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NEW206 諸職家名往来 (しょしょくかめいおうらい)
【作者】不明。【年代】文政一二年(一八二九)頃書。【分類】産業科。【概要】大本一冊。信州伊奈郡で使用された手習本。「蹴鞠師、仏絵師、絵師、打物目利、書画目利、料理方、研屋、金座、銀座…」以下当代の家職九〇種を列挙した往来。本文を大字・二行・無訓で記し、各行に概ね二種ずつ職業を列記し、最後を「…駕籠、乗物屋、鉄砲師、あら終」と結ぶ。後半に「隅田川往来」を合綴する。
★写本の手習本にはこのようなオリジナルの往来物をしばしば見かける。手習師匠自作の往来物はほとんど無尽蔵といってよいだろう。



NEW207 童訓歌 (どうくんか)
【作者】高山魯翁作。蓮堂瀬老人書。宮口高敬(愚山)跋。【年代】明治二年(一八六九)序・書・刊。[足利]蓮堂瀬老人板か。【分類】教訓科。【概要】異称『〈二十四孝〉童訓歌』。大本一冊。「孝徳之本、教之所生、上自一人、下至万民、孝道少虧、人?難寧、人無父母、不生体形…」で始まる四言一句・全四〇二句の文章で、孝行の基本と二十四孝の事跡を記した往来。冒頭で孝が徳の根本であって全ての者にとって孝道が欠けては人道を修めることができないこと、また、父母の高恩に対する孝道の必要や孝道が「家道長栄、子孫繁茂」の源であることなどを説く。続いて、大舜を始めとする二十四孝の逸話を順々に紹介し、最後に幼学のために二十四孝の概要を韻文に認め、童蒙に父母の恩を知らせたいという執筆動機に触れて締め括る。本文を大字・六行・無訓で記す。
★出版地が上毛と珍しい私家版の往来物。



NEW208 〈新編〉 用文章指南大成 (ようぶんしょうしなんたいせい)
宝永四年(一七〇七)刊。大本3巻3冊の下巻のみ。元禄二年(一六八九)刊『〈新編〉用文章指南』の改編・改題本。元禄板下巻末尾(「当流書札かきやう(書札書様之事)」以下)を削除し、新たに「手形之案文」を加え、その頭書に「名字尽」「衣服之類」「器財之類」「鳥類」などの語彙集と書簡作法関連記事を収録したもの

★本書のように、一つの用文章が次々解題されていく例は多い。記憶だけでは用文章の系譜を明らかにする事は到底困難である。例文の見出しや記事内容、半丁の字数やルビの有無などデータベースの構築が求められる。



NEW209 伊勢参宮名所 (いせさんぐうめいしょ)
【作者】不明。【年代】江戸後期書。【分類】地理科。【概要】大本一冊。『忠孝之部・国巡之部・参宮之部』と題した写本中に所収。「兼々示しまいらせ候いせ参宮の事、吉日をゑらみ思い立候べく候。先、しのゝめに立出て、東の空も白川や、け上(蹴上)の水、日野岡峠を越へ…」で始まる文章で、京都から伊勢参宮に赴く沿道の主な名所旧跡や各地の故事来歴、風趣などを記した往来。京都粟田口から日ノ岡峠を越えて山科、追分、逢坂の関、大津宿、草津宿、石部宿、津城下、松坂を経て伊勢神宮にいたるコースを紹介した後、「…流も清き五十鈴川、御酒の泉の尽やらで、尊き神の御誓、千世万代も限りなく、治まる御世に住る都の忝さ、漸々恙なく帰京致しまいらせ候。目出度かしく」と結ぶ。本文を小字・八行・付訓で記す。
★伊勢参詣を題材にした地理科往来は何種類もある。



NEW210 〈平野氏筆〉 真玉往来 (しんぎょくおうらい)
【作者】平野仲安(後松軒・松葉軒・松栄)書。【年代】正徳(一七一一〜一五)頃刊。[大阪]潔ョ(えぎぬや)平右衛門板。【分類】消息科。【概要】大本一冊。前半に消息文例、後半に「狸状」を収録した後松軒の大字手本。「年甫之御慶目出度申納候。仍当月中嘉例祈祷連歌張行仕度候…」で始まる新年連歌会の案内状から、事情があって恵日山涅槃像参詣が果たせなかったお詫びなどを述べた書状までの約一二通(途中数丁破損のため推定)を大字・三行・付訓で記す。内容は薬剤製法の秘密厳守、暦の中段など暦占関係、連歌修行についての教示、秘伝書の許可と閲覧心得、呉服物買い置きの奨め、高野山参詣と弘法大師の故事、風炉手前の準備など諸要件の文面が多い。後半の「狸状(狸少人之状)」は寛永二年(一六二五)書『古状揃』†等に収録されたものと同様で、「夫、当山之興、桓武天皇之御願所、延暦寺之末寺也。比叡山之内竹林寺与申山寺者、鎮護国家之道場、真言止観之霊地也…」と書き始め、比叡山竹林坊にて少人に化けた狸が打擲されたことへの怨みを綴った戯文である。
★原装題簽付きだが、本文の一部が数丁にわたって焼失するなど、破損が著しい。ともあれ、これまで全く存在が知られていなかった往来である。版元も珍しい。