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NEW086 万代用文大全 (ばんだいようぶんたいぜん)
【作者】中村翠雲堂・松亭金水書。 【年代】明治三年(一八七〇)再刊。[信州]高美屋甚左衛門(慶林堂)板。 【分類】消息科。 【概要】異称『万代用文章』。中本一冊。天保一四年(一八四三)刊『〈当時通用〉万代用文章』の求板・改題本。「年頭披露状」から「悔申遣す文」まで七八通と「金子借用証文」〜「御関所手形」の一一通の証文文例を掲げる。本文を大字・五行(証文類は六行)・所々付訓で記す。
★江戸で出版された往来物が、さらに信州で再版された例。江戸板は時々見かけるが、信州板は始めて見た。



NEW087 〈頭書絵抄〉実語教・童子教 (じつごきょう・どうじきょう)
【作者】不明。 【年代】元禄年間(一六八八〜一七〇三)以前刊。[大阪]作本屋八兵衛(正本屋八兵衛・本屋八兵衛)板。 【分類】教訓科。 【概要】半紙本一冊。『実語教・童子教』†頭書絵抄本の最古本と思われるもの。本文欄に『実語教・童子教』本文を大字・七行・付訓で記し、頭書に本文要語の略注と挿絵を施す。刊年の明らかな類書として元禄二年(一六八九)刊『実語教童子教絵抄』†が知られ挿絵・略注とも概ね同様だが、元禄板は本文要語と頭書略注との対応をイロハの記号で示したいわゆる「イロハ引き」であるのに対して、本書は対応関係を全く示していない。また、元禄板では挿絵が途中から別々の丁にまたがるなど、改編を示唆する箇所がいくつか見られ、その他の体裁や板元の活動時期から考えて、本書は元禄板に先行するものと思われる。なお、元禄板に見られるような「実語教」作者考や「童子教」作者考は本書には収録されていない。
★浄瑠璃本に見られる大柄の題簽が良い。刊年不明だが、「実語教・童子教」頭書絵抄本では最古の部類と思われる。



NEW088 文化用文大全 (ぶんかようぶんたいぜん)
【作者】青木臨泉堂(源至誠)書。 【年代】文化一一年(一八一四)頃刊。[江戸]北嶋長四郎ほか板。 【分類】消息科。 【概要】異称『大全文化用文章』。半紙本一冊。文化一一年刊『文化用文章』†の後半部に「夷講廻状」以下三八通を追加した増補版。うち末尾三通(「正月の文」「おなじく返事」「三月の文」)は散らし書きを含む女文である。増補部分は疱瘡見舞い・火事見舞い・店開き・湯治帰宅祝いなどの吉凶事に伴う例文や、得意引き合わせ・借金主断り・荷物送り手形・田植助け合いなどの諸用件の例文で、前半部同様に本文を大字・五行・付訓で記す。また、増補部分の頭書に「諸国御関所」「日本大川」「大日本国名并郡附」「万物数量字尽」と、「店請状」以下の諸証文文例、「七夕の詩歌」までを載せる。なお、本書の冒頭数通と後半部(増補部分)を抽出した改編本『〈嘉永新版〉大宝用文章大成』†が嘉永三年(一八五〇)に大阪書肆・敦賀屋九兵衛より刊行されている。
★従来、書籍広告ではその存在に気付いていたが、原本を始めて見た。一冊の往来が増補されるなどして、様々なバリエーションとなって展開することが多いだけに、往来物の把握は難しい。



NEW089 万宝用文章大成 (ばんぽうようぶんしょうたいせい)
【作者】不明。 【年代】江戸後期刊。[大阪]敦賀屋九兵衛板。 【分類】消息科。 【概要】異称『増補書札便覧』。半紙本一冊。「年頭祝儀状」から「別家悦状・同返状」までの八三通を収録した用文章。前半が一般的な四季用文や吉凶事または諸用件に伴う例文で、後半に「商人日用懸合之部」と題して「新店商引合(しんみせあきないひきあい)状」以下の商用文を収録するのが特徴。本文を大字・五行・付訓で記す。消息例文集の末尾に「竪文・横文・封文之次第」を掲げ、さらに「借用申金子之事」など一〇例からなる「証文手形鏡」を収録する。目録の頭書に「文章詞」「書状発端上下」「返事上下」「書状書留上下」、また「証文手形鏡」の頭書に教訓文を掲げる。
★本書の類書は見つかっていないが、明らかに先行書の存在が想定される用文章である。きっと先行往来物の改題本か何かであろう。



NEW090 万体用文章 (まんたいようぶんしょう/まんていようぶんしょう)
【作者】山田賞月堂作・書。 【年代】安政三年(一八五六)序。明治三年(一八七〇)刊。[大阪]河内屋茂兵衛板。 【分類】消息科。 【概要】横本一冊。従来の用文章が「変化自在ならしむるの書」ではないことから、上中下の替え文章(○は上、×は中、▲は下)を付して多彩な表現ができるように試みた用文章。「四季之部(上・下)」「見舞之部」「祝儀之部」「頼事之部」「雑用之部」「商家之部」の六部に分け、「年始祝儀状」から「為替取組状・同略返事」までの二一八通を収録する。本文を大字・六行・付訓で記す。各行の左側に替え文章(上中下の類句)や替え言葉(類語)を細字で注記する(本文が中輩向きであれば、上輩向けと下輩向けを注記)。巻末には「年中時候之詞」「〈真草〉偏冠旁構字尽」「十二月異名」「片仮名伊呂波」「願成就日・不成就日」「十干十二支」を掲げる。
★山田賞月堂は安政頃に多数の往来物を書いているが、本書は撰作年代から刊行年まで少々開きがある。体裁からは新刻のような気もするが、先行書があったかもしれない。