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NEW171 江戸道中記 (えどどうちゅうき)
【作者】福田嶋太郎書。【年代】明治8年(1875)書。【分類】地理科。【概要】大本1冊。『江戸往来〈附録三書〉』と題した写本中に収録。「今度、始而東海道の名所旧跡・寺社荒々一見仕候。先、伏見深草、大津関寺、志賀唐崎湖水遙に見渡せば…」で始まり、「…日本橋の旅館に着、道中の辛苦を休め、一睡の枕の夢に故郷の友と面談の心地仕候。以委儀は帰国の節、緩々御物語り申上候。以上」と結ぶ文章で、京都から江戸に向かう東海道各地の名所旧跡等を記した往来。本文をやや小字・8行・無訓で記す。
★類書がいくつかありそうな往来物である。「江戸道中記」「集字(文章)」「江戸往来」「大阪状」の4本を収録する。単なる悪戯書きかもしれないが、表紙の馬の絵が何を意味するのか気になる。



NEW172 伊勢往来 (いせおうらい)
【作者】不明。【年代】明治2年(1869)書。【分類】地理科。【概要】特大本1冊。表題を欠くが末尾に「いせおうらい」と記載。「伊勢御参宮あそばしたく思しめし候に付、道中のあらまし書付候様との御事、あらあらながら認候て、御覧に入まいらせ候」と起筆して、京都から伊勢参詣に行く沿道の風景等を記した往来。京より日野岡峠・逢坂関を超えて大津に入り、勢田、草津、鈴鹿山、津、松坂を経て伊勢・二見浦に至る経路を紹介し、末尾を「…神垣の恵賢き御事を、幾万々年限りなく、忝うまいらせ候。めで度かしく」と結ぶ。本文を大字・6行・無訓で記す。
★写真左端が末尾の部分。「いせおうらい」と書かれている。本来はかなり厚い写本のようだが、悪徳な古書店が、往来物ごとにバラして数丁ずつ販売していたものと思われるものの1冊。



NEW173 羽黒往来 (はぐろおうらい)
【作者】阿部丹蔵書。【年代】文化(1804〜17)頃成立。文化11年(1814)書。【分類】地理科。【概要】異称『羽黒行』『羽黒詣』。大本1冊。享和3年(1803)、竜蔵作『羽黒参詣案内(羽黒山往来)』の本文を要約・改編した一連の『羽黒往来』の一つで類書中最古本。「近々羽黒江御参詣可被成候に付、初而御登山之由御道筋可申上候旨、致承知候…」で始まる文章で、庄内・鶴岡城下より羽黒山神社に至る沿道の名所旧跡や同社の景趣・縁起・名物等を記した往来。本改編したもの。羽黒三所大権現の故事来歴について触れた本文末尾を「…扨又、寛政八年辰之二月五日夜焼失、無間も、大堂再建出来仕候所、又候。文化八年二月十一日之明七ッ時焼失、労哉々々、絶言語候」と結ぶ。文化11年写本は「羽黒往来」「大和往来(竜田詣)」「手紙之文」の三本を合綴した写本で、本文を大字・五行・無訓で記す。同写本は、出羽国庄内飽海郡坂本新田村で使用された手習い本であり、成立年代に近い初期の写本として注目される。
★写真の家蔵本(文化11年本)は類本中の最古本である。左側の写真は「羽黒往来」の末尾と「大和往来」の冒頭部。



NEW174 因幡群村名 (いなばぐんそんめい)
【作者】横山安治郎編。毛利●書。【年代】明治13年(1880)刊。[鳥取]横山安治郎板。【分類】地理科。【概要】異称『因幡国郡村名』『郡村名』。大本1冊。因幡国の郡名・町村名・寺社その他地名を、邑美郡・岩井郡・法美郡・八東郡・智頭郡・八上郡・高草郡・気多郡の順に列挙した手本。大字・4行(1行約6字)・無訓で記す。表紙共紙の刷り表紙に簡易な大和綴じ。
★明治期には地方出版の往来物が多数登場したので、このような地理科往来もまだまだ見つかるであろう。



NEW175 和久嶌往来 (わくしまおうらい)
【作者】要蔵作・書。【年代】安政3年(1856)作・書。【分類】地理科。【概要】異称『和久島往来』。大本1冊。伯耆国倉吉周辺の神社仏閣・名所などについて記した往来。「斯、長閑に罷成候間、近辺の神社仏閣え詣申度、先以、産土八幡宮致参詣、武内之社、住吉明神末社々々を宮廻り礼拝・再拝事終、神楽堂にて一瓢之底を叩き千鳥足ニ而階を降り…」で始まる文章で、長谷寺、猫薬師、大岳院、三徳山、大山、東郷池、倭文(しとり・しずり)神社を始めとする名所旧跡を紹介する。例えば、倭文神社の場合、「一ノ宮大明神、下照姫尊にて、安産守護の御神也。氏子の産婦、岩田帯と言うことなく、別して婦人信心、誠を行時は難産と言事なく…」のように、寺社に関する故事来歴や結構・霊験などについて比較的詳しく述べるのが特徴。本文を大字・6行・無訓(ごく稀に付訓)で記す。現存本は作者直筆の稿本で、作者は倉吉河原町住人(手習い師匠か)。なお書名の「和久嶌」の由来は未詳。
★中国地方の珍しい地理科往来だが、名称の「和久嶌」については、研究不足で突き止められなかった。ご存知の方はぜひご教示いただきたい。