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NEW076 万宝用文章大成 (ばんぽうようぶんしょうたいせい)
【作者】不明。 【年代】元禄一五年(一七〇二)刊。[京都]野沢半兵衛ほか板。 【分類】消息科。 【概要】大本三巻三冊、または二巻二冊。現存本は下巻のみだが、その内容から三巻程度の構成だったと思われる。下巻には「借家請状」から「跡式譲り状」までの証文文例九通を収録するため、上巻または上・中巻は消息例文であろう。本文を大字・五行・付訓で記す。頭書等に種々の記事を載せるが、特に頭書を二段(本文と合わせると三段)にしたいわゆる「三階板」形式になっているのが特徴で、下巻前付一丁は上段に「花こしらへやう・七つ道具の事(図解)」、中段に「砂の物(立花図)」、下段に「初心立花仕様(記事)」を掲げる。また、本文上欄の頭書(上段・中段)には「いろはの初り」「茶の湯初心抄」「五山の沙汰并国尽」「名字づくし」「為替手形の事」「不通手形の事」「家買手形の事」など証文手形関連の記事を載せ、裏表紙見返しに「元禄御改服忌令」を収録する。
★3巻3冊本のうちの下巻のみ。元禄期に登場したと思われる「三階板」(頭書が2段+本文欄)形式になっているのが特徴。



NEW077 筆用文林富貴蔵 (ひつようぶんりんふうきぞう)
【作者】礒島玉照子作。 【年代】元文三年(一七三八)刊。[京都]長村半兵衛ほか板。 【分類】消息科。 【概要】大本一冊。消息用語(類語)や書簡作法などの豊富な関連知識を伴う用文章。現存本には数丁の落丁があるが、表紙見返しの目録によれば、収録書状は「年始につかはす書状」から「家督継たる人へ遣状・同返事」までの六一通(四季折々の手紙や吉凶事、諸用件の手紙等)で、本文を大字・五行・付訓で記す。巻頭に「硯筆の始」「十二月異名」等の記事を載せ、頭書には極めて多くの類語(書簡用語)を掲げるほか、巻末に「同意書替上下の品」「証文手形之案紙品々」「書札文字つかひ高下」「進状脇付高下」「返状脇付高下」「苗字づくし(イロハ引き)」「世話難字づくし(イロハ引き)」「月の異名」「一字月のいみやう」「毎日のいみやう」「五節供のいみやう」「七十二候」「十干異名」「十二支いみやう」を付す。
★残念ながら一部落丁があり状態もあまり良くないが、新発見の往来物のため購入。



NEW078 〈長雄〉 手紙文集 (てがみぶんしゅう)
【作者】長雄耕雲(栢梁堂)・佐藤対雲書。 【年代】安永二年(一七七三)書・刊。[江戸]山崎金兵衛板。 【分類】消息科。 【概要】大本一冊。親しい個人間でやりとりする四季贈答の手紙などを綴った長雄流手本。「天気が回復したら野辺へ出て草摘みをいたしましょう」といった四季折々の交際を主題とする手紙一九通を収録する。その多くが自宅への訪問を請う誘引状で、草摘み、十桃≠フ会、茶会、両吟歌仙の会、紅葉見物、庭園鑑賞、雪見など春夏秋冬それぞれにふさわしい題材が選ばれている。本文を大字・三行・無訓で記す。以上が長雄耕雲の筆であり、末尾に佐藤対雲筆の詩歌数編を付す。
★長雄流の書道手本は宝暦〜寛政頃に相当数刊行されているが、未発見のものもまだまだ少なくないであろう。



NEW079 用文章手形鑑 (ようぶんしょうてがたかがみ)
【作者】不明。 【年代】江戸中期刊。[大阪]糸屋市兵衛板。 【分類】消息科。 【概要】大本一冊。標記書名は現存本の表紙書き入れによる。前半に用文章、後半に「手形鑑」を収録した往来。表紙見返しが「手形鑑」の目録になっており、前半部・後半部の体裁が明らかに異なることから、先行の証文文例集(柱「手形鑑」)に、別の用文章(柱「用文」)を合綴したものであろう。「用文」の部は、「改春之御慶賀、何方茂重畳申納候…」で始まる「新年祝儀状」から「歳暮祝儀状」までの消息文例一三通で、諸用件の文例が主。「手形鑑」は文化一四年(一八一七)刊『当流手形鑑』と全く同じで「預り申銀子之事」から「金子為替手形之事」までの証文文例一九通を収録するが、本書の方が先の出版であろう。「用文」「手形鑑」とも本文を大字・五行(「手形鑑」最終丁のみ七行)・付訓で記す。また、巻頭(柱「要字」)には書簡用語を集めた「書札用字集」や「謡番組文章」を始め、「王仁来朝」など挿絵を含む記事若干を載せる。
★挿絵が比較的多い用文章。後半部の単行刊本があるように、前半部のみ抜刷本も存在したと思われる。



NEW080 〈帝王〉 歴代五言 (れきだいごげん)
【作者】高見沢茂(子公・三驚・過矣斎・天籟逸人)作。 【年代】明治六年(一八七三)刊。[東京]大和屋喜兵衛(宝集堂)板。 【分類】歴史科。 【概要】半紙本一冊。「神武人皇祖、発日向東征、奠都於橿原、遂平定中原…」で始まる漢字五字一句、全五三六句からなる文章で、神武天皇から明治天皇までの歴代天皇を中心に各時代の出来事を綴った往来。末尾では「米国来使節、始開横浜港、与五国条約、七卿走長門、毛利戦幕兵、今上諱睦仁、政権帰朝廷…」と開国後の状況や大政奉還について述べ、「歴代百廿二、綿々無有窮」と万世一系たる皇統を讃えて結ぶ。本文を大字・五行・無訓で記す。
★同一著者の『沿革五言』は時々見かけるが、本書は初めて見た。巻末広告に『沿革五言』とともに掲載されている。