「近世女文における「かしこ」──女筆手本類からの一考察」・注

*一 「かしこ」の語源などについては、真下三郎『書簡用語の研究』(渓水社 昭和六十年)三八三頁以降に詳しい。
*二 本稿で述べるように語源的には「かしこ」であるが、近世に入ってからは「かしく」が一般的になり、近代に及んで再び「かしこ」が使われるようになり今日に及んでいる。引用文は連面体の字形を考慮して翻字するよう努めたが、活字本(翻刻)からの引用は活字本に従った。また、近世の刊本・写本は概ね「かしく」としたが、明らかに「かしこ」と読める場合に限って「かしこ」と翻字した。
*三 『日本国語大辞典』一巻(小学館 昭和五十四年)三五五頁。
*四 『日本随筆大成』第二期十六巻(吉川弘文館 昭和四十九年)二八四頁。
*五 『書簡用語の研究』三八四〜三八五頁。
*六 原本四七丁オ。前掲、平凡社・東洋文庫なら『貞丈雑記』第三巻六〇頁。ここでは原本により翻字。
*七 『貞丈雑記』に載る『室町殿日記』からの引用は、この「れうかた」以下に約四〇字の省略がある。詳しくは、佐竹昭広ほか編『室町殿日記』(京都大学国語国文資料叢書十六・十七 臨川書店 昭和五十五年)上巻十五頁を参照。
*八 『古事類苑』文学部一(吉川弘文館 昭和四十二年 *明治三十四年神宮司庁版の複刻)四四五頁。
*九 『書簡用語の研究』五四七頁。
*十 原本第三巻二十六丁ウ。
*十一 『書簡用語の研究』三九五頁。
*十二 中有。〔仏〕四有の一。衆生が死んで次の生を受けるまでの間。期間は一念の間から七日あるいは不定ともいうが、日本では四九日。この間、七日ごとに法事を行う。中陰。(広辞苑)
*十三 なお、ここでの香奠は必ずしも金銭を意味するものではない。
*十四 『女初学文章』の場合、弔状には「あなかしこ」を用いているが、他方、生死に関わる重病人への見舞状にもかかわらず「めでたくかしこ」を使用している。
*十五 『新増 女諸礼綾錦』三巻三冊本の下巻に所収(二巻二冊本には「女諸通用文章」はない)。
*十六 今日知られる板種には明暦板系統として、明暦三年松会板(外題『江戸 新用文章』)、明暦頃刊松会板異板、明暦頃刊異板(少なくとも三種。うち一本の外題は『かはり 新板用文章』)、寛文六年秋田屋板(外題『新板用文章』)、そして、これらを大幅に改めた改題本の江戸前期刊『新判 新用字尽』の七種、また寛文板系統として、頭書注釈付き村田屋板、頭書注釈付き異板(外題『大字 新板用文章』)、頭書絵抄付き村田屋板、頭書絵抄付き異板の四種が見られ、このほか明暦板系統の改題本として『筆得要文春秋袋』(江戸中期糸屋板)、また本書の影響を受けた用文章として正徳二年頃刊『万物用文章』、宝暦四年刊『新撰容文筆玉往来』などが知られる。
*十七 この「義経含状」は寛文板系統では削除されたり、「国尽」と置き換えられたりした。
*十八 『書簡用語の研究』三八七頁には、「恐々かしく」の書止の例(毛利輝元書簡)が見える。
*十九 『享保以後 大阪出版書籍目録』(大阪図書出版業組合編 昭和十一年 *昭和三十九年複刻)九頁によれば享保十七年十二月出願であり、同書の出願年はほとんどの場合刊年を意味すると考えられる。
*二十 用文章以外の往来物などでは「穴賢」の書止を置く例は見られるが、近世の用文章では極めて特殊である。