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NEW031 北国名物往来
[年代等] 満次郎書。文化8年(1811)1月書。
[サイズ] 大本1冊。
[内容等] 「抑是は北国第三の湖水、鹿嶋の潟に年久鋪住居する海老雑喉とは我事なり。しかるに今度、関友より此方の由来を委しく尋ねきかんと御飛脚を到来致せしに、先ず、鯉・鮒をはじめいづれも小雑喉にいたるまで御召にまかせ江戸表へ馳下り評定所え罷出、潟の謂を委細にもふしあげんと、おのおの小舟にうち乗て、これは安永四年如月上旬、鹿嶋の潟をうち立て…」と筆を起こして、同地の地名と物産について記した往来。
●書名では数種の『北国名物往来』が知られるが、本書はいずれとも異なる新出本である。購入時は刊本の写しとたかをくくっていたが、実際に手にしてみると予想に反して新発見の往来物だった。


NEW032 婦人日用字尽文章
[年代等] 高井蘭山作。橘正敬書。文政2年(1819)3月(増補)刊。[江戸]和泉屋市兵衛板。
[サイズ] 大本1冊。
[内容等] 奥付から類推するに、寛政11年5月刊 『〈御家〉女諸用文章』の後半部に文政2年に増補して刊行した 『婦人日用玉の緒』(慶応大学蔵というが未見)の後半部と思われるもの。丁付けは丁度 『〈御家〉女諸用文章』に続く、「百十五」丁から始まっており、家蔵本の装丁では出版当時の中綴じが残っており2巻2冊であったと考えられる。書名からすると一見「女用文章」のような女子消息例文集のようにも思われるが、実際は異なり、冒頭で女子第一の技能が「裁縫」、次に身につけるべきは「読み書き」であることを述べ、続いて「絹布反物衣類」以下の日用語や、書初詩歌・七夕詩歌、文の封やう・色紙短冊懐紙書など、さらには豊富な図解とともに、小笠原流折形、小笠原流結び方、女中五性名の字について記す。
●題簽がないのが残念だが、非常に特色のある女子用往来であり、女子教養全般にわたる内容から「社会型」に相当するものであろう。目録で書名を見たとたんに未見の書であると確信し注文したが、図星であった。


NEW033 〈寺沢流〉商売往来絵抄
[年代等] 寺沢氏(政辰か)書。享保17年(1732)5月刊。[江戸]鶴屋喜右衛門板。
[サイズ] 大本1冊。
[内容等] 堀流水軒作 『商売往来』の絵抄本。『商売往来』本文を大字・四行・付訓で記し、頭書に「商家の用字」「呉服物の字」「衣類の字」「獣字づくし」「鳥字づくし」「魚字づくし」「貝類の字」「野菜字尽」「料理の文字」「海藻の字」「諸道具の字」「普請の文字」「材木の文字」「草木字尽」「人の身の字」「病の文字」「人の名目」「親類の文字」「大日本国尽」「篇冠字尽」「名頭字尽」「名字づくし」など数多くの語彙関連記事や挿絵を収録したもの
●似たような往来はいくつか目にしてきたが、本書は初めて見るものだった。大ぶりの文字と同様に大きめの題簽が時代を示しており、状態はやや悪いが風格のある往来物である。


NEW034 〈長雄〉初学文章
[年代等] 田村耕章書。文化2年(1805)書・刊。[江戸]大羽屋弥七ほか板。
[サイズ] 大本1冊。
[内容等] 準漢文体書簡と、詩歌、仮名文(末尾数通)を認めた長雄流の陰刻手本。内容的には特筆すべきものはないが、書名として存在が知られていながら今まで原本が確認されていなかった往来物である。
●ひょっこり立ち寄った古書店で、値段が付けられていない往来物数点が目に止まり、その場で値付けをしてもらって購入したもの。近代の用文章はやや自信がないが江戸期のものなら、4800冊の所蔵本の中に入っているかどうかは一目で判断できる。仮に持っていても 「少し様子が違う」と感じた場合にはなるべく購入することにしている。多くの場合、その勘は当たっている。


NEW035 〈啓蒙〉開化の歌
[年代等] 小川錦水(徳治)作・書。明治6年(1873)6月刊。[大阪]松村九兵衛板。
[サイズ] 大本1冊。
[内容等] 文明開化の時勢にふさわしく学問に務め、家業に出精し、家内が和合し…といった、皇国民としての義務や目標を七五調の美文体で綴った往来。
●これもちょっと立ち寄った古書店で見つけたもの。良書を探すのは足で稼ぐことが大事だと考えている私は、なるべく古書店の近くに来たら足を延ばすようにしているが、こんな機会に掘り出し物を見つけることも多い。足元を見られて高くふっかけられたらなるべく買わないようにしているが、それとてもその品物による。「10年探しても見つかりそうにないものは、なるべく買う」というのが大体の私の基準である。