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【青言2018-03】 事業主報酬制度のゆくえ

 毎年、全青色は「個人企業の事業主報酬制度創設」を要望している。
 自民党小規模税制確立議員連盟は小規模企業振興を図る税制措置の創設に向けた決議として「個人事業主の勤労性所得を正当に評価し、給与所得控除の適用を認めた事業主報酬制度の早期実現を図る」と決議している。
 しかし平成30年度税制改正大綱では、検討事項として見送られた。役所言葉として「検討する」ということは、実施しないことを意味していると聞く。
 もともと、「個人企業の事業主報酬制度を認めよ」という要望は、法人成りすれば社長報酬が認められ、社長報酬に対しては給与所得控除が認められる。青色申告をしている個人企業は奥(生活費)と店(事業所得)を分離しているのだから、法人成りした企業と実態は変わりはない。だから青色個人事業者にも事業主報酬を認め、事業主報酬に給与所得控除を適用せよという主張であった。この要望が政治力によって「みなし法人課税制度」が実現したが、消費税導入にあたって不公平税制として廃止の憂き目をみた。今はない。
 紙数がないので省略するが、平成30年度税制改正大綱の検討事項を読むと、「個人企業、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るため・・・・・」とあるように、「個人企業の事業主報酬制度」は、常に、個人企業、同族企業、給与所得者の三者のバランスを前提に論じられている。
 ということは「給与所得控除」をどうするかというかという観点に立って議論を進めるということだ。
 現行の給与所得控除額は一般サラリーマンの給与収入を得るための必要経費としてはかなり過大であるとして、この度の税制改正で65万円の最低限度額を55万円に減額し、差額10万円を基礎控除額に上乗せした。
 もれ聞くところによれば、将来はサラリーマンの所得税制はアメリカの所得税制に近づけていくという。
 アメリカのサラリーマン所得税制は源泉徴収はするが年末調整はない。すべて申告で税金の清算をする。その際、給与所得の計算は経費実額控除と概算控除の選択をする。
 日本の給与所得に対する給与所得控除は最低限度額55万円に引き下げられたが、将来はさらに縮小されるということだろう。当然、法人成りの効果も減少する。個人事業主報酬の要望価値も減少する。個人企業振興策について小規模企業税制確立議員連盟の先生方と熟議する必要があるのではないか。

【青言2018-02】 新しい酒は新しい革袋に盛れ

 「人生100年時代の国家戦略―小泉委員会の500日」を読みました。小泉進次郎を中心に若手議員20人が「2020年以降の経済財政構想小委員会」に審議参画し提言をまとめた裏話を含めた記録の一本でした。
 その中に、ベンチャー企業がトヨタのような大企業にまで成長した成功物語、サクセスストーリーが日本の第一創業期。バブルがはじけて、人口減少、人生100年時代、そして人工知能やIOTやロボットの急速な進化に仕事の在り方から生き方まで、すべてが、完全に構造変化する、2020年以降を第二創業期に入ったと指摘しています。
 第一創業期の高度成長の波に乗って、全国で100万人の会員を抱えるまで成長した青色申告会も、今や50数万人に減少、役員の高齢化、後継者不足、財政縮小、環境の急速な変化はまさに第二創業期に入ったと思います。
 青色21ネットワーク研究会のホームページをリニューアルしたのも時代の変化に即応して「変わらねば」という思いからです。
 第一創業期の成功体験は、もはや通用しないように思います。若い世代、新たな活躍の場を求める人たちに対する人材への投資、「人づくり革命」が急務のように思います。ホームページのリニューアルは新しい革袋をつくったつもりです。どんな新しいお酒が盛りこまられるか、正念場を迎えたように思います。

【青言2017-12】 青色申告特別控除の見直しについて

@所得税の見直しにより基礎控除がα万円引きあがる(38万+α)ことを踏まえて、基礎控除との合計額が現行と同額(103万円)になるよう、青色申告特別控除額を調整(65−α万円)。
A同時に、税務手続きの電子化を推進する観点から、現行の「65万円控除」の要件に加え、「電子帳簿保存」又は「e-Taxによる電子申告」の要件を満たした場合には、65万円の青色申告特別控除を認める(基礎控除の引き上げと合わせて控除額がα万円増加)。
B「10万円控除」は変更しないが、事業所得に係る適正な申告に向けた取組について今後検討。
 上記の青色申告特別控除の見直し(案)が主税局から「内密に」と全青色に示され、全青色は11月末、緊急正副会長会議を開きその意見を踏まえて、内藤会長が財務省主税局に出向いた。主税局の担当課長は「給与所得控除65万円を下げるので青色申告特別控除65万円も下げる」と言った。
 青色申告特別控除65万円は青色申告記帳水準向上のための特別措置であって、給与所得控除と同一に取り扱うことは問題だ。しかも、e-Taxによる確定申告を行えば青特65万円をそのまま認めるということは、趣旨が一貫していないとういう誹りを免れないうえ、青色申告普及育成に青色申告会の支援協力を得て行政効率化をすすめる国税庁の施政方針と全く相容れない。
 青色申告特別控除65万円の削減を一方的に押し付ける主税局、「個人企業の事業主報酬実現を決議した」小規模議連の先生方はどう説明するのだろうか。全青色執行部の責任問題に発展しかねない。