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NEW236 寺子式目制法 (てらこしきもくせいほう)
【作者】不明。【年代】文久三年(一八六三)〜元治元年(一八六四)書。【分類】教訓科。【概要】異称『寺子式目制法条々』。大本三冊。「一、天下泰平、国家安全、御武運長久、万民快楽の御世に、夫、人と生れて筆の道に不学は非人、是を盲目に縦(たとえ)たり」で始まる第一条以下全三五カ条および後文から成る寺子屋規則を手習本にしたもので、第一冊が文久三年一〇月、第二冊が文久四年三月、第三冊が元治元年五月と手習師匠が学習進度に応じて授けている。笹山梅庵作、元禄八年(一六九五)刊『手習新式目(笹山梅庵寺子制誨之式目)』†と類似する文言が散見されるため同書を参酌して編んだものであろう。内容は、まず文盲が人間として恥ずかしいこと、また、日月星明・仏神守護の恩、天子・将軍・国王の恩、師匠の恩、父母の恩、五穀の恩など八恩を知りそれに報いるためにも幼少からの手習い・学問が大切なことを説く。続いて、友との交際、学習態度、文具の扱い、身だしなみ、言動の慎み、懈怠・喫煙・飲酒の戒め、盗み・友人間の売買、家庭・寺子屋批判、危険な遊び、落書き、賭け事、道草等の禁止について諭す。本文を大字・三行・無訓で記す。
★『寺子制誨式目』を下敷きにした寺子屋規則は非常に多い。本書の場合はわずか35カ条の教訓を1年以上かけて学習(手習い)していることが分かる。



NEW237 納方手本 (おさめかたてほん)
【作者】不明。【年代】江戸後期書。【分類】社会科。【概要】異称『納方之覚』。大本一冊。年貢の納付に関する知識や心得を述べた往来。「一、御年貢之内、米ニ而納候義、寛文京升ニ而籾一俵ニ付玄米二斗八升可納事…」で始まる第一条以下一五カ条を大字・三行・付訓で記す。各種年貢率や年貢納付の方法や付随する費用などを略記する。末尾を「右之品々以書付地頭方可納所之、此外非分之儀有之候はゞ以書付急度可申出者也」と結ぶ。
★本書は現代風に言えば、租税教育教材であり、このような読み書き教材が存在したことも、江戸時代の往来物の多様性を感じさせる。


NEW238 ちかみしつけぐさ教訓書 (ちかみしつけぐさきょうくんしょ)
【作者】大山利兵衛書。【年代】慶応四年(一八六八)書。【分類】教訓科。【概要】異称『知加美躾草』『知嘉美躾教訓書』。大本一冊。主人と下人、親と子、舅姑と嫁の三者の関係における双方の基本的な心得を述べた教訓書。主人は仁心で下人に接し、不届きでも繰り返し指導するなど下人の使い方や下人の底意を見極める眼力が必要なこと、一方、下人はその家の風儀を尊重して奉公に出精し、常に主人に利するように振る舞うべきことなどを説く。また、親は子どもに悪い習慣がつかないように親自身が己を正すとともに良き友に近づけるべきこと、子どもは親孝行を第一とし、家業出精や余力学問を心掛けるべきことを諭し、さらに、舅姑は嫁を大切にして家風を教え家業を治めるように育てるべきことと、嫁は舅姑を実の親の如く大切にし、妻たる心得や貞女の道を守るべきことを述べる。「夫、人の主人としては仁をもつて下を労り、仮初(かりそめ)にも非道の当がひ成すべからず…」で始まる文章をやや小字・七行・無訓で記す。

★庶民の家内一統の人倫を説いた教訓書。



NEW239 教訓孝行・手習読書・銭遊三ヶ条いろは尽 (きょうくんこうこう・てならいよみかき・ぜにあそびさんかじょういろはづくし)
【作者】不明。【年代】江戸後期書。【分類】教訓科。【概要】大本一冊。表題のように親孝行、読み書き、銭遊びについて説いたイロハ教訓歌。「(い)いとけなき時より習ふよみかきは、こをもつてのちけふくんにせよ」から「(京)けふよりもあすお大事と親ししやう、おしゑることおあしくおもふな」までの四八首を半丁に三首ずつ、大字・六行・無訓で記す。見返の書き入れでは、手習師匠と思われる作者が父兄に向かって「本書を夜分の暇な折の慰みや教訓のために本書を著したので、本書に書かれた教訓を暗記させるのが望ましい」と諭す。〔小泉〕
★父兄へのアドバイスを掲げる点がユニークである。



NEW240 羽州庄内鶴岡御城下町尽し文 (うしゅうしょうないつるおかごじょうかまちづくしぶみ)
【作者】不明。【年代】文化一〇年(一八一三)頃書。【分類】地理科。【概要】大本一冊。「一筆染ちらしまいらせ候。いよ御機嫌能ふ目出度ぞんじまいらせ候。おまへと一体行ふ成ったわなみたいてい(並大抵)の事でなし。出したる迚もしやうことのなくおもいまいらせ候。まづわ御城下町々にたとへん事ならば、一生添って下さんなら翠り子も出て、末々は枝葉もしげる松原の恋の迷いは狐町…」で始まる女文に、鶴岡城下の町名を織り込んだ戯文。町尽を女性から男性に宛てた艶書形式で表現するのが独特で、末尾を「…松原さして栄えたる千秋万歳、仏神の恵みもあるや有難や、まづわ嬉しさ、目出度かしく」と結ぶ。本文をやや小字・九行・無訓で記す。
★恋文で綴られた地理科往来。