拙著等紹介(柱)
研究歴・拙著・拙稿

平成19年7月現在

【研究業績】
1-資格・免許
 学術博士(金沢大学)、(学位規則第4条第2項に基づく論文博士)、平成11年3月25日
 従来、資料の稀少性も相俟って研究が不十分であった「女筆手本類(近世の女性書道手本)」について数多くの原本を発掘し、その概念や分類法を整理し、女筆の特徴を多面的に位置づけた。その結果、17世紀中葉から18世紀中葉までの100年間を「女筆の時代」と規定し、女筆手本類の普及と変遷を明らかにした。この基礎的研究によって、江戸時代のジェンダー史、書誌学、書道史、国語学史に精度の高い資料的基盤を提供した点が高く評価された。

【学位論文】 近世の女筆手本─女文をめぐる諸問題─

 単著/平成10年3月
 現存する女筆手本類を網羅的に調査し、その類型化を試み、女筆手本類に特有な「散らし書き」等の書法や女性書札礼なども多角的に検討し、全体像を明らかにした。特に、約100年の「女筆の時代」の終焉期(18世紀半ば)に女性筆に男性筆が取って代わる現象や、庶民化していく女性書札礼の特徴などを指摘した。

2-その他
 往来物を主とする古典籍蒐集、データベース・デジタル化への協力(東京学芸大学/つくば大学/国立国会図書館)
【東京学芸大学】 (平成8〜10年)
 屈指の往来物コレクション(望月文庫)の貴重資料の選定と、同コレクションにない往来物の補充やデジタル化等について助言。
【つくば大学】 (平成11〜12年)
 往来物コレクションとして有名な乙竹文庫本の貴重資料選定やデータベース化に協力。その成果が『乙竹文庫目録・文学編一・二』 (平成12・13年)としてまとめられた。
【国立国会図書館】 (平成14年〜)
 同ホームページの「データベース・ナビゲーション・サービス」に、小泉個人が運営するホームページ「往来物倶楽部」(http://www.bekkoame.ne.jp/ha/a_r/indexOurai.htm)で公開している「女筆手本解題」「三次市立図書館所蔵往来物データベース」「往来物解題」「女子用往来物総目録」の4つのデータベースを提供(リンク)して欲しいとの依頼があり、これに協力。

【主な著書・学術論文等】
(著書)
1) 女子用往来刊本総目録

 共著/平成8年2月/大空社
 江戸時代に刊行された女子用往来物と主として女子教育用に編まれた「百人一首」のほとんどを収録した目録。女子用往来と「百人一首」をともに目録化した点が特長。原本調査延べ2500件と150点の文献資料により合計約3000種の版本を掲載した戦後初の目録。原本調査段階で他者の協力を得て小泉が全体を編集。

2) 稀覯往来物集成 (全32巻)

 共著(編集・解題)/平成8年7月〜平成10年1月/大空社
 『往来物大系』全100巻(約750点所収)の続編として、日本有数の往来物コレクションの中から稀少な往来物218点を影印収録した文献。企画・編集は小泉が単独で行い、解題を石川松太郎氏・丹和浩氏と分担執筆した(全32巻中11巻の解題を小泉が担当)。

3) エンカルタ百科事典99 (CD-ROM版・「庭訓往来」項執筆)
 共著(解説執筆)/平成10年11月/マイクロソフト社
 CD-ROM版の百科事典のうち「庭訓往来」項を執筆。「庭訓往来」の本文の一部を「高校生レベルで理解できるように」紹介するとともに、「庭訓往来」の成立や特徴を略述した。

4) 女筆手本解題
 単著/平成10年12月/青裳堂・日本書誌学大系80
 江戸時代に刊行された女性の書道手本である「女筆手本」と、女性用の手紙文例集たる「女用文章」について、現存本または記録等に残る非現存本を年代順に列挙して解題を施した初めての文献。合計337点の解題と多くの図版を掲載。従来の論考が扱ってきた女筆手本類が約20〜30点に過ぎなかったため、これを徹底的に調査し、その類型化を試みた。

5) 江戸時代女性文庫・補遺「女筆手本類」 (全12巻)
 単著(編集・解題)/平成11年12月〜平成12年10月/大空社
 大空社編集部時代に企画した『江戸時代女性文庫』全100巻の補遺として、近世の女性用書道手本47点を年代順に影印収録したもの。女筆期から男筆期への女性書道手本の変遷を辿るとともに、近世女性の教育・言語・書簡作法等の好資料。全ての編集と解説を担当した。

6) 浮世絵に見る江戸の子どもたち
 共著(翻字)/平成12年11月/小学館
 くもん子ども研究所が新たに発掘した約500点を含む約700点の子ども浮世絵により、江戸時代の子どもをめぐる文化・教育・育児の源流を模索した文献。このうち浮世絵に書かれた詞書き(解説文等)の翻字(活字化)を全て担当。特に往来物や寺子屋教育については浮世絵解釈などの助言も行った。


7) 往来物解題辞典 *3769項目中3368項目(89.4%)を執筆
 共著(編著)/平成13年3月/大空社
 中世から近代までの現存する往来物(版本・写本)をほぼ網羅的に調査し、詳細な解題を施した本邦初の辞典。国内の主要な往来物コレクションをほとんど(延べ約3万点)調査し、解題項目全3769項目について、作者・年代・板元・判型・異称・概要・所蔵先・翻刻または影印資料について詳細に記載した往来物の基本文献。合計5000点以上の図版も掲載。

8) 女大学資料集成 (全20巻+別巻1)
 単著(編集・解題 *別巻のみ共著)/平成15年10月〜平成18年7月/大空社
 江戸時代から明治初年までに出版された『女大学』関係資料60点を影印収録した集成。別巻には、監修者・石川松太郎氏始め11人の論文を収録するほか、全巻の「語彙分類索引」と「女大学関係年表」を収録。全巻の編集作業を担当したほか、別巻に私の講演録「「女大学」の世界」を収録した。

9) 江戸時代 諸国海陸旅案内 (古地図ライブラリー10)
 単著(翻字・現代語訳)/平成16年10月/人文社
 江戸時代の旅行ガイドブックである『日本船路細見記』と『諸国道中たび鏡』の2冊を全文翻字し、現代語訳を付したもの。
 
10) 女子用往来と百人一首 (「百人一首万華鏡」所収)
 単著/平成17年1月/思文閣出版
 国際日本文化研究センターで、国文学者を始め各分野の研究者が「百人一首」について発表・討議した成果をまとめたもの。「女子用往来と百人一首」は、江戸時代の教育の中で「百人一首」が果たした役割を、特に女子用往来から論じたもので、女子用に編まれた読み書き教材(往来物)などの出版物約3000点のうち1200点が「百人一首」である事実などを紹介し、女子教育の中でどのように使われ、遊びとして親しまれたか、また、出版された「百人一首」が多様なニーズに応え得るように非常に多彩であったことなど、庶民生活に深く浸透していた事実を紹介した。

11) 近世蔵版目録集成・往来物編 (全3巻+別冊1)
 単著(編集)/平成17年8月〜平成18年1月/岩田書院
 蔵版目録が登場し始める江戸時代中期(正徳4年)から明治初年(明治4年)までに刊行された往来物741種の巻末書籍広告(蔵版目録)を、年代順に影印で収録。別冊として、6900余の書名と、460余人の板元名の索引を付した。未刊資料や未発見資料、また、刊本の著作者や概要、また販売価格などが分かり、埋もれた資料の発掘や新たな板元の発見につながる有益な資料を提供。
 
12) 江戸の教育に学ぶ (NHK教育テレビ「知るを楽しむ・歴史に好奇心」テキスト)
 単著(10月分)/平成18年10月/日本放送協会
 第1回 「子どもはご近所の宝物」、第2回 「往来物という教科書」、第3回 「女のたしなみ教えます」、第4回 「本当は面白い数学の話」 の4回シリーズで出演、テキストは番外として「おわりに」を付す。寺子屋教育や往来物など江戸時代の庶民教育を中心に、江戸の子育てや、読み・書き・算盤、また、女子教育、女筆手本など女性の教養にも触れる。
 
13) 近世育児書集成 (全10巻)
 単著(編集・解題)/平成18年12月/クレス出版
 江戸時代から明治初年までに出版された代表的な子育て書50余点を影印収録した集成。全て家蔵本の資料を使い、所収文献ごとの解題を付した。

14) 「父子の移ろい─江戸の「父」と子育て (「母子絵百景─よみがえる江戸の子育て」所収)
 単著/平成19年2月/河出書房新社
 江戸時代は、妻に「胎教」の重要性を教えるのも夫の役割と考えられたほど、家庭教育における父親の責任が重かった。「母子」という言葉よりも「父子」という言葉が多く使われたが、近代以降は「母子」という言葉の方がよく使われるようになってしまったなどの例をあげて、家庭教育における父親の存在の違いに触れたほか、当時の往来物などでは子どもの心得と親の心得が同時に説かれることも多く、その一例として小川保麿の『養育往来』の一節を紹介、さらに、わが子のために父親が徹夜をして書いた教科書ガイド 『実語教童子教註』に見える、子どもの学習に向き合った父親の例も取り上げた。

(主要な学術論文)
1) 教訓書に見る近世の再婚観と託静の『再縁訓』 (「江戸期おんな考」第4号所収)

 単著/平成5年9月/桂書房
 「貞女二夫にまみえず」という建前とは裏腹に現実世界では日常的であった近世の再婚に触れつつ、仏教的見地から再婚の心得を説いた託静の『再縁訓』を紹介し、さらに『衣食訓』『老人訓』の二著作とあわせて、世俗倫理を説いて社会教化を目指そうとした近世浄土宗の改革の方向性に触れた。

2) 『和俗童子訓』から『女大学』へ─「新女訓抄」からの考察─ (「江戸時代女性生活研究」所収)
 単著/平成6年5月/大空社
 『女大学』の成立に関する従来の定説に対して、貝原益軒の『和俗童子訓』から直接『女大学』が生まれたのではなく、その間に「新女訓抄」(『女用智恵鑑』所収)が介在すること、さらにこの事実から『女大学』の作者が、大阪書肆・柏原屋清右衛門と推定されることを具体的根拠によって初めて明らかにした論考として高い評価を得た。

3) 『女大学』と柏原屋清右衛門 (「江戸期おんな考」第5号所収)
 単著/平成6年9月/桂書房
 『女大学宝箱』の成立に関する上記論文の仮説とともに、『大坂本屋仲間記録』に見える『女大学』の重板・類板事件を紹介しつつ、『女大学』が柏原屋清右衛門にとっていかに重要な看板商品であり、『女大学』が柏原屋の販売戦略をシフトさせる契機にさえなったことを述べた。

4) 江戸期の婚礼関連書 (「江戸期おんな考」第6号所収)
 単著/平成7年9月/桂書房
 江戸前期から後期にかけての婚礼関連書12点を取り上げ、それぞれの概要を述べつつ、諸本相互の影響や模倣、時代的な特色や、「庶民化・通俗化」の流れをたどった。

5) 近世刊行の女筆手本について (「江戸期おんな考」第7号所収)
 単著/平成8年9月/桂書房
 私の女筆研究の初期の論文。その後多数発見したため、大分修正が必要だが、「女筆」と称する一群の手本類が一時期に集中的に刊行された事実とその背景について論述し、女筆の心得や、女筆手本類の類型、女筆手本類の筆者を紹介した。また、最初の総合的な「女筆一覧」や女筆手本図版の数々を掲げた。

6) 居初津奈の女用文章 (「江戸期おんな考」第8号所収)
 単著/平成9年9月/桂書房
 江戸期の代表的な女筆手本筆者でありながら、その事跡がよくわからない居初津奈の作品群を初めて明らかにし、それらによってわかる彼女の生涯の片鱗を辿った。従来、作者不明だった貞享5年刊『女文章鑑』が居初津奈の作品であることを指摘し、同書を含む主要作品を紹介しながら、彼女の作品の独自性について詳述した。

7) 近世女文における「かしこ」─女筆手本類からの一考察─ (「江戸期おんな考」第9号所収)
 単著/平成10年9月/桂書房
 女性書札礼の一つ「かしこ」の用法を中心に考察した論考。「かしこ」の由来や用法の変遷について述べ、特に弔状における「かしこ」の用法を各種文献の例文を比較しながら検討した。また、男性が使用する準漢文体書簡での「かしこ」の使用例(「恐惶かしく」など)が江戸初期の用文章に見られたが、後には「かしこ」がもっぱら女性専用の書止になっていったことを述べた。

8) 女筆手本類の筆者としての津奈と妙躰 (「日本の教育史学」第42集所収)
 単著/平成11年10月/教育史学会
 江戸時代の女筆手本類の変遷(女性筆から男性筆へ、手本から用文章へ)の特徴と、女筆手本の筆者として最も重要な長谷川妙躰と居初津奈の事跡と作品を初めて総合的に紹介した論文。手習いの書体そのものに関する研究が従来の盲点をついた、しかし手習い研究の原点とも言えるものであり、女筆の社会的意味に及ぶ検討が高く評価された(審査票)。

9) 近世女性礼法の源流─『女房筆法』と『女房進退』を中心に─ (「江戸期おんな考」第11号所収)
 単著/平成12年10月/桂書房
 現存最古の体系的な女性礼法書である『女房筆法』『女房進退』の成立について従来の説を修正して、16世紀初頭成立の『宗五大艸紙』から『女房筆法』が生まれ、その後『女房進退』が成立した過程を推定。また、室町期から江戸時代初頭に至る女性礼法書の流れを概観した。

10) 続女大学─『女大学』に似て非なる「異種女大学」─ (「江戸期おんな考」第12号所収)
 単著/平成13年10月/桂書房
 これまで伝本が発見されていなかった、『女大学』の出版訴訟の記録にも出てくる、曰わく因縁付きの『続女大学』を初めて発見したため、本書を全文翻字するとともに、『女大学』との形式面での類似性の反面、内容面では異質性も目立つことを指摘し、明治初年まで多数出版された「異種女大学」の中でも異彩を放つ『続女大学』の位置を示した。

11) 艶書と散らし書き (「江戸期おんな考」第13号所収)
 単著/平成13年10月/桂書房
 家蔵の古文書の一つ、江戸末期の信州高井郡下木嶋村住人・源之助が保管していたと思われる一枚の艶書(恋文)を読み解きながら、艶書と散らし書きの関係や艶書本の使われ方、さらに手紙を散らし書きにする意味や散らし書きの書法などを紹介した。

12) 近世庶民の生涯指針と随年教法 (「江戸期おんな考」第14号所収)
 単著/平成14年10月/桂書房
 江戸時代にしばしば見られる各年代別教育論について考察した論文。商人の一生を説いた『九々往来』や、人生60年の計を述べた『四徳配当抄』を始め、江戸期の随年教法関連記事から、読み・書き・算盤・諸礼・職業(家事)・諸芸の学習開始年齢や各教育論の比較検討を試みた。

【学会および社会における活動等(研究発表・講演・マスコミ関連)】
平成 7年11月、朝日新聞・愛知版記事「津田正生作結婚マニュアルです」に取材協力
平成 8年 7月、東京学芸大学附属図書館で往来物について講演、以後、同館の往来物データベース化に助言
平成 8年10月、海越出版社・月刊誌『歴史海流』に編集協力(資料提供)
平成10年 6月、日本教育史学会・第409回例会で「近世における女筆手本について」の研究発表
平成10年10月、教育史学会・第42回大会で「女筆手本類の筆者としての津奈と妙躰」の研究発表
平成11-12年、つくば大学附属図書館の古典籍(乙竹文庫等)データベース化に協力(データ提供および助言)
平成11年 9月、朝日新聞・埼玉版記事「(塙保己一)類従の世界」に取材協力(群書類従のデジタル化)
平成12年11月、朝日新聞・埼玉版記事「庶民の生活史研究に手引き」に取材協力(『往来物解題辞典』刊行)
平成14年4-5月、尾島町満徳寺資料館・特別展「女往来物の世界」に協力(助言・出展・展示指導・図録作成等)、併せて「女往来物と女筆手本」「散らし書きの読み方」の演題で2回講演
平成14年10月、国立国会図書館の要請により、同ホームページの「データベース・ナビゲーション・サービス」に、私のホームページ「往来物倶楽部」(http://www.bekkoame.ne.jp/ha/a_r/indexOurai.htm)が提供する4つのデータベース(女筆手本解題/三次市立図書館所蔵往来物データベース/往来物解題/女子用往来刊本総目録)のリンク公開協力
平成14年11月、教育史学会・第46回大会コロキウムで「往来物における絵図資料の活用について」の発表
平成14年12月、桂の会主催・近世女性史講座で「女筆の時代と女性たち」の講演
平成15年 2月、国際日本文化研究センター・シンポジウムで「女子用往来と百人一首」の講演
平成15年10-11月、東京学芸大学附属図書館・企画展「江戸の教科書─往来物展」に助言・協力
平成16年 1月、朝霞市博物館・くらしと文化の講座で「江戸の学びと子育て」の講演(併せて展示協力)
平成16年 2月、福生市郷土資料館・特別展「江戸の教科書」に助言・協力
平成16年 3月、学研『図説江戸の人物254』に編集協力(資料提供)
平成16年 4月、小峰書店『子どもの人権』に編集協力(資料提供)
平成16年 6月、JF共済機関誌『漁協の共済』のインタビュー取材に協力
平成17年 1月、(社)全日本かるた協会・百人一首文化講演会「庶民生活と百人一首」の講演
平成17年 3月、東北電力広報誌『白い国の詩』特集「文字を学ぶ民衆」編集協力(資料提供)
平成17年 6月、武庫川女子大学関西文化研究センターフォーラムにて「百人一首と女子教育」の講演
平成17年 7月、江戸東京博物館・ボランティアガイド研修で「魅惑の往来物」の講演
平成17年 8月、ポプラ社『家族で楽しむ日本の行事としきたり』に編集協力(資料提供)
平成17年 9月、東京出版『高校への数学』2005年9月号に編集協力(資料提供)
平成17年10月、日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会雑誌『gcj』のインタビュー取材に協力
平成18年2-3月、江戸東京博物館・企画展「江戸の学び─教育爆発の時代─展」に助言・協力(資料提供等)
平成18年 3月、江戸東京博物館・同企画展関連講座で「江戸期女性の読み・書き・そろばん」の講演
平成18年4-6月、太田市満徳寺資料館・特別展「女大学の世界」に協力(助言・出展・展示指導・図録作成等)、併せて「女大学の世界」の講演
平成18年 5月、中田秀夫監督・映画作品「怪談」制作時に助言(平成19年秋公開)
平成18年 5月、NHK総合テレビ「江戸の頭脳に挑戦!」に助言・協力(資料提供)
平成18年 7月、江戸の女性史フォーラム(平成17-19年度科研費基盤研究「近世日本における女性のライフサイクルと地域社会」主催)・東京会場で「女筆の時代と女性たち」の講演(併せて展示協力)
平成18年 8月、NHK総合テレビ「江戸の頭脳に挑戦!その2」に助言・協力(資料提供)
平成18年10月、NHK教育テレビ「知るを楽しむ・歴史に好奇心」の「江戸の教育に学ぶ」4回シリーズに出演、併せてテキスト執筆
平成18年10月、れんが書房新社・季刊誌『里海』に編集協力(資料提供)
平成18年10-12月、宮城県大崎市旧有備館・秋季展「江戸の学びと往来物」に協力(助言等)
平成19年 1月、(株)スリーボンド発行『URC』116号のインタビュー取材に協力
平成19年 1月、小学館雑誌『サライ』2月号に編集協力(執筆・助言・資料提供)
平成19年 2月、青春出版社『図説 見取り図で読み解く 江戸の暮らし』に編集協力(資料提供)
平成19年 2月、浦和北東ロータリークラブ例会で「『親子茶呑咄』に学ぶ経営者の心」の講演
平成19年 4月、フランス国立極東学院主催ワークショップ「文字を見る、絵を読む─日本文学とその媒体」で「往来物と文字教育」の講演
平成19年 4月、NHK教育テレビ「知るを楽しむ・歴史に好奇心」の「日中二千年、漢字のつきあい」に協力(資料提供および助言)
平成19年4-6月、太田市満徳寺資料館・特別展「寺子屋の世界」に協力(助言・出展・展示指導・図録作成等)、併せて「寺子屋の世界」の講演
平成19年 5月、川崎市小児科医会創立40周年記念式典で「江戸の子育て─現代へのメッセージ─」の講演
平成19年 6月、NHK教育テレビ「この人この世界」に協力(助言・資料提供)
平成19年 6月、小学館・日本ビジュアル生活史『江戸のきものと衣生活』の編集協力(資料提供)
平成19年 6月、立正佼成会川口教会で「江戸の子育て」の講演
平成19年 6月、天理教少年会本部発行育児雑誌「さんさい」のインタビュー取材協力
平成19年 6月、千葉市多田屋・教養講座で「九十九里の手習師匠が書いた子育て書」の講演
平成19年7-8月、福井県文書館・企画展「ふくいで学ぶ─地域の手習いと教科書」に編集協力(助言・出展)

【往来物研究の経緯 (学位授与までの研究歴)】
○昭和62年4月〜 往来物の蒐集と研究を開始。初めは、往来物や石門心学書等の通俗教訓書などの原典を数多く模写して、児玉幸多編『くずし字解読辞典』『くずし字用例辞典』を頼りにそれらを読破するなど、くずし字読解力の養成と近世教育思想・町人思想の理解に重点に置いた。幸い職場が神田古書店街に近く、和本その他の資料蒐集が十分にできた。蒐集した資料の理解を深めるため、石川謙編著『日本教科書大系・往来編』『日本庶民教育史』『寺子屋』を始めとする日本教育史関連や、川瀬一馬著『日本書誌学之研究』など書誌学関連の基本図書を学んだ。

 また、この間、大学時代から続けてきたボランティアグループでの勉強会や、教職を志す大学生・学卒者を中心とした教育問題全般の研究会に参加し、次のような発表を行った。
  昭和62年5月頃  「常盤潭北『野総茗話』について」
  昭和62年9月    「『和俗童子訓』に見る「随年教法」について」
  昭和62年12月  「大門宿・会田寺子屋に見る庶民教育の姿」
  昭和63年11月  「往来物との出会い」について」
  平成2年8月    「江戸時代の子育て──寺子屋の徳育について」

○昭和63年1月〜全国青色申告会総連合が発行する機関誌『青色申告』(月刊・当時約90万部発行)の編集担当となり、同年6月より「あきんど・マインド」の新企画を設けた。これに伴い、往来物とともに江戸時代の町人思想・石門心学等に関する研究を並行的に行い、次のような記事を執筆した。
  昭和63年6月号  「老舗の要諦──始・中・終」*商人教訓書
     同  7月号  「忘れられたベストセラー『商売往来』」*往来物
     同  9月号  「轍を踏まぬが成功の秘訣」*商人教訓書
     同 10月号 「立身出世は精魂次第」*商人教訓書
  平成元年8月号  「『我津衛』を読む」*心学書
     同 11月号 「ならぬ堪忍するが堪忍」*心学書
  平成2年3月号  「正直が金のなる木の根本ぞ」*心学書
     同  7月号  「倹約が支えたゼロ・サム社会」*心学書
  平成3年2月号  「家訓『店教訓家格録』を読む」*家訓
      同  5月号  「手島宗義の経営哲学」*心学書

○平成4年1月〜大空社編集部に入社。以来、種々の近世資料を企画・編集・執筆。その間、公にした著作・論文等は次の通り。
  平成6年5月 「『和俗童子訓』から『女大学』へ──「新女訓抄」からの考察」(江森一郎監修『江戸時代女性生活研究』所収)
  平成6年5月〜『江戸時代女性文庫』(全100巻。平成10年11月完結)のうち次の巻を執筆。
           第3巻「娘教訓和歌百首」ほか解題 *平成6年5月
           第7巻「鏡袋」ほか解題 *平成6年5月
           第9巻「女雑書教訓鑑」ほか解題 *平成6年5月
           第20巻「女筆手本」ほか解題 *平成6年11月
           第28巻「婚礼仕用罌粟袋」ほか解題 *平成7年5月
           第40巻「女諸礼綾錦」ほか解題 *平成7年11月
           第45巻「男女諸礼宝鑑」ほか解題 *平成8年5月
           第60巻「女初学文章」ほか解題 *平成8年11月
           第86巻「女文章鑑」ほか解題 *平成10年5月
  平成8年2月 『女子用往来刊本総目録』
  平成8年7月〜『稀覯往来物集成』(全32巻。平成10年1月完結)
           第5巻「大和往来」ほか解題 *平成8年7月
           第6巻「古今銘物往来」ほか解題 *平成8年7月
           第7巻「杵築往来」ほか解題 *平成8年7月
           第8巻「木曽之道艸」ほか解題 *平成8年7月
           第13巻「新用字尽」ほか解題 *平成9年2月
           第16巻「女要珠文庫」ほか解題 *平成9年2月
           第17巻「一代書用筆林宝鑑」ほか解題 *平成9年7月
           第18巻「女消息華文庫」ほか解題 *平成9年7月
           第26巻「名物往来」ほか解題 *平成10年1月
           第27巻「女文常盤の松」ほか解題 *平成10年1月
           第28巻「正徳御式目」ほか解題 *平成10年1月

○以上のほか、『稀覯往来物集成』の姉妹編たる『往来物解題辞典』の編集・執筆の中心として、約3769項目のうち3368項目を執筆した(2001年3月刊行)。この間、謙堂文庫・玉川大学・東京学芸大学・三次市立図書館の全ての往来物、また、東京大学・東書文庫・成田山仏教図書館・東京都立中央図書館・埼玉県立浦和図書館・千葉県立中央図書館・早稲田大学・国立国会図書館・内閣文庫・東京国立博物館・国文学研究資料館・日本大学・筑波大学・逓信総合博物館・香川大学・弘前市立図書館・宮城県図書館・山形県立教育博物館等が架蔵する往来物(マイクロ資料も含む)の大半を調査した。こうして蒐集した資料は、原本(刊本・写本)で約4500点、複写物で約2000点に及ぶ(目録を作成しているのは原本のみで、往来物・心学書を含め現在約4800冊所蔵。*「家蔵往来物一覧」参照)。なお、この間、平成8年7月には東京学芸大学図書館の依頼により、同大学架蔵の往来物を中心に講演を行ったり、最近では、東書文庫等の機関や出版社など往来物その他の近世資料に関する質問や相談に応じてきた。

○さらに、近世関連の文献として下記を企画・編集した。
  『江戸時代女性生活絵図大辞典』全10巻(江森一郎監修)*企画・編集
  『絵図集成近世子どもの世界』全10巻 *企画・編集
  『節用集大系』全100巻 *編集・解題
  『道中記集成』全44巻+別巻3巻 *企画・編集
  『成功の才覚──西鶴の知恵袋』1巻(森田芳雄著)*編集
  『考える女たち』1巻(中野節子著)*編集
  『江戸の旅風俗』1巻(今井金吾著)*編集
  『国書目録叢書』既刊40巻 *企画
  『定本丹鶴叢書』全36巻(朝倉治彦監修)*企画・編集
  CD-ROM版『群書類従』3枚組 *企画・編集
  『訓蒙図彙集成』全23巻(朝倉治彦監修・渡辺憲司解説)*企画
  CD-ROM版『和漢三才図会』2枚組 *企画・編集
  『武江年表』全4巻(今井金吾監修・解説)*企画
  『近世方言辞書集成』既刊4巻(佐藤武義ほか編輯)*企画
  CD-ROM版『名所図会集成』既刊vol.1 *企画・編集

○また、雑誌『江戸期おんな考』(柴桂子編、桂書房刊、年1回発行)の第4号(平成5年9月)以下に論文を発表。
  第4号「教訓書に見る近世の再婚観と託静の『再縁訓』」*平成5年9月  
  第5号「『女大学』と柏原屋清右衛門」*平成6年9月  
  第6号「江戸期の婚礼関連書」*平成7年9月  
  第7号「近世刊行の女筆手本について」*平成8年9月  
  第8号「居初津奈の女用文章」*平成9年9月  
  第9号「近世女文における「かしこ」──女筆手本類からの一考察」*平成10年9月
  第11号「近世女性礼法の源流──『女房筆法』と『女房進退』を中心に──」*平成12年10月  
  第12号「続女大学──『女大学』に似て非なる「異種女大学」──」*平成13年10月
  第13号「艶書と散らし書き」(PDF) *平成14年10月 (掲載論文にかなり増補) 

  第14号「近世庶民の生涯指針と随年教法」(PDF) *平成15年10月(掲載予定) 
  

○以上のうち、女筆手本研究に基づく学位論文「近世の女筆手本──女文をめぐる諸問題」により、平成11年3月、金沢大学大学院・社会環境科学研究科における最初の論文博士号(学術博士・博乙第1号)を授与された。