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NEW246 いろは歌 (いろはうた)
【作者】谷川物外(谷河子康・君嶺・月歩)作・跋。久下(ひさか)平蔵跋。【年代】天明元〜三年(一七八一〜三)作。寛政八年(一七九六)跋・刊。[丹波国多喜(多紀)郡]久下平蔵板。【分類】教訓科(心学書)。【概要】異称『天明いろは歌』。半紙本一冊。丹波国氷上郡黒井村の心学講舎「伝習舎」を開いた作者が天明初年に細見元三の妻まちの求めに応じて彼女とともに詠んだ三種のイロハ教訓歌を一冊にまとめたもの。本来は伝習舎の「女中達の会輔(討論や座禅など心学修行の要)引き立てのすゝめ歌」として作られたが、近隣の社中からの要望が強く久下氏が上梓した。内容は、天明元年一二月作「いろはうた」(「いづくにもとまらぬ心とゞむるを、我執ともいひ凡夫ともいふ」以下五八首)、天明二年九月作「道分いろはうた」(「いつとなくたもとにつもる埃より、こゝろのちりぞなをまさりける」以下四八首)、天明三年一一月作「躾いろは歌」(「意地を立かならすとするその人は、固くいやしく我ばかりなり」以下五〇首)からなり、いずれも本文をやや小字・一〇行・付訓で記す。
★心学者と門下女性との合作という点が興味深い心学書である。



NEW247 いろは歌孝行鑑 (いろはうたこうこうかがみ)
【作者】不明。【年代】江戸後期刊。刊行者不明。【分類】教訓科。【概要】半紙本一冊。表紙とも全二丁の小冊子で、半丁に上下二段八行の界線を設け合計一六首ずつの教訓歌を配置したイロハ教訓歌。「(い)いつまでもたしなみおけよいろはうた、よむたびごとにみのとくとなる」以下の教訓歌四八首を掲げる。父母の恩や親孝行、謙虚な姿勢や慎み、家業出精、堪忍・辛抱などの処世訓を諭す。
★イロハ教訓歌には類似するものが多そうだが、その系譜について研究してみたい。


NEW248 万体用文章 (まんたいようぶんしょう)
【作者】山田賞月堂作・書。【年代】安政三年(一八五六)序。明治三年(一八七〇)刊。[大阪]河内屋茂兵衛板。【分類】消息科。【概要】横本一冊。従来の用文章が「変化自在ならしむるの書」ではないことから、上中下の替え文章(○は上、×は中、▲は下)を付して多彩な表現ができるように試みた用文章。「四季之部(上・下)」「見舞之部」「祝儀之部」「頼事之部」「雑用之部」「商家之部」の六部に分け、「年始祝儀状」から「為替取組状・同略返事」までの二一八通を収録する。本文を大字・六行・付訓で記す。各行の左側に替え文章(上中下の類句)や替え言葉(類語)を細字で注記する(本文が中輩向きであれば、上輩向けと下輩向けを注記)。巻末には「年中時候之詞」「〈真草〉偏冠旁構字尽」「十二月異名」「片仮名伊呂波」「願成就日・不成就日」「十干十二支」を掲げる。

★山田賞月堂の最晩年の往来物であろう。



NEW249 孝道訓 (こうどうくん)
【作者】倉田耕之進(聖純・藤原不退堂)作・書。【年代】天保一二年(一八四一)序・刊。【分類】教訓科。【概要】異称『報徳孝道訓』。大本一冊。『孝行和讃』†同様に七五調・美文体で親孝行の基本を説いた童蒙向け教訓書。「人ごとに、ひとに生れて、ひとの身で、人のこゝろで、あるならば、父と母との、恩をしれ、父は天なり、母は地ぞ、天なる父に、恩をうけ、地となる母に、身を託し、人のすがたを、うけ得たる…」と起筆して、子育てに伴う様々な苦労と父母の恩や孝行の大切さを縷々述べる。後半では、不孝の報いとしての天罰に触れ、孝行の心掛けについて述べ、孝心を世間の老人にも押し広げて実践するように諭す。本文をやや小字・一〇行・所々付訓で記す。巻末では、『文選』『孝経』等の経書や古歌から孝に関する言説を引いて締め括る。
★報徳教関係の教訓書だが、所蔵は少ない。



NEW250 文翰用文章 (ぶんかんようぶんしょう)
【作者】嵩文堂作。陽旭堂書。【年代】享和二年(一八〇二)刊。[江戸]奥村喜兵衛ほか板。【分類】消息科。【概要】半紙本一冊。「年始之状(年頭慶賀状)」から「歳暮之状(歳暮祝賀之品ニ添手紙)・同返事」までの往復消息文二六通を収録した用文章。五節句・四季・通過儀礼に伴う贈答の手紙が中心。本文を大字(追伸文等は細字)・概ね五行・付訓で記す。本書は巻頭・頭書・巻末の付録記事「日用書法」が比較的充実しており、巻頭には「書式寸法の式」「太刀目録の式」「竪目録の式」「注文の式」「封じやうの式」「連名の式」「書状脇付の式」「書留の式」「器財魚鳥書式(数量呼称)」「色紙短冊書様の式」「箱曲物の書様の式」「文字の起こり」「いろは片仮名起こり」「倭字の起こり」「男女五性名頭字」を、また、頭書には正月から一二月までの書簡用語「十二ヶ月詞」や消息に多用する「文章詞」、イロハ引きの「日用要字」、さらに、「国尽」「篇冠構尽」「商売往来」、また、巻末に「片仮名イロハ」「初心かなづかひ」「十干十二支」を掲げる。
★わずかに残った題簽(「翰」の字)の紙片と『江戸出版書目』の記載から書名を断定。