」「短冊歌書やう并書初の歌」「七夕の歌・同色紙書やう」「歌書かなづかひ之事」「扇に物書法之事」「香道大意」「しうげんの次第」「和歌三神の図」「和歌をよみ習ふべき事」「三夕和歌の図」を掲げ、続けて本文欄に「百人一首」、その頭書に多くの賢女・名女小伝を集めた「女詩経」および「年中行事」を収録する。それに続けて本文欄に「教訓百ヶ条」とその頭書に「懐妊之事」「教訓歌絵抄」「日和の晴降を知事」「妙薬」を載せる。「教訓百ヶ条」は、『古今和歌集』序になぞらえた序文(明和五年)で「誠」の道や「智・仁・聖・義・忠・和」の六徳など女子教訓の概要と百ヶ条撰作の動機などに触れ、本文では第一条「一、子を教るの道、心の明徳を明らかにしてあしき道にいらざるやうに教ゆべき事」以下の百カ条を大字・五行・付訓で記し、各条に必要に応じて割注を施す。第二条で父母や乳母が行儀正しければ子供も自然とそうなることを掲げるが、その後は、起床後の身支度、両親や舅姑への朝の挨拶と給仕、食後の接待など、父母・舅姑への孝養に関する心得が続き、さらに、育児心得(胎教、乳母の吟味、『礼記』等に基づく年代別教育論)、婚礼、三従、女子が忘れるべきでない十大心得、家政や社交上の心得、女性の教養や身嗜みなどにも言及する。また、巻末の「嫁女教訓書」は『仮名教訓』(『続群書類従』巻九四六所収)を起源とする女子教訓で、「慈悲の心ありて人を憐み、むし・獣のうへ迄も露の情をかけ給ひ…」で始まる全一〇カ条を概ね散らし書き(一部小字の並べ書き)で認める。その頭書に「新院女歌仙」「集外歌仙」、後付に「百人一首よみくせ」「男女相性之事」を載せる。なお、現存本には刊年の記載がないが、『大阪出版書籍目録』によれば安永二年七月出願で、板元は吉文字屋市兵衛。
★書名は知っていたが、今回現物を初めて見つけた。「百人一首」の合本にしては書名が固い感じがする。「四書五経」を模倣した書名は女子用往来にも多い。写真左端は書袋である。本の厚さが6p近い枕本である。