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 丸田証券取引所に一部上場している企業の中から、これからますます業績が伸びると予想されている会社をレポートします。



 日本ほっけ


 大正6年に創業した、ほっけ界のパイオニア。
 居酒屋などに卸すほっけのシェアは8割を超え、名実ともに日本のほっけ産業を支える優良企業である。社員のボーナスがほっけで支払われるという問題点をのぞけば、当面の課題は見当たらない。
 3代目となる現在の社長は自ら船に乗り、ほっけ漁に出かけてしまう癖がある。そのため連絡を取るのに苦労が絶えない。決裁は常に遅れ気味。
 今期はほっけ工場への設備投資が一巡するが、社長が趣味で作った「ほっけテーマパーク」が収益を圧迫。来年3月の開園をめざして、役員たちは日夜テーマパークの名前を考えている。
 本社・丸田市、社員数 1748人、当期営業利益 232億円。



 コンビニ CHOICE


 平成12年に創業した、コンビニ界の風雲児。
 24時間営業のコンビニが乱立する中、CHOICEはなんと1時間営業。これが利用者の飢餓感をあおり、開店前には長い行列ができる。待ちきれずに店の前で「CHOICE! CHOICE!」と叫びながらガラス窓に突進する若者たちが、深刻な社会問題となっている。
 一日のうち23時間、ずっと棚卸しをしているので、店内のディスプレイには非のうちどころがない。また、客に立ち読みされる時間が同業他社に比べて極端に少ないため、コンビニには珍しくきれいな雑誌が多い。
 今期はレシートを集めてレジ係に渡すと、すべてのレシートをつなげてもらえる「春のレシートつなげちゃうぞキャンペーン」を秋まで開催。既存店の売り上げ20%増を見込んでいるが、レシートをつなげている間にレジがストップしてしまうので、目標達成は難しそう。
 本社・丸田市、社員数 4356人、当期営業利益 1488億円。



 ドタンバ生命


 昭和45年創業の生命保険会社。
 新商品の開発力には定評がある。昭和50年に販売を開始した、タンスの角に足をぶつけたときの保険「小指くん」は売れに売れ、現在も全国に700万人の顧客を抱えている。
 さらに昭和54年には、これまでに一度も足の小指をぶつけたことがない人に保険料を割り引く「小指くんスーパー」を発売。他社からの類似商品が続々と出て、一時は苦戦を強いられるが、販売員が実際に足の小指を打ちつけて契約を迫るという、おそるべき営業力でこれをカバーした。おかげで販売員の足の小指はボロボロ。
 今期は満を持して、弁慶の泣きどころを打ちつけてしまったときの保険「牛若丸」を投入。一部の販売員からは「勘弁してくれ」との声も出ているが、社長はまったく気にしていない。
 本社・丸田市、社員数 17309人、当期営業利益 524億円。



 LOエンタプライズ


 昭和27年創業の総合商社。
 取り扱う商品は多岐に渡り、ピーク時は2700品目にのぼった。しかし不況の波が襲い、採算のとれない事業からの撤退を余儀なくされたため、利益率の高い分野に経営資源を集中した。
 その中で生き残ったのが「LSI」と「おしぼり」である。LとOはそれぞれの頭文字。昭和60年にCIを導入して、現在の社名に変更した。
 社内ではそれぞれの事業部が経営の主導権を握ろうと足を引っ張り合っており、雰囲気は最悪だ。「今どきおしぼりなんて」というLSI事業部と「LSIで顔がふけるか」というおしぼり事業部の間に挟まれ、社長も頭が痛い。
 本社・丸田市、社員数 4507人、当期営業利益 790億円。



 第一成型加工


 昭和43年創業のプラスティック加工会社。
 経営はそれまでも順調に推移していたが、会社の運命を急激に変えたのは一つの商品の開発に成功を収めてからであった。
 その商品とは「パンの袋を止めるプラスティックの四角いやつ」である。正式名称は「パンの袋を止めるプラスティックの四角くて真ん中に穴の開いたやつ」。
 大手パン会社からの要請で開発に着手、試作品の数は70に及び、完成までに4年を要した。以来、受注の大半を受け続けており、世界シェアは9割を切ることがない。さらに業界の牽引役として、新製品を続々と投入している。中でも人気はワンタッチ装着が可能なSR85と、気分に応じてお好きな色に変えられるCR41。
 本社・丸田市、社員数 1293人、当期営業利益 310億円。



 太陽電鉄


 昭和21年創業の鉄道会社。
 会社が設立されてから50年以上が経過しているが、いまだ電車が走らない。現在も線路を建設中。
 それでも倒産しないのは、魅力的な事業展開に株主が殺到するため。奈良の大仏とフランスを結ぶ「仏仏線」の壮大な計画は、世界中の耳目を集めた。その他にも金閣寺・銀閣寺と真珠湾を結ぶ「金銀パール線」、江戸と山口を結ぶ「エド山口線」など、次々に斬新なプランを打ち出し、鉄道業界に一石を投じ続けている。
 今期は、50年たっても完了していない広大な用地の買収がどこまで進むかに注目。説得が難航している周辺住民へのお歳暮を石鹸からカニ缶にするなど、諸経費の増加は避けられない情勢だ。
 本社・丸田市、社員数 763人、当期営業利益 50億円。



 東京糸電話


 平成8年創業の新しい通信会社。
 この会社は、市内通話を3分1円の低料金で実現した。
 糸は独自に開発されたもので、音の伝達にとても優れた紀州産の綿を原料に使用。受話器となるカップも、音の反響にとても優れた越後産のアルミニウムを使用している。
 10m以上の通話はすべて「長距離電話」と呼ばれ、特定の回線だけ糸を太くするサービス「テレフトク」や、回線を2倍に増やす「糸SDN」などのサービスが人気を博している。
 今後は通話品質を維持するため、ビルからビルへ糸を張り巡らす熟練工の大量養成が急務だ。台風が来たあとの復旧工事に1カ月かかってしまうのも、不安材料の一つである。
 本社・丸田市、社員数 4571人、当期営業利益 34億円。



 ホテル山もと


 昭和6年創業の老舗ホテルチェーン。
 常に最新のサービスを心がけており、昭和の中ごろには100円で1時間テレビが見られる機械を日本で初めて全室に完備した。
 また、先代社長のアイデアで遊技場に設置した卓球台は一躍大ブームとなり、瞬く間に全国の宿泊施設に広まった。さらに、風呂場にコーヒー牛乳を置いたのもホテル山もとが最初であり、コーヒー牛乳協会から感謝状を贈られた輝かしいエピソードも残されている。
 今期は昨年5月に就任した新社長の手腕が問われる。だが、歴代の社長よりIQが70ほど低いため、ホテルのスリッパを並べてばかりいるのがちょっと気がかりだ。
 本社・丸田市、社員数 3092人、当期営業利益 78億円。



 大東警備


 昭和34年創業の警備会社。
 この会社の業績が急成長したのは、東京オリンピックの聖火を命がけで守ったあの有名な事件がきっかけである。
 オリンピックの開催に異議を唱える一部の市民団体が、アテネから運ばれた聖火を消してしまおうと、ランナーからランナーへトーチが手渡されるタイミングを狙って大量の水をかけたのだ。その瞬間、現場を担当していた警備員が危険を察知し、トーチに覆いかぶさるように身を投げた。火は瞬く間に警備員に引火し、彼は「うおおおおおおお」と叫びながら近くの民家に突撃。民家は全焼したが聖火は守られ、オリンピックは無事に開催されたのだった(警備員は殉職)。
 今期は最近しぼみがちな彼らの大和魂が、どこまで復活するかがカギ。
 本社・丸田市、社員数 4096人、当期営業利益 490億円。



 オストデルドバーガー


 昭和59年創業のハンバーガーチェーン店。
 一時はライバル会社の猛追を受けたが、TBA制度を導入して顧客のニーズをがっちりつかみ、業界トップにもう20年近く君臨している。
 TBAとは「テクニカル・バーガー・アシスタント」。普通に食べ進めていくと、ハンバーグが落ちてしまったり、パンだけ先になくなってしまったり、レタスがちぎれず出てきてしまい、口中がレタスだらけになる恐れがある。そのため、TBAの資格を有する店員が「正面向かって右側のハンバーグをややおちょぼ口で食べておくと、次が食べやすいですよ」とか「ここで一気に最後まで口に押し込んで!」など、的確なアドバイスを与えてくれるのだ。当初は「余計なお世話だ」との声もあったが、今では「服を汚さず助かった」「彼らなしでは食べられない」とおおむね好評だ。
 今期は全店舗に配備して35000人に膨れあがったTBAを、どうするかがカギ。
 本社・丸田市、社員数 150000人、当期営業利益 7600億円。



 コトブキベバレジ


 昭和35年創業の飲料メーカー。
 限界に挑戦した商品づくりが、一般消費者の支持を受けている。
 社長の鶴の一声で始まった「ペットボトルはどこまで大きくできるか?」というプロジェクトは、3リットル、5リットルの壁を超え、ついに12リットルに至った。ラッパ飲みは不可能。また、コップに注ごうとするとあまりの重さに手がふらつくため、もっぱらストローで飲むのが主流。コンビニなどの業務用冷蔵庫にも入らず、電機メーカー各社は対応に追われている。
 今期は「あのペットボトルで手が折れた」と訴える原告団と、どう和解するかがカギ。
 本社・丸田市、社員数 3206人、当期営業利益 2400億円。



 スゴイ銀行


 大正11年創業の地方銀行。
 創業者である菅沼成次郎・郷田敬蔵・井沢君之助、三人の頭文字を取って名付けられた。ところがこのネーミングのおかげで、銀行再編の台風の目となる。スゴイ銀行と合併すれば、「スゴイ××銀行」と名乗ることができるのだ。提携の申し込みはあとを絶たない。
 ただ、ATMにトラブルが多い。お金を引き出すと、札と一緒にメモ帳やティッシュなど、いろんな紙がドバドバ出てくる。日めくりカレンダーが2年分出たこともある。
 今期はATMの修理に、いよいよ重い腰を上げるとの噂だ。
 本社・丸田市、社員数 3096人、当期営業利益 61億円。



 カメラのとみたや


 昭和35年創業の電化製品店。
 当初はカメラのみを販売していたが、昭和45年頃から事業を拡大し、現在ではほとんどの電化製品を取り扱う。同業他社との安売り合戦は激化する一方だが、新規に出店した店舗も好調で、着実に売上げを伸ばしている。
 創業時の精神を忘れないように、すべての電化製品にカメラが付いているのが、とみたやの特徴だ。独自の技術で開発された、カメラ付き洗濯機やカメラ付き掃除機、カメラ付き食器洗い乾燥機など、ありとあらゆる商品で記念写真を撮ることができる。
 今期はついに、カメラ付きデジタルカメラが発売されるとの噂だ。
 本社・丸田市、社員数 5490人、当期営業利益 152億円。



 スタースター電子


 昭和24年創業の電子機器メーカー。
 このたび、携帯電話の電波に負けないペースメーカーの開発に成功して、注目を集めている。実験では25人の女子高生に囲まれてメールや電話をされても、動作に支障はなかった。ただし、26人目であえなくダウン。実験に参加した男性はこの世を去ったが、その顔はとても安らかだったという(スタースター電子発表による。遺族とは係争中)。
 さらに、携帯電話の機能がついたペースメーカーの開発に着手。これで自宅に携帯電話を忘れることがなくなり、外出先での紛失も激減する見込みだ。充電は、ヘソに設けられた端子とコンセントを専用のモジュラーでつなぐか、単二電池を飲む方法が検討されている。
 今期はついに、心臓病を患う社員が1500人を突破。自社製品の売り上げを支えるのはこれぐらいにして、1人でも多くの早い復帰が望まれる。
 本社・丸田市、社員数 2114人、当期営業利益 95億円。







表紙


 発行/カクシゴト 編集長/かくたかひろ
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