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NEW101 琵琶の海 (びわのうみ)
 【作者】居初津奈書・画。 【年代】享保11年(1726)刊。[大阪]大塚屋宗兵衛板。 【概要】大本3巻3冊または3巻合1冊。『享保14年書目』に作者名なしで『女筆琵琶海辺』と記載されているが、今回発見の家蔵本により享保11年に大阪で刊行されたことが判明した。巻頭口絵に描かれた上流階級邸内での女子の物読み・貝合の図は居初津奈の自画である。第1丁裏に3巻全体の目録があり、それによれば、上巻は「年の始に遣す文・返事」「物詣より帰て遣文・返事」「秋の夜人をよびにやる文」「おなしく礼の文」「縁付の方へ遣す文・返事」、中巻「歌学する人へ遣文・返事」「よそへ物かりに遣文・返事」「能書へ物頼に遣文・返事」「初て逢たる人に遣文・返事」、下巻「祝言の拵物尋にやる文」「おなしくさし図の文」「相伴頼し人へ礼文・返事」「日待に行て遣文・返事」「物見より帰て遣文・返事」からなる。本書の改題本に延享4年(1747)刊『女文章都織』があるが、これは見返と第1丁を削り、寺井重信画の挿絵など前付3丁を増補したものである。なお、享保11年板の跋文に「琵琶の海は洛西隠士居初氏幼より文筆に心をよせ、自筆を染て寿梓(あずさにちりばめ)、したしき女童にあたへられしを、しいて乞ひ求め、今世にひろむるものならんかし」とあり、居初津奈が女筆指南をしていた様子を伝える。
★以前から、上巻のみの端本が発見されており、時代も享保頃と推定されていたが、今回、初の完本を入手した。跋文も短い文章であるが、居初津奈が明らかに京都で女筆指南をしていたこと。しかも、その文面から推すと、享保11年には津奈が健在だったことが窺われる点でも貴重である。



NEW102 任槐帖并詩歌 (にんかいじょう ならびに しいか)
 【作者】蓮池堂文盟書。 【年代】文化9年(1812)書・刊。[江戸]川村儀右衛門ほか板。 【概要】大本1冊。「今度任槐之事勅許喜悦思召候。因茲為御怡以使者令申入候。御太刀一腰、御馬一匹令進覧候。宜御披露頼入候…」で始まる書状以下5通と、詩歌20編を綴った手本。
★同時代の書籍広告では、その存在が推定されていたが、今回初めて原本を目にした。特筆すべき特徴は見当たらないが、書籍広告と実際の出版との比較などには有益だろう。



NEW103 童蒙行儀状 (どうもうぎょうぎじょう)
 【作者】不明(山本氏書か)。 【年代】寛政8年(1796)書。 【概要】異称『行儀状』。大本1冊。「手習は諸芸之始、修身之元、生々世々随身の宝也。親々の慈悲を以登山仕、難有次第と厚可存。筆墨紙等費無之、仲間貸借停止、鳥目・刃物懐中すべからず…」と書き始めて、起床から就寝までの一日の生活の中での行儀作法全般を記した往来。起床後の身支度や礼拝・挨拶、寺子屋への登校時の挨拶や態度、学習中の心得、学問出精のすすめなどを説き、「寸陰を惜み、無懈怠励、未熟無之様可抽、出精之状、仍如件」と結ぶ。大字・6行・所々付訓で記す。
★某古書店の店頭に山積みされた和本の中から発見。聞き慣れない書名ゆえ二束三文で購入した。



NEW104 〈四民通用〉町人書状鏡 (ちょうにんしょじょうかがみ)
 【作者】増田春耕作・序。竹村一玄(晴雲堂)書。西川竜章堂書(天保2年(1831)再板)。 【年代】文化7年(1810)序・刊。[京都]梅村伊兵衛ほか板。また別に[京都]吉野屋仁兵衛ほか板(天保2年再板)あり。 【概要】半紙本1冊。町人から士農工商別に出す消息例文を分類・集成した町人向けの用文章。「士之部」は「年頭状」から「家移祝儀状」までの各種祝儀状20通、「農之部」は「植付之歓状」「豊年之祝状」「農家江祭呼に遣す」の3通、「工之部」は「誂物注文遣す」から「奉公人肝煎を頼む」までの注文状・依頼状等11通で、これに対して「商之部」は「為替手形遣す状」から「祝言文章」までの66通と圧倒的に多く、売買・取引、出店祝儀、種々依頼、また社交、法事、遊興・行楽、不幸・災害等に伴う例文を載せる。本文を大字・5行・付訓で記す。目録上欄に「書初之詩歌」「七夕之詩歌」、巻末に「京町尽」「大日本国尽」「日本二十二社」を載せる。
★本書が文化7年初刊であることは以前から確認されていたが、初めて初版本を手にした。再板本では西川竜章堂筆となっているが、初版本の筆者は『当用手習状』『本朝茶経』の筆者でも知られる竹村一玄であったことも初めて知った。



NEW105 〈寺子〉読書千字文 (てらこどくしょせんじもん)
 【作者】不明。 【年代】江戸後期刊。[和歌山]阪本屋大二郎ほか板。 【概要】半紙本1冊。真草二体・両点付きで記した千字文。同題の往来に『〈真艸両読〉寺子読書千字文』(葛西水玉堂編、寛延2年(1749)刊)があるので、本文はその模倣と思われるが、体裁は全く異なる。
★巻末広告に、同じ板元の往来物が並んでおり、『本朝千字文』『世話千字文』『三字経』『泰平江戸往来』『商売往来』『実語教童子教』『小野篁歌字尽』などが見える。