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姫君を救った楠正行
  (樹下先生作。浦川公左画。嘉永2年(1849)刊 『今昔道之栞』。[大阪]河内屋太助ほか板)
小野小町も及ばないとされた絶世の美女・弁の内侍(ないし)に恋した男がいた。時は南北朝時代、男の名は高師直(こうのもろなお)。師直は、弁の内侍の伯母君を装って、「私の命ももはや長くはありませぬ。見納めに、ぜひ姫君にお目にかかりたくぞんじます。道明寺でお待ち申し上げます」と、偽の従者とともに嘘の手紙を送った。
 弁の内侍は、手紙の通り、その従者の輿に乗り、道明寺へ行くと、「伯母君は支障があって、住吉におられますので、ぜひ住吉までお越し下さい」という。姫君(弁の内侍)は不審に思い、「この輿を戻してください」と頼んだが、従者は言うことを聞かず、足早に住吉へと向かった。
 だが、途中で、南朝の忠臣・楠正行(くすのきまさつら)の一行と遭遇するはめとなり、姫君拉致の陰謀が発覚してしまい、ついに、姫君の危機を救った。
*これは江戸時代の話ではありませんが、このような話が江戸庶民に好まれ、通俗教訓書によく出てきます。