玉置浩二/WE CAN BELIEVE IN OUR“JUNK LAND”
(ミュージック・マガジン98年4月号掲載)

 玉置浩二は異形の人である。観客に対するサーヴィス精神や、おどけた仕草に惑わされてはいけない。本作はアルバム『JUNK LAND』を携えて行われた昨年11月22日、東京国際フォーラムの演奏を中心に構成した映像作品だが、例えば本作の中で爆発的に盛り上がる六本木でのゲリラ・ライヴだけを見てもその気迫に圧倒される者は多いはず。

 コンサート・シーンでは歌の良さはいうまでもないが、バンド編成のアレンジも素晴らしい。キーボードとストリングス以外の大半の楽器を一人で奏でていた最新アルバムの収録曲もきちんとライヴならではの瑞々しい演奏で聴かせており、部分的に変えられた歌詞もいちいち気がきいている。安全地帯の代表曲「じれったい」の大胆な解釈も痛快だ。

 全体を見て不思議なのは、舞台の上よりも、仕事場における無精ひげを生やした顔の方が凛々しく見えること。多分二枚目に映ることを拒んでいるのだろうが、実は彼は死んだ愛猫に本作を捧げてしまうほど、過剰なパッションを抱えた男なのだ。

 現在の彼は安全地帯で完成させた作風を大きく広げ、第二の黄金時代に突入しているように思うが、本作からもそんな勢いは十分に伝わってくる。ちなみに僕が知る限りでは、彼を芸能界の人としてではなく、ミュージシャンとして捉え、踏み込んだ音楽誌の記事をほとんど見たことがないが、そうした風潮はつくづく遺憾だと思う。


98年 アルバム『GRAND LOVE』プレス資料〜玉置浩二論
99年 ビデオ「“GRAND LOVE”A LIFE IN MUSIC」ライナー
99年 アルバム『ワインレッドの心』プレス資料
01年 玉置浩二3万字インタヴュー
05年 アルバム『今日というこの日を生きていこう』レヴュー
14年 玉置浩二ソロ・アルバム『GOLD』