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江戸中期
【宝永 一七〇四〜一一】

42 女筆用 みちしは
 みちしば
[異称]上巻外題『女筆用 みちしは』、中巻外題不明、下巻外題『女筆用 美地志盤』。上巻見返題『路芝』。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]辻柳軒(玉華堂)作・書・跋。
[板種]宝永元年(一七〇四)九月書・刊。
宝永元年板(京都・林庄五郎)*玉川大。
[類型]男筆手本。
[内容]田舎住まいの女児にも手習い手本が必要であると感じた著者が、「賤山かつ、蜑のわらは女のたつきにせん」という思いで著わした手本で、上巻には「四つの海静に納りし春の徳たる御事…」と新年のめでたさを告げる文から衣更の季節の手紙までの一二通、中巻には五月雨の頃に庭の蛍見物に誘う手紙から秋の高雄山の紅葉狩りの手紙までの一四通、下巻には神無月の頃に庭の様子を伝へ、花を贈る手紙から平産祝儀状までの七通をそれぞれ収録する。大半が四季の風情を伝える散らし書きである。また、下巻巻末には、いずれも長文の詞書を添えた和歌七首(うち四首は散らし書き)を掲げる。また、跋文には元禄七年(一六九四)刊『しのすゝき』が当時、京都で流行していたことを記す。なお本書の改題本に江戸中期刊『女筆道紫花の海』がある。
[備考]冒頭部「四つの海静に納りし春の徳たる御事、一夜を隔て心あらたまり千代万代とことふきまいらせ候て、御機嫌よく御としかさねられ、かす祝入まいらせ候。かしく」。『享保一四年書目』に「三、同(女筆)美千しば」とある。
[所蔵]他に謙堂(上)。
[複刻]『江戸時代女性文庫』五九巻。

43 女筆子日松
 にょひつねのひのまつ/にょひつねのびのまつ
[異称]上巻外題『女筆子日松』、中巻外題『女筆姫小松』、下巻外題『相生のまつ』。
[書型]特大本三巻三冊。
[作者]筆者不明(女性)。
[板種]宝永二年(一七〇五)三月序。同年五月刊。
宝永二年板(京都か・柳心)*小泉。
[類型]女筆手本。
[内容]序文によれば、筆者が二〇年にわたって集めた女筆の模範例文を一書に綴ったものだが、全文が同じ筆跡であるため、これらの消息文を作者が模写したものであろう。三巻中、女文は上・中巻のみに収録されており、上巻に「新年祝儀状」〜「婚礼祝儀状」の一七通、中巻に「子の日祝儀状」〜「歳暮祝儀状」の一八通からなり、全文散らし書きである。いずれも御所方など貴人女性向けの披露文を主としており、例文中に古歌や、古歌に含まれる表現を多く採り入れた「引歌」的な手法を用いているのが特徴である。本文が所々二段になっている点や付録記事が多彩な点は独特である。また、下巻を全て女中の有職故実・礼法関連の記事としているのは異色で、御厨子・黒棚・衣桁の飾り方や、「武家祝言式法」以下婚礼・出産・通過儀礼・食礼、また四季衣装、また女中名・人称等について詳述する。なお、上巻巻末に「色紙寸法・短冊寸法」、中巻巻末に『和漢朗詠集』からの詩歌を載せる。
[備考]冒頭部「新玉りまいらせ候此春のめてたさ、何方もおなし御事にめてたくそんしまいらせ候」。なお、岡村金太郎『往来物分類目録』(大正一四年補遺追加再版)訂正一五頁の「女筆姫小松」項に「女筆子ノ日ノ松ヲ上トシ女筆姫小松ヲ中トシ女諸躾礼儀心得ヲ下トシ大判ニシテ三冊ノ中ニ在リ」と述べるが、これは中川内記作の『女筆姫小松』ではなく、明らかに本書を指すものであろう。岡村氏がよったものは下巻の題簽が欠けていたのであろうが、この記載によって本書中巻の書名が「女筆姫小松」とほぼ断定し得る。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性文庫』五九巻

44 玉置 かな手本
 かなでほん
[異称]なし。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]寺沢政辰書・跋。
[板種]宝永三年(一七〇六)一一月書・刊。
宝永三年板(江戸・片野久行)*謙堂。
[類型]男筆手本。
[内容]四季の風景について多く綴った仮名文と懈怠を戒める教訓文一編からなる手本。いずれも「浅みとり春たつ空にうぐひすの初音…」のような雅文調の消息文で、「人の道、父母への孝について問う文(追伸文で胎教について問う)」を冒頭に、四季順に一一通を収録する。春の花見、夏の隅田川夕涼み、萩が彩る秋の待乳山探訪、厳寒の折に香道書を貸す手紙など、季節の推移を重点にした例文である。なお本書所収の仮名文のうち第五、八、九、一〇状の四通と末尾の教訓文は『当用 大和往来』と全く同じである。刊行年その他から推して、『当用 大和往来』は本書を被せ彫りにしたものであろう。
[備考]冒頭部「浅みとり春たつ空にうくひすの初音まちつけて聞ものから、よものけしきの長閑さ、松の色そふ御代なれは、ふくかせえたをならさす、降雨土くれをうこかさぬ御事とて…」。
[所蔵]他になし。
[複刻]『稀覯往来物集成』五巻。

45 わかみとり
 わかみどり
[異称]上巻外題『わかみとり』、中巻外題『わかたけ』、下巻外題『うすもみち』。このほか後印本で上巻外題を『女筆若みとり』とするものがある。
[書型]大本三巻三冊。のち三巻合一冊。
[作者]長谷川豊(妙躰・筆海子)書。
[板種]宝永四年(一七〇七)一月刊。
宝永四年板(大坂・本屋又兵衛、京都・表紙屋彦兵衛、江戸・御簾屋又右衛門)*学芸大・小泉・謙堂・早大・玉川大(「女筆洛陽往来」)・都立中央(「女筆若みと里」上・下)・小松(「京師往来」)。
刊年不明板(*刊記欠。後印)*弘前市図(上)・吉海(上・中)・東大(「都往来」上)・無窮会。
[類型]女筆手本。
[内容]上巻は全文一通の消息文中に京都の由来から京都周辺の名所・旧跡までを紹介したもので、後に『洛陽往来』『京都往来』等の名称で相当に普及した地理科往来である。中・下巻は四季の女文で、それぞれ新年挨拶状以下八通、『源氏物語』講釈に出席する意向を伝える手紙以下九通を載せ、巻末に詩歌数編を掲げる。字配りは上・中巻の大半が散らし書きであるのに対して、下巻はほとんどが並べ書きになっている(中・下巻計一七通のうち一〇通が散らし書き)。また、本文余白には紅葉・笹・松葉・丁字などの模様を鏤める。なお三巻本は各巻見返に挿絵を付す。上・中巻末に署名があるが、下巻には署名がなく、かわりに板元跋文で「洛陽、筆海子之筆跡」と紹介する。署名が各巻末尾に記載されていることや題簽に上中下の記載がないことから、当初一冊ずつ刊行された可能性もある。
[備考]冒頭部「桓武天皇の御時より此京はしまり、四神相応の地にして、こと更かしこき君の御まつりこと、関の戸さゝぬ折ふしに洛陽御見物候べく候」。また、近衛流で書かれた跋文には「世間に板行の女筆数多有之といへ共、多くは男筆にて、児女之手本に成かたし。去によつて、洛陽筆海子之筆跡を致懇望、桜板にちりはむる者也」と記す。なお、『享保一四年書目』には「三、同(女筆)若みとり、須磨十一歳書」と記すが、筆者は妙躰の誤り。
[所蔵]他になし。
[複刻]『日本教科書大系往来編』九巻(「女筆都名所往来」)/『稀覯往来物集成』一四巻。

46 雲ゐの鶴
 くもいのつる
[異称]一名『女筆雲井の鶴』(享保一五年刊『女中庸瑪瑙箱』広告中)。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川貞(妙躰・筆海子)書。
[板種]宝永六年(一七〇九)五月刊。
宝永六年板(京都・伏見屋藤治郎)*福地書店。
[類型]女筆手本。
[内容]不明。
[備考]筆者は『女学範』による。福地書店目録中に図版掲載。各巻巻頭に口絵(四季折々の風景と女子諸芸図を描く)を載せる。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

47 頭書拾遺 女用文章綱目
 おんなようぶんしょうこうもく
[異称]内題『女筆用文章絵抄』。柱『女筆手本』。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]万屋かめ作・書・序。
[板種]宝永六年(一七〇九)五月刊。
宝永六年板(京都・荒川三郎兵衛、荒川源兵衛)*横山重旧蔵。
[類型]女筆用文章。
[内容]本文は全編散らし書きで、上巻には新年状から歳暮祝儀状まで四季・五節句の手紙八項目一四通を、中巻には「るすに来る文かへりて遣すへんじ文」から「髪置のいわゐよひに遣す文」まで季節の諸行事に関する手紙など一四通を、さらに下巻には「ほとゝきすの歌所望しにやる文」から「学文をうらやみつかはすふみ」までの諸用件の手紙一四通を収録する。また頭書には五節句や年中行事、京都の寺院・名所・名物に関する記事や、「女詞字尽」「草花字づくし」「木の名字づくし」「鳥の名字尽」「虫の名字尽」「青物の名字尽」「諸道具字尽」「衣服字尽」「絹布字づくし」「染物色字尽」「魚の名字尽」等の語彙集を載せる。なお、本書に享保(一七一六〜三六)頃刊『女手ならひ教訓の書』を合綴した改題本『女文章艶姿』が元文五年(一七四〇)に刊行された。
[備考]冒頭部「改まりし此春よりの御寿ふき、千とせまてかきれる子日のまつも、君に引れて万代をへぬへしと、めてたくかはらしと、数々申まいらせ候」。本書は現在所在不明である。よって、石川謙著『女子用往来物分類目録』と、本書の改題本である『女文章艶姿』によって、その概要を記した。なお、『享保一四年書目』に「三、女用文章綱目」とある。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

【正徳 一七一一〜一六】

48 さゝれ石
 さざれいし
[異称]外題『佐々礼石 女筆』または『さゝれ石 女筆』。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川妙躰(妙貞・筆海子)書・跋。
[板種]正徳三年(一七一三)一月初刊。江戸中期再刊。
正徳三年板(京都・柴田十郎兵衛、岡本半七、江戸・万屋清四郎)*小泉・三原市図・小松・東大(上・下)。
刊年不明板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎、大阪・渋川清右衛門、渋川与市)*三次市図。
刊年不明板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎、大阪・渋川清右衛門、渋川与左衛門)*小泉(下)。
[類型]女筆手本。
[内容]上巻は新春から初夏の手紙や女性の心持ちについての手紙四通、中巻は七夕祝儀状から冬の到来を告げる手紙までの四通を収録し、下巻は一〜六月の京都の年中行事(特に寺社参詣)の由来や様子、風俗などを綴った全文一通の手紙になっている。全文散らし書き。また、上・中巻巻末に『古今』『新古今』『朗詠集』からの和歌数首を掲げるほか、各巻巻頭に挿絵を載せる。
[備考]冒頭部「けふの子之日に野辺の小松をもとめまいらせ候はんにも、雪まの道おほつかなきころにて、御前の山なるを玉の台なから千と世のかけと御覧せられ候はゝ、たのもしさ御楽しみにて候べく候」。『女学範』。
[所蔵]ノートルダム清心(上・中)。
[複刻]『往来物分類集成』R二七/『稀覯往来物集成』一四巻。

49 女文字宝鑑
 おんなもじほうかん
[異称]書名は見返し題による。異称『女用文字宝鑑』。
[書型]大本一冊。
[作者]不明。
[板種]正徳三年(一七一三)五月刊。
正徳三年板(大阪か)*小泉。
[類型]用文章(女筆か)。
[内容]比較的初期の頭書絵入の女用文章。巻頭に「五段書文のちらしやう(三通)」「三だんの文ちらしやう(一通)」の散らし書きの基本(読み順を記す)を示し、続いて「はつ春につかはす文」以下一四題二八通(各題につき上・下の例文を載せる)を収録する。五節句・八朔・歳暮の際の祝儀状(往復)を散らし書きで綴る。その他各種例文は頭書末尾「女ふみこと葉」に「縁組究たる方への文」「祝言に遣す文」など三九通(並べ書き)で示す。なお、前付に「父母に孝行のてい」「姑にしたがふてい」その他の挿絵や「女用鑑」「紋尽」「万積様の図」「万年暦大ざつしよ相生之事」「男女相姓之事并ニ歌」「むまれ月善悪の事」を載せるほか、頭書に「五節句之次第」「女教訓絵抄」「七夕新歌づくし」「三十六歌仙」「女歌仙」「女節用集」等、巻末に「弘法大師いろは作り給ふ」「いろはづくし」を掲げる。
[備考]冒頭部「新玉りまいらせ候この春よりの御ことふき、三笠山の松風も枝をならさぬ御まつりこと…」。筆者不明だが、長谷川妙躰風の筆跡である。『享保一四年書目』に「一、女用文字宝鑑」とある。
[所蔵]他に母利。
[複刻]なし。

50 女堪忍記大倭文
 おんなかんにんきやまとぶみ
[異称]書名は見返題による。なお『大坂本屋仲間記録』には『女堪忍記大成』の書名が見える。
[書型]大本一冊。
[作者]長谷川妙躰(筆海子)書。
[板種]正徳三年(一七一三)九月刊。
正徳三年板(大阪・吉田孫兵衛)*東北大。
刊年不明板(大阪・吉田孫兵衛)*福地書店。
刊年不明板*学芸大(「女の文のほん」)・早大。
[類型]女筆用文章。
[内容]比較的短文の、五節句や四季の女文一八通(全て散らし書き)を収録した女用文章。四季・五節句等の手紙を妙躰独特の散らし書きで綴るが、妙躰の手本では数少ない頭書入り女用文章である(例文にわずかに付訓が散見されるのも珍しい)。書名の由来は、巻頭「忍の字解」や頭書「女堪忍記(「姑につかふる堪忍」の教訓や孝女・賢女の略伝)」などの記事による。このほか、養蚕から製糸までの過程を詳述した記事や、「女歌人の伝」「百人一首」「秋野七種」「鶯蛙牛歌よむ事」「諸寺略縁起」「女用文章(本文とは主題を異にする「結入の方へ遣文」以下一五通の例文)」「女中文の封様の事」「女中髪結やう」「女大和こと葉」「歌書かなつかひの事」「五色のほめことば」「当流紋つくし」「女和歌三神」等の記事を載せる。
[備考]冒頭部「新玉のとしたち帰谷の鶯、軒はの梅にさへずり、そのゝこてふの日影にあそふ風情、まことに心ものとけく成まゐらせ候」。筆者名は『女用文章唐錦』等の広告による。寛延二年(一七四九)刊『女文通華苑』広告中には「長谷川妙貞筆。百人一首并に賢女伝記入」とある。また、明和五年(一七六八)に改題本『女文章色紙箱』が刊行された。なお、『享保一四年書目』に「一、女堪忍大倭文」とある。
[所蔵]他になし。
[複刻]『女性生活絵図大事典』一巻。

51 難波津
 なにわづ
[異称]上・中巻外題『難波津 女筆』、下巻外題『なにはつ 女筆』。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川妙躰(妙貞・筆海子)書・跋。
[板種]正徳四年(一七一四)一月初刊。享保一八年再板。江戸中期再板。
正徳四年板(京都・柴田十郎兵衛、岡本半七)*小泉・小松・三原市図・謙堂(中・下)。
享保一八年板(江戸・小川彦九郎、京都・岡本半七)*東北大。
刊年不明板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎、大阪・渋川清右衛門、渋川与市)*謙堂・玉英堂。
[類型]女筆手本。
[内容]上巻は婚礼祝儀状など六通、中巻は訪問客への詫び状など八通、下巻は学問について教示を乞う文など七通の合計二一通を収録。全文散らし書き。四季や五節句の文を中心とするが、月順・季節順にはなっていない。このほか婚礼祝儀の文を始めとする祝儀状や種々礼状など日常の雑文章も含まれる。上巻には付録記事が多く、「なげ入の事」など華道関連、「おがさはら流万しんもつつゝみやう折形図」ほか礼法、「香のきゝやう并に十種香の事」「貝おほひ并に歌かるたの事」「十二月の異名」「女中文書やう心得の事」等の記事のほか、中・下巻見返に挿絵を掲げる。なお、後印本で「世に長谷川氏女筆と名付あらはせるもの…」の跋文および「筆海子長谷川妙躰正筆板行目録」を増補。
[備考]冒頭部「御祝言しゆひよく相済せられ、一入めてたさまことにいくまん年も御はんしやうの御事といわゐ入まいらせ候」。『享保一四年書目』に「三、同(女筆)難波津、長谷川妙貞」とある。また、江戸中期再板本は異板。未見だが、江戸中期後印本には「渋川与市」を「渋川与左衛門」に代えた刊記を有する別本が存したと考えられる。
[所蔵]他に玉川大(上)・国会・京大・岡山県・旧下郷。
[複刻]『往来物大系』九一巻/『江戸時代女性文庫』二〇巻/『女子用往来物分類集成』R一七。

52 寺沢 かな手本
 かなでほん
[異称]なし。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]寺沢政辰書・跋。
[板種]正徳五年(一七一五)一月刊。
正徳五年板(京都・野田弥兵衛、江戸・野田太兵衛)*小泉。
[類型]男筆手本。
[内容]上巻には春夏、中巻には秋冬の四季の女文、さらに下巻にはその他諸用件の女文などを収録した寺沢流手本。上巻には春雨の徒然に『源氏物語』を学ぶ人への激励の手紙から菖蒲節句祝儀の礼状までの六通、中巻は七夕祝儀状から歳暮祝儀状までの四通、下巻は御機嫌窺いの文から名月の感想を述べた文までの四通と和歌一〇首および「いろは」を載せる。女文は全て大字・無訓の散らし書きで書かれている。
[備考]「春雨の御つれ『源氏』御なかめのよし紅は染るに色をますにて候へは、御学問も御うら山しくそんし候。めてたくかしく」。なお、跋文の末尾に「菊月日 寺沢氏」とあるのは正徳四年の九月を意味するか。
[所蔵]他になし。
[複刻]『稀覯往来物集成』一五巻。

53 女筆筆の海
 にょひつふでのうみ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。ただし『大坂本屋仲間記録』によれば三冊。
[作者]不明。
[板種]正徳五年(一七一五)頃刊。大阪・河内屋喜兵衛板か。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『正徳五年書目』。『大坂本屋仲間記録』に「女筆筆の海、三、河喜」とある。また、『享保一四年書目』に「一、同(女筆)筆の海」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

54 婦人用文
 ふじんようぶん
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]正徳年間(一七一一〜一六)刊。
刊年不明板*茶図成簀。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]なし。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

【享保 一七一六〜三六】

55 女中文章鑑
 じょちゅうぶんしょうかがみ
[異称]なし。
[書型]大本二巻合一冊。
[作者]居初津奈作・書・序。
[板種]享保五年(一七二〇)三月刊。
享保五年板(京都・中村孫三良)*謙堂。
[類型]女筆手本。
[内容]貞享五年(一六八八)刊『女文章鑑』の改題本。全三二通りの女文章について誤字や俗語、女性に不適当な表現を交えた手紙文を最初に掲げ、続いてそれを添削した適切な例文を示すという方法で綴ったもの。本書に著者名の記載はないが、元禄三年(一六九〇)刊『女書翰初学抄』序文や記述内容の関連から居初津奈作とほぼ断定し得る。
[備考]冒頭部は『女文章鑑』に同じ。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物大系』九二巻/『女子用往来物分類集成』R一七。

56 新編類聚 女文翰重宝記
 おんなぶんかんちょうほうき
[異称]不明。
[書型]半紙本一冊。
[作者]不明。
[板種]享保五年(一七二〇)刊。元文元年(一七三六)一一月再刊。
享保五年板*広島大。
元文元年板(大阪・丹波屋利兵衛、河内屋茂兵衛)*謙堂(旧目録にあり)。
[類型]用文章。
[内容]『女書札調法記』と同じか。前付に「七情の事」「おしへの和歌」「女のしつけ方」、後付に「男女性に依つて用ふべき字尽」「女中文の封じ様の事」「伊勢本海道道中記」を収録するという。
[備考]大阪刊か。本書の改題本が天明四年(一七八四)刊『女書札調宝記』という(『大阪出版書籍目録』)。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

57 万宝 女文庫高蒔絵 女かがみ文章しな
 おんなぶんこたかまきえ
[異称]なし。
[書型]大本一冊。
[作者]居初津奈原作。
[板種]享保六年(一七二一)一月刊。
享保六年板(江戸・小川彦九郎、大阪・柏原屋清右衛門)*謙堂・玉川大・東北大・宮教大・国会・ノートルダム清心。
[類型]女筆用文章。
[内容]居初津奈作、元禄三年(一六九〇)刊『女書翰初学抄』の海賊版である元禄一二年(一六九九)刊『当流女筆大全』の前付記事を一新した改題本。新たに増補した前付記事は、「紫式部之事」「管絃器物の由来」「生れ年のうらなひ」「喜怒哀楽の図」「胎内の子男女を知事」などである。本文は『女書翰初学抄』下巻末尾の一状、弔状を削除したほかは全く同じで、合計五六通の例文を収録する。板元の柏原屋は、先に元禄一一年(一六九八)にやはり『女書翰初学抄』の海賊版を出版しているから、少なくとも三種以上の類板を行なったことになる。
[備考]冒頭部は『女書翰初学抄』に同じ。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物大系』九二巻/『女子用往来物分類集成』R一七/『日本教科書大系往来編』一五巻。

58 女つれ色紙染
 おんなつれづれしきしぞめ
[異称]首題『女つれ』。見返題『色紙染』。
[書型]大本三巻合一冊。
[作者]中村甚之丞原作。
[板種]享保六年(一七二一)一月刊。
享保六年板(大阪・敦賀屋九兵衛)*学芸大・松宇。
刊年不明板*東大・千葉中央・日大。
[類型]男筆用文章。
[内容]元禄六年(一六九三)刊『女筆四季文章(四季往来)』(中村甚之丞作・書)の改題本。『女筆四季文章』と異なる点は、h本文冒頭の首題「四季往来上」を「女つれ」に改刻し、中巻・下巻の首題を削除した結果生じた空白を埋めるために上巻最終丁裏の末尾「四月八日」に続けて「白たえ/桃の井殿」の二行、中巻最終丁裏の末尾「八月朔日」に続けて「梅かへ/いさよひ様」の二行をそれぞれ埋木した点、またiもと三巻本を一巻本の体裁に改めたのに伴い、各巻ごとの丁付けを全巻通しとした点、j冒頭一丁表に梅の図一葉を掲げた関係で、その部分の頭注を第一丁裏に移動させた(そのため同丁の挿絵一葉を削除)点、k本文末尾(刊記部分)は全面的改刻となり、中村甚之丞の跋文と頭注(「神馬藻」)を削除し、本文末尾「十二月廿五日」の後に「初花との参る」の一行と享保六年(一七二一)云々の刊記を追加し、頭書に「女中文の封じ様の次第」を掲げた点である。以上の微細な点を除いて本文には全く変わりがなく、むしろ序文一丁に替えて増補した前付七丁が大きな変化で、そこには「諸国名所(和歌浦名所ほか八景」「女中風俗」「歌よみやう」「連歌の仕やう」「俳諧の仕やう」「狂歌づくし」「女中しつけ方」「女中諸げい図式」「小笠原折形」「台のつみ物」などの記事を収録する。
[備考]冒頭部は『女筆四季文章』に同じ。『享保一四年書目』に「一、女徒然色紙染」、『大坂本屋仲間記録』に「女つれ色紙染、敦九」とある。また、宝暦一三年(一七六三)『女小学教艸』広告中に「女つれ色紙染/正月より十二月迄の事を文につくる」と紹介する。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物分類集成』R二七/『稀覯往来物集成』二八巻。

59 湖月文章・万用宝訓 女要珠文庫
 じょようたまぶんこ
[異称]主題および跋文中『湖月女文章』。
[書型]大本一冊。
[作者]寺田正晴(与右衛門・絮柳)編・書・刊。
[板種]享保六年(一七二一)四月刊。
享保六年板(大阪・寺田与右衛門)*小泉・吉海・学芸大・西尾市図・東大。
[類型]男筆用文章。
[内容]付録記事が充実した女用文章の一種で、本書の中心は本文の「湖月女文章」であるが、これは『源氏物語』の各帖を詠んだ和歌一首と、主要な登場人物一名の肖像画を最初に掲げ、さらに各帖にちなんだ仮名文(計五四通)で構成される。『源氏物語』『伊勢物語』を女子教育に用いるべきでないとする風潮が見られた時代であったが、これらを題材にした女子用往来の一つとして注目される。いずれも散らし書きあるいは並べ書きの書簡文形式で綴られるが、一般的・実用的な消息文例ではない。実用案文としては、頭書に五節句祝儀状を始め、部屋見舞い、出産祝い、弔状、伊勢参宮下向の文など一九通の女用文章が用意されている。付録記事には、前付の「伊勢道中記」「女実語教(「髪美しき故にたつとからず」で始まる九六句の教訓で、居初津奈作の『女実語教・女童子教』とは別内容)」や頭書の「風流文字人形(デフォルメした文字を絵の中に組み込んだもの)」、当時流行のデザインを紹介した「当世櫛ひいながた」「当世もやうかんざし」を始め、和歌の教養、言葉遣い、被服、養生、家庭医学、婚礼、出産、暦占関係の記事を収録する。
[備考]冒頭部「桐壺の更衣、御産のひも御とき遊はし、やすと御誕生、玉のやう成御若宮にて…」。見返・扉絵は三色刷。『享保一四年書目』に「一、女珠文庫」とある。
[所蔵]他に東博(「湖月女文章」)。
[複刻]『稀覯往来物集成』一六巻。

60 女筆いろみとり
 にょひついろみどり
[異称]上巻外題『女筆いろみとり』、中巻外題『色みとり』、下巻外題『いろみとり』。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]春名須磨(一一歳)書。
[板種]享保九年(一七二四)九月書・刊。享保九年一二月出願(『大阪出版書籍目録』)。
享保九年板(大阪・吉文字屋市兵衛)*東大・小松・弘前市図(上・下)。
[類型]女筆手本。
[内容]妙躰風を学んだと思われる春名須磨の女筆手本。四季や五節句を主題とした消息例文を綴ったものだが、配列は必ずしも月次順ではない。いずれも比較的長文で、上巻には「新年祝儀の披露状」以下六通、中巻には「桃の節句祝儀状」以下七通、下巻には「久々の手紙への礼とともに『栄花物語』『狭衣物語』等の写本を贈る文」以下五通の、合計一八通(うち四通並べ書きで、他は散らし書き)を収録する。なお、本書は春名須磨一一歳の書で、『享保一四年(一七二九)書目』中にも「須磨十一歳」とわざわざ年齢を書き添えてある。また『大阪出版書籍目録』によれば、彼女は播州佐用郡新宿村の百姓・小三郎の娘で農家出身であった。
[備考]冒頭部「新玉の年をむかへて雲の上にとり祝ふ星の位、万代のこゑに寿奉りて、けふ九重の内も外も豊なる世の春の御めてたさ、其御所様にて御前よろしく通し給ふへく頼上まいらせ候」。『享保一四年書目』に「三、同色みとり、須磨十一歳」とある。また、安永二年(一七七三)刊『女訓三才図絵』広告中に「女筆色緑、春名須磨筆、四季用文章手本、全三冊」とあり。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物分類集成』R二七。

61 錦乃海
 にしきのうみ
[異称]上巻外題『錦乃海 女筆』、下巻外題『にしきのうみ 女筆』。中巻外題不明。また別に『錦乃海 長谷川筆海子氏』や『にしきのうみ 長谷川筆海子氏』の外題を持つ再板無刊記本あり。一名『女筆錦の海』。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川妙躰(筆海子)書。
[板種]享保一〇年(一七二五)五月刊。享保一〇年二月出願(『大阪出版書籍目録』)。
享保一〇年板(京都・岡本半七、荒川源兵衛)*都立中央・東北大・筑波大(「女習字手本」下)。
刊年不明板(*後印)*弘前市図(上)。
[類型]女筆手本。
[内容]比較的短文の女文三一通及び和歌二首を収録した全文散らし書きの女筆手本。上巻には「姫宮の参詣の噂を聞いた者からの手紙」や「男子安産祝儀状」など一〇通、中巻には「屏風借用の手紙」「亥の子祝儀状」「紅葉狩り同伴希望の手紙」「初午参りの文」「宇治川の蛍見物誘引状」など一二通、下巻には「暑中見舞い」「七夕祝儀状」「八朔祝儀状」「『古今和歌集』借用の文」など九通を収録。いずれも四季消息文を主とするが、新年状を欠くことと配列が季節順になっていないのが特徴。各巻見返には、挿絵とともに女筆心得「手習の仕用の事」を掲げ、また巻末には折形、片仮名イロハ、篇冠字尽などの記事を載せる。このうち「手習の仕用の事」は長谷川妙躰の書論の一端を知る貴重な記述である。
[備考]冒頭部「姫宮様けふは梅宮へ御参詣あそはし候よし、さためてそもし様かたも御供候べく候はんとそんしまいらせ候」。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

62 女万葉稽古さうし
 おんなまんようけいこぞうし
[異称]目録題『女万葉稽古草紙文章』。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]林蘭作・書・跋。西川祐信画。
[板種]享保一三年(一七二八)一月刊。
享保一三年板(京都・山口屋茂兵衛)*国会・逓博。
刊年不明板*都立中央(上・中は東京誌料、下は加賀文庫)。
[類型]女筆用文章。
[内容]祐信の挿絵をあしらった独特な女用文章。「初春につかはす文章」から「歳暮の祝遣文章・同返事」までの五六種類の文章を載せるが、それぞれに上中下の尊卑の違いに応じた三通りの例文を掲げるため、実質的な書状数は一六八通となる。上中下を記号で区別する点も特色で、貴人向けが「桜」、同輩向けが「紅葉」、下輩向けが「若竹」とし、○印に「通」の字は「上下通用」を示すように工夫する。全文並べ書き。本文中に一三葉の女性風俗図を挟むが、いずれも繊細なタッチで当時の女性が生き生きと描かれている。なお、本書の改題本に寛保二年(一七四二)刊『女文章稽古(女教文章鑑)』がある。
[備考]冒頭部「新玉りぬる春の曙、誠に十かへりの花もけふよりの初なるらんと、限なふ御目出たさにいわゐまいらせ候」。
[所蔵]他になし。『享保一四年書目』に「三、女万葉稽古草紙、林氏蘭」とある。
[複刻]なし。

63 万家重宝 女用花鳥文章
 おんなようかちょうぶんしょう
[異称]内題『花鳥文章』。一名『女花鳥用文章』(『大坂本屋仲間記録』)。
[書型]大本一冊。
[作者]寺田与右衛門(大津屋与右衛門)作。
[板種]享保一三年(一七二八)八月出願、板元・森田庄太郎、売出・小川彦九郎(『江戸出版書目』)。享保一四年三月刊。
享保一四年板(大阪・毛利田庄太郎)*家政学院大・文学堂。
[類型]用文章。
[内容]花鳥風月の趣を綴った四季文を集めた女用文章。四季の挿絵(見開き挿絵四葉)を所々に挟み、季節ごとに往復二双四通ずつ、合計一六通の例文を収録してある。各文章は、例えば春の場合、最初の二通が初春から中春まで、後の二通が中春から晩春まで、という具合に細かく区分されて、それぞれの季節に応じて、四季の草花や樹木、鳥の名などを多く盛り込むのが特徴である。巻首には「女用四季絵抄」「津国有馬風景」などの記事、また頭書には「日本女国之事」「中将姫の由来」「小児衣服器財抄」「万袋物縫様の指南」「女用筆記指南事」「女用文章字訓」など独特の記事を多く掲げるが、特に「十二子宝分算法」は一般の女子用往来にはほとんど見られない算法関連の記事である。なお、本書は「百人一首」と合綴した形でも出版されている。
[備考]冒頭部「春のはじめの御ことぶき、もろこしまでもかぎりなふいはゐ入まいらせ候」。なお『大坂本屋仲間記録』には「女花鳥用文章。糸市」とある。
[所蔵]他に延岡内藤家、小泉(「百人一首」と合)。
[複刻]なし。

64 □女躾方万宝 女訓文章真砂浜
 じょくんぶんしょうまさごのはま
[異称]首題『女文真砂の浜』。なお角書左右は「児女・躾方」のようにも見えるが未詳
[書型]大本三巻合一冊。
[作者]蘭下人乞童原作。鳥飼幸十郎編(『割印帳(江戸本屋出版記録)』には「鳥飼幸二郎」と記す)。
[板種]享保一四年(一七二九)三月増補改正出願、板元・吉文字屋市兵衛、売出・小川彦九郎(『大阪出版書籍目録』『割印帳』)。同年同月刊。
享保一四年板(大阪・吉文字屋(鳥飼)市兵衛)*謙堂・吉海。
[類型]男筆用文章。
[内容]元禄一七年(一七〇四)刊『女文常盤の松』(蘭下人乞童作)の増補・改題本。刊記に「鳥飼幸十郎作」とあるが、鳥飼は原作者ではなく改編者である。本文は『女文常盤の松』と全く同じだが、前付記事がかなり増補された。柱に名残があるようにもと三巻三冊で、改題にあたって一冊にまとめられたものである。内容は、一年一二カ月の往復文二四通(各巻八通ずつ)を収録する女用文章のスタイルをとるが、各書状とも実用を旨とした女子消息文というよりは、五節句や四季の行事や故事、季節によって変化する花鳥風月を主題とした女文である。各状の冒頭と文末を除けば、ほとんど年中行事や四季の風趣に関する語句の列挙にすぎない。原作者・蘭下人乞童の序文(本書では削除されている)には、女子の和歌の教養のために四季風物を多く盛り込んで編んだとする。なお、頭書には本文中の任意の語句についての略注や挿絵のほか、「万包物折形図」「源氏物語目録」「かたこと・重言」「女用器財字」などの記事を載せる。また、前付にも人物略伝や暦占・女子教訓・女用文章(実用的な案文)など種々の記事を掲げる。このうち、書誌的に重要なのは「紋尽」で、この部分にはもと葵紋が存したが、宝暦六年(一七五六)九月の絶版命令により、削除されることとなった。なお、本書本文に約三五丁の前付記事を追加した改題本が宝暦(一七五一〜六四)頃刊『女年中往来真珠海』という。
[備考]冒頭部は『女文常盤の松』に同じ。
[所蔵]他になし。
[複刻]『稀覯往来物集成』一六巻。

65 女五常訓倭織
 おんなごじょうくんやまとおり
[異称]再板本外題『女五常訓』、または『文化補刻 女五常訓倭織』。柱題『女五常訓』。
[書型]大本一冊。
[作者]坂本源兵衛作(後にはこの作者名が抹消され、貝原益軒作と仮託)。筆者不明(『女学範』は女筆とする)。
[板種]享保一四年(一七二九)七月出願、板元・村上源右衛門、毛利田(本屋)庄太郎(『大阪出版書籍目録』)。享保一四年一一月初刊。元文三年(一七三八)五月再刊。延享四年(一七四七)九月再刊。明和五年(一七六八)再刊。安永二年(一七七三)六月求板。文化三年(一八〇六)一月補刻。
享保一四年板(大阪・毛利田庄太郎)*家政学院大。
元文三年板(大阪・安井嘉兵衛)*小泉。
延享四年板(大阪・泉屋喜太郎)*成田・国会・東大・宮内庁・島根大。
明和五年板(大阪・和泉屋卯兵衛)*小泉・宮教大・米沢。
安永二年板(大阪・藤屋弥兵衛、児島屋直吉)*函館市図。
文化三年板(大阪・柏原屋清右衛門、加賀屋善蔵)*小泉・謙堂・玉川大・学芸大・唐澤・吉海。
文化三年板(大阪・大野木市兵衛、渋川清右衛門)*国会。
刊年不明板(大阪・和泉屋卯兵衛 *明和頃刊)*謙堂。
刊年不明板(*江戸中期刊)*玉川大。
[類型]女筆往来物。
[内容]貝原益軒の『五常訓』によりながら、仁・義・礼・智・信の「五常」を平易に説いた往来。序に、五常の道は男女の分かちがないが、一般の書物は真字で幼女には読みにくいため、「五常の心ばせ」を仮名にやわらげたものという。まず五常のあらましを述べ、本朝の女性には『百人一首』『伊勢物語』『源氏物語』『土佐日記』など風雅の書を習わせるのが習慣だが、これらでは五常を学べないことを強調し、以下、五カ条に分けて「仁」から「信」までについて淳和天皇の后正子・霊照女・孟母の故事を引きながら詳しく説く。また、頭書に「きぶつのゆらい」「南都興福寺由来」「文章散書常法」「女中鑑草」「千世見草祝言式」を掲げるほか、前付等に「三十二相之図」「名所滝尽図」「名等女画事」「しま台の錺様」などの記事を載せる。元文三年板までは刊記に「作者・坂本源兵衛」と記してあったが、後にこの記載が抹消され、あたかも貝原益軒作であるかのように宣伝された。なお、本書は文化三年(一八〇六)板で前付・後付記事が大幅に変わり、新たに「教訓文の栞」「女妙薬秘伝名方」「万しみ物おとし様」などが収録された。
[備考]冒頭部「夫、人としては五常の道を以て身をおさむるもとひとするなれば、つねにしも此五つのものをおこたり給ふべからず」。彫工=村上源右衛門(享保一四年板・元文三年板・延享四年板)。前付・後付は板種によって小異あり。また文化三年板の広告に「此書は、女の常に身に行ひ、心に用ゆる五常の道をおさなき子のさとし安く、文章をやはらげ、大字ひらかなにし、専ら身持・心さまを正しくする教誨の書なり。同女子は此『五常訓』を左に置、『女大学』を右にし、昼夜読覚へて身の守とし給ふべし」とある。なお、『享保一四年書目』に「一、女五常訓大和織、寺田」とあり、作者を寺田与右衛門とするが、『割印帳(江戸本屋出版記録)』には正しく「坂本源兵衛作」と記す。
[所蔵]宮内庁・酒田市図・ノートルダム清心ほか。
[複刻]『往来物大系』八八巻/『女子用往来物分類集成』R八/『日本教育文庫』女訓篇。

66 女用文御伽文庫
 おんなようぶんおとぎぶんこ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

67 女用文章花文台
 おんなようぶんしょうはなのぶんだい
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]広沢嘉兵衛作。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

68 女今川姫鑑
 おんないまがわひめかがみ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]窪田津留(つる)書。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]女筆手本。
[内容]貞享四年(一六八七)板系統あるいは元禄一三年(一七〇〇)板のいずれかであろう。
[備考]『享保一四年書目』に「一、女今川姫鑑、窪田つる」とある。『女学範』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

69 小野於通手本
 おののおづうてほん
[異称]不明。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]小野通書。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]女筆手本。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』に「三、小野於通手本/同龍田草」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

70 小野於通龍田草
 おののおづうたつたぐさ
[異称]不明。
[書型]大本一冊か。
[作者]小野通書。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]女筆手本。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』に見えるが冊数を示さず。同書目には、本書とは別に『女筆龍田参詣』を記載する。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

71 女筆嵯峨野乃秋
 にょひつさがののあき
[異称]一名『女筆嵯峨野』。
[書型]大本二巻二冊。
[作者]不明。
[板種]享保一四年(一七二九)以前初刊。天明元年(一七八一)頃再刊。板元・菊屋安兵衛(再刊本)。
刊年不明板(*後印)*東大。
[類型]女筆手本か。
[内容]秋の嵯峨野周辺に参詣するという想定で、北野天神、妙心寺、仁和寺、御室御所、帯取池、五仏山、大覚寺、清涼寺、心見の坂、清滝川、火うち権現、白雲寺、櫁が原、滝口寺、妓王寺、二尊院、天竜寺、臨川寺、嵐山・渡月橋、戸難瀬の滝、法輪寺、西方寺、梅の宮、長福寺、鹿王院、太秦など、寺社を主とする名所・古跡の風趣や、関連の古歌・故事などを紹介した往来。最後に「あはれかしおほしめしたち候て、しはらくの御逗留をのみまち入まいらせ候。かしく」と結ぶ。全文を大字・無訓の散らし書きで記した手本である。なお、本書とほとんど同文の手本に、百瀬耕元筆、寛政一二年(一八〇〇)刊『百瀬 嵯峨名所』がある。
[備考]冒頭部「誠に都のにし嵯峨野ゝ秋は、名にめてゝ一きはものゝあはれもいやまし、虫の声まても鳴音やさしくおもふとちに誘はれまいらせ候て、名所・古跡をたつね見はやと、こゝかしこと詣まいらせ候あらまし…」。『享保一四年書目』に「二、同(女筆)嵯峨野」とある。また、安永五年(一七七六)刊『増補童子字尽』、天明七年刊『新撰大和名所往来』広告中。また、天明元年刊『本心早合点』広告(京都・菊屋安兵衛板行目録)中に「女筆嵯峨野の秋、西山名所、一冊」とある。『往来物分類目録』に「嵯峨ノ名所ヲ五七調ニセル西山一覧文章ノ手本也 享保十四年ノ書目ニ女筆嵯峨野トアルモノナルベシ 又天明六年ノ当世我身の為ノ目録ニ女筆嵯峨野の秋ト載セタリ 寛政十二年板ノ百瀬嵯峨名所モ之ニ同ジ」とある。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

72 女筆浅香山
 にょひつあさかやま
[異称]不明。
[書型]大本一冊。
[作者]沢田吉書。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』に「同(女筆)浅香山、沢田お吉」と記すが、冊数を記載せず。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

73 女訓用文十二姿
 じょくんようぶんじゅうにすがた
[異称]不明。
[書型]一冊( 大本か)。
[作者]不明。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]用文章。
[内容]『往来物分類目録』に「祐信ノ如キ絵入 用文章字尽諸心得方」とある。
[備考]『享保一四年書目』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

74 女筆文車
 にょひつふみぐるま
[異称]不明。
[書型]大本一冊か。
[作者]不明。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

75 女筆花たちはな
 にょひつはなたちばな
[異称]不明。
[書型]大本一冊か。
[作者]不明。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』に冊数を記載せず。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

76 女筆龍田参詣
 にょひつたつたさんけい
[異称]不明。
[書型]大本一冊か。
[作者]不明。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』に「一、同(女筆)龍田参詣」とある。なお、同書目には本書とは別に『小野於通龍田草』を記載する。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

77 女筆玉かつら
 にょひつたまかずら
[異称]不明。
[書型]大本一冊か。
[作者]不明。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』に書名を載せるが、冊数を記さず。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

78 女筆琵琶海辺
 にょひつびわのうみべ
[異称]不明。
[書型]三巻三冊( 大本か)。
[作者]不明。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』。『日本書流全史』上巻一四五頁に掲載の「琵琶のうみ」(消息手本一冊)は本書のことか。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

79 女筆藻塩草
 にょひつもしおぐさ
[異称]不明。
[書型]三巻三冊( 大本か)。
[作者]不明。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』に「同(女筆)藻塩草」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

80 女筆柳の枝
 にょひつやなぎのえ
[異称]不明。
[書型]大本一冊か。
[作者]不明。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。大阪・糸屋市兵衛板。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]板元は『女筆姫小松』広告による。『大坂本屋仲間記録』に「女筆柳の枝、糸市」とある。『享保一四年書目』に書名のみ見え、冊数を記載せず。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

81 女筆君が代
 にょひつきみがよ
[異称]不明。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川妙躰(妙貞・筆海子)書。
[板種]享保一四年(一七二九)以前刊。
刊年不明板*三重県佐々木氏(二冊)。
[類型]女筆手本。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』に「三、女筆君か代、長谷川妙貞」とある。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

82 女筆春日野
 にょひつかすがの
[異称]上・中巻外題『女筆春日野』、下巻外題『女筆嘉須賀濃』。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川貞(筆海子・妙躰・妙貞)書。中村三近子(平吾)補。漱石子画。
[板種]享保一五年(一七三〇)一月出願、板元・植村藤次郎、売出・植村藤右衛門(『江戸出版書目』)。同年同月初刊(『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。享和元年(一八〇一)冬求板。
享保一五年板(京都・植村藤治郎)*樟蔭女子短大。
刊年不明板(京都・伏見屋藤右衛門(玉枝軒) *江戸中期刊)*東大。
刊年不明板(*江戸中期刊)*小泉・玉英堂。
享和元年板(京都・銭屋利兵衛 *求板)*吉海。
[類型]女筆手本。
[内容]長谷川妙貞の女筆手本の一つ。京名所や年中行事にちなむ四季折々の手紙や、佳節・祝事の贈答の手紙などからなる。全文散らし書きで、書状配列は季節順あるいは内容順に整理されていない。上巻には、正月風景を述べた文から始まり、音羽山の桜、葵祭、宇治山の蛍見物、夏の田舎風景、祇園祭、紅葉などの季節の手紙と歯黒染め祝儀状など一二通、中巻には、春雨の頃や七夕、盆、中秋の名月、紅葉狩り、春の風物、二月堂の薪能などを主題にした手紙や、宇治平等院にて頼政を偲ぶ文や婚礼祝儀状など一四通と和歌一首、さらに下巻には重陽の節句、神無月、大晦日、正月、都の春、菊・鶏頭の花盛り、枯れゆく冬など四季の手紙、また、髪置祝儀状、仲人への礼状、小袖模様を賞める文など一三通と和歌一首を収録する。各巻巻頭には「聖廟寒夜御詩」「弘法大師水筆竜」「佐理卿三嶋額」と題して、能書として名高い菅原道真・空海・藤原佐理の事跡を紹介する。
[備考]冒頭部「とし男の若水くみていさましく、四方の御庭の杉菜ましりの土筆・嫁菜・たんほゝ・すみれ草、一かたならぬ春のみとり、かとのとやかに御礼の義式こそ、いみしく覚えまいらせ候。かしく」。享保一五年板の刊記は『女中庸瑪瑙箱』の刊記と同一である。また、後印本に独自の絵入見返を付すものがある(享和元年板)。なお、『享保一四年書目』は「三、女筆春日野、長谷川貞」とあるが、本書刊年不明板・和元年板には「洛陽四条小橋 長谷川貞書」の署名がある。
[所蔵]他になし。
[複刻]『稀覯往来物集成』二七巻/『往来物分類集成』R二七。

83 女教訓文字文庫
 おんなきょうくんもじぶんこ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]沢田氏(吉か)書。
[板種]享保一五年(一七三〇)頃刊。京都・植村藤次郎板。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]享保一五年刊『女中庸瑪瑙箱』広告。宝永六年刊・享保頃後印『しのすすき』広告。あるいは未刊か。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

84 蝉小川
 せみのおがわ
[異称]外題『蝉小川 女筆』。見返題『寿福 瀬見緒河』。一名『女筆蝉の小川』(『宝暦四年書目』)。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川妙躰(妙貞・筆海子)書。中村三近子(平吾)補・書。
[板種]享保一八年(一七三三)一月出願、板元・岡本半七、売出・小川彦九郎(『江戸出版書目』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。同年同月初刊。江戸中期再刊。
享保一八年板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎)*玉川大。
刊年不明板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎、大阪・渋川清右衛門、渋川与市)*都立中央・東大。
刊年不明板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎、大阪・渋川清右衛門、渋川与左衛門)*小泉・吉海。
刊年不明板(大阪・渋川清右衛門 *上記のいずれかと同じか)*東北大・小松(上・下)。
[類型]女筆手本。
[内容]極めて長文の雅文六通を綴った、散らし書きの女筆手本。上巻に「初子日の文章」「八はたまふで」、中巻に「あやめの節句」「花の宴」、下巻に「都の春」「小倉山のもみち」と題した消息文を収録する。各例文の末尾にそれぞれ同様の趣を詠んだ和歌を掲げ、また、本文中の任意の語句に略注を施す。また、上巻巻首に「女文用世話字づくし」「婦人相性の名寄」「同礫仮名」「女中文章手爾波かなづかひ重宝記」「大ちらし書の例」などを載せるが、これらは全て中村三近子によるものである。
[備考]冒頭部「子日の小松けふよりは、君にひかれて万代之御寿詞限りもしられさるいみしさ、春霞たな引わたる野山之のとけさ下萌初し若草之みとりの色も玉簾、ひまもとめても入へき東風の音つれまいらせ候て、糸遊のいともやさしき賤之童の手すさみ、すみれつみにとさそひ来て、我も野つらにゆかましとや、蛍の雪まをつとふ朝日、影さゑかへるへき高根之雲はそれともみへす、白梅の香をたにとむるかきねの小蝶も羽袖をひるかへして忘るゝ夢の手枕に柳・桜もほころふへき比をや、又なき空之けしきはかの不老門の月日もおそき詠かなと、鶴亀のよはひそへて幾代へぬらんと、栄へおはします御殿様御悦こそ、こよなふはいしまいらせ度存しまいらせ候。めてたくかしく」。本書後印本の二本中、渋川与市ほか刊がやや先である。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性文庫』二〇巻/『往来物分類集成』R二七。

85 近江八景
 おうみはっけい
[異称]初板本外題『近江八景 女筆』、再板本外題『近江八景 并序 女筆』。異称『女筆近江八景』(『宝暦四年書目』『江戸出版書目』)。
[書型]大本一冊。
[作者]長谷川妙躰(妙貞・筆海子)書。
[板種]享保一八年(一七三三)一月出願、板元・岡本半七、売出・小川彦九郎(『大阪出版書籍目録』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。同年同月初刊。江戸中期再刊。
享保一八年板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎)*小泉・都立中央。
刊年不明板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎、大阪・渋川清右衛門、渋川与市)*東大。
刊年不明板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎、大阪・渋川清右衛門、渋川与左衛門)*謙堂。
[類型]女筆手本。
[内容]近江八景の景趣を述べた短文と「近江八景和歌」を手本にしたためたもの。まず「近江八景」の序として、近江八景(琵琶湖南西岸の八勝景。本書の順に従えば、粟津晴嵐・勢(瀬)田夕照・矢橋帰帆・辛(唐)崎夜再・石山秋月・三井晩鐘・比良暮雪・堅田落雁)の風景について七五調・美文体・並べ書きで綴り、続いて八景和歌(「雲はらふあらしにつれて百舟もちふねもなみのあはつにそよる」以下八首)を散らし書きで綴る。
[備考]冒頭部「村雨之浪も音せぬひわの海、かきましへぬる筆すさみ、名所々々を跡先に、いひつゝくれは我なから、我身に志賀を顕せり…」。なお、刊年不明板(いずれも江戸中期後印)中、渋川与市等刊がやや先である。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物大系』六一巻/『往来物分類集成』R四七。

86 ちよみ草
 ちよみぐさ
[異称]上巻外題不明、中巻外題『ちよみ草 女筆』、下巻外題『千世み草 女筆』。一名『女筆千代見草』(『享保一四年書目』)。
[書型]大本三巻三冊(ただし『享保一四年書目』に一冊とある)。
[作者]長谷川妙躰(妙貞・筆海子)書。
[板種]享保一八年(一七三三)一月刊(初刊は享保一四年以前か)。
享保一八年板(京都・木村市郎兵衛、菊屋喜兵衛)*国会(「よみ草」)・大屋書房(中・下)。
[類型]女筆手本。
[内容]四季消息文を散らし書きでしたためた女筆手本。上巻は春の若菜を頂いた礼状や初午・更衣・競馬に関する手紙八通、中巻は来賓の間をとりもつことを願う文や蛍見物・祇園会・秋の景色などを題材にした八通、下巻は出立する人への餞別の手紙を始め秋〜冬の手紙と出産・参宮の祝儀状など七通を収録。また中巻末尾に詩歌数編を載せる。なお、各巻見返に口絵あり。
[備考]冒頭部「野辺の春風侘しくて、袖寒かへる衣手に、残る深雪をかき分て、我ために御つみ候とて、若菜色々下され候。浅香山、不浅御心さしうれしく存まいらせ候。かしく」。国会本『よみ草』の書名は誤り(題簽上部破損による誤読)。『享保一四年書目』に載るため、享保一八年以前初刊か。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

87 女筆指南集
 にょひつしなんしゅう
[異称]外題を『女筆指南集 筆海子長谷川氏・手本尽六冊之内』とするものあり。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川妙躰(妙貞・筆海子)書。
[板種]享保一九年(一七三四)一月出願、板元・岡本半七、売出・小川彦九郎(『大阪出版書籍目録』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。同年同月初刊。江戸中期再刊。
享保一九年板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎)*早大(下)・平出(一冊。下のみか)。
刊年不明板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎、大坂・渋川清右衛門、渋川与左衛門)*母利(下)。
[類型]女筆手本。
[内容]妙躰の三部作『女筆指南集』『同続指南集』『同続後指南集(ただし未刊か)』の一つで、このうち本書は初心者用に編まれた短文(各頁大字二〜五行)の手本である。上巻には「御てならひめてたく候。かしく」から「ほたるみに御出候はゝ御供申候べく候。かしく」までの短文(単文に書止の「かしく」を付けただけの文章)一四例を大字二行、並べ書きで書す。中巻は未発見。下巻は「便に任、一筆とり向まいらせ候。かしく」以下、ごく短い一〇通の女文で、上巻とは対照的にシンプルな散らし書きを導入している。従って、中巻も並べ書き、あるいは至って単純な散らし書きの短文集であると思われる。なお、各巻巻頭に挿絵を掲げる。外題に「筆海子長谷川氏・手本尽六冊之内」と刷り込まれたものもあり、『女筆続指南集』にもこれと同じ記載が見られるから、一時期両者六冊セットで販売されたのであろう。残念ながら本書の完本を所蔵する機関はない。
[備考]冒頭部前記。『江戸本屋記録』によれば、板元・岡本半七。『女学範』。未見だが、江戸中期後印本には「渋川与市」を「渋川与左衛門」に代えた刊記を有する別本が存したと考えられる。なお、前記六冊本以外に、上巻に『女筆指南集』『女筆続指南集』、下巻に『女筆岩根の松』を収録した二巻本が、文化三年(一八〇六)に大坂書肆・玉栄堂(勝尾屋六兵衛または同利兵衛)によって出版された(『女筆岩根の松』備考欄参照)。
[所蔵]東大(上)・三重県佐々木(一冊)。
[複刻]『往来物分類集成』R一二(上のみ)。

88 女筆春の錦
 にょひつはるのにしき
[異称]外題『女筆春の錦 小野おつう筆』。
[書型]大本一冊。
[作者]小野通書。
[板種]享保一九年(一七三四)以前刊。大阪・藤屋弥兵衛板か。
刊年不明板*都立中央。
[類型]女筆手本。
[内容]元禄四年(一六九一)刊『四季 女文章』の解題・改編本。同書の板木を多く用いてさらに部分的に増補し、収録順序を全く改めたもの。小野通の女筆手本数本の板木を組み合わせた可能性もある。収録書状全二三通の書き方・字配り等はまちまちであり、この点でも板木の寄せ集めの印象を強く受ける。冒頭に各種新年状を六通も掲げ、続けて御門跡様ご出立の祝儀状、『源氏物語』借用状、貴人への挨拶状(披露文)、菊重の節句祝儀状、通天の紅葉見物誘引状、贈り物礼状、安産祝儀状、その他諸用件の手紙や歳暮祝儀状などを収録する。また、巻末には、恋を主題とした和歌四首を載せるが、その書き方は所々文字の左右または上下を逆にして、しかも一筋の布が風になびくかのような連綿体で綴ってあり、能書家・小野通の面目躍如たるものがある。
[備考]冒頭部「はつ春のめてたさ、誠にいくよろつ世もつきし候はぬ御ことふきと申うけ給候はんと、かすいわゐ入まいらせ候」。享保一九年刊『町方書札集』の広告中によれば、板元は大阪・藤屋弥兵衛。『明和九年書目』に「一、女筆春乃錦、小野おつう」とあり。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性文庫』一九巻。

89 女筆続指南集
 にょひつぞくしなんしゅう
[異称]外題を『女筆続指南集 筆海子長谷川氏・手本尽六冊之内』とするものあり。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川妙躰(妙貞・筆海子)書。
[板種]享保二〇年(一七三五)一月出願、板元・岡本半七、売出・小川彦九郎(『大阪出版書籍目録』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。同年同月初刊か。
刊年不明板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎、大阪・渋川清右衛門、渋川与市)*小泉。
刊年不明板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎、大阪・渋川清右衛門、渋川与左衛門)*都立中央。
[類型]女筆手本。
[内容]『女筆指南集』『女筆続指南集』『女筆続後指南集』という妙躰の女筆手本三部作の一つ。四季の風景や京都辺の名所などを綴った雅文の消息で、上巻には新年の寿を述べる手紙から卯の花の頃までの手紙六通、中巻には「芦野やのあふき」や「御口切之御茶」など猛暑から冬にかけての短文の手紙九通、下巻には絵簾を賞翫する手紙や、東福寺の冬景色を述べた手紙など六通、合計二一通を収録する。また下巻本文中に和歌二首を掲げる。
[備考]冒頭部「年ことの春のはしめの御寿詞とて、御せちあそはされ候よし、我身も御まねき下され辱存まいらせ候」。無刊年二本中、渋川与市ほか刊がやや先の刷りである。なお、題簽に「手本尽六冊之内」とあるように、本書は『女筆指南集』と合わせた六冊セットでも刊行されたが、このほか、上巻に『女筆指南集』『女筆続指南集』、下巻に『女筆岩根の松』を収録した二巻本が文化三年(一八〇六)に大坂書肆・玉栄堂によって出版された(『女筆岩根の松』備考欄参照)。
[所蔵]他に岸和田高(下のみか)・小泉(上。*表紙手彩色)。
[複刻]『江戸時代女性文庫』一九巻。

90 当世女鑑 女用文章唐錦
 おんなようぶんしょうからにしき
[異称]見返題『当世女鑑・歌人尽 女用文章唐錦』。
[書型]大本一冊。
[作者]春名須磨書・跋。
[板種]享保二〇年(一七三五)九月出願、板元・吉文字屋市兵衛、売出・西村源六(『江戸出版書目』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。ただし『大阪出版書籍目録』は同年一〇月出願とする。同年九月初刊。
享保二〇年板(大阪・吉文字屋市兵衛)*謙堂・江森・小泉・玉川大。
[類型]女筆用文章。
[内容]幼くして能書の名声を得た春名須磨の手本の一つ。新年状以下五節句や四季の手紙、出産・婚礼等通過儀礼に伴う手紙など全二二通を収録。そのほとんどが散らし書きだが、散らしの程度が大きくなく並べ書きに近いものも多い。前付に「左衛門尉真勝」「太田道灌」「桜の和歌三首」「蛍のあそひ」「紅葉の和歌三首」「雪の朝」「七夕扇ながし」「小野小町」ほか略伝、頭書に「和漢列女伝」「女訓智恵海」「女用器財字・女衣服の類・絹布類・万染色の名ほか」「万包折形図」「女中和歌の道しるへ」「源氏物語目録」「香道の秘伝」「琴の引やう指南」「双六の手引」「女中手習の指南」「女中文のかきやう」「蒸菓子秘伝抄」「絹布の手引」を載せる。なお、本書の改題本に『女文通華苑』『女書札百花香(現存せず)』『女文書大成(現存せず)』がある。
[備考]冒頭部「初春の御めてたさ、何かたもおなし御事にいわゐ納めまいらせ候」。なお、巻末広告により、『女堪忍記倭文』が長谷川妙躰(妙貞)筆と知り得る。『宝暦四年書目』に「一、女用文唐錦(筆者名不記)」とあり。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性文庫』八〇巻。

91 見寿乃雪
 みすのゆき
[異称]上巻外題『見寿乃雪 女筆』、中巻外題不明、下巻外題『美須の雪 女筆』。一名『女筆御簾の雪』(『大阪出版書籍目録』)。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川妙貞(妙躰・筆海子)作・書。
[板種]享保二〇年(一七三五)一〇月出願、板元・丹波屋利兵衛(『大阪出版書籍目録』)。同年同月刊。
享保二〇年板(大阪・村上伊兵衛、人見理兵衛)*玉英堂・国会(上・下)・小泉(下)・三原市図(下)。
[類型]女筆手本。
[内容]四季の風景を雅文・散らし書きで綴った女筆手本。上巻には新春や夏の風景を綴った手紙や、鉄漿付・節分などの消息文四通、中巻は水仙の花を頂いた礼状など五通、下巻には春の庭の様子を綴った手紙や土産物贈呈、初対面の人への挨拶、更けゆく秋の情景を述べた手紙など五通の合計一四通を収録。
[備考]冒頭部「新玉といふはかりにや、明行空の昨日にかはり、大路之さま松たて渡して花やかに、うれしけなる神代之国の久しかるへきためしをと、君と臣との跡たへす、家々の御作法万之民のすへまて、父子・夫婦之むつましの月、破魔弓・毬打・胡鬼の子之もてはやしをいつくしみ、仁義礼智の筆はしめ、馬のり初、蔵ひらき、一きは心もうきたち、春のけしきこそあめれ…」。なお、本書の改題本に宝暦四年(一七五四)刊『女教倭文庫』がある。板木師・村上源右衛門。『宝暦四年書目』に「三、女筆みすの雪、妙貞」とあり。宝暦(一七五一〜六四)頃刊『女筆姫小松』広告。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

92 女筆続後指南集
 にょひつぞくごしなんしゅう
[異称]なし。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川妙躰(妙貞・筆海子)書。
[板種]仮に既刊とすれば、享保二〇年(一七三五)頃刊か。
[類型]女筆手本。
[内容]不明。
[備考]本項は『宝暦四年書目』および書籍広告等によるが、現存本は皆無である。未刊の可能性も高い。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

93 女筆岩根の松
 にょひついわねのまつ
[異称]上巻外題『女筆岩根の松』、中巻外題『女筆いはねの松』、下巻外題『女筆岩根農松』。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川妙躰(妙貞・筆海子)書。
[板種]享保二〇年(一七三五)頃初刊か。寛保二年(一七四二)一月再板。
寛保二年板(京都・岡本半七、岡本四郎兵衛)*母利・吉海(下)。
刊年不明板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎、大阪・渋川清右衛門、渋川与市)*小泉(中・下)。
刊年不明板(京都・岡本半七、江戸・小川彦九郎、大阪・渋川清右衛門、渋川与左衛門)*小泉(上・下)・玉英堂。
[類型]女筆手本。
[内容]四季の花鳥風月の趣を綴った女文七通を収録した女筆手本。上巻は春から初夏にかけての三通で、うち殿の鷹狩りの帰路の様子を伝える手紙の返事一通を含む。中巻には無沙汰を詫びるとともに夏の庭の風景を伝え、さらに相手方へ訪問を望む手紙と初雪の日の感想とともに口切の茶会を待望する旨を伝える手紙の二通、下巻には木枯しの季節の手紙と中秋の名月の手紙の二通をそれぞれ収録する。また、ほぼ各状の末尾に和歌一首ずつを掲げる。なお、各巻の表紙見返には季節の風景画(春・夏・秋)をあしらってある。
[備考]冒頭部「花郭公、月雪つく一とせの詠は、むかし今にたかふ事もおはしまさす、さのみ目にてのみみる物かは」。『宝暦四年書目』。学芸大本は中巻のみの零本だが、柱に「岩中」とあり、寛保二年板とは明らかに異板である。無刊年後印本二本を比較すると、渋川与左衛門ほか刊よりも渋川与市ほか刊の方がやや先の刷りであるから、他の手本も同様であろう。なお、文化頃刊行の『女今川教訓状』(吉海氏蔵)の巻頭には同書とは無関係の序文および目録一丁(色刷)が合綴されているが、それは次のようなものである。序「長谷川妙貞尼の筆跡や、凡女筆の冠たるものなり。此書、『指南集』『続指南集』『岩根松』の併せて二冊となし、一に『指南集』の名を題するは、文化の丙寅の春の季なり。浪華書房 玉栄堂謹識」。目録「下目録/一、音信のふみ、并和歌/一、鷹野狩のありさまいふ文/一、卯月人をさそふ文、并和歌/一、参らばやと問遣るふみ、并うた/一、初雪の茶湯を問ふ文、并歌二首/一、時雨の比人を問やるふみ、并うた/一、名月のふみ、并和歌 終」。この目録は明らかに『女筆岩根の松』全巻の内容であるから、先の序文にあるように、上巻に『女筆指南集』と『女筆続指南集』を合本し、下巻に『女筆岩根の松』を収録した二巻本が、文化三年(一八〇六)に大坂書肆・玉栄堂(勝尾屋六兵衛または同利兵衛)によって出版されたことは疑いない。
[所蔵]他に京大(上・下)・学芸大(「草書手習帖」中)。
[複刻]なし。

94 女しらつゆ
 おんなしらつゆ
[異称]異称『女筆白露』(『享保一四年書目』)、『女筆しらつゆ』(『大坂本屋仲間記録』)。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]柳渓子書。
[板種]享保(一七一六〜三六)頃刊。
刊年不明板*『古典籍下見展観大入札会目録』。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『享保一四年書目』に「同(女筆)白露」とあって、冊数を記さないが、原本は三巻三冊。また宝暦一三年(一七六三)刊『女小学教艸』広告中に「女しらつゆ四季の友/すぐに手本になる文章なり」とあるが、この『女しらつゆ四季の友』は本書の改題本か。
[所蔵]『古典籍下見展観大入札会目録』に原装本の写真を載せる。
[複刻]なし。

95 女用文言葉
 おんなようぶんことば
[異称]一名『沢田文言葉』。
[書型]大本三巻三冊(ただし後掲『艶道通鑑』広告によれば一冊)。
[作者]沢田吉書。
[板種]享保(一七一六〜三六)頃刊。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]正徳五年(一七一五)刊、享保頃後印『当用玉置 初学往来』広告中。また、江戸中期後印『艶道通鑑』広告中に「沢田お吉ちらし文、一冊/同文言葉、一冊」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

96 散らし書手本(仮題)
 ちらしがきてほん
[異称]口絵四丁のみ柱題『女用』。
[書型]大本三巻三冊か。
[作者]長谷川妙躰書か。
[板種]享保(一七一六〜三六)頃刊。
刊年不明板*筑波大(上・中か)。
[類型]女筆手本。
[内容]原題不明で、完本の所在も不明だが、本来三巻三冊と思われる妙躰流の女筆手本。ただし妙躰自身の筆には見えない。上巻前付に「和歌三神図」「七夕新歌づくし」「むすひかた品々」「万包やう折形品々」「女中文の封様の事」「歌かるた・双六図」を掲げ、この部分のみに「女用」の柱題を付す。上巻本文に「初春の長閑さ百鳥之こゑも…」で始まる新春の風情を伝える手紙から、夏の夜の物語の感想を綴った手紙までの九通、また、第二冊(恐らく中巻)は、「夏の夜の月」の題で詠んだ和歌の添削を頼む文から、萩・薄・紅葉の季節の風景を綴った手紙までの七通をそれぞれ収録する。従って、上巻は初から夏、次の巻は夏から秋の題材が用いられているため、筑波大本は上・中巻と推定される。例文は、四季の行事や季節の風物を採り入れたもので、大半が妙躰風の散らし書き(まれに並べ書き)で記す。なお、中巻末尾に『和漢朗詠集』からの詩歌各一編を散らし書きで載せる。
[備考]本文冒頭部「初春の長閑さ、百鳥之こゑもはるめき、心もゆふとなりまいらせ候」。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

97 女筆百千鳥
 にょひつももちどり
[異称]不明。
[書型]三巻三冊(大本か)。
[作者]長谷川妙躰(妙貞・筆海子)書。
[板種]享保(一七一六〜三六)頃刊(大阪刊)。
[類型]女筆手本。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女筆百千鳥、塩長」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

98 女用文章錦染
 おんなようぶんしょうにしきぞめ
[異称]不明。
[書型]三巻三冊(大本か)。
[作者]春名須磨書。
[板種]享保(一七一六〜三六)頃刊。
[類型]女筆用文章。
[内容]不明。
[備考]享保頃刊『百人一首』広告中。また寛延二年(一七四九)刊『女文通華苑』広告中に「春名須磨筆、賢女伝記入、三冊」とある。
[所蔵]現存せず。あるいは未刊か。
[複刻]なし。

【元文 一七三六〜四一】

99 女今川錦の子宝
 おんないまがわにしきのこだから
[異称]首題『今川になぞらへて自をいましむ制詞条々』。
[書型]大本一冊。
[作者]田むらよし尾書。西村孫三郎重信画(元文板)。石川豊信画(宝暦板)。
[板種]元文二年(一七三七)一一月刊。宝暦一二年(一七六二)再刊。
元文二年板(江戸)*謙堂・香川大・玉川大。
宝暦一二年板(江戸・鶴屋喜右衛門、村田屋治良兵衛)*謙堂・小泉・学芸大・筑波大・千葉中央。
[類型]女筆往来物。
[内容]元禄一三年(一七〇〇)刊『女今川』(沢田吉作)系統。全文並べ書き。前付に「孟子の母」の故事・挿絵、頭書には「女躾方五章」「女ことはよしあし」、巻末に「忍の字訓」「夫婦をいもせといふ因縁」を収録。
[備考]冒頭部「一、常の心さしかたましく、女の道明らかならざる事」。
[所蔵]他に家政学院大ほか。
[複刻]『往来物大系』八六巻。

100 万用文章 女文林宝袋
 おんなぶんりんたからぶくろ
[異称]一名『女筆文林宝箱』(『宝暦四年書目』)。
[書型]大本三巻一冊。
[作者]居初津奈(都音)作・書。西川祐信画。
[板種]元文三年(一七三八)三月刊。
元文三年板(京都・銭屋庄兵衛)*謙堂・吉海・家政学院大・樟蔭女子短大・秋田県図・筑波大。
刊年不明板*東大。
[類型]女筆用文章。
[内容]居初津奈作、元禄三年(一六九〇)刊『女書翰初学抄』の旧版下の一部(頭書など)を改刻して、付録記事を増補した改題本。『女用文章大成』等が大阪板における模刻の改題本であるのに対して、本書は京都板、しかも『女書翰初学抄』の旧板木を直接改刻した改題本である。津奈の序文はないが、刊記に「作者居初氏女筆都音」と記して原作者を明らかにしている。本文では、各月冒頭部分の注書きが全て削除されたほか、下巻第一三状「いはた帯の祝義請たる返事之事」が何故か巻末に移動された。また、注番号を示す丸付き数字はそのままで、頭書注釈は大半が残ったが、祐信の挿絵一五点を埋木したため注の一部が欠落した。前付は本書独自のもので、「文字の由来并女文の書様」「曲水の由来」「女教訓身持鑑」「女中文書様」「裁物仕様」「女言葉づかひ」「女の四芸」「女官之称号」「祝言座の次第」などの記事を収録。巻末記事は全て削除し、裏見返に「女中文の封様之事」「不成就日之事」を掲げる。
[備考]本書は『女書翰初学抄』の改題本の中では唯一作者名を残すものであって、他の元禄一一年(一六九八)刊『女用文章大成』、元禄一二年(一六九九)刊『当流女筆大全』、享保六年(一七二一)刊『女文庫高蒔絵』はいずれも作者名を故意に隠した海賊版である。冒頭部は『女書翰初学抄』に同じ。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物大系』九二巻/『往来物分類集成』R一二/『女子用往来物分類集成』R一七。

101 新板女筆 女用文色紙染
 おんなようぶんしきしぞめ
[異称]角書が異なる『女筆新板 女用文色紙染』の外題もあり。柱『ヨウブン』。
[書型]大本一冊。
[作者]田村よし尾書。西村重信画。
[板種]元文三年(一七三八)七月刊 。宝暦一二年再刊。
元文三年板(江戸・山本九左衛門、村田治良兵衛)*玉川大(「用文章」)・謙堂・家政学院大・東大・香川大。
宝暦一二年板(江戸・村田屋治郎兵衛、鶴屋喜右衛門)*小泉・謙堂・玉川大・家政学院大・家政大(「古板女用文章」)・宮教大・江森。
[類型]女筆用文章。
[内容]五節句祝義状を含む四季の手紙二〇通を収めた女用文章。一部の例外を除いていずれも季節の花鳥風月を織り混ぜた女文で、奇数状を散らし書き、偶数状を並べ書きで記す。前付・頭書には働く女性の姿(海人・女農業・塩汲み・蚕婦人)を挿絵や、「女諸礼」「女いましめ草」「諸芸鑑」等の記事を掲げる。本書は、後に十返舎一九によって改編され、同じ書名で出版されたが、各書状の主題は踏襲されたが、文面にはかなり手が加えられた。
[備考]冒頭部「春の御寿仰進しまいらせ候。弥御機嫌よく千とせの春に移せられ候御事、かすめてたく幾久しくまん年と、かきりなふ祝入まいらせ候」。
[所蔵]他に学芸大ほか。
[複刻]『往来物大系』九二巻/『女子用往来物分類集成』R一七。

102 四季文章・年中故事 女文章艶姿
 おんなぶんしょうやさすがた
[異称]柱『女筆手本』。
[書型]大本三巻合一冊。
[作者]万屋かめ原作・書・序(前半の女用文章部分)。時枝左門編(作者と記載するが原作者ではない)。
[板種]元文五年(一七四〇)七月刊。寛政元年(一七八九)求板。
元文五年板*次項の刊記による。
寛政元年板(大阪・河内屋喜兵衛)*江森。
[類型]女筆用文章。
[内容]宝永六年(一七〇九)刊『女用文章綱目』の改題・増補版。同書本文の前付に、明和四年(一七六七)刊『女鏡秘伝書改成』の口絵を流用し、さらに巻末に享保(一七一六〜三六)頃刊と思われる『女手ならひ教訓の書』を合綴する。本文は全文散らし書きで、上巻には新年状から歳暮祝儀状までの一五通、中巻には「るすに来る文かへりて遣すへんじ文」以下一四通、下巻は「ほとゝきすの歌所望しにやる文」以下一四通の合計四三通を収録。漢字の多くにルビを付す。また頭書には年中行事、京都の寺社・名所・名物に関する記事や、「女詞字づくし」など各種語彙集を載せる。なお巻末に「封じやう」「脇付の事」「月々のかはり名」の記事を付す。
[備考]冒頭部は 『女用文章綱目』に同じ。また『大坂本屋仲間記録』に「女用文章艶姿、河喜」とある。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性用文庫』八○巻。

103 女消息華文庫
 おんなしょうそくはなぶんこ
[異称]柱『女消息』。一名『女消息花文庫』(『江戸出版書目』『宝暦四年書目』)。
[書型]大本一冊。
[作者]内藤玉枝編・跋。丹羽房作・書。『割印帳(江戸本屋出版記録)』にも「筆工、丹羽房女/作者、内藤玉枝」とある。
[板種]享保一五年(一七三〇)以前初刊か。元文五年(一七四〇)一二月出願(『割印帳』)。元文六年一月刊。板元・植村藤右衛門、売出・植村藤三郎(『大阪出版書籍目録』『割印帳』)。
元文六年板(京都・植村藤右衛門)*小泉。
[類型]女筆用文章。
[内容]跋文によれば、房女が「源氏・伊勢物語を始、大和歌の詞をとり交、四季通用の文章」に仕立てた女用文章で、それを玉枝が編集して上梓したという。内容は、新年の祝意を伝える手紙から歳暮祝儀状までの二八通で、四季の風物や年中行事を主題とした例文ばかりを収録する。並べ書き一通を除き全て散らし書き。なお、頭書には「女文章教訓鑑」「五節句并万物の由来」また、「女用手道具字尽」ほか語彙集、「男女諸礼躾歌」「和歌威徳伝記」「新撰大和詞」「女中言葉遣」「女中忌詞」「女中難病妙薬集」、また前付に「女中人相鑑」「百人一首和歌絵図」「男女相生善悪を知事」などを掲げる。
[備考]冒頭部「久方の天の戸出る朝日かげ、光もゆふに明行空の、こよなふ長閑なる春に御移あそはし、御筆を染られ御玉章被下、ことに御祝儀と仰られ、うつくしき一籠送下され、今朝のかすみも引合、雲の帯もうらゝかに身にまとはれまいらせ候」。享保一五年刊『女中庸瑪瑙箱』(植村玉枝子編)広告中に「女消息花文庫、全一冊」とあるので、元文六年以前刊の可能性も十分考えられる。板元の植村(伏見屋)藤右衛門(玉枝軒)は、編者・内藤玉枝自身とも考えられるが、少なくとも享保一五年頃から彼が『女消息華文庫』の構想を持っていたことは確実である。
[所蔵]他になし。
[複刻]『稀覯往来物集成』一八巻。

【寛保 一七四一〜四四】

104 女教文章鑑
 じょきょうぶんしょうかがみ
[異称]異称『日用重宝 女教文章鑑 文法大成』。一名『女文章稽古』。
[書型]大本二巻二冊。
[作者]林蘭作・書・跋。西川祐信画。
[板種]寛保二年(一七四二)二月刊。
寛保二年板(京都・菊屋喜兵衛)*謙堂・国会・家政学院大・樟蔭女子短大・香川大・小松・筑波大・東大・カリフォルニア大・江差町姥神大神宮。
[類型]女筆用文章。
[内容]享保一三年(一七二八)刊『女万葉稽古さうし』の改題本。本文は『女万葉稽古さうし』に同じだが、前付記事が大幅に増補され、「清少納言の事」「文言葉手引草」「文書様指南抄」「六根の和歌絵抄」「月のから名字尽」「男名頭字尽」「女の名字尽」「女中言葉事」「法体の名づくし」「尼の名つくし」「五段かへし散し文」「三段がへし散し文」等が収録された。
[備考]冒頭部は『女万葉稽古さうし』に同じ。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

105 湖月文章・躾実語教 女要新玉文庫
 じょようあらたまぶんこ/じょようしんたまぶんこ
[異称]一名『女要新玉文章』『女要新珠文庫』。
[書型]大本一冊。
[作者]寺田与右衛門(絮柳)編。
[板種]寛保二年(一七四二)八月彫替願出、板元・河内屋八三郎(『大阪出版書籍目録』)。また、明和元年(一七六四)九月出願、板元・河内屋八三郎、売出・吉文字屋次郎兵衛(『大阪出版書籍目録』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。
明和元年板*広島大。
[類型]男筆用文章か。
[内容]享保六年(一七二一)刊『女要珠文庫』の改編版と思われるもの。原本未見だが、文化六年(一八〇九)刊『女文章大全』巻末広告には、「湖月文章/躾実語教/女要新玉文庫/『源氏物語』の大概を女の文となして其心得をさとし、かたはら重宝なる事をあつめ、常になかめて大に益あり」と紹介する。
[備考]墨付六六丁(『割印帳』)という。ちなみに『女要珠文庫』は墨付六三丁だから、付録記事を若干改めた程度のもので、本文は『女要珠文庫』と同じであろう。なお、『大坂本屋仲間記録』に「女要新珠文庫。河八三」とある。また『宝暦四年書目』に「一、女要新玉文章、寺田氏」とあり。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

【延享 一七四四〜四八】

106 女文台綾嚢
 おんなぶんだいあやぶくろ
[異称]柱『女ぶんだい』。
[書型]大本一冊。
[作者]田中友水子(甚助)編・序。寺井重信画。
[板種]延享元年(一七四四)一月序。延享元年三月出願、板元・丹波屋理兵衛、河内屋茂兵衛(『大阪出版書籍目録』)。延享元年五月刊。
延享元年板(大阪・柏原屋与市、河内屋茂兵衛)*小泉・東大・ノートルダム清心・国会・早大。
延享元年板(大阪・丹波屋理兵衛、河内屋茂兵衛)*謙堂・江森。
寛政一一年板(大阪・柏原屋与左衛門)*酒田市図。
[類型]男筆用文章。
[内容]言い替え表現を多く伴った江戸中期の女用文章。「正月の文」から「法躰祝の文・同敷返事」までの五四通(全て往復文)を収録する。五節句・四季の手紙から婚礼、出産、死去、その他諸用件に伴う例文を一通り載せるが、特徴的なのは各例文に続けて「右文章の替字」として同様の表現を種々列挙している点で、さらに宛名人の身分に応じた敬意の上下の別も示す。付録記事も豊富で、前付に「小野於通が伝」「女中身持八景」「五節句錺之図」「女中文の枝折」等、頭書に「歳時故事略」「本朝賢女伝」「女中化粧箱」「香袋の方」「婚礼略式」「女諸礼手引草」「染物しなん」「万しみ物落やう」「裁物口伝」「縫物の手号」「日用大和詞」「家伝妙薬袋」、巻末に「三十六歌仙」「男女相性」等の記事を載せる。
[備考]冒頭部「新玉の年たち帰るけふの御寿、誠に幾千代かけて、まん限なき御めてたさに存まいらせ候」。口絵色刷。本書頭書「女中身持八景」を陰刻手本に仕立てたのが寛政八年(一七九六)刊『女身持八景』である。『宝暦四年書目』に「一、女文台綾袋、田中甚介」とあり。
[所蔵]他にカリフォルニア大。
[複刻]『往来物分類集成』R二七/『日本教科書大系往来編』一五巻/『女子用往来物分類集成』R一八。

107 荒木流 女筆初音の道
 にょひつはつねのみち
[異称]『割印帳(江戸本屋出版記録)』に「女筆初音の梅」と誤記する。
[書型]大本二巻二冊。
[作者]荒木慈忍書。松貞跋。
[板種]延享二年(一七四五)九月刊。延享二年秋出願、板元・菱屋(八木)治兵衛、売出・須原屋茂兵衛(『大阪出版書籍目録』『割印帳』)。
延享二年板(京都・八木治兵衛、名古屋・木村久兵衛)*小泉・玉川大・無窮会。
[類型]女筆手本。
[内容]比較的短文の女文二二通を収録した女筆手本。散らし書きまたは並べ書きの大字・無訓で綴る。上巻は「新年祝儀状」〜「雪中に安否を問う文」の一一通、下巻は「安否を問う披露文」〜「歌かるたの件を承諾する文」の一一通を収録する。上巻は四季贈答の手紙、下巻は季節感のない諸用件や祝事に伴う手紙が中心である。また各巻冒頭に女性芸能の図を掲げる。なお、跋文によれば、筆者はもともと書家ではなかったが、能書であったため門人・松貞尼のすすめによって上梓したものという。
[備考]冒頭部「此春よりの御悦何かたもひとしく申収まいらせ候」。板元は「江戸本屋記録」による。『女学範』『宝暦四年書目』。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性文庫』五九巻。

108 春水かな手本
 しゅんすいかなでほん
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]馬場春水書か。
[板種]延享三年(一七四六)刊。江戸・松本新六板(『宝暦四年書目』『江戸出版書目』)。
[類型]男筆手本。
[内容]不明。
[備考]墨付三四丁(『大阪出版書籍目録』)。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

109 女文章都織
 おんなぶんしょうみやこおり
[異称]なし。
[書型]大本一冊。
[作者]居初津奈作・書。田中友水子補。寺井重信画。
[板種]元禄(一六八八〜一七一一)頃作。延享三年(一七四六)一月差替願出、板元・本屋(安井)弥兵衛(『大阪出版書籍目録』)。延享四年一一月初刊。
延享四年板(大阪・安井弥兵衛)*小泉・筑波大(「伊勢物語女日用文章」)。
[類型]女筆用文章。
[内容]歌書・物語・軍書など種々の古典についての知識を手紙文中に盛り込んだ異色の女用文章で、新年状以下二○通(大半が散らし書き)を収録する。例えば新年の挨拶かたがた『伊勢物語』を贈る手紙を冒頭に掲げ、その返状では『伊勢物語』の書名の由来について述べ、続いて石山寺参詣を果たした旨を伝える手紙で紫式部を偲びつつ『源氏物語』について語り、その返状で『源氏物語』執筆までの経緯を述べるという具合に、四季折々の手紙や結納・婚礼祝儀状など各種の消息文の形式をとりながら、『伊勢物語』『源氏物語』『狭衣物語』『枕草子』『栄花物語』『万葉集』『百人一首』『徒然草』『太平記』『保元・平治物語』『平家物語』『源平盛衰記』等の作者・内容・故実等を紹介する。頭書にはこれらの古典に関する記事が豊富に示され、特に本文ともども軍記物語にも言及する点は女子用往来としては異例である。また前付に「女孝行の事」「文の道しるべ」「女中ちくさ教訓」「七夕新歌づくし」などを載せる。なお、刊記に「筆作・居初氏津奈」と記すが、刊行年代からいって津奈の遺稿を上梓したものと思われる。
[備考]冒頭部「歳の始の御ことふき、きのふに替らぬ松風の音も、けふは千とせをよばふかとうたがはれまいらせ候」。ちなみに『玉英堂稀覯本書目』第二二七号三〇頁には津奈が元禄頃に書写した『伊勢物語』一冊が載る。同書の奥書には「伊勢物語一帖以秘本書写之。居初氏女津祢」と記す。「津祢」は「つね」と読むべきであるが、元禄三年刊『女書翰初学抄』等では「都音」と記すから、津奈・津祢・都音の三様の署名があったことになる。また、同目録によれば「「居初氏女」の署名のある奈良絵本が、かつて市場に一、二度現れたことがある」という。これらからも津奈が書画に極めて秀でた女性であったことが分かる。
[所蔵]他になし。
[複刻]『稀覯往来物集成』一八巻。

【寛延 一七四八〜五一】

110 女筆姫小松
 にょひつひめこまつ
[異称]外題角書不明。
[書型]大本三巻三冊、のち三巻合一冊。
[作者]中川内記(利孝)作(『割印帳(江戸本屋出版記録)』には「中川私孝作」と記す)。中川内記書か。
[板種]寛延元年(一七四八)八月出願、板元・伊丹屋茂兵衛(『大阪出版書籍目録』)。同年同月初刊か。宝暦二年(一七五二)八月出願、板元・伊丹屋茂兵衛、売出・西村源六(『江戸出版書目』『割印帳』)。江戸中期再刊。
宝暦二年板(大阪・伊丹屋茂兵衛か。*蘭渓筆という)*西尾市図。
刊年不明板(大阪・糸屋市兵衛)*都立中央・玉川大。
[類型]男筆手本か。
[内容]散らし書き女筆手本の一つだが、女性筆かは疑わしい。上巻は新年状以下一二通で主に春から初秋(七夕)までの手紙、中巻は七夕祝儀の礼状(上巻末尾の一状の返事)以下一二通で初秋から初冬にかけての手紙とその他用件の手紙、下巻は詠歌を拝見したい旨を伝える手紙以下一五通で、歳暮までの手紙や婚礼祝儀状、また諸事に伴う手紙などを収録する。四季折々の贈答の文を中心に、季節ごとの外出・見物や、特に和歌のやりとりについての例文が目立つ。また、各巻巻末に二葉ずつ、合計六葉の女性風俗図を載せる。
[備考]冒頭部「ことふりまいらせ候へとも、初春の御めてたさ申納めまいらせ候」。『宝暦四年書目』に「三、女筆姫小松、中川内記」とあり。なお、刊記部分に掲げられた糸舎弘昭軒(糸屋市兵衛)板「女用書籍出来目録」には、本書のほかに『女筆美須の雪』『女筆大和錦』『女筆柳の枝』などの書名が見える。また、寛延元年板は未発見。
[所蔵]他にカリフォルニア大。
[複刻]『江戸時代女性文庫』一九巻。

111 女用大成・教訓躾方 女用紅葉の錦
 にょようもみじのにしき/じょようもみじのにしき
[異称]外題『日用文章 女用紅葉の錦』もあり。目録題『女中重宝日要文章』。柱題『女用文』。なお、『宝暦四年書目』には『女紅葉都の錦』(長栄軒作)の書名が見えるが本書と関連あるか。
[書型]大本一冊。
[作者]中谷治八(堀流水軒末流)作・書・跋。
[板種]寛延二年(一七四九)出願、板元・大和屋伊兵衛、売出・須原屋茂兵衛(『割印帳』)。同年初刊。宝暦一三年(一七六三)三月再刊。
寛延二年板(京都・出雲寺和泉掾、大和屋伊兵衛)*小泉・玉川大(「女用文章」)。
宝暦一三年板(江戸・山崎金兵衛、京都・菱屋治兵衛)*玉川大・謙堂・樟蔭女子短大・昭和女子大・弘前市図・宮教大・小松(「女用文」)。
[類型]男筆用文章。
[内容]「正月の文」「七くさの文」「節会のふみ」「久敷逢さる方へつかはす文章」から「歳暮の文」までの四季折々の手紙三七通を収録した女用文章。並べ書きと散らし書きを含む手本である。巻頭に「五節句由来」「不成就日之事」「文の封じやう」等、頭書に「女子教訓歌」「万字つくし」「女かなつかい大かい」「女歌仙」「小笠原流折形」「女いましめ草」「香の聞様」「しみ物おとしやう」「女の名字尽」その他を載せる。ただし頭書後半部には「女文章」と題して「久敷逢たるかたへ遣す文」以下二二通の例文(中には前記本文と重複的な例文もある)を収録する。なお、本書の前半部だけを抽出した改題本『女用華の宴』が宝暦一三年(一七六三)に刊行された。
[備考]冒頭部「初春の御ことふき、毎もかはらぬ御悦ひとは申なから、ひとよを隔て日かけもゆたかに、軒端をつたふうくひすの初音も一しほのとかにおはしまし候」。宝暦一三年板は外題の異なる二本があり、付録記事の順序も両者で異なるほか、題簽書名のルビも角書「女用大成」が「によようもみち…」とあるのに対して、角書「日用文章」は「ぢよようもみち…」とする。なお原表紙は色彩画。
[所蔵]他に石川県郷土。
[複刻]『江戸時代女性文庫』三三巻/『女子用往来物分類集成』R一八。

112 重宝綱目 女要婦見硯
 じょようふみすずり
[異称]一名『女筆大成 女用婦見硯』異称『女用婦見硯』(『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。
[書型]半紙本一冊。
[作者]村井範啓作・跋(ただし『大阪出版書籍目録』によれば泉屋喜太郎作)。中谷楮同書(ただし、寛延板見返には「浅田氏女筆」と記し、『割印帳』には「村井範啓筆」と記す)。北尾辰宣(雪坑斎)画。
[板種]延享五年(一七四八)六月出願、板元・泉屋喜太郎(『大阪出版書籍目録』)。寛延二年(一七四九)一月出願、板元・村井喜太郎、売出・西村源六(『江戸出版書目』『割印帳』)。同年同月初刊。宝暦一〇年(一七六〇)一一月求板。
寛延二年板(大阪・村井喜太郎)*『書誌学月報』四二号。
宝暦一〇年板(大阪・額田正三郎)*ノートルダム清心・吉海。
[類型]用文章(女筆・男筆の別は不明)。
[内容]全文を散らし書きで綴った頭書入りの女用文章。「春のめてたさ何方も思しめすまゝといわゐ入まいらせ候…」で始まる新年状以下二一通を収録する。内容は季節折々の挨拶や京・江戸等の四季風物、慶事その他に関する手紙で、いずれも長谷川妙躰風の筆跡である(ただし頭書をやや大きくとっているため、女筆手本ほどの大字ではない)。巻頭に「千種姫」等の挿絵と「百人一首」、頭書に「女歌仙姿絵抄」「花月占伝授」「懐胎十月教歌」「人間一生の祝儀」「染物のひでん」「しみ物おとしやう」「まじなひの秘術」「万病妙薬」「男女相性并歌」その他を載せる。なお、宝暦一〇年板の前付は「三曙和歌図」「百人一首」「色紙短冊懐紙書様」とやや異なる。また、本書の前付を改めた改題本が次項の『女用仮字書筆』である。
[備考]口絵一丁は紅刷。なお、本書のパロディー本に、不知足堂作、艶堂散人画の『閨宝大成 女容婦美硯』(明和頃刊。見返に「系師 娯楽堂蔵」と記す)がある(『書誌学月報』四二号)。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

113 新板 女用仮字書筆
 じょようかながきふで
[異称]なし。
[書型]大本一冊。
[作者]村井範啓作・跋。中谷楮同書。北尾辰宣(雪坑斎)画。
[板種]寛延二年(一七四九)一月刊記。 宝暦末年以降初刊か。
刊年不明板(大阪・村井喜太郎 *寛延二年刊記)*小泉・ノートルダム清心。
[類型]男筆用文章。
[内容]寛延二年(一七四九)刊『重宝綱目 女要婦見硯』の改題本。全文を長谷川妙躰風の散らし書きで綴った女用文章。本文は同一だが、前付が異なり、「摂津国五景詠物」「三曙和歌図」「初春祝」「七夕の由来」を掲げる。
[備考]冒頭部は『重宝綱目 女要婦見硯』と同じ。巻頭口絵色刷。彫工は村上源右衛門。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性文庫』三三巻。

114 筆海子長谷川筆 女教文海智恵嚢
 じょきょうぶんかいちえぶくろ
[異称]見返題『女文海』(再板本では「女文硯」と変わる)。柱『女ぶんかい』。跋文中に『女文海智恵袋』とあり。
[書型]大本一冊。
[作者]志田垣与助(与祐)編。長谷川貞寿(筆海子)書。寺井重房画。白雲館(伊丹屋茂兵衛)跋。
[板種]寛延二年(一七四九)五月出願、板元・成井(伊丹屋)茂兵衛、売出・西村源六(『江戸出版書目』『割印帳』)。同年同月初刊。寛延二年一二月出願(『大阪出版書籍目録』)。天明五年(一七八五)四月再刊。文化元年(一八〇四)再刊。
寛延二年板(大阪・成井茂兵衛)*玉川大・千葉中央。
天明五年板(大阪・高橋平助)*江森・玉川大・学習院大・慶大。
文化元年板(大阪・塩屋(高橋)平助)*小泉。
刊年不明板(大阪・高橋平助)*千葉中央・学芸大。
[類型]女筆用文章。
[内容]ほぼ全通が往復文で、「初春の文」から「十種香の文」までの四〇通(全文散らし書き)を掲載した女用文章。四季消息やその他吉凶事に伴う手紙など一通りを載せる。各例文には丸付きのイロハ文字で目次からの検索が容易にできる。妙躰風を学んだというが、筆勢は妙躰に及ぶものではない。前付に「歌・琴・貝合・碁・双六の始」「島台の図式」「男女の始并官号」「玉津島・竜田・厳島ほか由来」「女諸礼の事」等を、また頭書に「本朝列女伝」「婚礼式法」「五節句の由来」「婦女故事談」「香道の事」ほか香道関連、「女中詞づかひ」「あらひ粉の方」「懐胎養生の事」「色紙短冊歌の書やう」「時の鐘の事」「手道具図式」「服忌令」「七夕歌づくし」「小笠原流折形図」などを掲げる。
[備考]跋文によれば、筆者は長谷川妙躰(妙貞)の書流を受け継いだ能書という(題簽角書の「筆海子」は妙躰の号であるが、貞寿も同じ雅号を使用)が、妙躰流と称するが筆勢は弱く、また体裁も妙躰手本とはやや異なる。初板本の彫工は京都・丹羽平左衛門。寛延板の書籍広告中に、本書を「長谷川妙貞流の手本。其外女中教訓をしるす」と紹介する。『宝暦四年書目』に「一、女教文海智恵袋、志田垣氏」とあり。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性文庫』三三巻/『女子用往来物分類集成』R一六。

115 □勢手本・□和列女 女文通華苑
 おんなぶんつうはなのその
[異称]なし。
[書型]大本一冊。
[作者]春名須磨作・書・序。
[板種]寛延元年(一七四八)一二月出願(「以前『女用唐錦』と題せしを彫替改題願出」)、板元・吉文字屋市兵衛、売出・小林新兵衛(『大阪出版書籍目録』『割印帳』)。寛延二年七月出願、同年初刊。
寛延二年板(大阪・鳥飼(吉文字屋)市兵衛)* 東大・三次市図。
[類型]女筆用文章。
[内容]享保二〇年(一七三五)刊『女用文章唐錦』の改題本。前付の一部と本文は全て『女用文章唐錦』と同じであるが、巻頭口絵(文を読む女性図。文の内容が目録代わりになっている)と前付前半部に「女風俗品定(「我心かゝ見にうつる物ならは さこそは影の見にくかるへき」といった教訓歌をちりばめる)」「楽器の始り」の記事など三丁を増補し、他の前付記事の収録順序を改めた。
[備考]冒頭部は『女用文章唐錦』に同じ。『宝暦四年書目』に「一、女文通花の園(筆者名付記)」とあり。また、安永二年(一七七三)刊『女訓三才図絵』広告中に「女文通花苑、ちらし書、女の手本、長谷川様其外一切重宝をのす」とあり。
[所蔵]他に謙堂。
[複刻]『往来物分類集成』R二八。

116 女筆都の春
 にょひつみやこのはる
[異称]不明。
[書型]三巻三冊(大本か)。
[作者]長谷川縫(ぬい)書。『割印帳(江戸本屋出版記録)』には作者欄に「長谷川氏」とだけ記す。
[板種]寛延三年(一七五〇)一〇月出願、同年同月刊。板元・山田三郎兵衛、売出・西村源六(『割印帳』『江戸出版書目』『江戸本屋記録』)。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]墨付四〇丁(『割印帳』)。筆者名は『女学範』『宝暦四年書目』による。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

117 女用文教訓大全
 おんなようぶんきょうくんたいぜん
[異称]書名は届出の時点での仮題であったが、実際の出版では『女用正訓大全』と改められたようである。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]干各作。
[板種]寛延四年(一七五一)三月刊。江戸・奥村喜兵衛板(『江戸出版書目』)。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]『江戸出版書目』『割印帳』には「右者、写本留、板出来之節、割印出ス筈、未三月出来、外題替リ出ル」とある。刊行時に改題したというが、別項として載る『女用正訓大全』(全一冊、墨付五十六丁、寛延四未、干各作、板元・奥村喜兵衛、売出・同人)というのがあるが、これが改題後の書名であろう。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

【宝暦 一七五一〜六四】

118 女文要袖硯
 おんなぶんようそですずり
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]雪坑斎作。ただし『大阪出版書籍目録』『江戸出版書目』『割印帳(江戸本屋出版記録)』では藤江作とする。
[板種]宝暦二年(一七五二)三月出願、板元・泉屋(和泉屋)喜太郎、売出・西村源六(『大阪出版書籍目録』『割印帳』)。
宝暦二年板(京都・野田藤八)*ノートルダム清心。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]『宝暦四年書目』に「一、女文要袖硯、雪悦斎」とあり。墨付三四丁。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

119 女筆小倉手本
 にょひつおぐらてほん
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]高木佐世書。
[板種]宝暦二年(一七五二)四月出願、板元・河内屋茂兵衛(『大阪出版書籍目録』)。同年同月初刊か。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『宝暦四年書目』に「一、女筆小倉手本、高木佐世」とあり。『女学範』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

120 長谷川筆の錦
 はせがわふでのにしき
[異称]一名『筆の錦』(『江戸出版書目』)。
[書型]特大本一冊。
[作者]長谷川妙躰(妙貞・筆海子)書。
[板種]宝暦二年(一七五二)三月出願(『大阪出版書籍目録』)。宝暦二年七月出願、板元・村上(本屋)伊兵衛、売出・西村源六(『江戸出版書目』『割印帳』)。同年同月初刊。江戸中期再刊か。
宝暦二年板(京都・村上(本屋)伊兵衛、江戸・西村源六)*大阪天満宮。
宝暦二年板(京都・菊屋七郎兵衛 *後印)*小泉・浅倉屋書店。
[類型]女筆手本。
[内容]新年祝儀状や花見同伴を快諾する文、寒中見舞状など二九通を収録した散らし書きの女筆手本。ほとんどが四季折々の手紙で、京都周辺の名所(二月堂薪能、誓願寺の紅梅、清水寺・高台寺の桜、竜田・高雄山の紅葉など)を題材にした例文が目立ち、ほかに祝意を伝える披露文なども含む。巻末に『和漢朗詠集』からの詩歌数編を載せる。なお「長谷川妙貞筆」と大字で書した扉を掲げるが、これは青色刷。他の妙躰の手本に比べ一回り大きい分、のびのびとした筆致で綴る。妙躰最晩年の作品。
[備考]冒頭部「幾千と世万代も相かはらす、めてたき御年御むかへあそはし候よし、めてたさこなたとてもおなし御事に悦申しまいらせ候」。『宝暦四年書目』に「一、長谷川筆の錦、妙貞」とあり。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

121 倭規 女用章
 おんなようしょう
[異称]扉題『倭散し』。一名『倭規女用章』(『江戸出版書目』)。
[書型]特大本一冊。
[作者]進藤秀(藻雪)書・跋。『割印帳(江戸本屋出版記録)』には「進藤氏筆」と記す。
[板種]宝暦二年(一七五二)一月書。宝暦三年(一七五三)一月出願、板元・小川源兵衛、売出・万屋清兵衛(『大阪出版書籍目録』『割印帳』)。同年同月初刊。
宝暦三年板(江戸・松葉清兵衛、京都・小川久兵衛、小川源兵衛)*小泉・吉海・京大・福地書店。
[類型]女筆手本。
[内容]新年の福引に際しての祝儀状から、雛人形飾り役に関する質問状までの全三九通を収録した特大本の女筆手本。前半二四通は、ほぼ一年各月の行事や節句に伴う手紙で、それぞれ往復一双ずつ収録し、後半一五通は往状または返状のみで、新年祝儀の披露文や山桜を贈る文、賀茂祭見物の文、暑中見舞いなど季節折々の手紙が大半を占める。一枚散らし、三段〜五段散らしなど全文を各種散らし書きで綴る。例文に丸付きのイロハ文字で読み順を示すのは女筆手本としては異例である。
[備考]冒頭部「明日は例のことく御福引にておはしまし候」。『宝暦四年書目』に「一、女用章、近藤秀」とあるが、「近藤」は「進藤」の誤り。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

122 女教文章 女要文通筆海子
 じょようぶんつうひっかいし
[異称]見返題『女要文通 筆海子』。柱『女文通筆海子』。一名『女用筆海子』(『江戸出版書目』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。
[書型]大本一冊。
[作者]梅月堂編・序。長谷川品(筆海子)書・跋。西川祐信画。
[板種]宝暦三年(一七五三)一月出願、板元・秋田屋伊兵衛、売出・鱗形屋孫二郎(『江戸出版書目』『割印帳』)。宝暦三年春序・同年一月初刊。享和元年(一八〇一)頃再刊。
宝暦三年板(大阪・柏原屋清右衛門、京都・秋田屋伊兵衛)*謙堂・小泉・吉海。
享和元年板(刊記に「享和元年九月」とあるが、これは明らかに他書の流用。*後印)*国会。
[類型]女筆手本。
[内容]跋文によれば、長谷川妙躰の書号である「筆海子」を受け継いだ長谷川品(妙躰と同じ洛陽四条の人)が書した女筆手本で、その号を書名としたものである。各頁に匡郭を設け(妙躰の手本は全て無郭)、妙躰風に全文を散らし書きで綴る。内容は、天下太平を謳歌した一文(手紙文)を冒頭に掲げ、続いて新年状以下各月の行事や花鳥風月の風情を主とした手紙文、さらに櫛置(髪置)・婚礼・成人等の祝儀状(礼状)など、合計二三通の例文をしたためる。また、巻頭に「琴・双六由来」「小笠原流折形」「女の四徳」「女用大和詞」「女中文の封じ様」などの記事(挿絵)を掲げる。なお、本書の改題本に明和七年(一七七〇)刊『女要筆玉藻』や『女筆御世の春(未発見)』などがある。
[備考]冒頭部「天地之ひらけしめくみ、久方のあまの児屋根之御譲とて、かしこき君の御まつりことたゝしく、四の海静に御代の納りて民もにきはしく、巌之かめやひな鶴之あそふ風情、宝来山もよそならす…」。なお、享和板の刊記には「作者・好文舎青氏、画工・竹原雲峯、筆耕・兎鹿斎主人、校合・酒屋隣馬宥」とあり、『大増補芝居節用集』の近刊予告も見えるから、享和元年刊『戯場節用集』の刊記の流用と思われる。『宝暦四年書目』に「一、女要文通筆海子」とある。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性文庫』八六巻。

123 女筆みよし野
 にょひつみよしの
[異称]不明。
[書型]三巻三冊(大本か)。
[作者]長谷川品(しな・筆海子)書。『大坂本屋記録』は妙躰書とし、『割印帳(江戸本屋出版記録)』では「長谷川筆」と記す。
[板種]宝暦三年(一七五三)二月出願、板元・和泉屋庄兵衛、売出・吉文字屋次郎兵衛(『大阪出版書籍目録』『割印帳』『江戸本屋記録』)。同年同月初刊。
[類型]女筆手本。
[内容]不明。
[備考]『女学範』。『大坂本屋仲間記録』に「女筆みよしの、泉卯・敦九」とある。また『宝暦四年書目』に「三、女筆みよし野、しな」とある。墨付五一丁。天保四年(一八三三)刊『女今川操種』(大阪・敦賀屋九兵衛)広告中。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

124 女筆蘆間鶴
 にょひつあしまのつる
[異称]柱『蘆間』。
[書型]大本一冊。
[作者]宮崎競花(競華園)書。皎天斎国雄跋。
[板種]宝暦三年(一七五三)六月出願、板元・和泉屋文助、売出・吉文字屋次郎兵衛(『大阪出版書籍目録』『割印帳』。ただし『割印帳』は板元を「和泉屋久助」と記す)。同年同月刊。
宝暦三年板(大阪・和泉屋文介)*国会・東北大。
[類型]男筆手本か。
[内容]難波方面へ観光に行く友人のために同地の名所・古跡を案内する趣旨で綴った文章。まず高津山からの風景から書き始め、大坂城・天満宮・安治川・芦屋・灘・須磨を始めとする大坂周辺の名山・名刹等の名所とその趣を全文一通の手紙文に綴る。巻頭に口絵、末尾に和歌一首を載せる。全文散らし書き。
[備考]冒頭部「近き中、難波かた御見物の御もよふしとて仰越れ候、名所古跡あら書付、御めにかけまいらせ候」。『宝暦四年書目』に「一、女筆蘆間鶴、宮崎氏」とあり。
[所蔵]他に漆山又四郎。
[複刻]なし。

125 文章通宝 女教倭文庫
 じょきょうやまとぶんこ
[異称]なし。
[書型]大本三巻合一冊。
[作者]長谷川妙貞(妙躰・筆海子)書。北尾雪坑斎(雪坑斎)編・画。
[板種]宝暦四年(一七五四)八月出願(『割印帳(江戸本屋出版記録)』)、同年同月刊。宝暦五年三月出願、板元・絲屋源助(『大阪出版書籍目録』)。また板元・平井源助、売出・鱗形屋孫兵衛(『江戸出版書目』『割印帳』)。
刊年不明板(大阪・糸屋市兵衛 *後印か)*吉海・家政大。
[類型]女筆手本。
[内容]享保二〇年(一七三五)刊『見寿乃雪』の改題本。同書各巻巻頭の挿絵を削除し、「衣通姫」「六歌仙」「四季和訓」「女日用文字尽」「女中言葉づかひ」等の記事を増補した。
[備考]冒頭部は『見寿乃雪』に同じ。宝暦頃刊『女筆姫小松』広告中。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

126 女消息歌枕
 おんなしょうそくうたまくら
[異称]不明。
[書型]三冊( 大本か)。
[作者]不明。
[板種]宝暦四年(一七五四)頃刊。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]『宝暦四年書目』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

127 女文章都錦
 おんなぶんしょうみやこにしき
[異称]不明。
[書型]一冊( 大本か)。
[作者]不明。
[板種]宝暦四年(一七五四)頃刊。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]『宝暦四年書目』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

128 女万用筆の海
 おんなまんようふでのうみ/おんなばんようふでのうみ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]宝暦四年(一七五四)頃刊。
[類型]手本か。
[内容]不明。
[備考]『宝暦四年書目』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

129 かな手本
 かなでほん
[異称]不明。
[書型]二巻二冊(大本か)。
[作者]嘯山書。
[板種]宝暦四年(一七五四)頃刊。
[類型]男筆手本。
[内容]不明。
[備考]『宝暦四年書目』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

130 女筆秋津風
 にょひつあきつかぜ
[異称]不明。
[書型]三巻三冊( 大本か)。
[作者]垣内すへ(須恵)書。
[板種]宝暦四年(一七五四)頃刊。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『宝暦四年書目』『女学範』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

131 女筆九重錦
 にょひつここのえのしき
[異称]不明。
[書型]一冊( 大本か)。
[作者]不明。
[板種]宝暦四年(一七五四)頃刊。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『宝暦四年書目』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

132 女筆四季の友
 にょひつしきのとも
[異称]不明。
[書型]二巻二冊(大本か)。
[作者]沢田吉書。
[板種]宝暦四年(一七五四)頃刊。大阪・塩屋忠兵衛板か。
[類型]女筆手本。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女筆四季の友、二、塩忠」とある。『宝暦四年書目』に「二、女筆四季の友(筆者名不記)」とあり。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

133 重宝大成 女訓用文都錦
 じょくんようぶんみやこにしき
[異称]見返題『用文章・重宝大成 女訓都錦』。首題『女文章』。
[書型]半紙本一冊。ただし『明和九年書目』には二冊の旨を記すから、二冊本もあったか。
[作者]義笑作。
[板種]初刊年代不明。宝暦五年(一七五五)求板。
宝暦五年板(京都・菱屋治兵衛 *「百人一首」を付す)*謙堂・三重県奥山氏・跡見。
刊年不明板(京都・菱屋治兵衛)*小泉。
刊年不明板(*「百人一首」を付す)*玉川大。
[類型]男筆用文章。
[内容]半丁に一通ずつ女文を載せ、さらに本文要語の略注を頭書に掲げた女用文章。散らし書き、並べ書きなどを織り混ぜながら合計二三通を収録する。「恵方参り」に同道したい旨を伝える手紙や新年祝儀状、七種祝儀状、また、五月雨の徒然の季節に種々の「物語」拝借を願う文など、四季折々の手紙からなる。巻首には「結納の式」〜「若子の宮参り」など婚礼・出産に関する挿絵と説明文を載せる。また、本書には巻末に「百人一首」(半丁に四首ずつ)を合綴したものがある。
[備考]冒頭部「恵方参り遊はし候はゝ、こなたまて御倡引待入まいらせ候」。
[所蔵]他に酒田市図・河原田小・林美一ほか。
[複刻]なし。

134 女通用文袋
 おんなつうようふみぶくろ
[異称]『女通要文袋』(『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。
[書型]一冊( 大本か)。
[作者]居初都音(つね・津奈)書。
[板種]宝暦五年(一七五五)一月出願、板元・銭屋庄兵衛、売出・太田庄右衛門(『大阪出版書籍目録』『割印帳』『江戸出版書目』)。同年同月刊か。
[類型]女筆用文章か。
[内容]不明。元文三年(一七三八)刊『女文林宝袋』と関連あるか。
[備考]『明和九年書目』に「一、女通用文袋、都音」とある。墨付八一丁(『江戸出版書目』『割印帳』)。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

135 龍田詣 并散艸
 たつたもうで
[異称]なし。
[書型]大本一冊。
[作者]長雄耕雲書。浦井丞右・船田雅通跋。
[板種]宝暦六年(一七五六)一月出願、板元・売出とも鶴本平蔵(『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。同年同月刊。
宝暦六年板(江戸・鶴本平蔵)*小泉・学芸大。
[類型]男筆手本。
[内容]前半に「龍田詣」後半に「仮名文章(冒頭丁には「仮名の一ノ十」とある)」を合綴した手本。「龍田詣」は流布本に同じで、大字・四行・無訓で記す。また「仮名文章」は、「新年祝儀状」から「嫁入りする人への教訓状」までの三〇通を散らし書きにした手本で、四季折々の手紙と諸用件の手紙の双方を含む。
[備考]「仮名文章」の冒頭部「あらたに帰此春の御悦、千さともおなしときはなる春のみとりもおりをえて、今一入の御言祝、となたもひとしかるへく候」。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

136 大橋かな手本 并三躰いろは
 おおはしかなでほん
[異称]一名『大橋仮名手本』(『江戸出版書目』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。
[書型]大本一冊。
[作者]篠田行休書。関口道順跋。
[板種]宝暦六年(一七五六)六月出願、板元・売出とも前川六左衛門(『江戸出版書目』『割印帳』)。宝暦六年秋跋・初刊。江戸後期再刊。
宝暦六年板(江戸・前川六左衛門)*次項刊記による。
宝暦六年板(名古屋・永楽屋東四郎 *江戸後期後印)*小泉・小松。
[類型]男筆手本。
[内容]五節句・四季の手紙や袖留祝い・婚礼祝いの文など仮名文章一八通を収録した手本。大字・約四行・無訓で記す。並べ書きと散らし書きの双方を含む。巻末に春の和歌や三体いろは(平仮名と漢字行草二体)などを載せる。
[備考]冒頭部「此春の御しうきいつかたもおなし御事に祝ゐ入まいらせ候」。跋文に筆者の略歴や出版の経緯を記す。また、後印本見返に大橋流・@山流その他手本類の蔵板書目(尾張東壁堂板)を掲げる。『明和九年書目』。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

137 女文要悉皆嚢
 おんなぶんようしっかいぶくろ
[異称]不明。
[書型]一冊( 大本か)。
[作者]田中友水子作。
[板種]宝暦七年(一七五七)五月出願、「泉屋喜太郎代判、喜兵衛」(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]男筆用文章。
[内容]『女用文章糸車』の先行書という。
[備考]なし。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

138 女古文倭宝苑
 おんなこぶんやまとほうえん
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]北尾仁右衛門(辰宣・雪坑斎)作。
[板種]宝暦七年(一七五七)一一月出願、「泉屋喜太郎代判、喜兵衛」(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]『明和九年書目』に「一、女古文倭宝苑、雪坑斎」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

139 文章必用 女千載和訓文
 おんなせんざいわくんぶみ/おんなせんざいわくんぶん
[異称]主題『女文章手引草』。扉題『文章指南抄』。なお『江戸出版書目』に『女千載私園文』と誤記するが、『割印帳(江戸本屋出版記録)』では『和国文』と訂正してある。
[書型]大本一冊。
[作者]文正堂(紅屋長右衛門)作(ただし『江戸出版書目』によれば玉花子作。また『割印帳』は『女千載和国文』の作者を玉花子とする一方、『女千載和訓文』の作者を文正堂と記す)。月岡丹下(雪鼎)画。
[板種]宝暦八年(一七五八)一〇月出願(『大阪出版書籍目録』)。ただし、『江戸出版書目』『割印帳』には宝暦三年一二月出願で、「右之書写本ニ而改板行出来之節、割印出ス筈」と記し、さらに宝暦九年秋の条に「宝暦三酉十二月改済、此度板行出来」と記す。宝暦九年(一七五九)八月刊。板元・売出ともに吉文字屋次郎兵衛。
宝暦九年板(大阪・吉文字屋市兵衛、江戸・吉文字屋次郎兵衛)*謙堂・東博・玉川大(「女文章指南抄」)・中央大・成田。
[類型]男筆用文章。
[内容]主題のイロハ分けによって配列した独特な女用文章。冒頭に「亥子のいはゐに遣す文」「いまだあはざる方へ遣す文」「いむきよ(隠居)したる人へ遣す文」など「イ」音で始まる主題の例文を掲げ、以下、イロハ順に「せちふるまひよびに遣す文」まで合計一〇七通を収録する。全文がやや大字八行・付訓の並べ書きで、原則として書止の「めでたくかしく」は省略する。例文も多いが付録記事も豊富で、巻頭に「神・尊・聖・賢・貞・列」の教訓と「文章指南抄」と題した散らし書き・並べ書きの各種書法(七通)、「小笠原流折形・結形」「しうげんの次第」「女の名字づくし」「女諸礼教草」などの記事を掲げ、頭書にも「四季衣装の事」「文枝折」「月の異名」「衣服の数詞遣」「道具数言葉づかひ」「名女伝記」「文のかきやう指南」「女言葉づかひ」「大和言葉」「呪咀調法記」「万病妙薬嚢」「しなさためけしやうの巻」「万染物の仕やう」「万しみ物おとしやう」「衣服秘事海」「道具智恵海」「女中智恵箱」「食物喰合之事」「料理重宝記」「色紙短冊寸法」「歌のよみやうの事」「名所古歌略集」等の多彩な家政・女子教訓関連の記事を盛り込む。なお、本書の増補版に明和七年(一七七〇)刊『女大成錦書』がある。また、本書の改題本『女用手引草』が寛政一二年(一八〇〇)頃、大阪・吉文字屋市兵衛により板行された。
[備考]冒頭部「亥子の御めでたさ尽しなふいはゐ入まいらせ候」。『大阪出版書籍目録』によれば、板元は[大阪]吉文字屋市兵衛。彫工は藤江四郎兵衛。『江戸出版書目』『明和九年書目』。なお、安永二年(一七七三)刊『女訓三才図絵』広告中に「女千載和訓文、文章いろはわけにして見安く、其外一切重宝をのす」とあり。
[所蔵]他になし。
[複刻]『女子用往来物分類集成』R一八。

140 女年中往来真珠海
 おんなねんちゅうおうらいしんじゅかい/おんなねんじゅうおうらいしんじゅかい
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]宝暦九年(一七五九)頃刊。宝暦一二年(一七六二)四月申出、板元・吉文字屋市兵衛(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]男筆用文章。
[内容]『女訓文章真砂浜』の増補・改題本。宝暦九年刊『女千載和訓文』広告中に「正月より十二月までの文を男の『庭訓』のごとく色々さまの事を文につゞり申候。たとへば、正月の文は福寿草、恵方、書初、七種などの事より世にあるかぎり皆々おもしろく書つらね、ひとつ其講釈を上にしるし、年中の事のいわれを知らしめ、口には仁義礼智信のゑとき并歌、名歌女伝の数々、大和詞、歌仙、女躾方、紋づくし、其外用に立候事を品々のせ申候」とある。また『大阪出版書籍目録』には「以前『百人一首』と題せしもの口二十丁、『深見草』と題せしものの内三丁、『女千載和訓文』と題せしもの十一丁、『女訓文章』と題せしもの六十一丁、以上九十五丁を合せて一冊とし、改題申出」と記す。
[備考]冒頭部は、享保一四年(一七二九)刊『女訓文章真砂浜』と同一と考えられる。また、『女千載和訓文』広告中および『明和九年書目』に載るほか、安永二年(一七七三)刊『女訓三才図絵』広告中に「女年中往来真珠海、女の文章、庭訓のごとくおもしろく書たる也」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

141 女用文
 おんなようぶん
[異称]書名は仮題か。
[書型]大本一冊か。
[作者]平玉峯作。
[板種]宝暦一〇年(一七六〇)刊。
宝暦一〇年板*京大。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]『国書総目録』による。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

142 かな文章 手引のまつ
 てびきのまつ 
[異称]一名『かな文章手引松』(『割印帳(江戸本屋出版記録)』)、『女筆手引の松』(文化五年刊『女撰要和国織』その他広告中)。
[書型]横本一冊。
[作者]戸田正栄(玄泉堂・儀左衛門)作・書・跋。
[板種]宝暦一一年(一七六一)一月出願、板元・高田清兵衛、売出・吉文字屋次郎兵衛(『大阪出版書籍目録』)。同年同月刊。宝暦一一年四月出願、板元・堺(高田)清兵衛、売出・吉文字屋次郎兵衛(『江戸出版書目』『割印帳』)。
宝暦一一年板(大阪・松村九兵衛 *後印)*母利。
[類型]男筆手本。
[内容]新年祝儀状を始め、花見誘引、桃の節句、菖蒲の節句、賀茂の禊、七夕、八朔、重陽、歳暮などの四季の女文と、婚礼祝儀、髪置祝儀など佳節祝儀状などを集めた横本の手本。全文を無訓の散らし書きで綴る。奥書に「書林高田氏の懇望に依りて」とあるため、松村板は後印であろう。
[備考]冒頭部「あらたまりし此春の御寿いつかたもおなし御事に祝ひおさめまいらせ候」。文化五年板『女撰要和国織』広告中に「戸田先生の筆にして、四季用文、其外、女の常に用ゆる文章をあつめ、手ならふ人の手本とす」とある。また『大坂本屋仲間記録』にも「戸田女筆、手引のまつ、横本、敦九」とある。『明和九年書目』。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

143 女書札百花香
 おんなしょさつひゃっかこう
[異称]不明。
[書型]大本一冊。
[作者]春名須磨書。
[板種]宝暦一一年(一七六一)一〇月出願、板元・吉文字屋市兵衛(『大阪出版書籍目録』)。同年同月刊か。
[類型]女筆用文章。
[内容]『女用文章唐錦』(春名須磨書)の改題本。
[備考]『大阪出版書籍目録』に「以前『女用文唐錦』と題せしものを改題、願出」とあるから、本文冒頭は『女用文章唐錦』に同じであろう。『大坂本屋仲間記録』には「女書札百花香。吉市」、また『明和九年書目』には「一、女書札百花香(筆者名不記)」とある。なお、安永二年(一七七三)刊『女訓三才図絵』広告中に「女書札百花香、ちらし書女文章手本、其外重宝あまたのする」とあり。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

144 国尽名所 女筆初瀬川
 にょひつはつせがわ
[異称]なし。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]長谷川氏(女筆。妙躰風を装うが別筆)書。
[板種]宝暦一二年(一七六二)三月刊。
宝暦一二年板(大阪・渋川大蔵)*謙堂。
[類型]女筆手本。
[内容]全文一通の手紙文中に各地の名所・名物を織り込みながら五畿七道順に全国名を列挙した往来。一般に『女国尽』と呼ばれるが、本書はその最初と思われる三冊本の手本である。全文散らし書きで、前から斜めに読んでいく形式をとり、他の散らし書きのように大字の文末から折り返して小字の先頭へ続けるものではない。なお筆者は妙躰とは全く別人と思われ、妙躰流手本の流行に乗じて妙躰風を装ったものと思われる。
[備考]冒頭部「兼而より示し合せし日の本六十余州国めくりの御事、思ひ立日を吉日と御定め候て、遠からぬうち、思しめし御立候べく候」。末尾に「洛陽、長谷川女書」とあるが、妙躰とは筆跡が全く異なる。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性文庫』二〇巻/『女子用往来物分類集成』R二七。

145 女用文立田川
 おんなようぶんたつたがわ
[異称]なし。
[書型]大本一冊。
[作者]西村末昭(恵十・収雷堂・一茎舎・恵十郎)書・跋。
[板種]宝暦一二年(一七六二)八月書・刊。
宝暦一二年板(江戸・奥村喜兵衛)*小泉・学芸大(「女用文集」)。
[類型]男筆用文章。
[内容]頭書に女文や地理科往来数点を載せた女用文章。本文は「婚礼祝儀状」から「歳暮祝儀状」までの女文二四通を手本用に記す(多くは散らし書き)。例文の内容は、帯祝い礼状、初対面での馳走の礼状、短冊に揮毫を頼む手紙、男子出産の祝儀状、重陽の節句祝儀状など親しい者との手紙が主である。また頭書には「大和めぐり(一名「やまと往来」*『わかみどり』上巻とほぼ同内容)」「隅田川往来」と女消息文(「春の文」〜「移徙祝儀の礼状」の一七通)を収録する。なお、本書末尾に「女用文綾錦、一冊、出来」とあるがこれも末昭の作品である(後述)。
[備考]冒頭部「御祝言しゆひよく済せられ、一しほ御けてたさ、ェにいはねの松にちよをかさねて幾万々年も御はんしやうの御事といはひ入まいらせ候」。学芸大本の巻末には「太保堂(奥村喜兵衛)蔵板目録」を合綴するが、同目録では本書を「立田川、大和めぐり文、西村恵十書、一冊」と紹介する。
[所蔵]他になし。
[複刻]『女子用往来物分類集成』R二三。

146 女用華の宴
 じょようはなのえん
[異称]柱『女用文』。一名『女用花の宴』(『明和九年書目』)。
[書型]大本一冊。
[作者]中谷治八(堀流水軒末流)編・書。
[板種]宝暦一三年(一七六三)春刊。安永七年(一七七八)再刊。
宝暦一三年板(京都・山崎金兵衛、菱屋治兵衛)*小泉・母利。
安永七年板*岐阜市図。
[類型]男筆用文章。
[内容]寛延二年(一七四九)刊『女用紅葉の錦』の抜刷・改題本。『女用紅葉の錦』のうち、前半一八通(「正月の文」〜「五月雨に遣わす文」)のみを収録した女用文章。前付には『女用紅葉の錦』と同様に「五節句由来」を載せ、巻末に「東山の少婦」の記事を掲げる。
[備考]冒頭部は『女用紅葉の錦』に同じ。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

147 女要四季の文箱
 じょようしきのふばこ
[異称]一名『女要四季文箱』(『明和九年書目』)。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]桂佐助作。
[板種]宝暦一四年(一七六四)二月出願、板元・天満屋源次郎(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「四季の文箱。天源」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

148 女教筆海高麗織
 じょきょうひっかいこうらいおり
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]北尾仁右衛門(辰宣)作。
[板種]宝暦一三年(一七六三)四月出願、板元・田原屋平兵衛(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]『大阪出版書籍目録』。『明和九年書目』に「一、女教筆海高麗織」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

149 女四季用文章
 おんなしきようぶんしょう
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]宝暦(一七五一〜六四)頃刊。京都・菊屋喜兵衛、大阪・塩屋忠兵衛板か。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女四季用文章。塩忠」とある。また、天明元年(一七八一)刊『本心早合点』広告(京都・菊屋安兵衛板行目録)、安永五年(一七七六)刊『増補童子字尽』広告、天明七年(一七八七)刊『新撰大和名所往来』広告中にも見える。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

150 女文書大成
 おんなぶんしょたいせい
[異称]不明。
[書型]大本一冊。
[作者]春名須磨書か。
[板種]宝暦(一七五一〜六四)頃刊。大阪・吉文字屋市兵衛板か。
[類型]女筆用文章。
[内容]宝暦九年(一七五九)刊『女千載和訓文』広告中に「長谷川妙貞散し書の手本。女文章多くのせ、目録はいろは分けにして見安く、女一切の道具づくし絵抄、婚礼式、名歌、名女伝記、和漢列女伝、女訓智恵の海、折かた、万菓子の拵やう、絹布百品の織やう并絵図、神社参詣日、世界万物の初め、其品々のかうしやくをしるし、其外女の用に立候事をかずあつめのせ申候」とあり。以上の記事は享保二〇年(一七三五)刊『女用文章唐錦』と同内容と思われるため、広告文中の「妙貞散し書」というのは妙躰風の意味であろう。従って、本書は『女用文章唐錦』の改題本と見なし得る。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女文書大成。吉市」とある。また『大阪出版書籍目録』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

151 女用文綾錦(仮称)
 おんなようぶんあやにしき
[異称]書名は推定。
[書型]大本一冊。
[作者]西村末昭(恵十・収雷堂・一茎舎・恵十郎)。
[板種]宝暦(一七五一〜六四)頃刊。江戸・奥村喜兵衛板。
刊年不明板(江戸・奥村喜兵衛)*玉川大(「女用文」)。
[類型]男筆用文章。
[内容]宝暦一二年(一七六二)刊『女用文立田川』の増補・改題本で、書名は同書巻末広告(「女用文綾錦、一冊出来」とある)や奥村喜兵衛蔵板書目(広告)等により推定。『女用文立田川』の前半部に、「春のとくたる事、一夜を隔てこゝろ新玉り…」で始まる新年祝儀状から歳暮祝儀状までの短文の女文二〇通を増補したもので、末尾に「にし村恵十書(花押)」の署名がある。全て大字の散らし書きで綴る。さらに頭書にも「初春の文章」「久敷逢さるかたへ遣文章」「雪ふりに遣す文章」など一九通の例文を始め、「小笠原流折形」「五性名頭」「裁物口伝」「縫物乃しなん」等の記事を載せる。この前半部分は宝暦頃刊『女今川春錦』中にも合綴されている。また、後半部分は『女用文立田川』に同じ。
[備考]本文冒頭部は「春のとくたる事、一夜を隔てこゝろ新玉り、千代よろつよと寿きまいらせ候」。なお、同書及びほぼ同時期刊の奥村喜兵衛板巻末に見られる蔵板書目には、「女用文綾錦、年中文章、其外諸礼、たち物秘伝、重宝きいろ」とある。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

152 女用文浜真砂
 おんなようぶんはまのまさご
[異称]柱『女文』。
[書型]大本一冊。
[作者]不明。
[板種]宝暦(一七五一〜六四)頃刊。
刊年不明板(江戸・鱗形屋孫兵衛)*小泉・学芸大(「女用文章集」「文のかきぶり」)・東大(「女風俗教」)。
[類型]用文章。
[内容]「馳走の礼状」「御機嫌伺い状」「花の贈り物の礼状」「花見誘引状」「新年状」、その他五節句祝儀状など二一通を収録した女用文章。大字・三〜四行・付訓の手本様に綴るが、頭書には「女諸礼」「女中文かくことばのならひ」「女所業之部」「女ことばよしあし」等の多彩な記事を載せる。また前付にも「女風俗教訓図」「女千代のたから」「教訓歌」を掲げる。これらの付録記事は享保元年(一七一六)刊『女大学宝箱』や享保一五年(一七三〇)刊『女中庸瑪瑙箱』の記事の影響を多分に受けている。なお、本書は江戸後期刊『福寿百人一首宝箱』中にも合綴されている。
[備考]冒頭部「過し比はゆると御目にかゝり、いつもなから色々御ち走共かたしけなくそんじまいらせ候。めて度かしく」。宝暦一二年(一七六二)刊『女用文立田川』及び明和八年(一七七一)刊『長雄諸産往来』広告中に『女用文林浜真砂子』の書名が見える。また、『大坂本屋仲間記録』には柏原屋清右衛門板『女用文章浜の真砂』が見える。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

【明和 一七六四〜七二】

153 女一条万要大全
 おんないちじょうまんようたいぜん
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]明和元年(一七六四)九月申出、板元・天満屋源次郎(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]『大阪出版書籍目録』に「以前『女要大全』と題せしものと『四季の文箱』と題せしものとを合巻とし、改題申出」とある。また『明和九年書目』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

154 女要千代の玉章
 じょようちよのたまずさ
[異称]一名『女要千代玉章』(『明和九年書目』)。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]明和元年(一七六四)九月申出、板元・天満屋源次郎(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]用文章か。
[内容]『大阪出版書籍目録』に「以前『四季の文箱』と題せしものゝ口絵を仕替、改題申出」とある。
[備考]なし。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

155 女要筆のしらべ
 じょようふでのしらべ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]明和元年(一七六四)九月申出、板元・天満屋源次郎(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]『大阪出版書籍目録』に「以前『四季の文箱』と題せしものゝ口絵を仕替、改題申出」とある。また『大坂本屋仲間記録』に「筆のしらへ。天源」とある。『明和九年書目』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

156 女柳文玉櫛笥
 じょりゅうぶんたまくしげ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]平瀬新右衛門(=板元)編(『割印帳(江戸本屋出版記録)』にも「作者、平瀬氏」とある)。
[板種]明和元年(一七六四)以前初刊か。また明和二年出願、板元・平瀬新右衛門、売出・須原屋平助(『江戸出版書目』『割印帳』)。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]墨付一〇八丁。本書の改題本が次項『女文章玉櫛笥』という(『大阪出版書籍目録』)から、本書の初刊は明和元年以前刊でなければならない。なお『大坂本屋仲間記録』には「女柳文玉櫛笥。糸市」とある。『明和九年書目』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

157 女文章玉櫛笥
 おんなぶんしょうたまくしげ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]明和元年(一七六四)閏一二月申出、板元・千種屋新右衛門(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]用文章か。
[内容]『大阪出版書籍目録』には、「以前『女柳文玉櫛笥』と題せしを、口絵と目録の所とを改め、改題申出」とある。
[備考]なし。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

158 長雄かな文集
 ながおかなぶんしゅう
[異称]不明。
[書型]大本一冊。
[作者]長雄耕雲・中村采女書。佐藤対雲校(『割印帳(江戸本屋出版記録)』には「筆者対雲」と誤記)。
[板種]延享三年(一七四六)一〇月書。明和二年(一七六五)九月出願、同年同月跋・刊。板元・奥村喜兵衛(『江戸出版書目』『割印帳』)。
明和二年板(江戸・奥村喜兵衛)*小泉・謙堂・旧開智。
[類型]男筆手本。
[内容]江戸初期撰作と見られる『仮名教訓』(『続群書類従』巻九四六所収)から派生した女子教訓の一つ。元禄五年(一六九二)写本の『女教訓書』を始め、幕末〜明治に至るまで本文内容を少しづつ変えながら種々の改編・解題本(『西三条殿長文』『女教補談嚢』『嫁女教訓書』『長雄かな文章』『女教訓岩根松』『今川娘教訓』『烏丸帖』などの単行本がある)が編まれた。内容はいずれも大同小異で全編一通の仮名消息文中に一〇〜一一カ条の新婦の心得を綴ったものだが、本書(『長尾かな文集』)の場合、『仮名教訓』の第一条慈悲の心から第一〇条他人からの贈り物などの心得の一〇カ条のうち、第四条夫に対する心懸けを前後で二カ条に分けた結果、合計一一カ条となっている。本書はこの一一カ条を大字・四行・無訓で綴った手本である。
[備考]冒頭部「一筆申入まいらせ候。しかれは、そもし幾千代の色もかはらぬ常盤木の枝をつらぬる御祝としてよそへこへ給ふへきよし、真誠に目出とふ覚へまいらせ候」。彫工は山口七兵衛。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物大系』九〇巻。

159 女要文章宝鑑
 じょようぶんしょうたからかがみ/じょようぶんしょうほうかん
[異称]書名は目録題による。
[書型]大本一冊。
[作者]鳥飼粋雅編。『割印帳(江戸本屋出版記録)』にも「作者、粋雅」と記す。
[板種]明和三年(一七六六)五月出願、板元・吉文字屋市兵衛、売出・吉文字屋次郎兵衛(『大阪出版書籍目録』)。明和三年九月出願(『割印帳』)、同年同月刊。
明和三年板(大阪・吉文字屋市兵衛、江戸・吉文字屋次郎兵衛)*東大。
明和五年板(大阪・吉文字屋市兵衛、江戸・吉文字屋次郎兵衛)*早大。
刊年不明板(大阪・吉文字屋市兵衛)*吉海。
刊年不明板*金沢市図。
[類型]男筆用文章か。
[内容]「初春に遣す文」から「夏の暑気見舞に遣す文・同返し」までの合計一一二通を収録した大部な女用文章。例えば正月に出す手紙も近辺・遠方、初旬・下旬、上輩宛て・下輩宛てなど八通、婚礼祝儀に関する例文も結納から膝直しまで一八通もの例文を用意するように微妙な状況の違いを反映したバリエーションの豊富さが最大の特徴である。通常の女用文章に見られる五節句・四季の例文はもとより、四季の行楽や通過儀礼に伴う例文が多く含まれ、そのほとんどが散らし書き、または返し書きのある並べ書きになっている。また、付録記事も多彩で特色のあるものが多く、「松明の事」「歌人故実」「三代集寄歌」「十二月異名和歌」「清輔叡聞歌」「十二月屏風和歌」「三十六人歌仙」「難題和歌五首」「源氏物語」等の和歌に関する記事や、「女工具」「錦嚢秘伝抄」「衣服智恵車」「器工伝受抄」「珍術秘伝書」「妙薬重宝記」「料理重宝記」「万生菓子貯様」など生活情報が大半を占め、ほかに「硯・墨・紙・筆之来由」「行成卿入筆伝受」「立春書初詩歌」など筆道関連や「諺絵づくし」等の俚諺集、「諸願成就日之事」「暦之中段を知事」等の暦占関連などの記事も見える。
[備考]冒頭部「年の始の御悦ひ、千里もおなじ常盤なる松のみどりも折を得て、今一入の御祝ひ、どなたもひとしかるへく目出度そんしまいらせ候」。本書に大幅な増補をしたものが明和六年(一七六九)刊『女文苑栄花』、また、本書より末尾一〇数通を削除した改題本が江戸後期刊『女手習教文』である。なお、安永二年(一七七三)刊『女訓三才図絵』広告中に「女要文章宝鑑、文章ちらし書、和歌の古事、機織物、道具づくし入」とあり、また、『近世文学資料類従』によれば、江戸中期刊『増補女重宝記大成』は宝永八年(一七一一)刊『女重宝記大成』に本書を加えたものという。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物分類集成』R二七。

160 かな文章
 かなぶんしょう
[異称]なし。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]長友松(玄海堂)書。
[板種]明和四年(一七六七)六月出願、板元・和泉屋卯兵衛(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]男筆手本か。
[内容]不明。
[備考]享和二年(一八〇二)刊『浅草詣文章』(中原耕張編)広告には、中原耕張編として『江戸八景往来』『俗年中行事』『女筆かな文章』の書名を列挙するが、いずれも近刊予告であり、刊行された形跡はない。仮に出版されていたとしても長友松の『女筆かな文章』とは別本である。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

161 女文硯四季文章
 おんなふみすずりしきぶんしょう
[異称]一名『女文硯四季玉章』(『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。
[書型]大本一冊。
[作者]志田垣与祐編。長谷川貞寿(筆海子)書。寺井重信画。
[板種]明和四年(一七六七)一二月申出(「以前、『女教文海智恵袋』と題せしを改題申出」)、板元・伊丹屋正治郎(『大阪出版書籍目録』)。また、明和五年(一七六八)一月出願、板元・北田清左衛門、売出・吉文字屋次郎兵衛(『江戸出版書目』『割印帳』)。
[類型]女筆用文章。
[内容]寛延二年(一七四九)刊『女教文海智恵袋』改題本。
[備考]冒頭部は『女教文海智恵袋』に同じか。『江戸本屋記録』。『明和九年書目』に「一、女文硯四季文章(筆者名不記)」とある。墨付八三丁。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

162 女筆女鹿筆
 にょひつめじかのふで
[異称]不明。
[書型]二巻二冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]明和四年(一七六七)頃刊。大阪・千種屋新右衛門板か。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]明和四年刊『女鏡秘伝書改成』広告中に「女鹿筆、女手本」とあり。また『大坂本屋仲間記録』に「女筆女鹿筆、二、千新」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

163 文章書替・百人一首 女文章色紙箱
 おんなぶんしょうしきしばこ
[異称]不明。
[書型]大本一冊。
[作者]長谷川妙躰(筆海子)書。
[板種]明和五年(一七六八)再刊。
明和五年板(大阪・和泉屋卯兵衛)*東書。
[類型]女筆用文章。
[内容]正徳三年(一七一三)刊『女堪忍記大倭文』の改題本。題簽・見返(目次上欄の「女堪忍記大倭文」の書名を削除)・奥付(刊記および「不成就日」「灸忌日」の記事を載せる)のみを改めたほかは正徳板に同じ。
[備考]冒頭部は『女堪忍記大倭文』に同じ。なお、本書の刊記は明和五年板『女中庸瑪瑙箱』と同じものである。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

164 女筆早手本
 にょひつはやでほん
[異称]不明。
[書型]小本一冊。
[作者]高古堂編。下河辺拾水画。
[板種]明和五年(一七六八)三月出願、板元・小幡庄左衛門、売出・須原屋平助(『割印帳』『江戸出版書目』)。同年同月刊。
明和五年板(京都・銭屋庄兵衛)*神戸大。
[類型]男筆用文章。
[内容]不明。
[備考]作者等は『江戸本屋記録』『江戸出版書目』等による。『明和九年書目』に「一、同(=女筆)早手本、高古堂」とあり。また享和四年(一八〇四)刊『女筆文下書』広告中。『割印帳』に「墨付十二丁」とある。なお、高尾一彦氏「女筆手本をめぐる諸問題」(樟蔭女子短期大学『文化研究』一号)に本書の図版を掲げる。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

165 采女玉章
 うねめのたまずさ
[異称]『采女文』(『大阪出版書籍目録』)。
[書型]大本一冊。
[作者]伝小野菊作。長友松軒(玄海堂)書。穂積以貫序。戸出某(玄海堂門人)跋。
[板種]明和五年(一七六七)七月序。同年八月跋。同年一一月刊。明和五年一一月出願、同年一二月許可、板元・京屋嘉市郎(『大阪出版書籍目録』)。
明和五年板(大阪・安井嘉市郎、安井清蔵)*小泉。
[類型]男筆手本。
[内容]跋によれば、龍造寺政家の家臣・瀬川采女の妻菊女(小野摂津守息女)が文禄の役(文禄元年(一五九二))に出征した夫を偲んで書いたという女文一通を手本にしたため上梓したもの。その恋慕の情の深いことが秀吉の心を打ち、瀬川采女の帰国が許されたという。「こかるゝまゝの胸の煙はるゝ間もなき泪の雨、一かたならぬおもひの闇にふししつみ、いつをかきりに露の身のきえはてぬまに、夢はかりかくそとしらせまいらせ度…」で始まる本文を大字・ほぼ四行・無訓で記す。多く並べ書きに近い散らし書きだが、引用した古歌では散らし方に変化を持たせる。なお『大阪出版書籍目録』によれば、本書の改題本が安永三年(一七七四)刊『女教操文章(女教操文庫とも)』という。
[備考]冒頭部前記。彫工・川崎平助。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

166 女今川百花香
 おんないまがわひゃっかこう
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]明和五年(一七六八)頃刊か。
[類型]女筆手本か。
[内容]貞享四年(一六八七)板系統または元禄一三年(一七〇〇)板系統のいずれかの『女今川』であろう。
[備考]明和五年刊『女学範』による。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

167 秋興帖
 しゅうこうじょう
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]長谷川縫書。
[板種]明和五年(一七六八)頃刊か。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]明和五年刊『女学範』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

168 女文苑栄花
 おんなぶんえんえいが/おんなぶんえんさかえのはな
[異称]書名は見返題による。目録題『女要文章』。扉題『女要文章宝鑑』。
[書型]大本一冊。
[作者]吉文字屋市兵衛編。
[板種]明和三年(一七六六)二月出願、板元・吉文字屋市兵衛(『大阪出版書籍目録』)。明和五年(一七六八)一月刊記(裏表紙見返)、明和六年一月刊(本文末)。
明和六年板(大阪・吉文字屋市兵衛、江戸・吉文字屋次郎兵衛)*筑波大。
[類型]男筆用文章か。
[内容]明和三年(一七六六)刊『女要文章宝鑑』の増補・改題本。「初春につかはす文」から「隠居したる人に遣す文」までの往復約四二〇通にも及ぶ浩瀚な女用文章である。全体を佳節(五節句その他の祝儀状)・月花(遊山・月・花・雨・雪に関する手紙)・祝儀(婚礼・出産・通過儀礼等の祝儀状)・音信(各種見舞状)・神仏(神楽・仏事関連の手紙)・頼事(種々の依頼状)・雑(相談・手習い入門・振る舞い・旅行・留守その他の手紙)の七部に分けて、多彩な例文を収録するのが特徴。そのほとんどが散らし書き、または返し書きのある並べ書きになっている。付録記事にも独自の内容が目立ち、前付に「至徳天皇(色刷)」「宰相雅経(ほか略伝)」「女工具」「鶏之辨」「鴉之辨」「鳩之辨」「蟻之辨」「蜘蛛之辨」「蟷螂之辨」「待宵侍従」「清少納言」「紫式部(ほか略伝)」「しうげんの次第」「女の名字づくし」「文書やう指南」等、頭書に「三十六人歌仙」「十名和歌」「難題和歌五首」「諺絵づくし」「硯墨紙筆之来由」「行成卿入筆伝授」「三年ふさがりの事」「諸願成就日之事」「暦之中段を知事」「一代守本尊」「錦嚢秘伝抄」「源氏物語(五十四帖引歌・香図)」「衣服智恵車」「器工伝受抄」「珍術秘伝書」「妙薬重宝記」「料理重宝記」「万生菓子貯様」「立春書初詩歌」「狂歌絵抄」「七夕詩歌」「京都年中行事」「諸国年中行事」「斤目を知る事」「ぢんてきもんだう」などを掲げる。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女文苑栄花」とある。安永二年(一七七三)刊『女訓三才図絵』広告中に「女文苑栄花、文章ちらし書、部門わけにして其外一切重宝を集」とあり。また、明和六年刊『絵本婚礼手引草』広告および『明和九年書目』に載る。ほぼ同時期に、本書や『絵合百人一首紅葉香』『玉葉百人一首』『女学則』『女今川』等の板木を取り合わせた『女七珍万葉舟』(百人一首。明和六年七月申出。現存せず)が吉文字屋市兵衛から出版されている。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

169 女筆木の葉留
 にょひつこのはとめ
[異称]異称『女筆木葉とめ』。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]生子書(女筆か)。
[板種]明和六年(一七六九)一月刊、板元・雁金屋儀助(『江戸本屋記録』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『明和九年書目』に「一、同(=女筆)木葉とめ、生子」とあり。墨付三一丁(『割印帳』)。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

170 さしもくさ
 さしもぐさ
[異称]書名は 外題による。見返題『近江八景の文』。扉題『さしもくさ』。一名『教訓さしもぐさ』(『大阪出版書籍目録』)、また『女筆さしもぐさ』(『江戸出版書目』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。
[書型]大本一冊。
[作者]戸田正栄(玄泉堂・儀左衛門)作・書・跋。
[板種]明和七年(一七七〇)七月刊。明和八年二月出願、板元・河内屋喜兵衛、売出・須原屋茂兵衛(『大阪出版書籍目録』『江戸出版書目』『割印帳』)。
明和七年板(大阪・河内屋喜兵衛)*謙堂。
[類型]男筆手本。
[内容]「近江八景の文」と「さしもぐさ」を合綴した手本。まず巻頭の「近江八景の文」は、「世にたかく、聞えし琵琶のみつうみを、遠近かけてなかめやる、八のけしきはとりに、大みや人ももてはやし…」で始まる七五調の文章で、琵琶湖や近江八景の景観や故事を綴ったもの。また、後半の「さしもぐさ」は「おほよそ婦人は愚痴にかだかましく、後の世も罪ふかしなど、諺にもいふ事ぞかし…」で始まる女子教訓で、まず女子の学問の必要性を前半で述べ、以下、三従の教え、心立て、和順・穏和などの教訓を古歌を引きながら諭す。なお、自跋に「浪華隠士戸正栄七十二翁述書之」とある。
[備考]冒頭部前記。
[所蔵]都立中央(「近江八景の文」)。
[複刻]なし。

171 女大成錦書
 おんなたいせいにしきぶみ
[異称]不明。
[書型]大本一冊。
[作者]不明。
[板種]明和七年(一七七〇)九月申出、板元・吉文字屋市兵衛(『大阪出版書籍目録』)。同年同月刊か。
[類型]男筆用文章か。
[内容]宝暦九年(一七五九)刊『女千載和訓文』の増補版。『大阪出版書籍目録』には「以前『絵合百人一首』と題せしものゝ内十一丁、『女千載』と題せしもの百三十八丁、『絵本教訓草』と題せしものゝ内十三丁、以上三種を取合せ、改題申出」とある。すなわち『女千載和訓文』本文に前付等を増補したものである。また、江戸中期刊『娘教訓和歌百首』広告中に次の一文あり。「女大成錦書。いろは分ヶ也。譬ば部や見廻の文は(へ)の部にあり。花見の文は(は)の部にありて、くり出しはやし。常に取扱文、今日人々書せうれひてすぐる間に合候やう、百余通のせ申候。此類の書にかやうにくわしきは外に無御座候。其外、百人一首、三十六歌仙、進物書付の仕やう、品々物の数書やう、絵抄、色紙・短冊書法、女諸礼手引、掛香・薫物名方、染物秘伝、万しみ物おとしやう、衣服道具に付色々秘伝の事、妙薬・妙術、料理の指南、其外色々、女の重法なる事をあつむ」。
[備考]冒頭部は『女千載和訓文』と同じであろう。『大坂本屋仲間記録』に「女大成錦書。吉市」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

172 女要筆玉藻
 じょようふでのたまも
[異称]書名は見返題による。また宝暦板『女要文通筆海子』にあった柱題「女文通筆海子」は削除された。
[書型]大本三巻合一冊。
[作者]梅月堂編・序。長谷川品(筆海子)書・跋。西川祐信画。
[板種]宝暦三年一月序。明和七年(一七七〇)一二月申出(「以前『長谷川筆海子』と題せしを、此度改題板行申出」とある)、板元・丹波屋伝兵衛(『大阪出版書籍目録』)。同年同月刊。
明和七年板(大阪・丹波屋伝兵衛・柏原屋清右衛門)*玉川大。
[類型]女筆手本。
[内容]『女要文通筆海子』の改題本。なお、本書を三分冊とした改題本『女筆御世の春』が明和八年(一七七一)頃、大阪・丹波屋伝兵衛より刊行された(後述)。
[備考]なし。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

173 女筆御代の春
 にょひつみよのはる
[異称]不明。
[書型]大本三巻三冊。ただし寛政六年(一七九四)刊『姫文台都織』広告中に一冊とあるため、一冊本もあったか。
[作者]長谷川品(筆海子)書・跋。梅月堂序。
[板種]明和八年(一七七一)一月申出(「以前『女要筆玉藻』の最初三丁を除き、三冊に綴分け、改題板行申出」とある)、板元・丹波屋伝兵衛(『大阪出版書籍目録』)。同年同月刊か。
[類型]女筆手本。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女筆御代の春、泉卯」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

174 @山かな文書
 さやまかなぶんしょ
[異称]標記書名は原題。
[書型]大本一冊。
[作者]@山周暁(大平山人)書。
[板種]明和八年(一七七一)九月刊。
明和八年板(江戸・雁金屋義助)*小泉。
刊年不明板*東大(「@山かな文章」)。
[類型]男筆手本。
[内容]「折節の移りかはるこそものことにあはれなれ。物のあはれは秋こそまされと人ことにいふめれと、それもさるものにて、今一際心もうきたつものは春のけしきこそあめれ…」で始まる仮名文で、季節の推移や四季行事、花鳥風月を記した往来。大字・四行・無訓で綴った@山流の陰刻手本。
[備考]冒頭部前記。なお、『大阪出版書籍目録』によれば、森川曹吾筆の『@山かな文章』(大阪・奈良屋長兵衛板)が天明六年(一七八六)閏一〇月に出願されているが、本書と別本か。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物分類集成』R九。

175 長雄 源氏かな文章
 げんじかなぶんしょう
[異称]なし。
[書型]大本一冊。
[作者]数楽(長雄)耕文書。
[板種]明和九年(一七七二)六月出願、同年刊。板元・山崎金兵衛(『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。
刊年不明板(江戸・山崎金兵衛)*小泉・弘前市図。
刊年不明板(江戸・駿河屋重五郎)*吉海。
[類型]男筆手本。
[内容]『源氏物語』五四帖の名を七五調の美文で綴った、大字・三行・無訓の手本。「源氏のすくれてやさしきはその名も高き桐壺よ、余所にて見えし箒木は、われから音になく空蝉や…」で始まり、「…契りあたなる蜻蛉を、おのかしそめの手ならひは、はてもゆかしき夢の浮橋にたゝすみまいらせ候。かしく」で終わる。七五調の文言の末尾が次の文言の冒頭と同音になる、いわゆる「文字鎖」の文で記されている。さらに本書の後半部には四季の女文八通を収録する。なお、本書前半部の文章を若干改めたものが寛政七年(一七九五)刊『源氏名寄文章』である。
[備考]冒頭部前記。明和八年(一七七一)刊『隅田川往来』広告中。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物大系』七八巻。

176 女用文章糸車
 おんなようぶんしょういとぐるま/じょようぶんしょういとぐるま
[異称]目録題『女用文章』。一名『女用文章絲車』(『大阪出版書籍目録』)。
[書型]大本一冊。
[作者]田中友水子原作。北尾辰宣画・書。西川竜章堂書(天保板)。翠栄堂半山画(幕末〜明治年間板)。文海堂主人序(明治年間板)。
[板種]明和五年(一七六八)出願、板元・柏原屋清右衛門、売出・西村源六(『大阪出版書籍目録』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。明和九年九月初刊。天保一二年(一八四一)四月再刻。
明和九年板(大阪・渋川清右衛門)*謙堂・小泉・東大・東北大・学芸大・ノートルダム清心・米沢。
天保一二年板(大阪・柏原屋清右衛門)*小泉・謙堂・早大・東大。
弘化年間板(大阪・秋田屋)*夏目書店。
刊年不明板(大阪・敦賀屋九兵衛ほか *須本・高松・徳島・博多・京都・江戸・大阪一四書肆)*東大・家政学院大・香川大。
刊年不明板(大阪・河内屋茂兵衛)*学芸大。
刊年不明板(大阪・敦賀屋九兵衛)*東北大。
明治年間板(大阪・敦賀屋九兵衛)*江森。
[類型]男筆用文章。
[内容]『大阪出版書籍目録』によれば、宝暦七年(一七五七)頃刊『女文要悉皆嚢』(田中友水子作。大阪・和泉屋喜太郎板)の板木を明和五年頃に渋川清右衛門が買い受けて改題・板行したもので、本書はさらに安永三年(一七七四)に前付一八丁を削除するなどしたうえ『女用文章倭錦』と改題された(ただし本書明和九年板には「倭口ノ二十」などの丁付けを持つ口絵が合綴されており、『糸車』と『倭錦』は並行的に刊行されたか)。江戸中期を代表する女用文章で、例文と付録記事が充実している。例文は「正月文章」から「歳暮の文・同返事」までの六三通で、季節・四季行事の手紙や通過儀礼に伴う手紙など一通りを載せ、冒頭の一通を除き全て七行の並べ書きで書かれている。明和九年板には巻頭口絵に色刷の「麒麟・鳳凰図」を掲げ、以下、光明皇后・長谷川妙躰等の女能書略伝を始め、「女中風俗品定」「女いとなみ草」「日用の字尽」「女手わざ草」「女中大和詞」「色紙・短冊の本説」「文の道しるべ」(以下丁付に「倭…」と記す)「染物の法」「しみ物落やう」「七夕歌尽」「薫物の方」「匂袋の方」「婚礼略式」「四季衣桁錺の説」「教訓おきな草」等の前付記事を収録し、さらに頭書には「女中文の志折」「年中の故事」、巻末には「即座之占」の記事を載せる。なお、天保一二年(一八四一)再刻本では、前付を削除して頭書の挿絵を一新し、さらに文面に多少の改訂と、巻末記事に若干の増補を加えてある。さらに明治期再板本では、巻頭に翠栄堂半山画の色刷挿絵が加えられた。
[備考]冒頭部「初はるの御めでたさ、千里もおなじ万代にいくかへりて打出る日もうらゝかに…」。天保一二年板には色刷模様表紙のものあり。なお、『江戸出版書目』によれば明和九年初刊本は墨付九三丁。また、明和九年板には、前記とは別に「和歌三神図」「婚礼略式」「御厨子の図説」「黒棚の図説」「化粧の間の図説」「貝桶の図説」「四季衣桁錺の説」「女中名づくし」「男女相性の事」「教訓おきな草」などを収録した異本がある。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物大系』九三巻/『女子用往来物分類集成』R一八・R二〇/『往来物分類集成』R二八/『日本教科書大系往来編』一五巻

177 女万宝袖鏡
 おんなまんぽうそでかがみ/おんなばんぽうそでかがみ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]小野臨斎書。
[板種]明和九年(一七七二)刊。
明和九年板(大阪・和泉屋卯兵衛)*福地書店。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女万宝袖鏡、泉卯・敦九」とある。また、天保四年(一八三三)刊『女今川操種』(大阪・敦賀屋九兵衛板)広告中に『女万宝袖かゞ見』の書名が見える。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

178 女今川教訓鑑
 おんないまがわきょうくんかがみ
[異称]不明。
[書型]二巻二冊(大本か)。
[作者]中村氏書。なお『国書総目録』によれば、民女書ともいう。
[板種]明和九年(一七七二)以前刊。
刊年不明板*延岡内藤家。
[類型]女筆手本か。
[内容]貞享四年(一六八七)板系統あるいは元禄一三年(一七〇〇)板系統のいずれかの『女今川』と同じであろう。
[備考]『明和九年書目』に「二、女今川教訓鑑、中村氏女」とある。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

179 女要今川教訓鑑
 じょよういまがわきょうくんかがみ
[異称]不明。
[書型]二巻二冊(大本か)。
[作者]つな書。
[板種]明和九年(一七七二)以前刊。
[類型]女筆手本か。
[内容]貞享四年(一六八七)板系統あるいは元禄一三年(一七〇〇)板系統のいずれかの『女今川』と同じであろう。
[備考]『明和九年書目』に「二、女要今川教訓鑑、つな女」とある。つな女が居初津奈と同人であれば、本書は明らかに遺稿の出版である。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

180 女通例文鑑
 おんなつうれいぶんかん
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]文生編。
[板種]明和九年(一七七二)以前刊。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]『明和九年書目』に「一、女通例文鑑、文生」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

181 女要都色紙
 じょようみやこしきし
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]流水書。
[板種]明和九年(一七七二)以前刊。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]『明和九年書目』に「一、女要都色紙、流水」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

182 女筆浅香山
 にょひつあさかやま
[異称]不明。
[書型]三巻三冊(大本か)。
[作者]志賀氏書。
[板種]明和九年(一七七二)以前刊。
[類型]男筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『明和九年書目』に「三、同(=女筆)浅香山、志賀氏」とあり。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

【安永 一七七二〜八一】

183 はつ音往来
 はつねおうらい
[異称]一名『初音往来』『十二月章』。また『はつね往来』(『大阪出版書籍目録』)。
[書型]大本一冊。
[作者]児嶋(小島)貞蔵(松月堂)編・書・跋。
[板種]安永二年(一七七三)六月出願、板元・本屋伊兵衛(『大阪出版書籍目録』)。同年七月初刊。
安永二年板(大阪・村上伊兵衛)*三次市図。
刊年不明板*謙堂。
[類型]男筆手本。
[内容]跋文に「女子文通のたより…」とあるように、女文の手本として編まれた手本。四季の移り変わりを中心とした仮名文二一通を大字三行・付訓の並べ書きで記す。「青柳のはるに媚び、園の鶯もはつねもよほすけしき…」と新年の文から始まり、以下、二月初午に招く文、三月弥生祝いの文、四月藤の花盛りに散策を誘う文、五月梅雨の季節に『源氏物語』を借りる文(ここまでは同一テーマの往復文)、六月以下は複数テーマで、六月が祇園会と庚申待ちの二通、七月が七夕祝儀と暑中見舞い、八月が十五夜の文と住吉詣でに誘う文、九月が菊花の贈り物への礼状と秋の夜長の文、以下各月一通ずつとなり、一〇月亥の子祝儀、一一月髪置き祝儀、一二月歳暮見舞いの文を収録する。九月状以下に散らし書きなど、手紙の書き方に変化を持たせている。
[備考]冒頭部「青柳のはるに媚、園の鴬もはつねもよほすけしき、ま事や四の海も浪しつかに、千さとの外まても長閑き御代を祝しまいらせ候。めて度かしく」。彫工は藤江喜平次。
[所蔵]他になし。
[複刻]『稀覯往来物集成』六巻/『女子用往来物分類集成』R一七。

184 やまとふみ
 やまとぶみ
[異称]一名『三井親和女ぶみ』『三井親和大和文』。また、『やまと文』(『江戸出版書目』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)、『親和女文章』。
[書型]特大本一冊。
[作者]三井親和書。
[板種]安永二年(一七七三)八月出願、板元・植村藤三郎(『江戸出版書目』『割印帳』)。同年同月書・刊。
安永二年板(江戸・植村藤三郎、并河善六)*青裳堂。
安永二年板(江戸・若林清兵衛)*金沢市図。
[類型]男筆手本。
[内容]原本未見だが、『青裳堂古書目録』中に図版を掲載。それによれば、本文冒頭は「新玉の御ことふき、何方も御賑々鋪、幾久といわゐ入まいらせ候…」というもので、大字・四行・並べ書きの特大手本である。奥書には「安永二年己八月上旬/深川親和/七十三歳書/江戸書林・植村藤三郎/并河善六」とある。
[備考]墨付三七丁。冒頭部前記。
[所蔵]他に静嘉堂。
[複刻]なし。

185 女教操文庫/女教操文章
 じょきょうみさおぶんこ/じょきょうみさおぶんしょう
[異称]『大阪出版書籍目録』には『女教操文庫』とあるが、『江戸出版書目』には『女教操文章』とある。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]長友松(玄海堂)書。
[板種]安永三年(一七七四)一月刊(『江戸出版書目』)。安永三年二月申出(「以前『采女文』と題せしものに口絵三丁彫足し、改題板行申出」とあり)、板元・田原屋平兵衛、売出・須原屋茂兵衛(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]男筆用文章。
[内容]明和五年(一七六七)刊『采女文』の改題本。
[備考]なし。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

186 女用文章倭錦
 おんなようぶんしょうやまとにしき
[異称]首題『女用文章糸車』。
[書型]大本一冊。
[作者]北尾辰宣画。
[板種]安永三年(一七七四)二月申出(「以前『女用文章絲車』と題せしものゝ最初十八丁を除き、扉・口絵一丁半彫足し、改題板行申出」とあり)、板元・柏原屋清右衛門(渋川清右衛門)(『大阪出版書籍目録』)。『割印帳(江戸本屋出版記録)』によれば、売出・西村源六。同年同月刊。
安永三年板(大阪・柏原屋清右衛門 *刊記に明和九年九月とあるが、改題本の実際の刊行は安永三年)*成田・ノートルダム清心。
[類型]男筆用文章か。
[内容]明和九年(一七七二)刊『女用文章糸車』の改編・改題本(墨付七七丁)。『女用文章糸車』(墨付九三丁)から前付記事など一八丁分を削除し、色刷口絵など一丁半を増補したもの。本文は『女用文章糸車』に同じ。
[備考]『江戸出版書目』に「明和九年九月」とあるのは、『女用文章糸車』の初板本の刊記であるが、改題時点でもなお旧刊記を流用していたことを示すものであろう。冒頭部は『女用文章糸車』に同じ。本書も『女用文章糸車』もほぼ同時期に刊行されているため、付録記事の組み合わせを変えた二種類の刊行を当初より予定していたものか。いずれにしても『女用文章糸車』『女用文章倭錦』ともに小異のある異本がいくつかある。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

187 女用文章・百人一首・□□躾方 女要福寿台
 じょようふくじゅだい
[異称]首題『女要文章福寿台』。
[書型]大本一冊。
[作者]高田政度(嘉平次)編。戸田正栄(玄泉堂)書。竹原春潮斎画。
[板種]安永三年(一七七四)六月出願、板元・堺屋清兵衛(『大阪出版書籍目録』)。同年同月初刊。天明五年(一七八五)一月再刊。
天明五年板(京都・芳野屋為八)*謙堂。
[類型]男筆用文章。
[内容]多彩な付録記事を伴った江戸中期の女用文章。「初春の文」から「婚礼披露文・同返事」までの二五通を全て無訓(例外的に付訓あり)の散らし書きで綴る。例文はほぼ四季風物や婚礼・出産・通過儀礼に関するもので、末尾四通は披露文形式にする。さらに巻末「増補目録」にあるように、「元服祝儀文」から「和歌の会」までの八通と「歌ものかたり」と題した教訓文が増補されており、本書は先行書の増補版とも見られる。巻頭に花盃の和歌と色刷挿絵を置き、前付に「春秋花壇の図」「婚礼式」や種々礼法・飾り方、手紙・色紙・短冊書法、「大和こと葉」「弘法大師四目録占」「和歌をよむ事」「茶の湯の事」等、また頭書に「貞女鑑(菅家の御母公ほか)」「浪花遊山車」「女中の名相性附」「妙薬集」「染色の方」「頭書百人一首大成」「琴の組」「琴の名所」「香道たしなみの事」「十種香の事」「不成就日・諸願成就日」等の記事を収録する。なお、本書の改題本に江戸中期刊『女用書通案文』あり。
[備考]冒頭部「あらたまりし此春の御寿、いつかたもおなし御事に祝ひおさめまいらせ候」。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性文庫』三三巻/『女子用往来物分類集成』R一八。

188 女懐宝文袋
 おんなかいほうふみぶくろ
[異称]不明。
[書型]折本一帖。墨付半切八丁(『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。
[作者]村松義方作。
[板種]安永四年(一七七五)秋刊、板元・(京都)西村市郎右衛門、売出・西村源六(『江戸出版書目』『割印帳』)。
[類型]男筆用文章。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女懐宝文袋、同折本、河源」とある。これによれば、上記のほかに大阪・河内屋源七郎(または源七)板も存在したらしい。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

189 百人一首・安永□□・女教□□ 女文章宝鑑
 おんなぶんしょうたからかがみ
[異称]なし。
[書型]大本一冊。
[作者]沢井随山作。
[板種]安永四年(一七七五)一一月刊。
安永四年板(京都・吉文字屋市兵衛、銭屋庄兵衛)*謙堂・吉海。
[類型]男筆用文章。
[内容]五節句や四季行事、通過儀礼、吉凶事、その他諸用件の手紙など多彩で豊富な例文を集め、しかも主題のイロハ分けに配列した独特な女用文章。まず最初に「正月の文」から「九月節句の文」までの往復一〇通を載せ、続いて「イ」部の「伊勢参悦びの文」「伊勢物語講釈の文」「医者頼に遣す文」「田舎へ行人に頼の文」から「ス」部の「涼誘ひに遣す文」まで、主題冒頭語のイロハ順に往復一三四通を収録する(合計一四四通)。冒頭の数通を除く大半が大字六行・付訓の並べ書きである。また、本書は付録記事も多様で、前付・頭書等に「吉野山風景(色刷)」「野々宮(以下名女略伝)」「視聴言動」「養蚕」「女教誡八花形」「婚礼之図説」「楊枝指仕様秘伝」「女中文封様事」「七夕祭の由来」「百人一首」「十二月倭名并節日由来」「三十六歌仙」「女用文章書替字」「花鳥目附絵尽」「賢女鑑」「女式・女食法要式」「男女相姓之事并歌」「女中名字相性」等の記事を掲げる。なお、本書の改題本に江戸中期刊『女万要品定』がある。
[備考]冒頭部「あらたまりぬる此春の御祝、何かたもおなし御事にめて度申納まいらせ候」。彫工は丹羽庄兵衛。
[所蔵]他になし。
[複刻]『女子用往来物分類集成』R一八。

190 婦人宝箱 女用文千歳姫松
 おんなようぶんちとせのひめまつ
[異称]なし。
[書型]大本一冊。
[作者]不明。
[板種]安永五年(一七七六)三月刊(ただし再板とする)。寛政三年(一七九一)一月再刊。
安永五年板(江戸・西村屋与八 *再板)*小泉・江森・石川県郷土・ノートルダム清心。
寛政三年板(江戸・西村屋与八 *再板。西村屋伝兵衛初刊とする)*玉川大(「用文章」)。
[類型]用文章。
[内容]五節句祝儀状(いずれも往復)、暑中・寒中見廻、歳暮祝儀状を集めた女用文章。「初春の文」から「歳暮の文」までの一三通を収録する。大字・五行・付訓(ごく稀)で記す。前付に「歌がるたの根源」「詩歌四季景物」「七夕祭の来由」「かけ香の名方」、頭書には「吉書始詩歌」「五色和歌」「五行和歌」「やまとことは」「五常の和歌」「女言葉づかひ」「近江八景并ニ歌」「隅田川往来」「いましめ七猿和歌」等、巻末に「月の異名」「十二支祭の事」を載せる(寛政三年板では見返に「六歌仙」「百人一首読くせ并五箇秘歌」等を増補)。なお、安永五年板には「再板」とあるが、初刊年代等は不明。
[備考]冒頭部「新なる此春の御めでたさ、いづかたもかぎりなくいわゐまいらせ候」。初刊年代不明。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

191 再板・幼婦・袖玉 女用文章文硯
 おんなようぶんしょうふみすずり
[異称]尾題『女四季用文』。柱『女用文』。
[書型]中本一冊。
[作者]不明。
[板種]初刊年代不詳。安永五年(一七七六)再板。
安永五年板(江戸・西村屋与八)*小泉。
刊年不明板(江戸・西村屋与八 *「百人一首」と合)*東大。
[類型]用文章。
[内容]「正月・同輩の文てい」から「歳暮の文・下より上へ遣す文」までの四季の女文一九通を収録した簡易な女用文章。新年、花見、弥生、婚礼、端午、平産、盆、月見、重陽、湯見舞い、寺入り、病気見舞い、漿付、歳暮の一四題につき、適宜、同輩・下輩・上輩宛ての文面を掲げるのが特徴。巻頭に五常図・四季の女性図を掲げ、頭書に「教訓いろは歌」「女中倭詞」「けいがの和歌絵抄」を載せる。
[備考]冒頭部「初春の目出度さ何かたもおなし御事にいはゐ入まいらせ候」。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物分類集成』R四一。

192 女用文章伝授巻
 おんなようぶんしょうでんじゅのまき/おんなようぶんしょうでんじゅかん
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]安永五年(一七七六)頃刊。板元・菊屋安兵衛。
[類型]用文章。
[内容]安永五年刊『増補童子字尽』広告中。また、天明元年刊『本心早合点』広告(京都・菊屋安兵衛板行目録)中に「初学通用、首書註入、一冊」とある。
[備考]『往来物分類目録』によれば宝暦頃刊という。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

193 女筆手本大全
 にょひつてほんたいぜん
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]沢田吉書。『割印帳(江戸本屋出版記録)』および『江戸出版書目』は、作者を「沢田加吉」とするが、「於吉」の誤りであろう。
[板種]元禄(一六八八〜一七〇四)頃書。安永六年(一七七七)出願・刊、板元・須原屋茂兵衛(『割印帳』『江戸出版書目』)。
[類型]女筆手本。
[内容]不明。
[備考]『割印帳』に墨付一二〇丁というから浩瀚な手本であろう。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

194 女文章大成
 おんなぶんしょうたいせい
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]安永七年(一七七八)八月申出(「古板に口絵及び目録十二丁を増補板行申出」とあり)、板元・吉文字屋市兵衛(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]なし。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

195 女用文章手引艸
 おんなようぶんしょうてびきぐさ/にょようてびきぐさ
[異称]一名『女用手引草』。
[書型]大本一冊(享和四年刊『女筆文下書』広告には「小本一冊」とあるが、『女千載和訓文』の改題本ならば明らかに大本である)。
[作者]衷々庵編。勝見書服書。
[板種]安永七年(一七七八)刊。板元・銭屋庄兵衛、売出・山崎金兵衛(『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。また、『大坂本屋仲間記録』等によれば、江戸・山崎金兵衛、大阪・吉文字屋市兵衛板。また、寛政一二年(一八〇〇)一二月申出(「以前『女千載和訓文』と題せしを、此度改題板行申出」とあり)、板元・吉文字屋市左衛門(『大阪出版書籍目録』)。
刊年不明板(*宝暦九年刊記というが、実際の刊年は安永七年以降であろう)*広島大。
[類型]男筆用文章。
[内容]宝暦九年(一七五九)刊『女千載和訓文』の改題本。原本未見だが、寛政(一七八九〜一八〇一)頃刊・江戸後期後印『筆道稽古早学問』(一冊本。吉文字屋市左衛門板)の見返広告中に「女用手引草。全一冊。文認様秘密口伝入。女の文、世間通用をもらさず集め、上々えあぐる文、下つかたまて上中下しなを書わけ、三段がへし、五段がへしの式、其外ふみ認める心得になる事、文の式法・口伝もらさす集む。此本をみれば、いかなるむつかしき文にても早くかき申候。文をいろは分にいたし、○部屋見廻の文は(へ)の部にあり、○婚礼は(こ)の部にありと申様にわけ申候ゆへ、くり出し見るに甚はやし。その外、女中重宝なる事、かづかきあつむあらまし下にしるす。/『女用手引草』の重宝なる事、左に記す。女中けしやうの仕様より次第して、色を白くするあらひ様、或はかみのつやを出し、櫛かんざしのおれたるをつぎ、一切の道具そんしたるを直しやう、衣服しみ物おとしやう、数々染物しやう、そめ色はかうやの秘伝漏さす、紋ところ黒みたるなをし様まであつめ、料理指南一切の食物久しくたくはへやう、たき物名香の方、しきし・たんざくの書やう品々、歌のよみやうひみつ口伝、文のふうじやう上中下をわかち、しん物書付の仕様、目録したためやう、其外女の重法なる事一切をのす」と長文で紹介する。また、『女筆文下書』広告には「百人一首并に女用文章、其外、女中日用重宝の事をあつむ」とある。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女用手引草。女千載外題替。吉市」とある。『割印帳』によれば、墨付一五四丁。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

196 女用千尋浜
 じょようちひろのはま
[異称]なし。
[書型]大本一冊。
[作者]浅田恒隆編。下河辺拾水書。
[板種]安永九年(一七八〇)一月刊。『江戸出版書目』によれば、板元・菊屋七郎兵衛、売出・前川六左衛門。
安永九年板(京都・菊屋七郎兵衛、菊屋長兵衛)*都立中央・玉川大・江森・ノートルダム清心。
[類型]男筆用文章。
[内容]「新玉の文」から「舛掛の文・同返事」までの七五通を収録した女用文章。季節の挨拶状や寒暑の見舞状、また四季の行楽・娯楽に関する手紙、出産以下子どもの成長や通過儀礼に伴う手紙などを主内容とする。頭書には五節句の記事や「女教訓唐和鑑」「源氏貝おほひ并歌かるた」「胎内をしへ草」「産前産後の養生」「当世衣類裁物仕様」「万しみものおとし葉」「万絹物張やう」「婦人諸病妙薬方」「当世染物仕やう」「男女あいしやう」等の記事、また前付にも「名歌八題集」や「婚礼相生式鑑」「小笠原女礼式并図」「祝言膳部くひやうの事」など婚礼を主とする記事を載せる。
[備考]表紙彩色画。冒頭部「あらたまりぬる此春の御めでたさ、千里の外までも松たてわたす御ことぶき、万々歳つきしなく、祝ひおさめまいらせ候」。なお、本書前半四一通を抽出して付録記事を改めた改編本『女文章教草』が天明五年に刊行された。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

197 女用文綾錦
 おんなようぶんあやにしき
[異称]なし。
[書型]大本一冊。
[作者]不明。
[板種]安永九年(一七八〇)六月刊。
安永九年板(仙台・伊勢屋半右衛門)*謙堂・玉川大(「女用文」)・東北大・宮教大・宮城県図。
[類型]用文章。
[内容]「初春に遣す文」以下五節句・四季の手紙、また「いなかへ遣す文」や「平産の祝に遣す文」「誂えの染物を届ける文」など二〇通を収録した女用文章。ほとんどが散らし書きで、大字・無訓の手本用に作る。巻頭に読書する婦人の図を掲げ、頭書に女子の教養・家政・化粧・礼法等や「年中行事」、また「庚申せぬ時の歌」「死人に逢ふ時の歌」などの呪いについて記す。
[備考]冒頭部「あら玉りまいらせ候此春の御祝、千里もおなし御事にいわゐ入まいらせ候」。
[所蔵]他に中央大・ノートルダム清心。
[複刻]なし。

【天明 一七八一〜八九】

198 女教平生珠文庫
 じょきょうへいせいたまぶんこ
[異称]見返題『新撰 女教平生珠文庫』。また、再板本書袋には『女教訓初学鑑 女教平生珠文庫』とある。
[書型]中本一冊。
[作者]不明。
[板種]天明三年(一七八三)一〇月刊。
天明三年板(江戸・蔦屋重三郎)*国会。
刊年不明板(江戸・英大助 *天明三年刊記。江戸後期後印)*千葉中央・吉海。
[類型]用文章。
[内容]「正月の文章」以下二五通を収録した女用文章。五節句祝儀状など季節の行事を主題としたものが多く、末尾に婚礼・出産の祝儀状往復四通を付す。例文はほぼ交互に散らし書きと並べ書きで綴る。また、頭書に「源氏香の図」「黄門定家卿花鳥和歌」「小笠原流折形」、前付等に「色紙短冊の寸法」「御厨子・黒棚の図」「七夕和歌」「女中文封様」などを載せる。
[備考]冒頭部「新玉りぬる此春の御寿、何方もおなし御事にいわゐ入まいらせ候」。
[所蔵]他になし。
[複刻]『女子用往来物分類集成』R二二。

199 文章替字 女書札調宝記
 おんなしょさつちょうほうき
[異称]序文中、また『大阪出版書籍目録』には『女書札重宝記』とある。
[書型]半紙本一冊。
[作者]不明。
[板種]天明四年(一七八四)一一月申出(「以前『女文翰重宝記』と題せしを、此度改題発行申出」とあり)、板元・柏原屋与左衛門(『大阪出版書籍目録』)。同年同月初刊。文化四年(一八〇七)三月再刊。
天明四年板(大阪・柏原屋与左衛門)*玉川大。
文化四年板(京都・今井喜兵衛、江戸・須原屋茂兵衛、柏原屋金兵衛、大阪・柏原屋清右衛門)*樟蔭女子短大。
[類型]用文章。
[内容]享保五年(一七二〇)刊『女文翰重宝記』の改題本という。「正月いわゐの文」から「普請祝ひの文」まで三九通の女用文章を載せたもの。前半に四季・五節句の文、続いて出産・髪置・疱瘡見舞い・庚申待ち・縁組み・湯治見舞い等の文章を収める。各例文ごとに「文章の替字」を設けてあるのが特色で、言い替え表現にもなり、任意の語句の略注や古歌の引用も見られ、表現の変化に重点を置いて編集してある。なお、巻頭に「七情(喜・怒・愛・楽・哀・悪・欲)」についての教訓、また巻末に「男女性に依て用べき字尽」「女中文の封様之事」を載せる。
[備考]冒頭部「あら玉の春の御めてたさ、いつかたもおなし御事にことふきまいらせ候」。なお巻末広告中に「筆海子長谷川手本 正筆朱印附/女筆難波津三冊、同さゞれ石三冊、同蝉小川三冊、同岩根の松三冊/女筆指南集三冊、同続指南集三冊、同近江八景一冊」とあるが、この広告からも『女筆続後指南集』が未刊に終わったと推定される。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

200 女文章教草
 おんなぶんしょうおしえぐさ
[異称]目録題『女用文章』。
[書型]大本一冊。
[作者]浅田恒隆書。下河辺拾水画。
[板種]天明五年(一七八五)一月刊。
天明五年板(京都・菊屋長兵衛)*小泉・国会・玉川大・謙堂・学芸大・ノートルダム清心。
[類型]男筆用文章。
[内容]安永九年(一七八〇)刊『女用千尋浜』より「新玉の文」から「被初のふみ」までの四一通を収録し、前付記事を変更したうえ改題した女用文章。末尾数通を除き全て五節句・四季行事(芝居見物・壬生参詣・花見・開帳参り・雨中見舞い・涼見物・月見・亥子等)に関する女文である。頭書には「若菜の節句」ほか五節句の解説記事、また「女教訓唐和鑑」「源氏貝おほひ并歌かるた」「胎内をしへ草」「産前産後の養生」等の記事を載せる。
[備考]本文冒頭部は『女用千尋浜』に同じ。
[所蔵]他に筑波大ほか。
[複刻]『女子用往来物分類集成』R二二。

201 女用文章 并 仮名文
 おんなようぶんしょうならびにかなぶみ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]勝見右膳書。
[板種]天明五年(一七八五)一一月出願、板元・塩屋平助(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]男筆手本か。
[内容]不明。
[備考]なし。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

202 散書 仮名文章
 かなぶんしょう
[異称]一名『散書 百瀬仮名文章』なし。
[書型]大本一冊。
[作者]長雄耕雲・百瀬耕元書。百瀬耕元序。須田英方(耕辨・桂柱堂)跋。
[板種]元文四年(一七三九)一月書。天明六年(一七八六)四月書。同年九月跋・刊。天明七年(一七八七)六月出願、板元ならびに売出・須原屋市兵衛(『割印帳(江戸本屋出版記録)』『江戸出版書目』)。ただし原本には「板元・三崎屋清吉」とある。
天明六年板(江戸・三崎屋清吉)*東大。
[類型]男筆手本。
[内容]散らし書きの仮名文を集めた長雄流・百瀬流の手本。新年祝儀状から歳暮祝儀状までの計三四通を収録する。五節句や四季行事に伴う手紙ばかりで、新春から五月雨の季節までの前半一九通が耕雲書、また、灌仏会から歳暮までの後半一五通が耕元の書である。外題角書のごとく大半が散らし書きだが、うち三通が並べ書きで、他の一通は散らし書き・並べ書きの折衷形式で綴る。
[備考]冒頭部「あら玉の春のめてたさ、何かたもおなし御事にいわひ入まいらせ候。猶ことしよりおほしめすまゝの御事とたかひによろこひを申かはし候べく候。めてたくかしく」。江戸中期刊『百瀬 飛鳥山往来』広告中に『百瀬かな文』(百瀬耕元書)の書名が見える。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物分類集成』R一一。

203 @山かな文章
 さやまかなぶんしょう
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]森川曹吾書。
[板種]天明六年(一七八六)閏一〇月出願、板元・奈良屋長兵衛(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]男筆手本。
[内容]不明。
[備考]明和八年(一七七一)刊『@山かな文書』と別本であろう。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

204 女要躾方・天明新刻・伊勢物語 女万宝大和文林
 おんなまんぽうやまとぶんりん
[異称]一名『女年中用文章大全』(題簽題傍書)。見返題『女用 女万宝倭文林』。目録題『天明新刻 女万宝倭文林』。
[書型]大本一冊。
[作者]沢井随山作・書。下河辺拾水画。向栄堂(山田好)序。
[板種]安永四年(一七七五)九月官許。天明七年(一七八七)一月刊。
天明七年板(京都・山田屋卯兵衛、菱屋治兵衛、西村平八)*玉川大・酒田市図。
[類型]男筆用文章。
[内容]四季折々の女文に種々の記事を付録した女用文章。例文は「年の始の文」から「歳暮の文」までの八六通からなるが、上・中・下の三部に分かれており、上之部は四季・五節句の文と吉凶事に伴う文(病気見舞・婚礼祝儀等)からなる四七通、中之部は吉凶事およびその他諸事に伴う手紙文九通さらに、下之部で再び「初春の文」以下三〇通の四季・五節句、その他諸用件の手紙を掲げる。同一主題の文章を重複して収録するが、上・中之部は主に上輩・貴人向けの手紙、下之部は同輩・下輩向けの手紙を想定して編まれているためであろう。なお、頭書に「伊勢物語」「源氏物語目録」、前付・後付に「女中言葉遣」「女の名つくし」「婚礼の本」「しみ物おとしやう」「七夕の歌」「九九の次第」「知死期繰やうの本」などの記事を載せる。また、本書は文化一〇年(一八一三)に『女年中用文章』と改題・再刊された。
[備考]冒頭部「恐なからとしの初の御ことふき申上たさ、一筆取むかひまいらせ候」。見返・扉絵は色刷。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

205 仮名附消息 并 仮名文章
 かなつきしょうそくならびにかなぶんしょう
[異称]書名は原題簽による。後半部扉題「女文章」。跋文中に「男女要文」と記す。
[書型]特大本(または大本)一冊。
[作者]長友松(玄海堂・友松軒)書。友水堂(長友松門人)跋。
[板種]天明七年(一七八七)一月書・跋・刊。寛政三年(一七九一)一月再刊。
天明七年板(大阪・塩屋平助)*黒川村公民館・牽牛庵・成田。
寛政三年板(大阪・高橋平助)*東書(「仮名付消息 并 ちらし書かな手本」)。
[類型]男筆手本。
[内容]前半に一般の準漢文体書簡(所々振り仮名を付す)、後半に「女文章」と題した仮名文を掲げた玄海堂の大判手本。前半部は「急用のため上京するにあたり宿泊場所の手配を依頼する手紙」以下、日常の諸事に関する手紙一六通で、いずれも半丁に大字三行、各通六行の短文である。また後半「女文章」も半丁に大字三行程度、各通六行程度の短い仮名文で、「新年祝儀状」を始め、四季折々の贈答の文、出産その他の祝儀状、また諸用件の手紙など二四通を収録する。
[備考]「女文章」の冒頭部「よろつ代も限なき此春の御ことふき、何かたも御めて度かしく」。跋文末尾の「未暦春」は天明七年を指す。『大阪出版書籍目録』によれば、天明六年(一七八六)頃刊という。また、寛政六年(一七九四)頃『玄海堂かな手本』と題した一本が[大阪]柏原屋与左衛門により板行されている。
[所蔵]他に共立女子大。
[複刻]なし。

206 女用文章(仮題)
 おんなようぶんしょう
[異称]原題不明。書名は後簽による。
[書型]大本一冊。
[作者]筆者不明(妙躰風を学んだ者の筆跡であろう)。
[板種]天明七年(一七八七)八月刊。
天明七年板(京都・菱屋孫兵衛)*謙堂。
[類型]女筆手本か。
[内容]江戸中期後半の女筆手本で妙躰風に書す。新年祝儀状から端午節句祝儀状までの一五通と和歌四首(巻末)を綴る。四季風物に重点を置いた例文だが収録順は必ずしも季節順ではない。散らし書き・並べ書きの両様が見られるが、散らしの程度はさほどでなく、両様を折衷したような書き方である。また、行間などに花弁模様を点在させるのも特徴。なお前付に「七夕まつりの図」「書初之詩歌」「女中相性名づくし」等や、巻末に「十二月異名」「大ふじやうじゆ日」などの記事を載せる。
[備考]冒頭部「青やうのとしたち帰、谷の鴬、軒はの梅にさへすり、そのゝこてふの日影にあそふ風情、心もまことにのとけくそんしまいらせ候」。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

207 女文章四季詞鑑
 おんなぶんしょうしきしかがみ
[異称]目録題『新板 女文章四季詞鑑』。
[書型]大本一冊。
[作者]北尾政美画。
[板種]天明八年(一七八八)一二月出願、板元ならびに売出・前川六左衛門(『江戸出版書目』『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。天明九年一月刊。享和元年(一八〇一)三月再刊。
天明九年板(江戸・西宮新六、前川六左衛門)* 謙堂・学芸大・三次市図・小松。
享和元年板(江戸・前川六左衛門)*謙堂・上田市図(「女風俗」)・大英図。
[類型]男筆用文章か。
[内容]「初春祝義之文」から「歳暮寿之返事」までの二九通を収録した女用文章。例文は書名の通り、ほとんどが四季の挨拶・風物・行事にまつわるもので、「雷見舞之章」「祭礼見物之文」「年わすれ催之文」といった例文も見える。年始・年末等の例文に散らし書きを採用するが、多くは大字五行・無訓の並べ書きである。また、例文ごとに目次と共通する花や草木の印を付けるのも特徴的である。付録記事にも独自の内容が少なくなく、前付・頭書等に「和歌の事」「女風俗躾時」「里海士人麿像」「男女相性」「賢女四季之和歌」「女中名五姓により善悪の事」「婚礼之図式」「香道たしなみの事」「松之目出度謂」「娘を五文字云説」「教訓手ならひ短歌」「躾方教短歌」「我儘育教短歌」「国尽を習べき事」「大日本国尽」「苗字の文字を習給ふべき事」「苗氏文字尽」「花咲草木の字を嗜おぼへ給ふべき事」「四季花の名づくし」「十二月之異名并引うた」「松之異名和歌之詞」等の記事を掲げる。
[備考]冒頭部「新玉りまいらせ候初春の御寿き、何かたもをなし御事祝納まいらせ候べく候」。見返は緑色刷。
[所蔵]他になし。
[複刻]『女子用往来物分類集成』R一八。

【寛政 一七八九〜一八〇一】

208 数楽 散書かな文章
 ちらしがきかなぶんしょう
[異称]跋文中に『数楽ちらし文章』と表記。
[書型]大本一冊。
[作者]数楽東雲書(『割印帳(江戸本屋出版記録)』には「数楽巣雲書」と誤記)。福井全二(東松)跋。
[板種]寛政元年(一七八九)三月跋・刊。
寛政元年板(江戸・大和田安兵衛)*石川県郷土。
寛政元年板(江戸・大和田安右衛門)*小泉。
[類型]男筆手本。
[内容]新年祝儀披露状以下一八通の散らし書きと、新年祝儀状以下九通の並べ書きを収録した手本。散らし書きは一〇段近くの複雑なものから二、三段のものまでを含む。また、例文内容は五節句や四季行事に伴う手紙や婚礼祝儀状などである。なお、跋文に東雲の事跡を略述するほか、見返に「数楽先生出席会日(一・三・四・六・八・九日のうち三・八日は本石町二丁目の居宅での教授)」を記す。
[備考]彫工は田千松。『割印帳』『江戸出版書目』には板元を大和田安兵衛とする。こちらが初刊か。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

209 @山松華往来
 さやましょうかおうらい
[異称]跋文中『松華法帖』。
[書型]大本二巻二冊。
[作者]@山周之(赤城)書。平信公跋。
[板種]寛政二年(一七九〇)一〇月書・刊。
寛政二年板(江戸・山崎金兵衛)*謙堂。
[類型]男筆手本。
[内容]本書の改題本に『@山四季かな文』あり(『江戸出版書目』の寛政二年(一七九〇)欄に「@山松花往来」と記すので、これが原題であろう)。二巻二冊。上巻を「春夏」巻、下巻を「秋冬」巻とするように、かなりの長文から比較的短文まで長短様々の四季の女文を収録した@山流陰刻手本。筆者は@山流祖周暁の次男周之。並べ書きと散らし書きを織りまぜ、変化に富んだ書法で綴る。例文はいずれも四季風景の修辞や和漢の故実を随所に採り入れた仮名文である。上巻は新年祝儀状から昨年の夏の石山詣を回想する文まで一二通、また、下巻は七夕や名月の故実を述べた長文の手紙など九通を載せる。
[備考]冒頭部「あらたまのとしのをた巻繰かへし、幾ちとせよろつよまてつきし候はぬ御ことふきいわゐおさめまいらせ候」。なお、下巻巻末に「山金堂蔵板書籍目録」を付す。
[所蔵]他に小松。
[複刻]『女子用往来物分類集成』R一七。

210 @山四季かな文
 さやましきかなぶみ
[異称]跋文中に『松華法帖』と記す。
[書型]大本二巻二冊。
[作者]@山周之(赤城)書。平信公跋。
[板種]寛政二年(一七九〇)一〇月書。改題本は江戸後期刊か。
江戸後期板(江戸・西村宗七)*小泉・謙堂(下)。
江戸後期板(名古屋・永楽屋東四郎 *後印)*東大・筑波大(下)。
[類型]男筆手本。
[内容]寛政二年刊『@山松華往来』(江戸・山崎金兵衛初刊)の改題本。
[備考]『@山松華往来』の後印・改題本である。冒頭部は『@山松華往来』に同じ。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物分類集成』R二〇。

211 長谷川女用文章
 はせがわおんなようぶんしょう
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]長谷川氏書。
[板種]寛政二年(一七九〇)頃刊。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『@山四季かな文』広告中。未刊か。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

212 長雄女年中用文
 ながおおんなねんちゅうようぶん
[異称]『長雄四季女文章』。
[書型]大本一冊。
[作者]尾崎耕節(長雄耕節 *百瀬耕元門人)書・跋。
[板種]寛政三年(一七九一)一〇月書・刊。
寛政三年板(江戸・花屋久次郎)*東書・小松(「長雄四季女文章」)。
[類型]男筆手本。
[内容]四季に伴う女子消息文を集めた陰刻手本。大字四行・無訓で綴る。全一八通のうち前半一三通が四季の風景を中心に綴った例文で、各月一通ずつ(四月のみ二通)を掲げる。また末尾の五通は、訪問客に対する礼状や湯治見舞いなど諸用件の手紙である。
[備考]冒頭部「長閑なる四方のけしき、鳥の音も若やかに、松のみとりの色まし、まことにゆたかなるはるにおはしまし候」。彫工は江戸湯島の朝倉喜三郎。寛政七年(一七九五)刊『長雄孝行かな文』広告中。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

213 女文台智恵鑑
 おんなぶんだいちえかがみ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]神尾政美(北尾政美の誤りか)画。
[板種]寛政三年(一七九一)刊、板元・前川六左衛門(『江戸出版書目』)。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]なし。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

214 女用書状案文
 じょようしょじょうあんもん/おんなようしょじょうあんもん
[異称]見返題『女用平生書状案文』。扉題『用文章』。
[書型]横本一冊。
[作者]山崎道紀(板元)作(『割印帳(江戸本屋出版記録)』にも「作者、道記」と記す)。
[板種]寛政五年(一七九三)一月刊。作者・山崎氏は本書の蔵板者。
寛政五年板(江戸・鶴屋喜右衛門、近江屋新八)*江森・筑波大(「女日用書状案文」)。
刊年不明板*大宮市博。
[類型]男筆用文章か。
[内容]庶民日用の例文七六通(うち二六通散らし書き)を収録した横本の女用文章。いずれも往復文で、前半三分の一に月次順の四季文、後半に「婚礼のふみ」以下種々の祝儀状・見舞状、その他諸用件の手紙を収録する。
[備考]冒頭部「新なる此春の御目出たさ、何方もかぎりなくいわゐ入まいらせ候」。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

215 女文章幼稚艸
 おんなぶんしょうおさなぐさ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]平野たかとも作。
[板種]寛政五年(一七九三)六月出願、板元・雁金屋清吉(『割印帳(江戸本屋出版記録)』『江戸出版書目』)。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]墨付二〇丁。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

216 女用文章千代寿
 おんなようぶんしょうちよのことぶき
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]北尾重政書。
[板種]寛政五年(一七九三)七月出願、板元・蔦屋十(重)三郎(『割印帳(江戸本屋出版記録)』『江戸出版書目』)。
[類型]男筆用文章。
[内容]不明。
[備考]墨付一七丁。天保九年(一八三八)刊『女今川宝嶋台』広告中に「大本、近刻」とあり。本書と関連あるか。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

217 女用文章玉手筺
 おんなようぶんしょうたまてばこ
[異称]一名『女用文章玉手箱』(『 女文章四季詞鑑』広告)。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]北尾政美編・画。橘正敬書。
[板種]寛政五年(一七九三)刊、板元・蔦屋重三郎(『江戸出版書目』『江戸本屋記録』)。寛政九年(一七九七)一二月出願、板元・前川六左衛門(『割印帳(江戸本屋出版記録)』『江戸出版書目』)。また、寛政一〇年(一七九八)一月出願、板元・前川六左衛門(『割印帳』『江戸出版書目』)。
[類型]男筆用文章か。
[内容]『 女文章四季詞鑑』広告に「女今川状、并問おとづれの文づくし、諸芸のひとり稽古、もろの嗜をあまた書あつめて大冊とす」とある。
[備考]『江戸出版書目』に「女今川入、墨付八十六丁」とある。また、『大坂本屋仲間記録』に「女要珠手箱。河八三・なら長・秋太」とあるが、本書を指すか。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

218 玄海堂かな手本
 げんかいどうかなでほん
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]長友松(玄海堂)書。
[板種]寛政六年(一七九四)閏一一月出願、板元・柏原屋与左衛門(『大阪出版書籍目録』)。
[類型]男筆手本。
[内容]不明。
[備考]なし。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

219 遊状案文
 ゆうじょうあんもん
[異称]目録題『遊女案文』。
[書型]横本一冊。
[作者]眉黒のおとど編・序。長松軒書。
[板種]寛政八年(一七九六)刊。
寛政八年板(大阪・扇屋利助)*国会・東北大・大阪府・京都府・西尾市図・延岡内藤家。
刊年不明板*小泉。
[類型]男筆用文章(艶書)。
[内容]「初春祝儀文」から「打込れし客より押返し遣文」と、さらに「拾遺」として「客を茶の湯に呼文」から「新造を出すふみ」までの遊女用の各種消息例文を集めた横本の艶書。随所に「心得」の小見出しを付けて、「年中祝義文書様」「朔日に遣る文の書様」「揚先で書て遣る文の心得」など種々の注記を伴うが、これらの中にも「揚屋より送る祝義文」「堂島の客へ遣文の書様」といった例文が含まれるため、実質的な収録書状数は約三五通である。いずれも大字七行・付訓の並べ書きで記す。巻頭序文には遊女の手紙の基本や本書の活用法について触れる。なお、本書の改編本に文化三年(一八〇六)刊『遊女文章大成』がある。
[備考] 冒頭部「初春の御寿、何方もおなし御事に目出たく申収まいらせ候」。見返青色刷。なお序文の日付には「巳の正月」と記すが、『洒落本大成』補巻によれば、これは天明五年(一七八五)を意味するのであり、天明五年板を初刊とする。本書では現存本によりここに掲げた。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性文庫』八九巻/『洒落本大成』補巻。

220 百瀬ちらし書
 ももせちらしがき
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]百瀬耕元書。
[板種]寛政九年(一七九七)春刊、板元ならびに売出・前川六左衛門(『割印帳(江戸本屋出版記録)』『江戸出版書目』)。
[類型]男筆手本。
[内容]不明。
[備考]墨付二五丁。江戸中期刊『百瀬 飛鳥山往来』広告中に『ちらし書かな文章』(百瀬耕元書)の書名が見える。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

221 長尾かなちらし書
 ながおかなちらしがき
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]長尾耕節書。
[板種]寛政九年(一七九七)五月出願、板元・花屋久次郎(『割印帳(江戸本屋出版記録)』『江戸出版書目』)。
[類型]男筆手本。
[内容]不明。
[備考]墨付二一丁。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

222 女筆玉乃海
 にょひつたまのうみ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]寛政九年(一七九七)秋刊、板元・前川六左衛門(『割印帳(江戸本屋出版記録)』『江戸出版書目』)。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]墨付三一丁。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

223 御家 女諸用文章
 おんなもろもろ(の)ようぶんしょう/おんなしょようぶんしょう
[異称]不明。
[書型]大本一冊。
[作者]橘正敬(居所・深川森下町)書。
[板種]寛政一一年(一七九九)五月書・刊。寛政一一年八月出願、板元・須原屋市兵衛(『割印帳(江戸本屋出版記録)』)。
寛政一一年板(江戸・須原屋市兵衛)*謙堂・学芸大。
寛政一一年板(江戸・須原屋茂兵衛・須原屋市兵衛)*樟蔭女子短大・石川県郷土・ノートルダム清心・ 国会・伊達開拓・東大。
寛政一一年板(江戸・須原屋伊八)*小泉・学芸大・玉川大。
寛政一一年板(江戸・和泉屋金右衛門ほか)*佐賀大。
[類型]男筆用文章。
[内容]「年始の文」から「歳暮祝儀の文」までの女文(往復文)七八通を収録した女用文章。四季折々の挨拶や年中行事等に関する女文をほぼ季節順に並べるが、季節と無縁の婚礼、出産、仕立物依頼、普請移徙、奉公、病気見舞い、借用、通過儀礼等の例文もちりばめる。いずれも並べ書きで、大字・六行・付訓の手本様に綴る。さらに巻末には、散らし書きの書法を示した「文散形書十躰」や、「文認様の差別」「十二月異名」の記事を付す。
[備考]冒頭部「新玉りまいらせ候この春の御ことふき、いつ方も同し御事に御めてたさ、まつ御揃ひ遊はし、御機けんよく御年かさねさせられ候…」。また、原本によれば、書名は「おんなもろもろ…」と読むのが正しい。
[所蔵]他に東書・函館市称名寺・慶大・京大・秋田県図ほか。
[複刻]『女子用往来物分類集成』R一九/『日本教科書大系往来編』一五巻。

224 百瀬女文当用集
 ももせおんなぶみとうようしゅう
[異称]書名は『割印帳(江戸本屋出版記録)』『江戸出版書目』による。
[書型]大本一冊。
[作者]百瀬耕元(南谷山人・久継)・百瀬雲元書。小林精通(耕民)跋。
[板種]寛政一一年(一七九九)一〇月跋・刊。同年同月出願、板元・前川六左衛門(『割印帳』『江戸出版書目』)。
寛政一一年板(江戸・前川六左衛門)*成田(「女用消息草書手本」)。
[類型]男筆手本。
[内容]百瀬流では珍しい女文の手本。前半の並べ書きは耕元筆、後半の散らし書きは雲元筆。前者は五節句と中元・歳暮の祝儀状と、久々に送る手紙や髪置祝儀状の九通からなり、いずれも文章の後半部を折り返して前半部の行間に挟むスタイルを採っている。後者は全て季節にまつわる手紙で、新春の文から歳暮祝儀状までの一二通をほぼ五段散らしで綴る。貴人とやりとりする文面や、季節の風景や風物(両国辺での夕涼み、十五夜の月見など)を主とする例文も散見される。いずれも大字・無訓で綴る。
[備考]冒頭部「あらたまりまいらせ候此春の御寿きとも申上まいらせ候」。彫工は江戸の瀬戸村佐兵衛。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

225 四季仮名文章
 しきかなぶんしょう
[異称]一名『 勝見四季仮名文章』。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]勝見書服書。
[板種]寛政一二年(一八〇〇)六月出願、板元・(京都)蓍屋儀兵衛、売出・須原屋茂兵衛(『江戸出版書目』)。同年同月刊か。
[類型]男筆用文章か。
[内容]不明。
[備考]墨付四二丁。安永七年(一七七八)刊『女用文章手引艸』と関連あるか。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

226 亀井戸まうて
 かめいどもうで
[異称]序題『亀井戸詣』。
[書型]大本一冊。
[作者]楠花堂作・跋。親行書。備成序。
[板種]寛政一二年(一八〇〇)八月序・跋。寛政一三年(一八〇一)刊。寛政一三年一月出願、板元・前川六左衛門(『江戸出版書目』)。
寛政一三年板(江戸・若林重左衛門)*謙堂。
[類型]女筆手本。
[内容]「物かく業にたつさはり侍る身なれは、天満宮の御蔭を仰き奉らんと、亀井戸詣おもひたちぬ…」で始まり、「めてたくかしく」で結ぶ全編一通の女文の体裁で、江戸・両国橋より亀井戸天神に参詣し、さらに神田湯島の聖廟に至るまでの沿道にある名所旧跡・神社仏閣、ならびに同天神の景趣・由来・縁起等を紹介した往来物。
[備考]冒頭部前記。本文末に「楠花堂主人著/女親行書」とあるように、筆者・親行は女性である。
[所蔵]他になし。
[複刻]『往来物大系』六〇巻。

【江戸中期(刊年不明)】

227 女文章倭織
 おんなぶんしょうやまとおり
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]江戸中期刊。大阪・秋田屋市兵衛板か。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女文章倭織、秋一」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

228 女文通花の苑
 おんなぶんつうはなのえん
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]江戸中期刊か。大阪・和泉屋重兵衛板か。
[類型]不明。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女文通花の苑、泉重」とある。宝暦一三年(一七六三)刊『女用華の宴』と同じか。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

229 女用書通案文
 おんなようしょつうあんもん
[異称]首題『女要文章福寿台』。
[書型]大本一冊。
[作者]戸田栄治(玄泉堂・儀左衛門)書。
[板種]江戸中期(天明五年(一七八五)以降)刊。
刊年不明板(大阪・河内屋太助)*弘前市図。
[類型]男筆用文章。
[内容]天明五年刊『女要福寿台』の改題・改訂本。同書より前付・後付の記事一切(約二五丁)を省いたもの。
[備考]本文冒頭は『女要福寿台』に同じ。また、巻末には『女要福寿台』その他の広告を載せる。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

230 百人一首・女教訓 女万要品定
 おんなまんようしなさだめ
[異称]なし。
[書型]大本一冊。
[作者]沢井随山作。
[板種]江戸中期刊か。
刊年不明板*学芸大。
[類型]男筆用文章。
[内容]安永四年(一七七五)刊『女文章宝鑑』に「伊勢物語」を増補・改題した女用文章。前付に「女教訓八花形」「婚礼之図説」「楊枝指仕様秘伝」「女中文封様事」「七夕祭の由来」等、頭書に「百人一首」「十二月倭名并節目由来」「三十六歌仙」「女用文章書替字」「花鳥目附絵尽」「賢女鑑」「女式」「女食法要式」「懐胎の内食物、産後あしき食物」、また後付に「男女相性の事并歌」などを収録する。
[備考]冒頭部『女文章宝鑑』に同じ。『割印帳(江戸本屋出版記録)』には文化八年(一八一一)八月再刊の『女万要品定』(墨付八二丁。板元は大阪・塩屋平助で、江戸・角丸屋甚助売出)の記載がある。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

231 女新用文章・女筆手本 女用ふだん桜
 おんなようふだんざくら
[異称]不明。
[書型]大本一冊か。
[作者]不明。
[板種]江戸中期、江戸・江見屋吉右衛門刊か。
[類型]女筆用文章か。
[内容]不明。あるいは未刊か。
[備考]享保(一七一六〜三六)頃刊『女手ならひ教訓の書』(江見屋吉右衛門板)の巻末広告に次の一文を載せる。「女平ぜい取あつかふふみのぶんしやう、また、ぶんていのおしへ、かなづかひのならひ、女中入用のもんじ、万かき物の法式等、其外てうほうなる事ともをいろかきあつめ、第一、産前・産後の大事、くわいたいよりの心持、やうじやう、子のよういく迄をくわしくしるし、追付板行してひろむるもの也」。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

232 女用文書(仮称)
 おんなようぶんしょ
[異称]柱『女用文』。
[書型]中本一冊。
[作者]不明。
[板種]江戸中期原板か。文政三年再板。
刊年不明板(江戸・榎本吉兵衛 *原板)*再板本の刊記による。
文政三年板(江戸・岩戸屋喜三郎 *再板)*江森・筑波大(「用文章」)。
刊年不明板(江戸・岩戸屋喜三郎)*玉川大・樟蔭女子短大。
[類型]用文章。
[内容]四季に伴う消息文一六通を収録した女用文章。新年の文など、五節句祝儀状や、種々誘引状からなる。前付・頭書・後付には、聟入・嫁入から産後養生までの通過儀礼に関する記事や「女今川図解」「牽牛織女祭の図」「万しみ物おとし様」「懐胎心へべき事」「月異名」「片仮名伊呂波」などを載せる。また、刊年不明板の巻末には「色紙短冊押法、并歌の題書様」を掲げる。
[備考]冒頭部「新玉りぬる春の御寿、千代万代といわゐ入まいらせ候」(板種により小異あり)。
[所蔵]他に学芸大。
[複刻]なし。

233 消息文(仮題)
 しょうそくぶん
[異称]原題不明。
[書型]大本二巻二冊か。
[作者]不明。
[板種]江戸中期刊。
刊年不明板*学芸大。
[類型]女筆手本か。
[内容]二冊本または三冊本と思われる女筆手本類。現存する零本には、姫君や若宮誕生の祝儀状や新年祝儀の披露文など七通(うち二通が並べ書きで他は散らし書き)を収録。また、巻末には源俊頼の初恋の和歌など六首を掲げる。
[備考]冒頭部「姫君様御誕生あそはし、女院御所様御機嫌の程、通しんしられ候」。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

234 四季文章 女用婦見硯
 じょようふみすずり
[異称]なし。
[書型]半紙本一冊。
[作者]長友松(玄海堂)書。文海堂序。
[板種]江戸中期初刊。江戸後期再板。
刊年不明板(大阪・敦賀屋九兵衛)*吉海・学芸大・樟蔭女子短大・玉川大。
刊年不明板(京都・丁子屋源治郎、菱屋友七、吉野屋仁兵衛、江戸・山城屋佐兵衛、須原屋茂兵衛、大阪・敦賀屋九兵衛、敦賀屋喜蔵、敦賀屋庄七、敦賀屋彦七、敦賀屋為七、敦賀屋義助)*小泉。
[類型]男筆用文章。
[内容]「初春祝儀文」から「花見のふみ・同返事」までの四一通を収録した女用文章。前半に一二カ月の女文(祝儀状・見舞状)、後半に歯黒付けから婚礼、出産、髪置までの通過儀礼に伴う手紙などを載せる。頭書には「ふみ封じやう」「文字のはじめ」「女子文章訓」「女誡和解」「化粧の仕やう」「紅のつけやう」「万しみおとしの伝」「染もの秘伝」「男女相性」「婦人諸薬の心得」「あらひ粉の伝」など女子教訓・家政関連の記事を掲げる。また、巻頭口絵に菅原道真の母を描く。なお、『大阪出版書籍目録』『江戸出版書目』には寛延二年(一七四九)刊『女用婦見硯(女用仮字書筆)』(和泉屋喜兵衛作・村井範啓筆)が見えるが、これは本書とは別本である。
[備考]冒頭部「新なる此春の御めてたさ、何かたもかきりなくいはひまいらせ候」。
[所蔵]他になし。
[複刻]『女子用往来物分類集成』R二四。

235 ちらし書手本(仮称)
 ちらしがきてほん
[異称]不明。
[書型]大本三巻三冊か。
[作者]不明。
[板種]江戸中期刊。
刊年不明板*筑波大。
[類型]女筆手本か。
[内容]現存本は中巻一冊で、もと三巻三冊と思われる女筆手本。中巻は全文散らし書きで、姫君の装いを賞賛する手紙から、宿直する女性の感慨を述べた手紙までの一二通を収録する。宮中に勤める女性を意識した例文が多く、ほかにも有馬温泉で湯治する人への餞別状、来訪の約束を果たさぬ友への催促状、和歌を贈答する文などを載せる。筆者は不明だが、概して沢田吉風である。
[備考]冒頭部「姫君様南殿のみかうし候て、御簾のひまよりみまいらせ候。まことにみやひやかなる御よそほひたくひぬへき花もなくおほえまいらせ候」。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

236 女筆かな文章
 にょひつかなぶんしょう
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]長友松(玄海堂)書(とする)。
[板種]江戸中期刊か。
[類型]男筆手本か。
[内容]文化五年板『女撰要和国織』広告中に「此書は長先生の筆にして、かん要の文をあつむる事、『手引の松』に同じ。このふたつの書(『女筆手引の松』と『女筆かな文章』)を習ふときは、ちらし書の字くはり、つゞけやうをしり、能書になる事かたらず」とある。。
[備考]享和二年(一八〇二)刊『浅草詣文章』、また文化五年(一八〇八)刊『女撰要和国織』広告中。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

237 女筆玉あられ
 にょひつたまあられ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]江戸中期刊。大阪刊。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋仲間記録』には「女筆玉あられ、河吉」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

238 女筆玉すだれ
 にょひつたますだれ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]江戸中期刊か。大阪・利倉屋新兵衛ほか板か。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女筆玉すだれ、焼株、網干清・利新」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

239 女筆始
 にょひつはじめ
[異称]不明。
[書型]大本五巻五冊。
[作者]不明。
[板種]江戸中期刊。大阪刊か。
[類型]手本か。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋記録』。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

240 女筆道柴花の海
 にょひつみちしばはなのうみ
[異称]なし。
[書型]大本三巻三冊。
[作者]辻柳軒(玉華堂)作・書・跋。
[板種]江戸中期再刊。
刊年不明板(刊記不明)*母利。
[類型]男筆手本。
[内容]宝永元年(一七〇四)刊『みちしば』の改題本。上巻のみ現存。上巻は『みちしば』と同内容だが、見返は異なり、「衣通姫」の挿絵と記事を載せる。
[備考]なし。
[所蔵]完本は現存せず。他になし。
[複刻]なし。

241 女筆紅葉川
 にょひつもみじがわ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]江戸中期刊。大阪・秋田屋市兵衛開板、後、河内屋喜兵衛求板か。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]『大坂本屋仲間記録』に「女筆紅葉川、秋一」、また「女筆紅葉川、河喜」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

242 女筆大和錦
 にょひつやまとにしき
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]江戸中期刊、板元・糸屋市兵衛。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]宝暦(一七五一〜六四)頃刊『女筆姫小松』広告中。また『大坂本屋仲間記録』に「女筆大和錦、糸市」とある。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

243 女筆世つぎ草
 にょひつよつぎぐさ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]不明。
[板種]江戸中期刊、板元不明(大阪刊)(『大坂本屋記録』)。
[類型]女筆手本か。
[内容]不明。
[備考]なし。
[所蔵]現存せず。
[複刻]なし。

244 筆海女用文書
 ひっかいおんなようぶんしょ
[異称]不明。
[書型]一冊(大本か)。
[作者]奥村政信画。
[板種]江戸中期刊か。
刊年不明板*竹清。
[類型]用文章か。
[内容]不明。
[備考]『国書総目録』による。
[所蔵]他になし。
[複刻]なし。

245 艶書 文乃枝折
 ふみのしおり
[異称]なし。
[書型]横本一冊。
[作者]玉華編。白霊人書・跋。
[板種]江戸中期(宝暦頃か)刊。
刊年不明板(大阪か)*小泉。
[類型]男筆用文章(艶書)。
[内容]全編散らし書きで綴った横本の恋文集で、一般の女用文章とは異なる。「奥勤の女に思ひをかけ遣す文」から「逢ての後恨みいひやるふみ・同女返し」まで、種々の状況下での男女間の恋文(往復文)二四通を収録する。また、巻末に「おもふよりいつしかぬるゝ袂かな なみたや恋のしるへなるらん」以下二一首の「恋の引歌」を掲げる。
[備考]冒頭部「おもひはふかきおくやまに、紅葉てりそふ心なれと、筆のつたなさにはぢ入候得とも、一筆そめまいらせ候」。
[所蔵]他になし。
[複刻]『江戸時代女性文庫』三二巻。