表題に「この浦舟(うらぶね)小児ばなし」とあり、左右に「寅壬(正しくは「壬寅」であろう)七月/新板大小」と記し、下部に大砲と槍などの挿絵を入れる。月の大小を示した白抜き字に続いて、下記のように、同音で始まる狂歌を一首ずつ掲げる。
 この一枚刷りが出された壬寅七月というのは、天保13年(1842)で、この年7月24日に、従来の異国船打払令を改め、薪水・食料を外国船に給与する「薪水給与令」が出された。
 この一枚刷りの末尾では、「御為政に恐れて帰る異国船、御代泰平に波も治まる」と、幕府の力を誇示し、異国人を嘲笑する内容になっているが、当時の日本が置かれた国際情勢とアヘン戦争後の海外列強の日本進出の危惧に対する幕府の狼狽ぶりは、庶民にはどのようにうつったであろうか。
 そんな思いを抱かせる歴史的資料であろう。
 なお、「浦船」とは日本近海を往来する異国船を指す。


[本文抄録] *適宜漢字をあててある。
 正(小) 諸大名外国の船を止めかね、後の話はさても長崎
 二(大) 日本を茶にしてきたが毛唐人、水が荒くて旨旨(幼児語)のめまい

 …(中略)…

 霜(十一月・小) 下々の武芸も知らぬ人までも、あめりか船の鉄砲話で
 極(十二月・大) 御為政に恐れて帰る異国船、御代泰平に波も治まる


■原寸 縦156mm×横421mm