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NEW221 御領千秋万歳記 (ごりょうせんしゅうばんざいき)
【作者】菊地宅久作。鈴木安右衛門書。【年代】宝暦四年(一七五四)書。【分類】地理科。【概要】特大本二巻合一冊。岩城亀田藩城下の寺社など、出羽国由利郡(現・秋田県由利本荘市)の名所旧跡を紹介した往来。上巻は「抑、中郡公田万代不易之熟土、耕農業一粒万倍実、千秋富饒民家、猶以幸祥々精粗之地、千亀万鶴粧祝詞難及筆墨…」と起筆して、同郡の国土が豊かなことを讃え、城下を流れる河川や周囲の山々(虚空蔵山、諏訪山)など地形に触れた後、本荘藩主・六郷家に由来する大蔵寺や日住山の様子や滝津川など山間部の様子を記し、さらに城下周辺の町並みや寺社の風趣等を記述する。下巻は「抑、御領大主公御城羽州不二鳥海大嶺流清御下野、御武運御長久、御勇猛威遠近振、国家長久、治国平天下耀旭…」と書き始めて、藩士や領民の気質・風俗の正しいことや諸芸が盛んなことを述べ、続いて、六郷家菩提寺・永泉寺の風景や信仰の様子、また、漁業・海上交通にも恵まれていることを述べて締め括る。本文を大字・四行・付訓で記す。
★地名や名所については詳しく調べていないが、現在の由利本荘市周辺の地理を扱った手習本である。領主への恩や領内の自然風土の素晴らしさなどを強調する。



NEW222 〈御家〉消息集〈並詩歌〉 (しょうそくしゅう)
【作者】山角貞猶書。【年代】明和七年(一七七〇)刊。[江戸]須原屋茂兵衛板。【分類】消息科。【概要】異称『御家消息集』。特大本一冊。「青陽之佳慶不可有際限候…」で始まる新年祝儀状以下、比較的短文の消息例文一三通と詩歌六編を認めた手本。例文はいずれも四季折々の贈答文で、移りゆく四季の随感や行事(花見、連歌の会、茸狩り、十種香の会など)に伴うものが多い。本文を大字・三行・無訓で記す。
★新発見の往来で、本書の丁数など『江戸出版書目』の記述が正確であることが確認できた。



NEW223 春風帖 (しゅんぷうじょう)
【作者】橘千蔭書。【年代】文化二年(一八〇五)書。天保一五年(一八四四)刊。[津]篠田伊十郎板。【分類】社会科。【概要】特大本一冊。書名は冒頭の漢詩「春風暗剪庭前樹、夜雨偸穿石上苔」によるが、この七言詩に続けて「ほのぼのとあり明の月のつきかげに、もみぢふきおろすやまおろしのかぜ」の和歌一首を掲げる。以下、同様に漢詩一編と和歌一首を交互に掲げ、合計三一編、三一首を掲げた書道手本。本文を大字・三行・無訓で記す。

★千蔭の手習本が津で出版されているのには訳があるだろう。気になるが未調査。



NEW224 〈手紙〉用文集 (ようぶんしゅう)
【作者】寺沢政辰(友太夫)書。寺沢周盈跋。【年代】宝暦一一年(一七六一)刊。[江戸]須原屋文助板。【分類】消息科。【概要】横本一冊。「新年祝儀状」から「歳末祝儀の礼状」までの合計五五通を収録した寺沢流手本。ただし、通常の手本とやや異なり、新刊の問い合わせや書物の貸借など書籍に関する手紙が極めて多く(往来物や節用集その他の書名が数多く登場し、中には本代にも言及する)、筆者と板元との間に実際にやりとりされた書状を集めて手本とした可能性もある(あるいは書籍の広告を意図したものか)。このように大半が書物に関わる手紙で、そのほかは季節の贈答や挨拶・見舞い等であり、例文全体の構成にはかなり偏りがある。本文をやや小字・約一〇行・無訓で記す。
★往来物を始め、刊本の書名がかなり多く出てくる。



NEW225 〈上田〉書札文集 (しょさつぶんしゅう)
【作者】片山素俊(随雙軒)書。小野素玉(滕休)跋。【年代】安永七年(一七七八)跋・書・刊。[江戸]須原屋茂兵衛板。【分類】消息科。【概要】横本一冊。「青陽之御慶不可有尽期候…」で始まる新年祝儀状以下、公私にわたる武家用文章二二通を収録した上田流手本。四季折々の贈答の手紙や各種拝領物礼状、また、暇願い、公務のための出張、役替え、献上品披露、将軍家日光社参、昇進祝儀などに伴う公用文のほか、庭前の梅花披露の招待、玄猪祝儀の音曲披露、寒中見舞いなど私的な手紙の例文も載せる。本文を大字・四行・無訓で記す。
★今回初めて確認できた上田流の手本である。